星見プロ雪合戦   作:ねむれすねむれす

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 新規投稿分です。相変わらず雪合戦(ガチ)です。
 よろしくお願いします。


勝利と栄光を拳に宿して
今始まるドラマチック


 

 アイドルとは何か。それは彼女たちがステージに立つ以上、切っても切り離せない命題だ。

 

 なぜ小鳥は鳴くのか、なぜ花は芽吹くのか、それと同様に、なぜアイドルは歌い踊り、ステージに立つのか。多くのアイドルがその理由を考え、答えを探して走り続けた。

 

 誰かは言った。アイドルとは、皆のピースを繋げ広めていくことだと。

 誰かは言った。アイドルとは、みんなの道を照らしていくことだと。

 誰かは言った。アイドルとは、戦いだと。

 

 その答えは一つじゃない。答えを探して迷い歩くことも、きっと一つの答えなのだろう。

 

 だからこそ、アイドルが為すべきことは一つだ。それは、どんなことがあろうとステージに立ち続ける事。それが君たちをアイドルたらしめるたった一つの証明なのだから。

 

 故に私はこう述べよう。

 

 アイドルに必要なのは物語だ。君たちの想いは、輝かしいステージの上でしか語ることはできない。

 

 

 舞台裏のドラマが、ステージを輝かせる。

 

 この雪合戦も、ステージを彩るドラマの一つになるだろう。

 

 

 

 

 

 XXX

 

 

 

 

 

「ということで、今年も始まりました。星見プロ雪合戦です。パチパチパチ」

 

「わーい!パチパチパチ!」

 

「どんどんぱふぱふー!」

 

 星見プロのアイドル全員が入っていもまだ広さに余裕がある事務所の休憩室で、牧野はテレビジョンに映っていた映像を止めると、皆に向かってそう宣言した。さくらとすみれはすぐさまその発言に乗ってくれて、笑顔を浮かべ手を叩いて喜んでくれた。

 

 そんな彼女らに雪合戦の資料を渡しつつ、牧野は小さく呟いた。

 

「さくら、すみれ、ありがとう。……みんなももっとノってくれてもいいんだぞ」

 

「そう言われてましても……いきなり事務所に呼ばれて、よくわからない映像見せられたので、正直、困惑してます」

 

「……琴乃、あのナレーション朝倉社長だぞ」

 

「えっ!す、すごいナレーションでした!」

 

「琴乃ちゃんが権力に負けてる……」

 

 琴乃は慌てたように自らの発言を否定し、千紗が小さくぼやく。

 

「どこかで聞いたことのある声やなぁって思うてましたけど……やっぱり朝倉さんやったんやね」

 

「パパ……どうして……」

 

「なんで瑠依ちゃん頭抱えてはるん?もしかしてパパと何かあったん?」

 

「……最近、パパの言っていることがわからなくなってきたの」

 

「大丈夫。皆わかってへんよ」

 

 瑠依は映像を見て頭を抱え、優はそんな様子の瑠依をフォローしてこっそり抱き着く。そんな彼女らを苦笑いで見つめつつ、遙子は牧野に尋ねた。

 

「つまり、お仕事の一環で今年も皆で雪合戦をして動画撮影するってことよね?」

 

「その通りです。今回は前回不参加だった皆を集めています」

 

「あぁだから、この人選だったのね。グループもメンバーもバラバラだし、何の繋がりなんだろうって考えていたわ」

 

「……もしかすると、牧野君の好みかもしれないわね!」

 

「そんなわけないじゃないですか……」

 

 口ではそう言いつつも、怜はちらりと横目で牧野を見上げ、目が合うとすぐさま視線を落とした。その様子を遙子は微笑ましそうに見つめていた。

 

「……えっと、でしたらなぜ私も呼ばれたのでしょうか?私は前回も参加していたのですが……」

 

「なんでだろうね……。もしかして本当に好みで呼ばれたのかも!これが逢引きの伏線!そして二人は禁断の恋に!きゃー!」

 

「渚、違うからな。チーム戦の人数の問題で一人必要だったんだ。それで前回参加メンバーの中からくじ引きの結果、沙季が選ばれたってわけだ」

 

「なるほど。納得いたしました。私も前回は不甲斐ない結果だったので、リベンジの機会ですね!」

 

「そう思ってくれると助かるよ」

 

 一人盛り上がっている渚を落ち着かせ、牧野は沙季に事情の説明をする。後は、と牧野は離れたところで興味なさげにしていたmihoに資料を手渡す。

 

「というわけなので、mihoさんもよろしくお願いします」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「……意外とあっさりしているんですね。もっと何か言われるとばかり思っていました」

