星見プロ雪合戦   作:ねむれすねむれす

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 くじ引き(ガチ)の結果、莉央、芽衣、愛チームを引いたので星見プロ雪合戦(ガチ)になります。

 ※First Battleは2025年の正月ごろに投稿していたやつです。


First Battle


 

 アイドルとは戦いの歴史である。

 

 美しく心の底から聞きほれるような歌、芸術的な表現力で視線を外せなくなるダンス、誰しもが釘付けになる抜群のプロモーション。他にもお笑いや演技等、幅広い分野で芸術活動を行うアイドルだが、その裏にあるのは熾烈なリソースの奪い合いである。

 

 例えば仕事。限られた供給者から、いかに気に入ってもらって、仕事をもらい受けるか。

 

 例えばファン。限られた人の中からいかに自分を見つけてもらって、そして自分を推してもらうか。

 

 答えは一つじゃない。誰しもが同じ課題に向き合い、自分なりの解決方法でその戦いに挑み、制し、破れてきた。

 

 そして昨今、Venusプログラムの発足により、今まで表に出ていなかったアイドルたちの戦いは目に見える形で現れるようになった。

 

 ライブバトルでの競り合い、正面からぶつかって流す汗、奇策に転じ勝利を掴む姿、幾たびの涙がそこに生まれ、そして幾たびの笑みがそこに溢れる。

 

 アイドルとは戦いの歴史である。

 

 そして今日もまた、一つの戦いの火蓋が切られたのだった。

 

 

 

 

 

 XXX

 

 

 

 

 

「ということで、星見プロ雪合戦開幕です。ぱちぱちぱちー」

 

「導入が長いわ」

 

「すみません……」

 

 長い台本を読み終えた牧野は、開口一番に発せられた莉央の言葉に撃沈した。自分だってそう思っていたのだけど、台本に書いてあったから仕方ないじゃないか、そんなことを思いつつ、周囲の反応に耳を澄ませる。

 

「そもそも、戦いの歴史というのは正しいのでしょうか?確かに納得できる箇所はありますが、戦いと表現するのは少し違和感があります」

 

「沙季ちゃんの言う通り。アイドルの歴史は、そんなに長くない。戦いの歴史、と言うには、時期尚早」

 

「すみません……」

 

 再び牧野は項垂れた。確かにアイドルオタクの前で知ったような発言は止すべきだった。だけど台本なのだ。これは台本に書いてあったのだ。牧野は悪い笑みを浮かべながらスマホを構えていたkanaから影になるように移動しつつ、一人呟く。

 

「でもー、こころはマネージャーさんの言っていることもわかりますよー。私たちも常日頃から戦ってますからね」

 

「こころ……!」

 

 やっとフォローしてくれる仲間が見つかって牧野は目を輝かせた。こころはなぜかウィンクしていた。どういうことだろう。

 

「そういえば昨日こころは学校休んでましたわね」

 

「なっ!そ、そんなわけないじゃないですかー。ちゃんと行きましたよ!五時間目からだけど……」

 

「こころ?」

 

 莉央の声と共に、こころからのウィンクが増えた。牧野はやっと察した。フォローしろということだろう。

 

「こころ、学校には行こう」

 

「裏切り者!鬼!悪魔!すけこまし!女誑し!」

 

「そんなことはないだろう」

 

 自分が女誑しだったら、彼女いない歴イコール年齢になることもなかったはずだ。……いや一人だけ心当たりあるけど、これはそっとしておこう。

 

 そんなことを思っているといつの間にか部屋の湿度が上がっていることに気づいた。誰かが加湿器でも付けたのだろうか。

 

「ともかくだ。もう一度説明するけど、星見プロの共通の動画チャンネルで動画を撮ることになった。その一環として今集まってくれたメンバー、グループも違う皆で雪合戦をしてもらいたいと思う」

 

「やったー!雪合戦だー!」

 

「皆で一緒に遊べるなんて光栄です!私も一生懸命やりますよー!」

 

「……私帰っていいですか?」

 

 手を上げて喜んでくれている芽衣と愛とは対照的に、franは至極面倒くさそうに呟いた。

 

「どうか参加お願いできませんか?」

 

「メリットがないですね。残念ですが、私はパスということで」

 

「あれれー?山田さーん、負けるのが怖いんですかー?」

 

「は?」

 

 挑発じみた発言が飛ぶ。さすがに止めようとしたが、それよりも先にfranが口を開く。

 

「は?何?本気で言ってんの?私が負けるわけないでしょ」

 

「じゃあなんで逃げるんですかー?」

 

「聞いてなかった?メリットがないって言ってんのよ」

 

