異世界転移の短編集   作:Revak

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異世界が転移してきた

 20XX年。世界は核の炎に包まれ──ずに異世界の嵐に見舞われた。

 そう、異世界。ドラゴンだとかエルフだとかドワーフとか、ファンタジーが現実を侵食したのだ。

 

 その立場から言わせてもらおう。

 

 現実にファンタジーが来るのはクソ。空想は空想だからいいのだ。

 

 

 

「はぁ~~~」

 

 真昼間。社会人ならば働いているべき時間帯に俺は公園でため息をつく。

 何となく近所からは遠く、そこそこ大きい公園まで散歩してため息をつくのが最近の日課だ。クソわよ。

 

 俺は転生者である。名前はもうある。

 だが男の名前何ぞ言ったところで価値が無いので言いはしない。

 

 今は西暦三3017年。異世界の住人が来てから千年経った時代だ。

 俺が生きていたのは2000年代から2020年あたりで、その身からすると充分な未来だ。

 未来と言うのは素晴らしい。(異世界)人は空を飛べるし、空気汚染も無い。(異世界人は)病だってないのだ。

 それらは超常の住人である異世界人が齎した技術だ。それにより人は繁栄できず──滅びていった。

 

 異世界──というかラノベ等でエルフだとか獣人だとかいるが、それらが異世界で覇権を取っていないのは何故か、答えは簡単だ。文明レベルが低いから。

 では、この地球に来て科学を知り、科学と魔法のハイブリットを生み出せば当然、科学しか扱えない地球人類は大きく劣る。

 

 だがこれは何も、異世界側が地球を滅ぼそうとした訳ではない。どちらかと言うと滅ぼそうと動いたのは地球側だ。馬鹿がよ。

 

 地球にやって来た異世界人に地球人は仕事を紹介した。

 これがいけなかった。絶対にしてはいけなかった。

 

 

 地球人類はひ弱な生命体である。

 敵を斬り裂く爪は無く。冷気に耐える毛皮は無く。三日水を飲まないと死ぬ劣等種である。

 何十キロとある鉄の塊を持ち上げられず、火を吹けないし空も飛べない。

 

 では異世界側と言うと、それが揃っていた。

 

 エルフはビル以上に高く跳躍できるし、獣人は砂漠だろうが雪山だろうが生存できる。悪食とも知られるゴブリンは一ヵ月飲まず食わずで活動で来た。

 ドラゴンは言うまでも無く空を飛べるし火を噴ける。

 

 そして地球人類は彼らに合わせた仕事を紹介した。してしまった。

 

 警察にエルフを。畜産にゴブリンを。鋳造にドワーフを。空輸にドラゴンを。

 

 地球人類側も当然反発したが、それらを推し進める政府に反対できず、反乱は出来なかった。空を覆うドラゴンに逆らえばどうなるか、わかりやすかったから。

 恐らくはそれが──地球政府が異世界の存在を公的に認めたのが最初で最後のチャンスだったのだ。それが、人類が生き延びれる最後のチャンス。

 

 結論から言えば、地球政府は異世界に乗っ取られた。

 

 異世界側がそれを企んでいた訳ではない。結果として当然そうなったのだ。

 

 あらゆる仕事に異世界人を起用すれば、地球人類以上に活躍した。

 これには当然、人を雇う人間も、政府も、異世界の者達を使っていった。就職氷河期の再来──どころではない、大卒だろうが東大生だろうが意味が無い。

 "異世界人に勝てる強みはありますか"というクソみたいな質問を面接官は投げかけた。超常を扱えぬ地球人類は答えを持っていない。故に落とされる。

 

 そして当然、就職難が起きるも──異世界人がいるからいいだろうと政府も企業も無視した。

 

 結果数百年経って起こったのが、人類の減少。

 

 結婚や子作りには文明社会においては金がかかる。

 2000年代でさえ子供一人2000万円かかると言われたのだ。更に未来の時代においていくらかかるか想像もできない。

 そして、当然。仕事に付けず、何も出来ず、無能とメディアが煽った結果──地球人類は仕事に付けず、金が無いため娯楽を得られず自殺して、子供も作らない。

 

 政府はこれに対し危機感を抱いていなかった。

 当然だ、全てに置ける代替に、異世界人がいるのだ。不便な地球人類は冷遇された。

 

