【星見プロ雪合戦 チーム分割】
A kana、fran、沙季
B 莉央、愛、芽衣
C すず、こころ、雫
【星見プロ雪合戦 ルール】
・ポイント制のチーム戦。
・雪玉を敵チームに当てれば、当てたチームが一ポイント獲得。
・雪玉を当てられた人物は即時脱落。すぐに会場から出ないといけない。
・自チーム以外の他チームに生存者が一人もいない場合は試合終了、生存者一人につき二ポイント獲得。
・制限時間は三十分。制限時間を越えて生き残っていた場合は生存者一人につき、二ポイント獲得。
・ポイントが同数の場合は、試合終了時に生存していたチームメンバーが多いチームが勝利。
・会場から出てしまうと失格。
〇特殊ルール(他チームには未通告)
・すず、こころ、雫チームには特例としてとあるハンデが与えられている。
【星見プロ雪合戦 会場】
・人工雪で作られた特設会場。東京ドーム五個分程度の大きさ。一面の雪模様ながら、雪壁(マット内臓)や段差も多く存在し、身を隠す場所には困らない。マップ中央には広大な広場が広がっている。奥に行くにつれて勾配が大きくなっており、最奥の高台からは中央の広場が良く見える。
※ サニピファイアー
すず、こころ、雫チームに与えられた雪合戦用秘密兵器。マシンガンのような形状でストックの位置にホッパーが取り付けられている。内部に高速回転するモーターが複数取り付けられており、そのモーターの間を雪玉が通ることで発射できる仕組みになっている。連射も可能だが、ブレは大きい。またそれなりの重量があるため、携帯して動き回るにはそれなりに鍛えている人物でないと難しい。通称サニピファイアー(雫命名)。
XXX
(何よあれ)
広場を後にし、愛とも合流した莉央は先ほど広場で目にした黒い銃口について考えていた。
ルールとして事前持ち込みはハンカチとか簡易的なもの以外はなしだったはず。あんなのを持ち込んだらマネージャーが真っ先に気づいて反則になるはずだ。ということは、つまり、あの子たちはマネージャーに許可をもらってあれを使っていることになる。
(そういえばチームが決まってからあの子たちとマネージャーがもめていたわね……。そのときかしら)
要はハンデということだろう。戦力バランスの公平を期すためにもたしかに有用かもしれない。だけど、あれはいくら何でもやりすぎじゃないだろうか。
(愚痴っている暇はないわね。あれをどうするかを考えるのが先決)
遠目から見えただけだが、マシンガンのような形状。あの駆動音と大きさからして重量もそこそこあるはず。携行することは可能だろうけど、移動はしづらいものだと想定する。
(だとすると、使い方はどこかに待ち構えてやってきた相手に射撃する事、ね)
王道の策ならばその配置をあらかじめ察知し、反対から狙う事。だけど、今までの愛の投擲を見ていて莉央は一つだけ思いついたことがあった。
「愛、ちょっと頼まれてくれない?」
「はい!なんでもお任せください!」
話はちゃんと聞いてから承諾しなさい。そんな言葉が浮かんだが今説教している暇はない。
「……まぁいいわ。じゃあ――」
「え、はい。うーん、あんまり自信ないです……」
「愛ならできるわ。自分を信じなさい」
「やってみます」
(私があの子たちのチームなら、あれの配置場所はあそこのはず。ならやるべきことは一つね)
莉央の考えは一貫して変わらない。正面から叩き潰す。
XXX
(さてさて、どう動きますかねー?)
こころは指定の位置に移動した後、手に持っていたそれを試しに構える。
想定以上に重く、これを持って走り回るのは自分には不可能。また、傾けると水滴で故障する可能性もあることから、なるべく平行にして使うように注意された。サニピファイアーは意外と使いずらいのだ。
(残っている相手は莉央さん、愛、そしてkanaさん。できれば孤立しているkanaさんを真っ先に当てて莉央さんたちに狙いを絞りたいんですけど、そううまいこといかないですよねぇ)
こころが待機していたのは、マップ奥の高台に上るための二つの出入り口の一つだ。自分たちがこの武器を持っていることがバレてしまった以上、相手は確実に自分らを狙いに来る。それをサニピファイアーで足止めしつつ、すずと雫にもう一方の出入り口から裏回りしてもらい、仕留めてもらう作戦だった。
(すずちゃんはかなりすばっしこいし、芽衣ちゃんと愛の猛攻からも逃げ切った。雫ちゃんは賢いし急な出来事があっても冷静に判断できる。こころが待ち構えるのが一番適材適所です。決してサニピファイアーを使いたかったわけじゃありませんよ?)
こころは誰とも知れない誰かに嘯きつつ、わくわくしながらトリガーに指を添える。できればkanaさんに当てたい。いでよkana!おいでよkana!
