【星見プロ雪合戦 チーム分割】
A kana、fran、沙季
B 莉央、愛、芽衣
C すず、こころ、雫
【星見プロ雪合戦 ルール】
・ポイント制のチーム戦。
・雪玉を敵チームに当てれば、当てたチームが一ポイント獲得。
・雪玉を当てられた人物は即時脱落。すぐに会場から出ないといけない。
・自チーム以外の他チームに生存者が一人もいない場合は試合終了、生存者一人につき二ポイント獲得。
・制限時間は三十分。制限時間を越えて生き残っていた場合は生存者一人につき、二ポイント獲得。
・ポイントが同数の場合は、試合終了時に生存していたチームメンバーが多いチームが勝利。
・会場から出てしまうと失格。
〇特殊ルール(他チームには未通告)
・すず、こころ、雫チームには特例としてとあるハンデが与えられている。
【星見プロ雪合戦 会場】
・人工雪で作られた特設会場。東京ドーム五個分程度の大きさ。一面の雪模様ながら、雪壁(マット内臓)や段差も多く存在し、身を隠す場所には困らない。マップ中央には広大な広場が広がっている。奥に行くにつれて勾配が大きくなっており、最奥の高台からは中央の広場が良く見える。
XXX
面白いことになったじゃない。とfranが笑みを浮かべていられたのは最初だけだった。
遠方より飛来した雪玉が近くの壁に突き刺さる。余裕を見せている暇はないとすぐさま気づいた。
「kana、沙季!分散なさい。集まっていては格好の的よ!」
「わかってるつーの」
「はい!」
franはすぐさま二人に指示を出し、自らも二人と距離を取る。その間にもブォンと風を切る音と共に雪玉が飛んでくるが、さすがに距離があるのか狙いが甘い。
とはいえだ。いくら雑な投擲でもこの速度で投げられ続けるといずれ当たる可能性がある。franは瞬時に考えをまとめ、声を張り上げた。
「kana、沙季。二人は一度戻って回り込みなさい。こんな広い場所で馬鹿みたいに投げられたら正面から近づくのは不可能よ」
「ちっ、まぁ仕方ないか」
「franさんはどうするのでしょう?」
「私はなるべく引き付けておくわ。動きがあったら伝えるわ」
「了解しました」
「あ、他のちびっ子たち見つけたらどうする?あいつら中々出てこないしどっか隠れているんだろうけど」
「取れたら取っていいけど、基本無視で構わないわ。あの子らが狙っているのって精々漁夫の利くらいでしょう」
「りょーかい」
kanaと沙季が元来た道を引き返し、franは一人残る。その行動を見て、相手にも動きがあった。莉央が愛の背後を警戒し、芽衣が前に出る。愛は依然として投擲要員だ。
「めんどうね……」
franは足元に迫った雪玉をステップで躱しつつ、愛の投擲をじっと見つめる。
(投げる速度は尋常じゃないけど、別にフォームがいいってわけじゃない。あれじゃ力任せに投げているのと同等ね。数投げさせて疲れさせるのがベストだろうけど、時間的猶予もあるわけだしスマートじゃないわね)
肩口に迫る雪玉を半身で避けつつ、ついでに周囲を観察する。
(広場への入り口は三つ。私たちが来た東口と、正面。そして愛たちがいる西口の一つのみ。kanaたちが西口にたどり着けば裏をつけるだろうけど、それは相手も把握済み。となると、私はどうすればいいかしら)
franは雪を集め、自らの雪玉を作りつつ、思考を手繰り寄せる。
すぐさま考えはまとまり、franはもう一度声を張り上げた。
「kana、沙季!作戦変更!広場の三人は無視でいいわ!ちびっ子たちを狙いなさい!」
そう言って持っていた雪玉に黒の布を巻き付け、天高く投げ飛ばした。
franたちが作戦会議が話し合ったことは単純だ。それは分断した時の意思通達をどうするか。そのための手段が雪玉に布を巻き付け上空に投げることだった。
そして巻き付ける布の色ごとに意味も変化する。赤ならば離脱、青だったら援軍要請、黄色だったら危険近づくな。そして黒だった場合は。
嘘。発言を無視しろ。
(さて、どう動くかしらね)
franは再び不敵に笑った。
XXX