 

「失礼ですね。franやkanaが何をしたか知りませんが、私は契約上の真っ当な仕事ならばそこにケチは付けません」

 

「……そうですかね?今まで色々と言われた気も……」

 

「……」

 

「すみません、失礼しました」

 

 黙れと言わんばかりの眼光に、牧野は押し黙り、そそくさとその場を後にする。資料を渡せていないのは後一人だ。

 

「葵も今回はリズノワから一人だけになってしまったが、よろしく頼む」

 

「うん、よろしく。……実は莉央から前回の雪合戦について色々と聞いていたんだ。莉央の雪辱、僕が果たして見せるよ」

 

「……一応だけど、みんなでワイワイやってくれても構わないんだぞ?」

 

「できると思うかい?」

 

 事務所の面々を見渡すが、負けず嫌いや勝負事に全力になる子ばかりが目に付く。今回も和気あいあいとした雪合戦は無理そうだった。

 

「でしょ?ということで、僕も本気で参加するよ」

 

「葵の本気ってなんだか珍しいな」

 

「僕はいつでも本気だよ」

 

「なるほど」

 

 葵の言葉に首肯を返し、牧野は全員の前に再び戻る。がやがやしてきた事務所を一旦鎮めると、改めて声を張り上げる。

 

「チームは前回同様くじ引きで決めます。一人ずつ順番に読んでいきますので、呼ばれた人から前に……」

 

「意義あり」

 

「な、なんでしょうかmihoさん」

 

「前回の反省を思い返してください。くじ引きで戦力差が生まれてしまった。今回も同じ轍を踏む気ですか」

 

「……確かに。ですが、平等にやるには」

 

「くじ引きは確かにいいアイデアでしょう。ですが、少なくとも各グループのリーダーだけは分けるべきかと」

 

「さくらと琴乃と瑠依ですか?それはどうして?」

 

「リーダーだからですよ。今までの経験で皆をどうまとめればいいかはわかっているはずです。例え、戦力差があってもどう対応するべきかわかるでしょう?」

 

 そう言ってmihoは挑戦的な目を各グループのリーダーに送る。さくらと琴乃はお互いに顔を合わせ、今までの自分の振る舞いを思い返し苦笑いを浮かべた。

 

「私そんなリーダーっぽいことしてたかな……」

 

「私もあんまり自信ないかも……」

 

「しゃきっとしなさい!二人は立派にリーダーやっているでしょう!」

 

「なんで言った本人が怒っているんだろう……」

 

 ともかく、と咳払いをしてmihoは言葉を続ける。

 

「戦力を分散させるため、リーダーは分ける。……瑠依もいいわよね?」

 

「え?えぇ構わないわ」

 

「……瑠依、さっきから何を見ているのかしら」

 

「あぁごめんなぁmihoさん。瑠依ちゃんパパの言葉を理解するのに必死やったから」

 

「もう少しでわかりそうなのよ。でもこのビッグバンだけがわからない……」

 

「……わからなくていいわよ」

 

 ともかく全員意見は合致したということで、mihoは再度牧野に向けて口を開いた。

 

「ということなので、リーダーだけは別でお願いします」

 

「わかりました。ですが、今回のチームは四チームです。もう一人のリーダーはどうしますか?」

 

「沙季でいいでしょう」

 

「私ですか?構いませんが、どうして?」

 

「生徒会長をやっていると聞いてます。適任でしょう」

 

「確かにそうですが……皆は私で構いませんか?」

 

 それぞれから賛成意見が飛び交う。異論はなさそうだった。

 

「では僭越ながらリーダーを務めさせていただきます」

 

「沙季ちゃん頑張って!」

 

「なら今回は沙季とは敵同士だね」

 

「そうですね。ふふ、負けませんよ」

 

「ではリーダーも決まったのでくじ回していきます。順番に――」

 

 

 

 

 

 XXX

 

 

 

 

 

「mihoさん、あなたと一緒のグループになるとは思いませんでした」

 

「私もよ。瑠依」

 

 くじ引きの結果で一組三人。計四チームを作った後、それぞれチーム同士で席を離し、自分のチーム同士で話し合っていた。事務所のテーブルの前で向き合った瑠依は少しだけ敵意を見せながらmihoと話す。

 

「……トリエルがサニーピースに負けた際、mihoさんはトリエルには足りないものがあると言ったみたいですね」

 

「えぇ。事実ですので」

 

「今日はそれを持ってきました」

 

「へぇ?」

 