しかし現実は悲しいかな。視界に現れたのは見覚えのある二つの姿だった。
「げっ」
「あら」
「こころ!」
莉央と愛。当てが外れ苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべたこころだったが、すぐさま取り繕いサニピファイアーを構える。
「莉央さん、愛ちゃん、残念ですけど、こころがここにいる以上先へは進めませんよー!」
「へぇこころがそれ持っていたのね。なら加減しなくて済むわ」
「ふふふ、油断していて大丈夫ですかぁ?今のこころはもう以前までのこころとは違います。赤崎こころまーくつーです!」
「じゃあその力、見せてもらおうかしら」
一歩も引かない莉央の姿にこころはむっとした。せっかくだし、日ごろのねちねちとした説教の恨みをここで晴らそう。
こころはそう決めると、悪い笑みを浮かべ、口を開く。
「覚悟してください!サニピファイアー改め、ココロファイアー!着火!」
大きな駆動音と共に、銃口から雪玉が勢いよく飛び出す。この駆動音がすずと雫への合図でもある。因縁の戦いが始まった。
XXX
重ねてにはなるがサニピファイアーもココロファイアーもかなり取り回しが難しい武器である。デメリットとしてはその駆動音の大きさも理由の一つになるだろう。
平面なフィールドや全員の在り処がわかっている状態で使うならまだ良し。だけど、相手の位置関係もわからず、隠れることも多いこのフィールドでそれを使うことは、逆に言えば自分の在り処をひけらかすことにもつながるからだ。
それはつまり。
(お、あっちであの銃使ってんだ。なら、こっちはフリーってことね。ラッキー)
kanaはその銃の位置と、銃を使っている意味。つまり莉央と愛がそっちがいることを瞬時に察知し、笑みを浮かべもう一方の高台の入口へと駆けた。
(誰があっちにいるかは知らないけど、少なくともあのちびっ子たちを仕留めるには私だけでも十分っしょ)
見せ場的には微妙だが、このままゼロ点で負けるのはそれ以上に癪に障る。それに全く眼中になかったちびっ子たちに一泡吹かせられたことにkanaはイラついていた。
(絶対煽ってくるピンク角は確実に仕留める。できれば全員取れるのがベストだけど、莉央たちの状況見てそれは……ん?)
「げっ」
「うわ」
kanaは高台への坂道を登ろうとして、坂の上に現れた二つの姿に気が付く。ターゲットはいなかったものの、良い獲物がいた。
kanaは悪い笑みを隠すことなくひけらかし、二人に声を掛ける。
「ちびっ子たちおはよー!どこに行こうとしてたのかなー?」
「最悪ですわ……一番見つかりたくない相手に見つかりましたわ……」
「挨拶にはー、ちゃんと返さないと駄目だよっ!」
「ひえっ」
kanaの投げた雪玉はすずの真横を通り過ぎる。高さがあるけど、届かない距離ではない。kanaは笑みを深めた。
「すずちゃん、ここは戦おう。逃げ道はないし、こころちゃんもずっと戦ってはいられない。こっちの方が高いから、有利に進められる、はず」
「そうですわね。わかりましたわ」
覚悟を決めた様子ですずと雫もそれぞれ雪玉を構える。
「へぇ?いい度胸じゃん。じゃあ、kanaも行っちゃおうかな!」
それを見てkanaも瞬時に足を踏み込んだ。
XXX
「はははは!見ましたか!これが、これこそがココロファイアーです!」
(見事に調子に乗っているわね)
莉央と愛は、こころが射撃してくるのを見るや否や傍に合った雪壁に隠れ、様子を見計らう。
雪玉とて無限ではないだろう。時間が経つといずれは球切れにはなるだろうが、懸念としてはこの場所にこころ以外の姿が見えないことだ。何かをしようとしていることに違いない。
(なるべく、一瞬で仕留めたい。そのためにも)
「愛、作戦は変わらずよ。私が気を引くから、その間に射抜きなさい」
「うぅ、わかりました……」
愛はこれまでの戦いで一度も雪玉が当たらなかったことに自信を無くしているみたいだった。だけど、愛ならここ一番での活躍は期待できる。だってリズノワで一緒に戦ってきた仲間だもの。信用して当然だった。
「愛、今まで自分が積み重ねてきたものを思い出しなさい。あなたならやれるわ」
「今まで積み重ねてきたもの……」
何かを思い出しているような愛の表情を見て、莉央は小さく笑みを浮かべる。
「タイミングは任せるわ。……頼んだわよ」
莉央は背後を振り返らず、壁の外、こころが待つ坂道の前に姿を現す。
「こころ、もし私に当てれればリズノワのセンターの座も譲ってあげる。私を仕留めて見なさい」
「え、いいんですか?じゃあ遠慮なくいただきまーす!!」
ココロファイアーが火を噴く。それと同時に莉央は駆けた。