「はいはい、言い訳乙。マネージャー、この弱虫のことはどうでもいいからさっさと始めようよ」

 

「……ほんと腹立つわねこのガキ。そんな見え見えの挑発で参加するわけないでしょ」

 

「あ、そういえばfranさん、優勝賞品としてスポンサーさんからナッツ一年分届いてます」

 

「乗ったわ」

 

「ナッツにつられんのかよこいつ……」

 

 途端やる気になったfranと呆れたようなkanaを苦笑いで見つつ、牧野は再度説明のために口を開いた。

 

「参加メンバーはここにいる俺以外のメンバー。雫、沙季、すず、芽衣、莉央さん、愛、こころ、franさん、kanaさんの九人。一チーム三人で三つのチームを組んで戦ってもらう」

 

「なお、人選はくじ引きでランダムに決めるので、どんなチームになるかはお楽しみだ」

 

「雪合戦の会場は三枝さんの伝手で特設会場を用意してもらった。十全に楽しめる環境は整っていると思う」

 

「細かいところは追々説明していくとして、とりあえずくじ引きしていこうか」

 

 

 

 

 

「おかしいですわ!こんなのズルですわ!不正ですわ!」

 

「そうだそうだー!」

 

 くじ引きが終わり皆それぞれのチームに分かれる。その中でとある一チームが牧野の前に移動しこれ見よがしに手を上げ、机を叩き、反対と書かれた旗を掲げていた。

 

「すず、こころ落ち着いてくれ。雫もその旗を降ろしてくれ。どこから持ってきたんだそれ……」

 

「自作、頑張ってつくった。見て」

 

 旗の裏地にはデフォルメされたサニピメンバーが描かれており、傍目に見ても可愛い。じゃあ表面の反対の文字は要らないだろう。

 

「サニピメンバーは、今日は私だけ、なのでこれがサニピの総意」

 

「勝手に総意にしないでくれよ……ともかくだ。雫もこれがくじ引きの結果なんだから勘弁してくれ」

 

 反対の旗が強く上がった。嫌だということだろう。

 

「マネージャーさん、もう一度他のチームメンバーを見てほしいんですけど、本当にこれで大丈夫ですか?」

 

 こころの言葉に、牧野はもう一度他のチームに目を配る。

 

 なんでこいつと同じチームなんだよと文句を付けているkanaと、買い言葉で言い争いをしているfran、その二人を宥めつつ、困ったような表情をしている沙季。

 

 頑張ろー絶対勝つぞーと元気よく手を上げた芽衣と、それに乗っかり勢いよく腕を上げ側にある置き物を倒した愛、それを見てはしゃぎすぎないようにと注意する莉央。

 

 ……確かに戦力差で考えるとこれは問題かもしれない。

 

「とはいえ、くじ引きの結果だからなぁ……」

 

「じゃあマネージャーが入ってくださいまし。それでバランスは取れるんじゃありませんこと?」

 

「名案、ナイスすずちゃん」

 

 反対の旗が裏返る。サニピの笑顔が眩しい。

 

「いやそれは駄目だ。星見プロの公式チャンネルに俺が映っては駄目だろう」

 

 旗が裏返った。反対の文字が痛い。

 

「じゃあどうするんですか?何か良いアイデア出さない限り一生こころたちはここを動きませんよ!」

 

 そうだそうだーと声と旗が上がる。

 

 まぁでも、こころたちの言っていることは最もだ。企画的にもボロボロにやられる姿は良くはないし、誰も喜ばないだろう。

 

「あ、これなら良いかもしれない。――――」

 

「なるほど。名案ですわね」

 

「ほうほう、それは何とも遊び甲斐がありますね」

 

「うん、それならオッケー」

 

 何とか三人に納得してもらい牧野は安堵した。雫の旗も降ろされ一安心だ。

 

 

 

 

 

 XXX

 

 

 

 

 

 その後改めて牧野に連れられ、九人は特設会場へと移動した。都心から少し離れたそこには、そこらかしこに雪が積もっており、歩くのでさえ苦労するほど。とはいえ、湿り気も十分で雪合戦の雪玉を調達するのには苦労はしなさそうだ。

 

「怪我が怖いわね……」

 

 莉央はその会場を眺め、ぽつりと呟いた。

 

 自分たちはアイドルだ。生半端なレッスンは行っていないため、運動神経には一定の水準には達しているとは思う。だけど、雪という特殊な環境で体を動かすことに慣れている人は少ないはずだ。

 

 莉央自身、地元の岡山では雪が積もること自体が珍しいものではあったのだ。ましてやそんな中で走り回るなんて真似一度もやったことがない。

 