「えぇ!?り、莉央さん、どうしましょう!」
「愛、落ち着きなさい」
franの言葉を聞いて、莉央は勝つためにはどうするべきか考えていた。
考える内容はルールの問題。ポイント制とはいえ、このルールにはかなり重要な欠陥があると思っている。それはタイムアップ時の生存点問題だ。
時間切れで一人の生存者につき二ポイント。つまり全員生き残ればそれだけでも六ポイント入る。他のチームが争い合い、お互いに二ポイントずつ入っているケースでも、最終得点は4:4:6でずっと身を潜めていたチームが勝利だ。なので、潜んでいるチームが基本的に有利になるゲームなのだ。
(こころたちのチームに関してはおそらくこれが狙いでしょうね。すずが誘導したのも二チームを潰し合わせるため。あの子たちも中々考えたわね)
三人の評価を上げつつ、莉央は再度思考の海に潜る。
(franさんが危惧したのもこれでしょうね。だから他のメンバーを狙うことを優先させた。自分一人だけ残っているのは私たちの行動を観察するためかしら……)
考えはついたが、いまいち腑に落ちない。それがなぜか考えようとして、声が掛かった。
「ねぇ。芽衣、行ってきていい?」
芽衣の表情を見るとどこか不満そうだ。確かに、彼女にはじっとしていることは退屈だったかもしれない。
(……当初の作戦だと二人に好きにやらせる、だものね)
莉央は一人納得すると、改めて号令をかけた。
「芽衣、愛、相手は一人、確実に仕留めるわよ!」
何を考えているのかはわからない。だけど、私たちはそれを正面から打ち砕くのみだ。
XXX
(ま、そう来るわよね)
自分の方に掛けてきた三人を目にしてfranは納得していた。他のメンバーを探すより目の前の一点を確実に取る。三人の性格を考えると、一番納得のいく選択だった。
(ここで私が隠れたらどうするのかしら?カッコ悪いからやらないけど)
そんなことを思いつつ、franも迎え撃つために雪玉を準備する。愛も確実に当てるため接近してきているため、遠距離射撃には気を遣う必要はない。
(うまくやりなさいよ。kana、沙季)
franのオーバースローと共に戦いの火蓋は落とされた。
「くらえーーー!!」
「当たらないわ」
芽衣の投げ方はすごく独特だ。しかし、悪いというわけではなく持ち前の運動神経が無意識的に作り上げたフォームのため球速も出る。だけどそれ以上に、そのフォームの影響で変なスピンがかかっていることがある。
franはそのことにいち早く気づくと、あえて大降りに避け、自らも雪玉を投げ返す。当たりはしないものの、動きを一瞬止めるだけで構わない。
「やー!!」
「っ!」
愛はとにかく球が速い。当たったら怪我しそうな雰囲気があるため、こればかりは確実に躱す必要があった。広場にわずかに存在する遮蔽をうまく使いつつ、franは雪玉を躱す。
だけど、一番厄介なのは最後の一人だ。
「はっ」
「ちっ」
なるべく、遮蔽側に身を移動させていたfranの先に雪玉が飛来する。バックステップで躱したものの、遮蔽からまた遠ざかった。背後をちらりと見ると、いつの間にか広場の入り口からは遠ざかれ、隅に追いやられていることに気づく。
(莉央、相手にすると厄介ね)
ただ、一つだけ幸いなのは莉央自身がそれほど本気で参加していないことだろうか。立ち振る舞いにもどこか一歩引いた空気を感じ取れた。
(だけど、このままじゃ終わらないわ)
「これで終わりです!」
ついに隅にまでやってきたfranの視界に、愛が振りかぶっている姿が目に入る。他二人は雪玉の補充で視線を外している。チャンスだと思った。
「愛、後ろ!」
「え?」
franは愛に向け声を掛け、雪玉を構える。愛は言葉通りに背後を振り向き隙を作るが、その一瞬、すぐさまfranの行動に気づいた莉央の構えがfranの目に入った。
「ほんと厄介ね!」
「それはどうも」
投げるのは中断。回避動作に移ったfranの眼前を雪玉が走る。
「もらったー!」
視界に雪玉を持ち宙を飛んだ芽衣の姿が映る。
