【星見プロ雪合戦 チーム】
A 瑠依、miho、渚
B 琴乃、優、遙子
C さくら、怜、すみれ
D 沙季、千紗、葵
【星見プロ雪合戦 ルール】
・ポイント制のチーム戦。
・雪玉を敵チームに当てれば、当てたチームが一ポイント獲得。
・雪玉を当てられた人物は即時脱落。すぐに会場から出ないといけない。
・自チーム以外の他チームメンバーに生存者が一人もいない場合は、そのチームに三ポイント獲得。
・制限時間は一時間。制限時間を越えて生き残っていた場合は生存者一人につき、二ポイント獲得。
・会場から出てしまうと失格。
・撃破されたメンバーはすぐにスピーカーで通達される。
(2から追加)
・小物以外の持ち込みNG
・スタート地点は全員ランダム。同じチームでも別々の箇所からスタート
・全体の地図と現在位置がわかるアプリの入ったスマートフォンが全員に支給されている。スマートフォンの基本機能は一通り使用可能。
【特殊ルール】
・今回は無し
【星見プロ雪合戦 セカンド会場】
・人工雪で作られた特設会場。東京ドーム五個分程度の大きさ。一面の雪模様ながら、雪壁(マット内臓)や段差も多く存在し、身を隠す場所には困らない。
マップ北側は高台になっている。北側への入り口限られており東西二つ。西側は遮蔽物に囲まれているが、東側はマップ南東から登り、橋を渡る必要がある。橋は高所にありマップ全体から丸見えになっている。
※ 雪の中に隠れるのは危ないのでやめてください。
XXX
『いいのあれ』
『ど、どうしましょうか』
瑠依の突然の言動。雪玉をつけているので、雪同士の接触になり体が当たっているわけではない。同時に雪玉をなので、相手に触れればアウトになる。その理屈を持ち出され、放送室でも動揺が現れていた。
『でも、瑠依さんの理屈は正しい。あの理屈を覆すものがなければ却下するのも難しい』
『……わかりました。今回はオッケーとします。ただし全身に雪玉を付けるとか常識の範囲を超えたものはNGとします』
『まぁいいんじゃない。両手に雪玉を付けている。それで防御もできるだろうし、触れれば攻撃になるんでしょうけど、瑠依自身も投擲という行為ができなくなっている。技術も必要だし、デメリットもある行為だものね』
『なるほど、言われてみればそうですね』
『……ド〇えもんみたい』
『言っちゃダメだからな』
XXX
説明を終えた瑠依の行動は早かった。瞬時に距離を詰め、雪玉で丸くなった右手を突き出してくる。
「っ!」
咄嗟に後ろに飛び跳ね距離を取る。が、その行動を予測していた瑠依がすぐさま距離を詰める。瑠依の白い左手が下から突き上がってきた。
「くっ!」
重心を傾け、自身の右手側に転がり込む。足のばねで瞬時に立ち上がると、間髪入れず葵は距離を取った。
「競技が変わってないかい!僕は雪合戦と聞いて来たんだ!」
「変わってないわ。雪を使った合戦よ」
「おかしい。瑠依はおかしいよ」
グミを主食とするし、変なものを好むし、いきなり倒れこむし、巷の噂では人のマフラーを盗んだとも聞いていたが、ここまでとは思っていなかった。一人で相対してみて気づいた。天動瑠依は少し、いや、かなりおかしい。
「何もおかしいところはないわ。私は正常よ」
「異常だよ」
言葉を吐き捨て、葵は少しだけ冷静になる。いきなり格闘を仕掛けてくる相手がいるなんて考えもしてなかったが、いるとわかればその前提で考えを進められる。
(見たところ瑠依も格闘術を修めているわけではない。あくまで独学……だろうけど、瑠依の運動神経でそれをやられると当てるのどころか躱すのさえ一苦労だ。何か策を……)
「発見!」
「瑠依もいるわね……って瑠依!?何その手!」
葵が策を練っていると、自身の左手側。自分がやってきた道から、さくらと怜が姿を現す。
(そうだった。僕は追われていたんだ。これは幸運かもしれない)
三つ巴の戦場になるのなら瑠依も強く出られない。そのうち葵にもチャンスは訪れるだろう。それに。
葵は後ろ手でアプリを起動し、チームメンバーの二人にメッセージを送る。
(柄じゃないけど、漁夫の利させてもらうよ)
