謎多キ者ノ魔女裁判   作:メルルちゃん親衛隊

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第四審 屋敷探索①

 翌朝、目が覚めたセルクは朝の自由時間が始まると、そのまま食堂に向かいやっぱり粗雑な料理を、ちゃんとしたものへと変えておく。

 全ての料理を作り変える頃には、次第に皆が集まり初めていた。

 

「あっ、メルル、アンアンの様子はどうだった?」

「え、えっと……あのあと、さらに熱が上がってしまって……。風邪では無いようなのでうつる心配はありませんが……。今はアンアンさんのために食事をとりにきたんです」

「そうか……、それなら今のものよりももう少し食べやすいものに作り替えよう」

 

 セルクは、いくつか料理をとってくると、それをお粥などの胃に優しいものに作り変えた。しかし、セルクの額には少し汗が流れていた。

 

「ふぅ……、流石にここまで作り変えようとすると疲れるなぁ」

「だっ、だめですよセルクさん!無理しないでください……っ」

「無理はしてないさ、それよりもせっかくだから医務室で食べようか」

「はっ、はい……。そうしましょう……」

 

 2人は食事を持って、医務室へと向かう。医務室にたどり着き、アンアンに挨拶を交わす。

 

「おはようアンアン、一緒に食べようか」

 

 アンアンは文字を書くためにスケッチブックを探すが、離れた場所に置いていたために、諦めてしまった。

 

「その分だと、自分じゃうまく食べられなさそうだな。俺が食べさせてあげるよ」

 

 そう言いながらセルクはアンアンにお粥を差し出す。アンアンは恥ずかしいのか、少し顔を赤くしながら食べようとするが、熱かったようで顔を歪ませてしまう。

 

「あ、熱い!冷ましてくれ!」

「ご、ごめん!少し時間をおいたほうが……」

「いや……、セルク、【フーフーしろ】」

 

 アンアンがそう命じると、セルクの体は勝手にお粥にフーフーしていた。

 

「おお、体が勝手に……、これがアンアンの魔法?はい、あーん」

「あ〜ん……もぐもぐ……ごくん。……うむ、わがはいの洗脳の魔法だ。恐れおののくがいい」

「す、すす、すごいですねアンアンさん……!」

「貴様に言ったわけではない……!」

「ひぃん……、そ、そんなぁ……」

「まあまあ、仲良く仲良く。それじゃあ俺もいただきます」

「私もいただきます……、……!や、やっぱり美味しいですね……」

「うむ、わがはいも大満足だ。だから早く次のを【食べさせろ】。あーん……」

「はいはい、フーフー……あーん……、まるで手のかかる子供みたいだな?」

 

 セルクがそう言うと、アンアンは少し悩むようなそぶりを見せたあと、しっくりきたというような表情になり。

 

「パ、パパ……、早くあ〜んして……」

 

 そう要求するアンアンの顔は赤くなっていた。思いつきでやってみたはいいものの、やっぱり恥ずかしかったようだ。

 

「や、やっぱりだめだ!わがはいには無理だ!」

「うぅ……、アンアンさんばかりずるいです……。わ、私にも、あ、あ〜んってしてください……っ」

「……やっぱりメルルって、前よりも貪欲になった?」

「そっ、そんなことないですぅ……」

「まあいいんだけどさ?ほら、あーん」

「「あ〜ん……」」

────私にも!私にもあーんしてください!

 ……結局、セルクは2人に食べさせ続ける事になる。その姿はまるで、親鳥と口を開けて餌を待つ雛鳥のようだった。

 朝食を食べ終わり食器を片付け、メルルが中庭にハーブを取りに行き、ハーブティーを入れる準備を進めていると、レイアがやってきた。

 

「あっ、蓮見さんおはよう。どこか怪我でもしたのか?」

「やあ、おはようセルクくん。それにメルルくん、アンアンくんも」

「は、はい……、おはようございます……」

「別に怪我をしたり体調が悪いわけではなくてね。アンアンくんのお見舞いに来たんだ」

「そ、そうなんですね……、その……今ハーブティーを淹れるところなんです。せ、せっかくですからレイアさんもお飲みになられますか……?」

「ああ、もちろん。飲ませてもらうよ」

 

 セルクとメルル、レイア、そして少し体調が戻った様子のアンアンが医務室のテーブルに腰掛ける。四人はハーブティーの蒸されきるのを待ちながら、会話を始める。

 