 瑠依は自分の鞄を探ると、そこからいくつかお菓子の袋を取り出す。粉が零れないようにテーブルにティッシュを引き、その上にそれを置いた。

 

「……これは?」

 

「角です」

 

 角と書かれた将棋の駒をモチーフとしたお菓子。mihoがそれを掴むと、ぐにゃぐにゃと形を変える。

 

「こっちもあります」

 

 各、格、郭……。たくさんの"かく"という漢字をモチーフにしたお菓子が袋から出てくる。いつの間にかテーブルは"かく"だらけになっていた。

 

「……くだらない」

 

「あ、これグミなんだね。美味しいかも!」

 

「食べられているわよ。あなたのかく」

 

 目の前に置いてあったかくを手にした渚はそれを口に運ぶ。"郭"はザクロ味だった。

 

「mihoさん、あなたも知っているでしょう?アイドルとは幸せを与えるものよ。食べて構わないわ」

 

「……こんな幸せは学んでないわ」

 

「あ!こっちは桃味なんだ!」

 

 mihoはその様子にため息を零そうとして、代わりに"喀"を飲み込んだ。蜜柑味だった。

 

 

 

 

 

 XXX

 

 

 

 

 

「まぁ……なんや珍しい組み合わせになったんやねぇ」

 

「確かにそうね。全員グループもバラバラ」

 

「友誼を深めるって意味でも仲良くやっていきたいわね」

 

 優、琴乃、遙子は事務所の会議室の一室を借り、そこで三人で話し合っていた。

 

「実はうちこの雪合戦を結構楽しみにしていたんです。だってこんなに全力で遊べる機会そうそうないやろ?」

 

「そうね。皆お仕事も忙しいから、こんなに集まれているのも珍しいくらいだものね」

 

「なので!このときのために色々と作戦考えてきたんよ!」

 

「おー、どんなの?」

 

「ふっふふ、それは始まるときまで内緒や。それにな、色んな小道具も持ってきたんよ。例えばこれな。雪玉手榴弾といって、このピンを抜いて投げると、中から大量の雪玉が噴き出すんよ。人が集まったとこにこれを投げれば一網打尽やね。こっちはセンサー付きの持ち運び式ガトリング砲でな、相手を見つけると自動で雪玉を連射してくれるんよ。便利やろ?」

 

「あー、優ちゃん?」

 

「あ、安心してな。味方には飛ばんように設定もできるから」

 

「そういうことじゃなく、今回は持ち込みは手ぬぐいとかそういったもの以外はNGらしいのよ」

 

「えー!じゃあこの飛んできた雪玉を絶対にホームランにする君もダメなん!?」

 

「なにそれ……」

 

「琴乃ちゃん、やっぱりホームランは大切なんよ。泥臭さもええけど、一発の激しさも欲しくなります」

 

「何の話よ……。ともかくダメなものはダメだから」

 

「うぅ、せっかくパパに頼んで作ってもらったのに……」

 

「どこで権力使っているのよ……」

 

「あはは、でも今回の雪合戦は全員にスマートフォンが支給されるみたいね。これでチームメンバーとメッセージを送り合ったり、電話で話し合うことができるみたい」

 

「うぅ、パパに作ってもらったこれを使えば全員の通話盗聴できたのに……」

 

「いやそれ作ったらダメでしょ……」

 

 

 

 

 

 XXX

 

 

 

 

 

「ビビビビビビビッー!!こちらエージェントさくら!電波を受信しました!どうやら優ちゃんが盗聴用の機械を持ち込んでいるみたいです!」

 

「そんなわけないでしょ」

 

 場面は変わってレッスン室。全身を優に映せる大きな姿見と星見プロメンバーのポスターが並んだその場所で、さくら、怜、すみれは集まっていた。

 

 レッスン室といっても今回はレッスンをするわけではない。チームで話し合いの場を作るためにレッスン室に来ていた。

 

「あはは、優ちゃんこの雪合戦が楽しみで色々と準備しているみたいだったからなぁ。ルールで持ち込み禁止だから、全部没収されちゃうだろうけど」

 

「あ、そう。それが確認したかったのよ。もうみんな資料は読んだ?」

 

「うん、読んだよ」

 

「はい!読みました!」

 

「すみれはともかく、さくらはほんとかしら……」

 

 疑っているような視線を向ける怜と酷い!って怒っているさくらを苦笑い見つつ、すみれは資料のルールの欄をもう一度見直す。

 

 ルールは基本的に前回と変わっていない。ポイント制のチーム戦で、相手に雪玉を当てると一ポイント獲得。当てられた人は脱落。制限時間を越えて生き残っていた場合は一人につきニポイント獲得。相手を全滅させていれば生き残っていたチームに三ポイント獲得だ。