XXX
『葵さん、なんか、らしくない?』
『雫も気づいたのね』
『と、言いますと?』
『葵がブレインと呼ばれているのは自由奔放で常にブレない思考があるからよ。だからこそどんな場合でも冷製に物事を捉えられてる。でも今日の葵は違う』
ライブバトルのときに見せる闘志があるのは今日も同様だ。だけどそれは随意な闘志の燃やし方ではない。むしろ普段の彼女とは真逆の考えだ。
『私の雪辱を果たそうとしてくれているのね……』
相棒の雪辱を果たすため。ライブならそれも力になったのかもしれない。だけど今回の戦いは一つの物事に囚われては確実に隙をつかれる。
『なるほど。前回の雪合戦の結果があったからこそですか』
『えぇ。そしてそれは致命的なミスに繋がる。……高台の近くで戦うということがどういったことになるか。前回大会を見ていたのなら知っているんじゃない?』
『高所から、一方的に撃てる』
『そう。そして明らかにそれを狙っている人物がいる。もっとも得点が入るように虎視眈々と待っている人物が』
三人の視線の先のモニターには、高台で雪玉片手に下の戦いの様子を見ているmihoの姿が映っていた。
XXX
「せいやっ!」
「甘いわ」
「さくら!」
「邪魔はさせないよ」
さくらが投げた雪玉が瑠依によって弾かれる。雪玉を補充する隙を狙ってきた瑠依を怜も狙おうとするが、その隙を葵が雪玉を投げそれを阻止される。
近づかれると不利なのは接近戦の手段を持っていない自分たちだ。怜は咄嗟に足元の雪を蹴り上げ、雪をまき散らす。
「今のうちに!」
「うん!」
視界を奪うと共に距離を取る。雪玉を再度補充だ。このやり取りももう何度目かもわからない。三つ巴の戦いがそこに出来上がっていた。
(まずいわね……)
その戦いで、真っ先に焦りを感じていたのは怜だった。瑠依と葵は別チームだが、協力して人数差がある自分たちを狙うのは理解できる。二人との賢い人物だ。どちらかがやられて、二対一になるのを防いでいるのだろう。
だけど、この膠着した状態を維持しているのが問題だった。音や声で、ここで戦いが起きていることはすでに周りに洩れているはず、このままだと他のメンバーも合流するのが目に見えている。
(人数差が付くのだけは避けたい……なら!)
「さくら!まずは葵からよ!」
「でも瑠依ちゃんはどうするの?このままだと近づかれちゃうよ」
「大丈夫よ」
この中で一番フリーにするとまずいのが唯一接近戦ができる瑠依だ。だけどそれ故に弱点がある。
「常に走り続けるの!……さくら、まさかできないってことはないわよね?」
「もちろん!」
接近戦ができる。でも逆を言えば接近戦しかできないのだ。なら近づかせなければいい。
「いくよ葵ちゃん!」
「僕が狙いかい」
丁寧に宣戦布告し葵に雪玉を投げているさくらを横目に、怜も駆け出す。天才的なダンスの才を持つ葵は足運びが上手く、雪玉を躱すのも上手だ。だけど、雪というフィールドには慣れていないらしく、時折躓くような仕草も見せていた。
「そこっ!」
さくらの雪玉を葵が避けた先にオーバースローで雪玉を投げつける。軽いステップで避けられるが、わずかによろめく。計算通りだ。
怜は左手に持っていた雪玉を素早く右手に移し替えると、前屈姿勢のままフリスピーのような投げ方で、葵を狙った。
「もらったわ!」
「一点目ね」
その瞬間、上空から声が聞こえた。自分が雪玉を投げる寸前、空より飛来した雪玉が、葵の背を突く。
「なっ!」
葵から驚きの声が漏れる。怜もそれは同様だった。瞬時に何が起きたか理解しようとするが、それよりも先に視界が雪の粉で覆われた。
「怜ちゃん!」
「さっきの手、私も使わせてもらうわ」
「しまった!」
一瞬とはいえ、葵を狙うために、そしてその後の時間で立ち止まってしまった。瑠依は片手で飛来した雪玉をはじくと、もう片方の手で怜の肩を突く。
回避はできそうになかった。だからこそだろうか。敗北を悟った怜の頭は冷静になり、瞬時に自身が最後にできることを導き出した。
「さくら!高台の上にいる人を狙って!当たらなくてもいい!」