「こうやってちゃんと話すのは初めてだね。調子はどうだい?」

『少しはマシになった。メルルのおかげだ』

「そ、そんなそんな……っ」

「そうか、それは良かったよ。とても心配だったんだ」

「考えてみれば蓮見さんとこうやって、話すのは初めてになるのかな?」

「そうだね、今まではなかなか話す機会がとれなかったね」

 

 セルクは、なんだかんだでエマ達やメルルといることが多かったからなぁ……、と考えを巡らせる。

 そこでセルクは、不意にココにそんなに堅苦しくする必要はないと言われたことを思い出す。

 

「そうだ!蓮見さんのことレイアって呼んでもいいかな?」

「ああ!もちろんさ!キミの好きなように呼んでくれて構わないよ」

「うん、ありがとうレイア」

 

 早速ココから言われたことをやり遂げたセルクの顔は満足げだった。

 

「ああ、そうだ、セルクくんに聞きたいことがあったんだ。ここに捕えられた中では君だけが男性だったけど、負担にはなっていないかい?」

「それは大丈夫かな。むしろ、俺の方がみんなの負担になってないかが心配だよ」

「それは大丈夫だよ。何人かの子達に聞いてみたけど、みんな君を受け入れているみたいだ」

『わがはいも負担には思っていないぞ、むしろセルクといると楽しくなる』

「わ、私もセルクさんと一緒にいるのは、た、楽しいです……」

 

 そのまま、4人で話をしていると、ついに蒸らすのが終わり、メルルはカップにハーブティーを注ぐ。

「で、できました……。お味はどうでしょうか……」

『ほんのり甘くすっきりしていて口当たりもいい。さすがだな』

「ああ!美味しいよメルルくん!今まで飲んだ中で一番だとも!」

「うん、とっても美味しいよ。さすがはメルル、毎日でも飲みたいぐらいだ」

「あぅ……、そっ、そんなそんなそんな……っ、毎日飲みたいだなんて……」

 

 三人で褒めちぎったことにより、メルルの顔は真っ赤になってしまった。今のメルルの顔の上にポッドを置けば、お湯が沸かせるかもしれない。

 そのまま、4人で談笑しながらハーブティーを飲み終え、片付けたあと、アンアンはベットに戻ったところでエマとシェリーがやってきた。

 

「あ、エマさん、シェリーさん……!」

「メルルさんと、セルクさん、見かけないと思ったらこんなところにいたんですね」

「は、はい……。アンアンさんの看病をするために、一日中ここに……、ごめんなさい……」

 

 メルルはか細い声でそう答え、頭を下げる。

 

「謝らなくてもいいですよぉ!えらいです、メルルさん!」

「そ、そんなそんなそんな……っ」

「アンアンちゃん、ずっとここにいたんだ?具合はどうなんだろう」

「熱を出しちゃったみたいでさ。メルルがゴクチョーから聞いたんだけど、医務室で過ごしていて良いらしい」

「へぇ〜、わりとゆるいんですねっ!」

「二人は何しにきたんだ?レイアみたいにアンアンのお見舞いか?」

「ううん、牢屋敷の探索だよ。あっ、そうだ!セルクくんも一緒にくる?」

「いいのか?それなら、一緒に行こうか」

「いいですね!一緒に牢屋敷の謎を解き明かしましょう!」

 

 セルクの返答を聞いたエマとシェリーは、次にアンアンとレイアの方に行った。

 その間にセルクはメルルにエマと一緒に行くことを伝えた。

 

「それじゃあ俺は、エマ達と一緒に行くよ。アンアンのことは頼むよ」

「は、はい、セルクさんは、屋敷のことはあまり知りませんから、それはいいんですけど……」

 

 メルルは他の4人がこちらに意識を向けていないことを確認し、小さな声で話す。

 

「セルクさん……、あまり仲良くしすぎないでくださいね……?わ、わわ、私、セルクさんがいなくなったら……っ」

 

 その言葉を聞いたセルクは、メルルを安心させるように頭をポンポンする。それに満足したのか、メルルは満足したような表情を見せる。

 そうしていると、エマ達から声をかけられた。

 

「セルクくん、一緒に中庭に行こう!」

「ああ、それじゃあ行こうか。メルル、アンアンのことは頼んだよ」

「は、はい……。それではまた……」

 

 メルルと別れたあと、レイアの案内で中庭にたどり着く。四方を壁に囲まれていたが、吹き抜けの天井からは青空が見えた。

 

(外の空気……、吸うのは久しぶりだな)

 