 

 ただ、今回からのルールとしてチームとしてスタート地点が決められているわけではなく。皆バラバラの位置からスタートになるらしい。なので最初の位置が悪ければいきなり敵に囲まれてる、みたいな状態もあり得る。

 

 また、持ち物は手ぬぐいみたいな小さめのもの以外、原則持ち込みNG。その代わり、全体の地図と現在位置がわかるアプリの入ったスマートフォンが支給される。チームメンバーとの通話もこれで行えるみたいだ。説明によるとスマートフォンで使える基本的な機能は一通り使えるらしい。

 

 大まかな説明を再度読み直した後、すみれは視線を上げる。怜の頬がさくらによってつねられていた。

 

「わるかったわよ!だからはーなーしーてー」

 

「ふふ、実は怜ちゃんの頬ちょっともみもみしたかったんだよね」

 

「さーくーらー!」

 

「あはは」

 

 見慣れた光景だ。すみれは二人の様子を見て、思わず笑みが零れた。

 

 

 

 

 

 XXX

 

 

 

 

 

 残った一組。沙季、千紗、葵は三人で執務室、牧野がいつも仕事をしている部屋まで来ていた。空いている部屋がなかったわけではない。単に聞きたいことがあって、牧野を訪ねていた。

 

「それで聞きたい事って?」

 

「今回の雪合戦。ハンディキャップは与えられているのかい?」

 

「あぁそのことか」

 

 前回の雪合戦では特例としてすず、こころ、雫チームに雪玉銃が渡されていた。実力差を埋めるためのハンデだったが、そのことを他チームに通達していなかったため、そのハンデがサニピファイアーやココロファイアーとして暴れる結果になっていた。

 

「今回はハンデは無しだ。そうだな、この後全体で通達しておく」

 

「情報による格差は生まれない、ということですね」

 

「そういうことだ」

 

 牧野は付箋にメモを残した後、続けて口を開く。

 

「そういえばなんだが、今日は千紗と沙季は同じ髪型なんだな」

 

 ベージュの後ろ髪を三つ編みにしサイドに流した髪型。三つ編みの末尾に白い花のリボンが結ばれ上品に彩っている。沙季はそれを右側に、千紗は左側に分けていた。

 

「あ、そうなんです。私も髪伸びてきちゃっていたので、せっかくだし同じ髪型にしたいねって話をして……ダメでしたか?」

 

「そういうわけではないんだ。全然大丈夫だよ。二人とも似合っている」

 

「よかったです!」

 

 千紗と沙季はそれぞれ顔を見合わせ微笑み合う。

 

「ふむ、二人はやっぱり姉妹なんだね。体格差はあるけど、そっくりだ」

 

「それは、まぁ姉妹ですので」

 

「私にもうちょっと身長があればよかったんだけど……」

 

「ま、まだ伸びることもあるから……」

 

 葵はそういえば千紗は何歳なんだろうと考えて、すぐに自分と同い年だったことを思い出した。

 

 もう伸びないよ。その言葉は静かに飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 XXX

 

 

 

 

 

 その後、全員は雪合戦の会場に移動し、それぞれのスタート地点につく。それをモニターで確認した牧野は、マイク越しに改めてルールを説明する。

 

「星見プロ雪合戦は星見プロダクション所属のアイドルたちが行う雪合戦になります。ポイント制のチーム戦になっており、チームはくじ引きでランダムに決め、特設会場を用いて行う本格的な雪合戦です」

 

「雪玉を他チームの誰かに当てれば、当てたチームが一ポイント獲得。当てられた人物は即時脱落となりますので、会場の外へ退出してください」

 

「自チーム以外の他チームの生存人数がゼロになった場合、試合終了となり、生き残っていたチームの生存者一人につき二ポイント入ります」

 

「制限時間は一時間。制限時間を越えると試合終了になり、生き残っていた生存者一人につきそのチームに二ポイント獲得できます」

 

「これらのルールのもと、試合終了時の最終的なチームのポイントで勝利チームが決まります」

 

「試合終了時のポイントが同数だった場合、同数チームにおいて生存者が多いチームが勝利になります」

 

「なお、生存状態で会場外に出てしまうと失格となりますので、ご注意ください」

 

「支給したスマートフォンは、皆さんの雪合戦中の間、自由に使っていただいて構いません」

 

「長らくの説明失礼いたしました。では、星見プロ雪合戦――」

 

 

 

「――開幕です」

 

 

 

 

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