動作を中断し、無理に体を動かしたためバランスがよくない。そして背後には壁、これ以上避ける場所もない。
だけど、ようやく目に入った二人の姿に勝ちを確信した。
「こっちの台詞よ!」
「はい、一点目ー」
「はっ!」
franはすぐさま回避を諦め、代わりに自らも雪を投げつける。芽衣の背後からはそれぞれ別の軌道で二つの雪玉も迫っていた。
(かっこつけて飛んだのが悪いのよ)
franは撃破を確信し、残り二人の動向に注目する…そのはずだった。
「わぁ!危ない!」
「うそでしょ!?」
芽衣はfranが投げた雪玉に自らの雪玉をぶつけ相殺すると、背後の二つの球を空中で身を逸らし、華麗に回避する。そして見事に着地した芽衣はそのままもう一方の手に握っていた雪玉をfranへと投げた。
ぼすっ
雪が砕ける音がした。
「やったー!franちゃん撃破ーー!!」
「ありえないわ……」
franはそれを呆然と見つめていた。
XXX
「うわ、すごい、アクロバティック」
「なんですの、あのアクション映画みたいな戦いは」
「レベルが違いますよ!雪合戦ならもっとキャッキャウフフしながらやってくださいよ!なんであんなに血みどろの戦いしているんですか!」
「私たちがいれば、瞬殺。きっと一瞬で、出番、終了」
「行かなくてよかったですわ……」
三人は顔を合わせながら、小さく安堵する。ハンデをもらったことはやっぱり正解だった。
「それよりも!雫ちゃん、チャンスです。やっちゃいましょう!」
「ついにお披露目ですわ!」
「任せて。これで、一網打尽。優勝、間違いなし」
そう言って雫はそれを構える。真っ黒で銃のような形状、持ち手の上部位置にホッパーが取り付けられている。
ホッパーいっぱいに雪玉がセットされていることを確認し終えた雫は、銃口を向け、トリガーに手を掛けた。
「行く。くらえ、サニピファイアー」
トリガーが引かれ、銃口から大量の雪玉が発射された。
XXX
その音に真っ先に気が付いたのは莉央だった。ドドドドドドと、生活しているだけでは到底聞こえないはずの駆動音と機械音の繰り返しが耳に響く。
「わぁ!!」
「きゃぁ!!」
「おいそれ反則だろ!」
「愛!出口に向かって走りなさい!」
「あ、はい!」
それと同時に大量の雪玉が広場に集まっていた全員に降りかかった。初動の一発で少なくとも芽衣が当たったのは目に入ったため、莉央はすぐさま愛に指示を出し、自らも広場を脱出に図る。
そう思っていたのだが。
「あっ!」
視界の片隅で、沙季も雪玉に当たっているのが映った。
(このままじゃ逃げ切る前に全員アウトね……ならば、一か八か)
莉央は持っていた雪を構え、高台から覗いていた黒い銃口へと投げつける。
カコンッという金属音と共に、銃口がわずかにぶれ、雪玉が止む。
「今のうちよ!」
少しして再度雪玉の発射が始まったものの、すでに広場には誰の姿もなかった。
XXX
「ごめん、全然当たらなかった。やっぱり私だけじゃ、サニピファイアーは、難しい」
「芽衣と沙季に当てられただけ御の字ですわ。私としては複雑ですけど」
「さすがの莉央さんでしたね!かっこいい……じゃなくて、おのれ莉央さん許さんぞー!」
「本音漏れてた」
三人でがやがや話しつつも、雫は冷静に今後について考える。自分らの切り札はすでにバレた。雪玉はまだまだストックがあるからすぐに補充できるが、こんな武器を持っているとバレたら真っ先にここが狙われる。
「すずちゃん、こころちゃん、プランGで行こう」
「なんですのプランGって?」
「そんなのありましたっけ?」
「プランG。それは――とにかく頑張る」
「精神論ですわ!プランでもなんでもないですわ!」
「全く仕方ありませんねぇ。こころの最良プランを教えてあげましょう!」
「おぉ、さすが。教えてほしい」
「それはですねぇ……ごにょごにょ」
「え、嫌だ」
「こころだけずるいですわ!」
「あーあーあーあー聞こえませーん」
「……でも、他にできることはないかも」
「うぅ……わかりましたわよ!」
すずと雫。こころに別れ、三人もどこかへ移動を始める。
戦いはまだ終わらない。