 ……だからこそ、ちょっと楽しみなんだけど。

 

 そんな内心は置いておいて、莉央は今回の同じチームメンバーである二人に声を掛けた。

 

「愛、芽衣、はしゃぐのはいいけど、足元には気を付けなさい。転ばないようにね」

 

「はーい!でも、芽衣、運動神経はいいからだいじょ……わぁ!!」

 

「芽衣ちゃん!?大丈夫!?」

 

「えへへ、ちょっと転んじゃった。この辺り坂道になっているんだね」

 

「もう、気を付けて…ってわぁ!芽衣ちゃん引っ張らないでーー!!」

 

「一緒に雪にまみれるのだー!」

 

 警告も虚しく早速はしゃいでいる二人を見て、莉央はため息を吐きそうになるのを堪えた。

 

「ま、今日くらいは楽しみましょうか」

 

 

 

 

 

 XXX

 

 

 

 

 

「フレンドリーファイアーは有りですかー?」

 

「なしでお願いします」

 

「ちっ」

 

 雪合戦はチームごとに分かれた開始位置で開始するらしく、それぞれのチームが個別に案内される。

 

 案内された位置で再度ルールの説明を受けていたkanaはいら立ちを込めて舌打ちをした。

 

「せっかくこいつに合法的に雪を当てれて笑えるチャンスだったのに、なんで同じチームになるかなぁ」

 

「こっちの台詞よ。というかkana、これも動画に乗るかもしれないのよ?みっともない発言はしないでくれる?」

 

「撮影は定点カメラとさとみでしょ?さとみには素がバレてるし、編集が入るから大丈夫だっつの」

 

「って言ってますけど、どうなんですマネージャーさん?」

 

「できれば編集しやすいよう仲良くやってもらえると……」

 

「kanaたちは仲良しですよー?ねー?」

 

「なかよしでーす」

 

 無表情でピースサインをしあうfranとkanaの姿に、牧野の苦笑いを零した後、頼んだぞと言いたげに沙季を見つめる。それを正しく受け取った沙季は強く頷いた。

 

「せっかくですし、作戦会議しませんか?この場所の地図も貰いましたし、これを確認しながら…」

 

「めんどいんでパース」

 

「同じく」

 

「で、ですが、やっぱり勝つためには色々と戦略を練る必要が……」

 

「kanaたち運動は得意なんでー。これくらい余裕なんですー」

 

「ま、そういうことよ。悪いわね」

 

 沙季は困った表情を浮かべて、牧野を見る。さすがに目が余ったので牧野もフォローを入れることにした。

 

「……一応言っておきますが、雪合戦とはいえこれは仕事です。望んだものが撮影ができなかったとこちらが判断した場合は企画自体が没になる可能性もあります。そこは二人とも理解しておいてください」

 

「……悪かったわね。kana、ちゃんとやるわよ」

 

「指図されるのがムカつくけど、まぁいいわ。その代わりしっかりバズらせてよね?」

 

「ぜ、善処します……」

 

 いきなりたじたじになった牧野に沙季は頭を下げた後、再度地図を広げながら口を開いた。

 

「では早速、会場から確認していきましょう」

 

 

 

 

 

 XXX

 

 

 

 

 

 皆の案内が終わり、牧野は会場近くに設営された放送室へ入る。マイクとスピーカーが正常に流れることを確認した後、牧野は最後にもう一度説明を繰り返した。

 

「星見プロ雪合戦は星見プロダクション所属のアイドルたちが行う雪合戦になります。ポイント制のチーム戦になっており、チームはくじ引きでランダムに決め、特設会場を用いて行う本格的な雪合戦です」

 

「雪玉を他チームの誰かに当てれば、当てたチームが一ポイント獲得。当てられた人物は即時脱落となりますので、会場の外へ退出してください」

 

「自チーム以外の他チームの生存人数がゼロになった場合、試合終了となり、生き残っていたチームの生存者一人につき二ポイント入ります」

 

「制限時間は三十分。制限時間を越えると試合終了になり、生き残っていた生存者一人につきそのチームに二ポイント獲得できます」

 

「これらのルールのもと、試合終了時の最終的なチームのポイントで勝利チームが決まります」

 

「また、試合終了時のポイントが同数だった場合、同数チームにおいて生存者が多いチームが勝利になります」

 

「なお、生存状態で会場外に出てしまうと失格となりますので、ご注意ください」

 

「長らくの説明失礼いたしました。では、星見プロ雪合戦――」

 

 

 

「――開幕です」

 

 

 

 

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