第72話 疲労
数分後
ジェフは刑務官に引き立てられていった
ボクはボイルと共に帰ることにした
その途中
( ・෴・)「ジェフの無罪を勝ち取ることはできない」
( ・෴・)「だから、ジェフが心神喪失状態であったと弁護しようと思う」
( ・෴・)「そのためには何人かの精神科医に診察をしてもらわねばならない」
(´・ω・`)「ボクもそれに賛成です」
ボイルの狙いはジェフの刑務所行を精神病院に変えることだった
刑務所にいるより精神病院に入ればよりよい治療を受けることができる
そうすればもしかしたらジェフは正常な人間になれるかもしれない
ボクはホテルに戻った
ξ゚⊿゚)ξ「おかえりなさい、レオ」
(´・ω・`)「ああ、ただいま」
シェリはとても憔悴しているように見えた
(´・ω・`)「なにかあったのかい?」
ξ゚⊿゚)ξ「お隣さんが知らせてくれたんだけど…………」
ξ゚⊿゚)ξ「私たちの家にもマスコミの連中が押しかけているみたいなの」
(´・ω・`)「そうか…………」
(´・ω・`)「家に帰るのを延期して、もうしばらくこのホテルに滞在するかい?」
ξ゚⊿゚)ξ「嫌よ!あそこは私たちの家よ」
ξ゚⊿゚)ξ「自分の家から追い出されるなんてまっぴら」
ξ゚⊿゚)ξ「…………これほどの孤独感を味わったことはいまだかつてないわ」
(´・ω・`)…………
自分たちは世間の注目を集めるようなことはなにひとつしていない
問題を起こしたのはジェフであって
ボクたち夫婦はそのことに一切関与していない
(´・ω・`) .。oO(なんて自己弁護をしても無駄だ)
そんなことは世間にとってきっとどうでもよいことなのだ
ボクたちは殺人鬼を生み出した一族の人間であり
普通の家族であることを失ってしまったのだ
夜
(´・ω・`)…………
ξ゚⊿゚)ξ…………
ボクたちはお互いにほとんど口をきかなかった
どちらも力つきて、疲れ切り、体が麻痺したかのようだった
まるで抜け殻になったようなボクたちはソファに座り、テレビを眺めた
報道番組を避けて、コメディやドラマといった娯楽番組を見た
それでも気が休まることはなかった
極度の緊張状態にあった
常にジェフの顔が浮かんできた
コメディ番組の笑いどころであろうと、ドラマの終盤であろうと
コマーシャルの直前だろうと、どの瞬間だろうと
ふと息子の顔が浮かんでくるのだ
すくなくとも今は見たくないと思っているジェフの顔が
第73話 波紋
1991年7月28日
ボクたちは自宅に戻った
(´・ω・`) .。oO(ボクは翌朝から職場に戻って働くのが待ち遠しかった)
ジェフにどんな判決が下っても
この先も人生は続いていく、働いていかなければならない
これから裁判で忙しくなって仕事に支障が出ないように
とにかく研究室に戻って段取りだけでも整えなければと思った
ボクは職場の上司に電話した
「やあライオネル、今回は大変なことになったね」
(´・ω・`)「はい、それで明日、出勤しようと思うのですが」
「それは止めておいたほうがいい」
(;´・ω・` )「え?なぜですか?」
「マスコミの一団が研究室の周りに群がっているんだ」
「そのせいで周囲の交通をほとんど遮断してしまっている、迷惑な話さ」
「騒ぎが収まるまで、君は出勤しないほうがいい」
(;´・ω・` )「わ、わかりました、迷惑をかけてすみません」ガチャ
(;´・ω・` )…………
ξ゚⊿゚)ξ「どうだった?」
(;´・ω・` )「マスコミがいるから仕事には来ない方がいいって…………」
ξ゚⊿゚)ξ「そう、私もそう言われたわ…………」
翌日
ボクもシェリも職場へは行かなかった
家にいて、ひっきりなしにかかってくる電話のベルを聞いた
普段なら、そのベルの音は友人や知人からくる歓迎すべきものだったし
少なくとも迷惑には感じなかった
だけど、いまや耳障りこのうえない音になっていた
こんな不愉快な楽器がこの世にあるのかと思われるほどだった
ジェフが逮捕されて数日
ニュースは彼のことでもちきりだった
だが、ジェフへの疑いはあらぬ方向に向かっていた
コメンテーターが盛んに訴えていたのは人種差別についてだった
ジェフの被害者たちのほとんどが黒人だった
このことはジェフが逮捕されてすぐに報道された
そしてこの事実は多くの人たちに
ジェフが人種差別殺人者であるという印象を与えていた
故意に黒人を選んで殺したのだと
(´・ω・`) .。oO(これはまったくの的外れで間違いだ)
ジェフはたしかに恐ろしいことをしでかした
しかし、ジェフの殺人は人種差別に基づいた殺人ではなかった
ジェフが欲しがったのはあくまで死体なのだ
筋肉質の男性の死体を求めていた
皮膚の色は彼にとってまったく問題ではなかった
(´・ω・`) .。oO(では、なぜジェフの被害者の大勢が黒人であったのか?)
それはたんに若い黒人男性がお金を持っていなかったからだ
ジェフの手口は50ドルというわずかなお金で被害者を誘い出すというものだった
裕福な白人は誘いに乗らず
貧しい黒人は誘いに乗った
あえて問題を提起しようと試みるのであれば
今回の事件は人種差別によるものでなく貧困問題によるものだ
(´・ω・`) .。oO(だが、そのように考えられない人が大勢いた)
彼らは被害者たちの顔を見て、その顔のほとんどが黒いことを知り
自分たちの結論、すなわち人種差別であると断定した
この結論は何人かの有名人も含めて多くの人を惹きつけた
そしてその矛先はジェフだけでなく警察にも向かうことになった
被害者が黒人だったから警察はまともに捜査をしなかったのだと
しだいにこの疑惑は大きなデモへと発展した
ミルウォーキーの街は一触即発の状態になった
(;´・ω・` ) .。oO(これほどの事態を…………)
ジェフが引き起こしたなんて信じられなかった
ボクの知るジェフは消極的で目立たず、なにをやっても上手くいかない
そんな取るに足らない小さな存在だった
それが今や一つのシンボルと言えるほどの巨大な存在となり
巨大な力が渦巻くその中心にいるなんて信じられなかった
あれほどくすんでいて目立つことのない、どう見ても哀れな若者が
これほど世間を巻き込んだ激情を発することができるなんて…………
ジェフという人間と彼がしでかしたことの間に横たわる深淵が
これほど巨大なものだったとは、ついぞ思いもしなかった