今まで積み重ねてきたもの。愛は莉央に掛けられたその言葉の意味を必死に考えていた。
アイドルとして、リズノワとして、色んなことを学んで、色んなことを経験してきた。それが今回の雪合戦にどうつながるのか。
(アイドルとして皆を笑顔にする方法?リズノワとしてステージ立つ覚悟?私が今まで培ってきたものってなんだろう)
愛はいっぱい考えた、ダンス、歌、MC、収録、演技等々、やってきたことをとにかく頭に思い浮かべる。
「くっ!」
「あれれー?莉央さん、今当たりそうじゃなかったですかー?」
「……まだよ。私はまだ、倒れるわけにはいかないの」
「ふふふ、いつまでそう言っていられますかねー?」
(うぅわかんないよ。今まで積み重ねてきたものって何?そりゃ毎日レッスンで体は鍛えているけど……)
そう思ったときに、ふと愛の脳裏にこころとレッスンをしていたときの事が頭をよぎった。
『愛ちゃん、トップアイドルになるには腕立て千回が必要みたいですよ!』
『愛ちゃん知ってます?BIG4のあの人は毎日懸垂五十回しているみたいですよ!』
『愛ちゃん、ダンベルを使うのがトップへの近道みたいです!早速やりましょう!』
(腕立て、懸垂、ダンベル……そっか。そういうことだったのか!)
愛はようやく、その答えに思いつく。莉央さんが言いたかったことがやっと理解できた。
愛は雪を集め、両手で固く握りしめる。今までより大きくなってしまったそれをぐっと握った。
(莉央さん、待たせてしまってすみません!)
愛は心の中で莉央に謝罪しつつ、隙を見てこころの前へと出る。
「愛、もう無駄だよ。私がここで二人を撃つ!」
(私に足りなかったものは自分への信用。そして私が信用しているものは私自身の体だ!)
「えいやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
大胸筋、三角筋、大円筋、上腕三頭筋、他etc...全身の筋肉をフル稼働させた愛は、今まで積み重ねてきた全ての筋力で雪玉を投げ飛ばす。
「え、ちょっと待って、愛それ死んじゃう!!!ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
こころは宙を舞った。
筋肉は全てを解決するのだ。
XXX
「ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
こころの叫びは辺り一面に響き渡り、反対に居たはずのkanaたちまで響き渡っていた。
「げっ、こころやられたのかよ」
kanaは正面に居る二人から目を離し、めんどくさそうにつぶやく。自分がこころを仕留められなかったのもそうだけど、こころが破れたということは莉央と愛がこっちに来る可能性が高いからだ。
「うっ、すずちゃん、ここは私に任せて、逃げて」
「嫌ですわ!雫を見捨てるなんて真似できませんわよ!」
「ダメ!すずちゃんは私たちの希望、ここでやられたらすべてが水の泡。だから、お願い」
「うぅぅ、雫ーーーーー!!!」
「いや雫はもうアウトなんだわ。さっさと外に出ろよ」
「ごめん、すずちゃん」
「雫ーーー!!!」
つい先ほどkanaに当てられダウンしていた雫が手を振りながら会場外へと出ていく。すずはその様子を涙して見つめていた。
「ってかすず、ここからどう勝つ気?莉央と愛、あれもうチートだろ」
「……どうしたらいいのでしょう」
「kanaに聞くな」
kanaは考えていた。ここから自分が勝つためにはどうすればいいか。莉央と愛あの二人を倒すにはどうすればいいか。
「というより、私が言うのもなんですけど、なんで私は見逃されてますの?」
「ポイント考えなよ。kanaがここですずに当てても一ポイント入るだけ、franと沙季は何もしないで落ちたから私たちのチームは二ポイントになる。制限時間まで生き残って生存点を含めても四ポイント。莉央と愛どっちかを当てないと勝てないの」
「……確かにそうですわね」
「すずたちもそれは一緒でしょ?だからせめて共闘しようってわけ」
「え」
すずはめちゃめちゃ嫌そうな表情を浮かべる。kanaは切れそうになるのを堪えた。
「ってことでなんか案出せ」
「と言われましてもそんなもの……あ、もしかするとあれがあればチャンスはあるかもしれませんわね」
「あれ?」
「あの雪玉銃ですわよ。雫はサニピファイアーとか言ってましたわね」
「なるほどねぇ」
あの銃の威力はkanaも広場で目にしていた。確かにあれがあれば莉央と愛にも対抗できる可能性はある。
「あはっ!kanaいいこと思いついちゃった!」
「嫌な笑みを浮かべてますわ……」
二人は作戦を話し合うと、それぞれ別れて歩き出す。
最後の戦いが始まろうとしていた。