 セルクの隣にいたエマが胸いっぱいに新鮮な空気を吸い込む。その様子をセルクが見ていると、見ていることに気がついたエマが、微笑んだ。思わず見惚れたセルクだが、なんとか心を落ち着かせ、正面を向き直す。

 

「ここは囲まれているけれど、正面玄関から外に出てみると良いよ」

「自然が溢れていて、いい景観なんだ。もっと解放的になれると思う」

 

 にこにこと提案してきたレイアに、エマとシェリーが顔を見合わせた。

 

「ボクら、てっきり正面玄関は鍵がかけられているのかと思ってた」

「自由時間は、本当に自由に歩き回らせてくれるみたいなんだ」

「ただ、外出禁止時間は、流石に鍵がかけられるみたいだけどね」

 

 話し込んでいると、上空から羽音が聞こえる。上を見上げてみるとそれは、ゴクチョーが羽ばたく音だった。

 

「おや、桜羽エマさん、橘シェリーさん、蓮見レイアさんに……、氷室セルクさんじゃないですか」

「ゴクチョー……」

 

 レイアはゴクチョーの出現に警戒し、険しい顔になって全員を守るように前に立つ。

 

「私たちは、規則に従って生活をしている。何も悪いことはしていないよ」

「ええ、その調子で頑張ってください。ここはとてもいいところですから、楽しんで暮らしていただけますと」

 

 唐突にゴクチョーが現れたことでエマとレイアは表情をこわばらせ、セルクはため息をつく中、シェリーだけは目を輝かせていた。

 

「遭遇できるなんてラッキーです!ちょーっといいですか、ゴクチョーさん!」

「ここ、ずいぶん古い建物ですよね。ゴクチョーさんは長い間、何度も囚人を

迎え入れてるんでしょうか?過去に捕まった囚人はどうなったんでしょう!?この牢屋敷ってなんなんですか!?ぜひ教えてくださ〜い!」

「……やれやれ、まあ、わからないとこばかりなのも可哀想ですよね」

「あまり時間は取れませんが……、ほんの少しだけ教えてあげましょう」

 

 そこからゴクチョーは、牢屋敷についての説明をし始めたが、途中で打ち切り、逃げるようにさっさと飛び去っていった。

────わざわざ説明する必要はないでしょう?どうせ知っているんですから

「牢屋敷……大魔女……大切な情報な気がする。魔女図鑑にメモしておこかな」

「もっと、ゴクチョーさんのお話聞きたかったですねー、でも大収穫だった気がします!」

「大魔女か……、やっぱり気になるような……」

「どうしたんだい?セルクくん」

「いや、なんでもないよ。大丈夫」

 

 その後、レイアと別れて別の場所に行くことにした。

 

──────────────────────────

 

 2階で入ることのできる部屋は図書室と、娯楽室の二つがあるらしい。どちらを先にするか迷ったが、最終的に先に図書室の方へと踏み込んでみることになった。

 そこには本棚がずらりと並び、古い紙のにおいが漂う場所だった。

 

「どんな本が置いてあるのかな?」

 

 エマは適当な本を手に取り、ぱらぱらと中を見てみるが、読むことができなかったようで、困った顔をする。

 

「うーん……、読めない……」

「私たちの国の文字じゃありませんね。そういえば、この牢屋敷って、どこの国にあるんでしょうね?というか……まさか異世界!?」

「そっ、そんな絶望するようなこと言わないで!」

「どんな文字なんだ?……うーん?この文字どこかで見たことあるような……」

「え!あるんですか!セルクさん!」

「ないような……」

「もー、どっちなんですか〜?」

「わからないな……、思い出せそうにない……」

 

 シェリーも本棚の本を取り出して、何気なくぱらぱらとページをめくっていく。すると、シェリーが驚いた表情になる。

 

「エマさん!セルクさん!これ、これ見てください!」

 シェリーが手招きしたので、セルクとエマもページを覗き込む。その開かれたページには血文字で【たすけて】と書かれており、それを見たエマは息を飲んだ。一方セルクは────。

 

(……っ、また右手が……)

 

 セルクはとっさに右手を押さえる。幸いなことにエマとシェリーは血文字に夢中で気づかれてはいなかった。

 

「これって、前捕まってた魔女候補の子たちの誰かが書いたんですかね!?」

「そうかも……」

「高まりますね〜!」

「ちっとも高まらないよ!」

「他の本にも、こういうメッセージが残されていたりするんですかね。ちょっと調べてみませんか?」

 

 エマはシェリーの提案に────、賛成した。

 

「そうだね。何か脱獄に役立つヒントが見つかるかもしれないし」

「脱獄?2人は脱獄するのか?」

「うん、そうなんだ。セルクくんも協力してくれないかな?」

「あ、ああ、わかったよ。協力する」

 

 セルクはそう答えたが、その顔には影がさしていた。

 

(脱獄……、俺が帰るところなんて外にあるのか?)

