星見プロ雪合戦   作:ねむれすねむれす

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【星見プロ雪合戦 チーム分割】

 

A kana、fran、沙季

B 莉央、愛、芽衣

C すず、こころ、雫

 

 

【星見プロ雪合戦 ルール】

 

・ポイント制のチーム戦。

・雪玉を敵チームに当てれば、当てたチームが一ポイント獲得。

・雪玉を当てられた人物は即時脱落。すぐに会場から出ないといけない。

・自チーム以外の他チームに生存者が一人もいない場合は試合終了、生存者一人につき二ポイント獲得。

・制限時間は三十分。制限時間を越えて生き残っていた場合は生存者一人につき、二ポイント獲得。

・ポイントが同数の場合は、試合終了時に生存していたチームメンバーが多いチームが勝利。

・会場から出てしまうと失格。

 

〇特殊ルール(他チームには未通告)

・すず、こころ、雫チームには特例としてとあるハンデが与えられている。

 

 

【星見プロ雪合戦 会場】

・人工雪で作られた特設会場。東京ドーム五個分程度の大きさ。一面の雪模様ながら、雪壁(マット内臓)や段差も多く存在し、身を隠す場所には困らない。マップ中央には広大な広場が広がっている。奥に行くにつれて勾配が大きくなっており、最奥の高台からは中央の広場が良く見える。

 

 

 

 

 XXX

 

 

 

 

 

「星見プロ雪合戦――――開幕です」

 

 

 

 

「愛ちゃん、いくよーー!!」

 

「任せてください!」

 

 開幕と同時に動き出したのは芽衣と愛だった。待っているのは性に合わないとばかりに、どこだどこだーと声を出しながらあちこちを探し回る。

 

 莉央はそれを横目に、二人の死角になっている場所を警戒しつつ、二人についていく。

 

 このチームになってから、莉央は考えていることがある。それは、このチームが過剰戦力だということだ。愛の運動能力と純粋な力強さは同じリズノワとしてよく知っている。それに加え、芽衣の天才的な運動能力の高さも今まで一緒に暮らして、仕事をしていくうえで十分に理解できた。チーム分けするならば、この二人は確実に分断するべきだろう。そうでないと確実にゲームにならない。

 

 とはいえ、何の因果かくじ引きの結果こういったチームになってしまった。くじ引きの再抽選はさすがに皆のモチベーションに関わるので無理として、だったらこのチームでいかに見せ場を作り、皆を楽しませることができるか。

 

 そんな思いの元、莉央が考えたのは、芽衣と愛には好きに動きまわってもらいつつ、自分が二人のフォローに回ることだった。合理性も戦略性もないこの作戦ならば、皆で楽しみつつ、そして同時に勝利も狙えると思っていた。

 

(まぁ相手にはfranさんもkanaさんもいる。こころも必ず何かを仕掛けてくるだろうし、そう順調にはいかないでしょうね)

 

 でも最後に勝つのは私たち。莉央はそんなことを思いつつ、足を進めていると、ふと視線の先に動くものが目に入った。

 

「げっ」

 

「あ、すずにゃん!」

 

 視界の先にいたのはクリーム色のロングヘアを揺らしたすずの姿。その姿が見えるや否や、芽衣は勢いよく追いかけた。

 

「来ないでくださいましーーーー!!!」

 

「ぐへへ、すずにゃん待てー!」

 

 すずも見つかったと同時に、すぐさま身を挺し、元来た方角へ戻っていく。

 

「え!?り、莉央さんどうしましょう!?」

 

「芽衣だけ行かせるのも心配だわ。私たちも追うわよ」

 

「わかりました!」

 

 

 

 

 

 XXX

 

 

 

 

 

「会場の特性上、奥の高台を制したほうが強い、ねぇ」

 

「はい、あそこからなら中央の広場は見放題です。上から雪を投げることも可能なので、様子見するにも、狙いに行くにしても、そこを取ることが先決かと」

 

「ふーん。mihoみたいなこと言うね」

 