「任せて!」
さくらの剛速球なら高台の上まで届く。これで警戒して高台から出てこれなくなるだろう。後、自分にできることは。
散らばった雪の粉の中から、迫りくる雪玉を目視する。回避はやっぱりできそうにない。だけど、受け止めることはできる。
(故意じゃないわよ。悪いわね瑠依)
「なっ!」
雪玉がぶつかる寸前、肘を思いっきり上げ、雪玉にぶつける。雪玉に罅が入ったのを見て、怜は満足げな表情を見せる。
(後は任せたわよ。さくら、すみれ)
XXX
「ど、どうしようお姉ちゃん」
マップ西。高台への西の入り口へ向かう十字路にて、千紗と沙季は立ち尽くしていた。視界の先で葵と怜が撃破されるのを見ていたというのもあるが、目の前にいる人物が問題だった。
「……沙季ちゃん、千紗ちゃん」
赤茶色のボブヘアに赤い瞳。その片手には大きく膨らんだ黒い袋がぶら下げられていた。
「渚ちゃん、今回の雪合戦は持ち込み禁止だったはずですが」
沙季の言葉に、渚は眉をひそめ苦笑いを浮かべる。
「一応、手ぬぐいは大丈夫なんだよ」
「手ぬぐいってサイズではなさそうですが」
「手ぬぐいだよ。数十枚を繋ぎ合わせて大きくしているけど」
確かに汗や手をぬぐう用途として、手拭いの持ち込みは許可されていた。それは間違いない。だけど何十枚も持ち込み、繋げ合わせるという使い方は想定されていなかったはずだ。
(でもこの様子も監視カメラで確認されているはず。止められないってことは大丈夫ってことかしら……)
ルール上有り、ということなら思考は進む。あの中に何が入っているのかが問題だ。
「千紗、気を付けて。雪玉を大量に作って持っているのかもしれない」
「うん。……でもお姉ちゃん、あの袋を持ったままならあんまり動けないよね?それにこっちは二人だよ。……チャンスかも」
雪玉の補充速度は渚の方が圧倒的に上だが、肝心の投げる人物が一人なら二人いる沙季たちに分がある。同時に狙えば、もしくはタイミングをずらして投げるでも優位は取れる。
そうとわかれば話が早い。沙季は瞬時に雪玉を構えようとしたが、それよりも先に渚が口を開いた。
「沙季ちゃん、千紗ちゃん、ちょっとだけお話があるんだけど大丈夫?」
「……なんでしょう?」
「実は私、優ちゃんと遙子さんとすみれちゃんに追われててね。ここにいると四つ巴になると思うんだ」
「……なるほど。協力してほしいってことですか?」
「うん」
(確かに四つのチームが入り乱れると、どうなるか予想は困難だ。協力体制を取っておくのは有りな選択だとは思うけど……)
「……渚ちゃん、それ嘘だよね?」
「どうして?」
「追われているならどうして私たちの前に立ち塞がったの?そもそもその袋を持ったまま走れると思わないよ」
「……」
千紗の言葉に口を紡ぐ。やがて、バツの悪そうな表情を見せると、渚は持っていた袋を口を開けた。
「ごめんね。沙季ちゃん、千紗ちゃん。ちょっとだけ我慢してね」
そう言うや否や、渚は袋の底の辺りを両手で抱える。嫌な予感が、沙季の脳裏に浮かんだ。
「千紗!下がって!」
雪玉を捨て千紗の手を取り、自身も大きく距離を取る。瞬間、渚が大きく振った袋から大量の雪が飛び出した。
「うぅ、私の力じゃこれが限界だよ……でも、十分かな」
袋から飛び出したのは雪玉じゃなくて、雪そのものだ。その粒子は大きく広がったものの、当たっても何も意味がない。だけど視界を晦ますには十分な効果だ。同時に距離を取ることにも成功した渚は、手に持った袋を投げ捨て瞬時に駆け出す。
「騙してごめんね!今度ご飯奢るから許して!」
「あ!ま、待ってください!」
慌てた沙季の声に、渚はごめんねと言わんばかりに小さく笑みを浮かべる。その言葉には応えられない代わりに、渚は別の言葉を紡ぐ。
「追われていたのは嘘じゃないよ!気を付けて!」
「見つけたー!……あ、あれ?」
突然の出来事に唖然としていた沙季の耳に、別の声が響く。振り返ると、そこには両手に雪玉を構えたすみれの姿がそこにあり。
「ち、千紗さんが二人いる!?」
「あ、違います」
同じ髪型だからか、勘違いしている様子だった。