(それに……、メルルに言われたこともあるし……)

 

 幸か不幸か、エマとシェリーは本を探すのに夢中で、セルクの状態に気づくことはなかった。気を取り直し、セルクも本を探し始める。

 

「読めない本ばっかりだね。特にメッセージとかもないみたいだし……」

 

 特に収穫もないまま時間だけが過ぎて行く。そうして、エマは何冊目かの本を開いた。

 

「ひっ……!?」

「エマ?どうしたんだ?」

「こっ、これ……!またさっきみたいな文字が!」

 

 そう言われてエマの持つ本を、覗き込んだセルクとシェリーは、そこに血文字で【憎い】と書かれていることを確認した。

 

「おお、ワクワクしてきましたね!」

 

「こっちにも何か書かれてるみたいだぞ?」

 

 ページの端には同じく血のような文字で左向きの矢印が書かれていた。

 

「なんの矢印だろう?」

「うーん……次のページを見ろってことでしょうか」

 

 シェリーの言うとうりにページをめくったエマの顔から血の気が引いた。そこには今までのような短い一言ではなく、びっしりとした文章が綴られていた。

 三人で文字を読み進めてみるが、文字が掠れたり、滲んだりしていて、ところどころしか読み取れなかった。それでもなんとか読み進めて行くと、それはやはり前に捕まっていた少女が残したもののようで、最初は出来事を淡々と記しているように見えたが、次は自分が殺されるかもしれないという恐怖。他の少女への疑念や恨み言が、延々と続いていた。

 そして、次の一文を読んだエマが短い悲鳴をあげた。

 

今これを読んでいるお前も死ねばいい

 

 その文を読んだ途端にページが勝手にめくれ、本が肥大化しエマを頭から飲み込もうとするように浮かび上がる。エマは尻餅をつき、動けないでいる。

 

「あ……ああ……」

「っエマ!!」

 

 このなんとも恐ろしい状況で体が動いたのは、一種の奇跡だったのかもしれない。咄嗟にエマの前に立ち、庇おうとする。

 本はお構いなしにセルクを飲み込もうとするが────。

 

 ……バタン。

 

 突然、本が何かに気づいたように硬直したかと思えば、何事もなかったかのように本は閉ざされた。

 目まぐるしく変化する状況で、全員が呆気に取られていたが、一番最初にシェリーが喋り出した。その表情は先ほどまで明らかに命の危機だったというのに、キラキラしていた。

 

「すっごーい!今のどうやったんですか!?」

 

 セルクには、その質問に答える余裕はなかった。セルク自身にも本がなぜあのようなことをしたのかわからず、思わず右手を見つめた。

 

「おーい、セルクさ〜ん?」

「……っ、……さあ……俺にもわからない……」

「う〜ん、よくわからないと……。謎を解決しようとしていたのに、むしろ増えてしまいましたね!」

 

 セルクはどこか嫌な予感を感じずにはいられなかったが、エマが座り込んでいたことを思い出し、振り返って手を差し伸べる。

 

「エマ……、大丈夫か?」

「う、うん……、ありがとう」

 

 エマはセルクの手を取り、立ちあがろうとするが、上手く立ち上がれないようだった。エマの足を見てみると震えていて、直ぐには立てないかもしれない。

 

「あ、あれ?上手く立てない……」

「足が震えて上手く立てないみたいですね……、どこか痛いところはありませんか?」

「えっと……、どこも痛いところはないかな」

「それなら、恐怖で足がすくんで立てないだけか?とにかく、大事にはなっていないみたいだな」

 

 エマが怪我をしていないことにセルクは安堵する。しかし、このままではしばらくの間、動けないかもしれない。

 

「しばらくは動けないかもな、俺が抱き抱えるよ」

「えっ?わわっ!?」

 

 セルクはエマの返答を待たずに抱き抱えた、もちろんお姫様抱っこで。エマはまさか、お姫様抱っこされるとは思っていなかったのか、顔が真っ赤だった。

 