 結果として子供を作る行為は高額になり、娯楽となった。

 当然金が無くとも出来る手段ではある。だがそういった子供は親に金が無いため死ぬか捨てられるか、野山に産み落とされて野生動物に食い殺されるかして──どんどん数を減らしていった。

 

 数百年経ち、企業や政府の要人に異世界のエルフなどが入り込んだ時には既に遅かった。手遅れだった。

 

 

 街を歩けばエルフが居て、獣人がいて、ドワーフとゴブリンが喧嘩してて、空を見ればドラゴンが居る。

 

 

 ──地球の人類は何処にもいなかった。

 

 

 そして俺は、そんな時代に生まれてしまった希少種な地球人類である。

 

 俺の生まれは孤児院で、地球人類である俺は虐められていた。

 殴られたりとか蹴られたりは、一度だけされた。獣人の子と喧嘩に成った結果足を殴られ、骨が折れてしまった。

 当然孤児院であり、治療の為の金が無く、結果痛みに悶えるしかなく、そして、自然治癒力が高い異世界人からすれば骨が折れた程度、という話で──治療を受けることなく放置された。

 結果骨は歪んで治ってしまい、ろくに走る事が出来なく成った。骨が折れてからは孤児たちとも孤児院の院長からも腫物を扱うようにされた。誰も俺に話しかけず、友人も無く、終わった。

 

 学校に通った。何もわからなかった。

 

 記憶能力に魔法行使能力。それらがあるのを前提にしたカリキュラムは人類に過ぎない俺はわからなかった。当然の様に魔法実技では魔法を扱えない準人間の俺では扱えず、実技は常に零点だった。

 歴史も数学も国語も何もわからなかった。転生した身とは言え小学低学年の段階で高校レベルは着いて行けなかった。他の子は皆分かっていた。

 

 そして中学を卒業し、俺は孤児院を出た。

 追い出された訳ではない。高校受験を受けても全部落ちた俺は社会人となった結果、孤児院には居られなくなった。

 学校に通っていない孤児に居場所は無い。直ぐに仕事を探したが意味が無かった。

 

 あらゆる職業のバイトに応募した。全部落ちた。

 

 コンビニ店員。清掃業。スーパー店員。単純作業の工場。道路整備。死体処理。

 

 

 全部落ちた。

 

 そして面接では決まってこう問われる。

 

「貴方を採用するメリットは何ですか?」と。

 

 そんなの無い。ないのだ。何も。

 

 あらゆる仕事に置いて地球人類は向いていないのが現実だ。

 平均値が違うのだ。異世界人が全ステータス最低値百に対し俺は全部十ぐらい。落とすのも納得だ。

 エルフならば高い身体能力と動体視力と観察眼を持っていて、警官や警備員が向いている。オーガならば力強い、土木工事に最適だ。

 動物の感情を感知しやすいゴブリンならば畜産業が向いている。地球人類は特殊能力を持っていない。更に俺は中卒だ。雇う利益が無い。

 

 

 結果として俺は、生活保護を受けて暮らしている。

 

 これは日本に生まれたからこそある制度。千年経っても残っててよかったと感謝している。

 これで仕事をしなくとも暮らしていける。まぁ、最低限の暮らしだが。

 

 食事は一日一回。風呂は月に一回。娯楽品はパソコンだけ。

 ケーキもチキンもポテチも今生では食ったことが無い。漫画なんて真面に読んでない。

 一応パソコンが家にある為ネット小説や無料で公開されている漫画等は読めるが、書籍を買えない。

 買う金が無いというモノあるが、買ってしまうと"娯楽に回す金がある"と判断されて生活保護の金が減るのだ。というか実際減った。

 故にスマホも持ってない。電子機器は一つあれば充分とされ、スマホの所持は出来ない。買おうとすれば娯楽品扱いされて生活保護を外されかねない。

 

 家にある家電は後は洗濯機ぐらいで、冷蔵庫なんてないしクーラーも無い。救いは地球温暖化がどうにかなった為夏でも冬でもどうにかなるという所だろう。

 当然夏は暑いし冬は寒いので何も出来ないが。クーラーが無いと死ぬという程ではないというだけだ。多分十年ぐらいだって年食って体が衰えたら死ぬ気がする。

 

「はぁ~」

 

 散歩しているエルフとオークの夫婦と子供を観ながらため息をつく。

 

 ファンタジーなんて碌なものじゃないな、と。

 

 

 

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