「奇遇ね。同じことを思ったわ」

 

「えっと、それはどういう?」

 

 マップ東部。中間くらいの位置からスタートしたfran、kana、沙季。

 

 沙季はこのチームに入ってからずっと困っていた。マネージャーのおかげで二人が喧嘩することはなくなったものの、元々同じグループだからか、自分だけ疎外感が強い。

 

 加えて、二人は本心を語ってくれないため、彼女たちが考えていることがさっぱり理解できない。沙季はそんな二人の在り方にずっと困っていた。

 

「簡単な話よ。それじゃ、面白くない」

 

「え」

 

「だってさ。せっかく雪合戦しているんだし、面白くしないとでしょ。バズらせるためにもそれは必須」

 

「同意ね。例えば……そうね。中央の広場に陣取ってずっと待ち構えてみるのはどうかしら?高台にいるやつを撃ち落とすとかもよさそうね」

 

「たまにはいいこと言うじゃん。じゃあそれで」

 

 なるほど、面白く。沙季は二人が言った言葉にやっと理解が及んだ。自分が言っていたことが二人に賛同してもらえなかったのは、そこに面白さがなかったから。確かにこれは雪合戦だけど、星見プロ全体で行うバラエティーでもある。面白くなければダメだった。

 

「沙季はどうするの?別に私たちの意見が合わなかったら無理に合わせる必要ないけど」

 

「いえ、私もやります。忘れてました、遊びは面白くないと駄目ですよね。せっかくですし私も振り切っていきます!」

 

「へぇ?いいこと言うじゃん。mihoよりまともだわ」

 

「同意。じゃあ行くわよ」

 

 fran、kana、沙季は揃って堂々と中央へと向かいだす。

 

 

 

「私が誘導するまでもなかったですねぇ。あ、雫ちゃん、こっちは作戦完了でーす」

 

 

 

 

 

 XXX

 

 

 

 

 

「芽衣、待てですわ!!」

 

「すずにゃん、ハウス!」

 

「私のハウスは芽衣のもとじゃありませんわーー!!」

 

 マップ西部。そこではすずと芽衣の激しい追いかけっこが始まっていた。

 

 お互いに雪の上を丁寧に足を運び、歩幅は少なめにそれでいて早く足を回す。初めは雪道の走り方を事前に教わっていたすずが距離を稼いでいたものの、次第に慣れてきた芽衣に徐々に距離を詰められていた。

 

「すずにゃん、当たれーー!」

 

「雪を投げるのは卑怯ですわ!」

 

「雪合戦だよ?」

 

「そうでしたわね」

 

 芽衣とずっと追いかけっこしていたため、そのことをつい忘れてしまっていた。とはいえ、最も大事なことは忘れていない。すずは、雪を警戒して後ろを振り返るふりをしつつ、追いかけてきている三人の姿を目視する。

 

 作戦通りだと思わず笑みが浮かびそうになった。この先に待っている内容で自分たちが囃し立てられることまで想像すると楽しみで仕方がない。

 

(悪いですけど、この勝負もらいましたわ!)

 

 内心で高らかに宣言したその刹那だった。

 

 ゴゥという重低音と共に、頭の横を何かが通り過ぎる。

 

「え?」

 

 振り返ると、目前にあった雪壁が凹み雪に覆われていたマットがわずかに破れている光景が視界に映りこむ。すずは何があったのかわからず、思わず呆然としていた。

 

「すみません!外しちゃいました!」

 

 声の先に居たのは何かを振り投げたような動作をした愛の姿。ということは、今自分の頭の横を通ったものは愛が投げたものだということだろうか。

 

「次は当てます!」

 

 あれは最早雪玉ではない。弾丸だ。

 

 すずは自らの生のうち、最大の生命の危機を感じ取った。

 

「いやですわーーーー!!!!」

 

「えいや!!」

 

 ドスッという何かが突き刺さる音が、すずの耳に響き渡る。心底おぞましいそれに、すずは全身の毛が逆立つのを感じ取りながら、全力で駆けた。

 