「大丈夫か?エマ、顔が赤いぞ?」

「だ、だいじょうぶだよ!本当に……、うぅ……」

「本当に大丈夫か……?」

 

 エマは口ではそう取り繕うが、実際には胸が高鳴っていた。エマにとって異性にこのようなことをされるのは、初めてのことだった。

 

(さっきのセルクくん、かっこよかったなぁ……、それになんだかいい匂い……)

「──あら、物音がしたと思ったら……、面白いことになっているわね」

「マ、マーゴちゃん!?ここにいたの!?」

 

 エマがセルクの匂いをくんくんしていると、並ぶ本棚の影からマーゴがひょっこりと顔を覗かせた。

 

「ええ。騒がしい声が聞こえたから、ちょっとのぞきにきたの」

「う、うるさくしてごめん」

「いいのよ。読める本も見当たらないし、いいものを見せてもらったもの」

 

 そういうマーゴの視線には、セルクに抱っこされるエマが写っていた。それに気づいたエマがまたあたふたし、それを見たマーゴが愉快そうに微笑んだ。

 

「うふふ、初々しいわね♡」

 

 そう言いながら、図書室の奥にふらりと歩いて行く、森の中で飛んでいく蝶に誘われるように三人はついていってしまう。

 読書スペースである小さな机には、カードが広がっていた。

 

「これは……、タロットカードか?」

「ええ。娯楽室に置いてあった殻もらったの。もともと好きだったのよ」

「あなたたちのことも、占って差し上げましょうか?」

「マーゴさんはもしかして、タロットカードで魔法を使うんですか?」

 

 マーゴは椅子に腰掛け、妖艶に微笑む。

 

「いいえ。なんでそんなことを聞くのかしら?」

「私、みんながどんな魔法を使うのか気になっちゃって、気になっちゃって!」

「うふふ、可愛いわね」

 

 くすくすと笑いながらマーゴはそう言う。すんなり教えてくれるのかと思ったが、笑顔のままマーゴは首を横に振った。

 

「でも、ごめんなさい。どんな魔法が使えるのか教えたくないわ」

「この牢屋敷でこれから殺人事件が起こるとしたら、手持ちカードを晒すのは、愚かだと思わない?」

「殺人事件なんて、起こるはずないよ」

 

 エマはもう立てるようになったのか、セルクに降ろしてもらうと、マーゴの言い分に、むっと眉を寄せる。それを見たマーゴは一枚のカードを表に返し、三人にかざして見せた。

 

「【塔】の正位置……。なかなか不吉な意味があったような……」

「……近い未来、誰か死ぬでしょうね」

 

 たかが占いだというのに、マーゴの言葉には妙に説得感があった。

 

「あなたたちも身辺に気をつけて。誰が殺意を抱いているかわからないもの」

「そんな……みんなを疑うようなこと……」

「あら。昨日知り合ったばかりなのに、ずいぶん優しいのね。甘い、と言ったほうがいいかしら」

「お互いのことをまだ何も知らないのに、どうして信じられるの?」

「それは……で、でも!少なくともボクは、殺人をするような子はいないと思う!」

「あなたが唯一親しかった二階堂ヒロは、誰よりも早く殺意を剥き出しにしていたようだけど?」

「……っ」

 

 マーゴはあくまで満面の笑みを崩さない。それなのに、言葉は鋭利な刃物のようにエマに立つ突き刺さる。

 

「あなたはどう思っているのかしら?」

 

 次にマーゴはセルクに質問する。セルクのことを見つめる目は、心の奥底を見透かそうとしているように思えた。

 

「俺は……、どうなんだろうか。まだ自分でも踏ん切りがついていないんだ」

「あら、思っていたよりも優柔不断なのね」

「すまない……」

 

 穏やかではない空気が、周囲に漂う。察したようにシェリーが三人の中央に立った。

 

「あーっと、そろそろ行きましょうか、エマさん、セルクさん!」

「うん……」

「ああ……」

「お邪魔しましたっ!またマーゴさんのこと詳しく聞かせてくださいねっ」

「ウフフ……占ってほしかったら、いつでも言ってちょうだい」

 

 三人は図書室から出る、セルクとエマは落ち込んでいるようだった。シェリーがそんな二人に気を遣ったのか、次の場所に行くように声を上げた。

 

「さあ、気を取り直して、次の場所に行ってみましょう!」

「……そうだな、いつまでも気分を沈めてはいられない」

「うん、次の場所に行ってみよう」

 

 シェリーの言葉に賛同し、三人は次の場所へと向かうのだった。

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