「当たれー!」

 

 猛攻はそれだけに収まらない。芽衣の声と共に飛来したそれを、すずは横へステップを挟み、躱す。愛ほどではないものの速度のある雪玉。だけど、すずにとってはその玉は避けやすいものだった。

 

「すずにゃん、こっち見ないで避けてるー!目が後ろについているの?」

 

「魔法ですわ!」

 

「えいや!」

 

「ぎやぁぁぁ!!」

 

 一瞬調子に乗ったすずの横に弾丸が飛ぶ。恐怖だった。

 

「……芽衣、おそらくすずはあなたの声を元に避けているわ」

 

「あ!なるほど!莉央ちゃんありがとー!ふふふ、すずにゃんもうお終いだよ?」

 

「いじめですわぁぁぁぁ!!!!!」

 

 遠方より飛んでくる弾丸のような雪玉、そして投げるときに掛け声を出さなくなった芽衣の雪玉をなんとか避けつつ、すずはなんとか逃げ回る。

 

 そして、逃げ回ったその先、ようやく光明が見えた。

 

「この先は広場ね。もう逃げ場はないはずよ」

 

「ふふ、すずにゃーん。どこかにゃー?」

 

 すずに遅れて三人も広場へと出る。雪景色に染まった視界。しかし、そこには逃げたはずのすずの姿はなかった。

 

「あれ?すずちゃんいないよ?」

 

「おかしいわね……」

 

 すずが広場に移動したのは確かに見ていた。だけど実際に広場にすずの姿はない。その事実に莉央は頭を回す。

 

(いや、違うわね。この際考えるべきことはすずが消えたことじゃなくて、何かの罠が仕掛けられている可能性だわ)

 

「愛、芽衣、警戒なさい。何かあるかもしれないわ」

 

「何かってなに……あ!」

 

 芽衣はそのセリフに疑問符を浮かべ、莉央に問いかけようとした。だけど、その瞬間、視界の隅に映る三つの影を捉える。

 

「スリクス……!」

 

 三人の影、fran、kana、沙季は堂々した様子で真っすぐに視線を向けて、自分らを目にしてにやりと笑みを浮かべた。否、沙季は芽衣を目にして微笑んだだけだった。

 

「……なるほど。すずに誘導されていたのね」

 

 思えばすずが一人で姿を現した時から変だった。チーム戦なのになぜ一人でいるのか、なぜ他のチームメンバーに助けを求めないのか。考えれば不自然な要素はいくらでもあった。

 

 でも、これは思った以上に楽しそうなことになったかもしれない。莉央はわずかに口角を上げた。

 

「えっと、沙季ちゃんいるからスリクスじゃないよ?」

 

「愛、芽衣。全力で挑むわよ。スリクスが相手ならそれくらいしないと勝てない」

 

「スリクスじゃないよ?」

 

「わかりました。莉央さん、芽衣ちゃん、スリクスに勝ちましょう!」

 

「……スリクスなのかな?」

 

 芽衣は困惑していた。

 

 

 

 

 

 XXX

 

 

 

 

 

「うえぇ……なんとか逃げ切りましたわぁ……」

 

 隙をついてこっそり広場から脱出したすずは合流地点である高台へと戻ってくる。そこにはすでにスタンバイしている雫とこころの姿があった。

 

「すずちゃん、グッド。さすが」

 

「やられるかと思いましたわ……」

 

「さすがはすずにゃんですね!お見事の働きでしたー!」

 

「こころがこっち側に来るのを嫌がったのがよくわかりましたわ……」

 

 すずはげっそりとした様子で雫の横に座り込む。対戦相手は全員、下の広場にいるのだ。警戒する必要はなかった。

 

「後は、任せて」

 

 ガチャリという金属音を立てつつ、雫はそれをしっかりと構える。

 

(おそらく、チャンスは最初の一度っきり。ならば、そのタイミングで、確実に仕留める)

 

 真っ白な雪景色の中、黒く輝くそれは歪に光っていた。

 

 

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