推しの子のXYZ   作:断空我

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今回は一とアイの出会いの話になります。

時系列とか、そこんところは少しぼかしておりますし、書いたのがかなり前なので、原作乖離……既に崩壊しておりますが、楽しんでいただければと。


最強のアイドルの護衛は最強のスイーパーの弟子(前編)

とある廃墟の一角。

そこに武装した男がいる。

彼は乱れた呼吸を必死に整えようとしながら壁にもたれた。

目をギラギラさせながら必死に獲物を待つ。

階下から聞こえてくる足音。

 

「今だ」

 

男は手元のボタンを押す。

階下に仕掛けた爆弾が次々と爆発する。

ビルは倒壊しない。

プロである自分がそんな凡ミスをするわけがないという自信もあった。

しばらく息をひそめるも足音はしない。

 

「やった!やったぞ!俺はシティーハンターをやったんだ!」

 

歓喜の表情を浮かべながら男は階段を駆け上がる。

屋上に設置されているハングライダー、それでここから逃走するつもりなのだ。

だが、それはできない。

響く音。

発砲音に男が歩みを止めた瞬間、目の前のハングライダーがバラバラになった。

 

「え?く」

 

男が腰の拳銃を取り出して構えるより早く一発の弾丸が放たれた。

衝撃によって拳銃が男の手を離れて遠くへ落ちる。

靴音を鳴らしながら現れるのは一人の少年。

年齢はおそらく二十歳に満たないだろう。

右手にコルト・パイソンが握りしめられている。

ハングライダーを破壊した張本人と男はすぐにわかった。

暗闇の中で揺れる黒の髪。

肌や髪の色から日本人と推測できるだろう、だが、ある一つが異質だった。

キラキラと輝きを放っていると錯覚する銀の目。

片目だけが銀色。

 

「な、なんだ、お前!」

「シティーハンター」

 

少年が呟く。

 

「き、聞いてナイヨ!シティーハンターに仲間がいるなんて、聞いて、ヒッ!」

 

少年の後ろから現れるガタイの良い男。

ジャケットが風で揺れながら男を見る。

 

「さ、さっきの爆発で死んだはずじゃ」

「ウチの師匠がそう簡単にくたばるわけない。舐めすぎだよ。裏世界の一位って奴を」

「そういうこと、ま、弟子がカバーしてくれたおかげだな」

 

ポンポンと彼は少年の背中を叩く。

柔和な笑顔から一転して表情が変わる。

その顔は裏世界で名をはせたスィーパーとしての顔。

 

「俺達がシティーハンターなのさ」

 

 

――シティーハンター。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

堀江一(ほりえはじめ)

それが自分の名前であり、これからも使っていく名前だ。

性別は男、年齢は多分、19歳くらい。

もう少ししたら20歳になる。

多分、日本人。

こうも連続して多分が多いのは彼が物心ついた時に両親がおらず育ての親といえる人とずっと世界中を飛び回っていた為。

今は腰を落ち着けて日本で生活している。

 

「これ、捨てていい?」

「ダメに決まってんだろ!レアものだぞ!?掘り出し物なんだぞ!?わかるだろ!」

「……わからんし」

育ての親、冴羽獠(さえばりょう)が18禁のDVDの山を抱えてエロ猿のような顔をしていた。

これが朝の日課である。

慣れているがもう少し遠慮というか気遣いという事をしてほしいと一は思う。

 

「まーったく!お前も大人になるんだからもっこりの一発や二発ちゃんとしておけよ!体に悪いぞ」

「俺が不健康みたいにいうなよ!?そもそも師匠の選択する店に問題があると思うんですけど!?」

実際の所、一も男だ。綺麗な女性がいれば目で追ってしまうし、胸や尻などを獠と一緒に反応してしまう事もある。

 

「選択する店で出会う女の子、そのほとんどが何かしら病んでいる女性ばかりじゃないですか!この前なんて監禁した相手を蝋人形にしようとする危険人物だったの忘れていないですからね!槇村さんがいなかったら俺がこの世にいなかったこと」

「小さいな。うん、小さい男だね。そんなこと、リョウちゃん忘れた!」

「師匠じゃなかったら頭に一発撃ち込んでやったところだよ!」

 

チンとトーストの出来上がる音がして一は中断していた朝食の準備を再開する。

 

「そういえば、師匠。槇村さんから依頼の話があるって事で昼に……」

 

振り返るとソファーで寛いでいた獠がいない。

 

「逃げたな。仕事が嫌で逃げたか?」

 

槇村がシティーハンターのメンバーとして仕事を持ち込んでくるが一の師匠は美女からの依頼以外は受けないと明言している。

そんなことで生活できるわけがないので一が副業等で稼いでいるのは秘密。

 

「仕事の件、どうするんだよ」

 

獠がいない以上、槇村に同席でもしてもらおうか?

そんなことを一が考えていた時だ。

 

「失礼するぞ、一。いるか?」

 

よれよれのコートにメガネをかけた男性、槇村秀幸が入ってきた。

 

「槇村さん、どうしたの?約束の時間までまだ先……」

「何をしとるか!このバカ弟子め!すぐに着替えて仕事に行く準備をせんかぁ!」

 

逃げ出した筈の獠が戻ってきていた。

先ほどまでの気だるさをどこへ置いてきたのか、獠はやる気に満ち溢れている。

 

「なぜ?」

「一緒に来ればわかる」

 

メガネを元の位置へ戻しながら告げた槇村の言葉に一は首を傾げながら支度を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

苺プロダクション。

弱小の芸能事務所であり、現在は星野アイをセンターにしたB小町を全面的に売り込んでいる。

その事務所に冴羽獠、槇村秀幸の姿があった。

対面するのはサングラスにちょび髭を生やした社長の斉藤壱護。

サングラス越しに獠達を見る目は胡散臭さに満ちている。

 

「あぁ、そのあなた方が有名なシティーハンター?」

「わかっていて依頼したんでしょう?掲示板にXYZと書き込んだのは貴方の筈だ。斉藤社長」

 

――XYZ。

 

それはカクテルの名前でありもう後がないという意味を持つ。

そして、裏社会においてこのXYZという言葉はある存在を指す。

 

――シティーハンター。

 

どんな依頼も必ず達成するプロのスイーパー。

シティーハンターはもう後がない人達のためにいるプロ。

それが芸能世界で噂として語られている。

 

「素敵なお姉さん、僕と一夜を過ごして頂けないでしょうか!?」

「獠、その人の薬指よぉくみろ」

「ン?あぁ、これは失敬、人妻でしたか!?しかし、その美貌からてっきりアイドルか女優さんなのかと」

「私の妻です。それと、本当にあなた方がシティーハンターなのですか?」

「こんなのですが、腕は頼りになります」

 

不安そうな壱護へ槇村は呆れながら話す。

どこかでカラスの鳴き声が聞こえたような、気がした。

 

「それで、依頼の内容は?電話で護衛が必要だとか」

 

ようやく落ち着いた獠。

 

「ここのところ、うちのアイドルに嫌がらせが多発しておりまして。どうも、それが山丸組という暴力団らしく」

「山丸組?」

 

壱護の言葉に獠が反応する。

 

「何か?」

「いいえ、どうぞ。続けてください」

 

獠の方へ視線を向けながら槇村は続きを促す。

 

「最初は些細な嫌がらせでしたが、最近は過激な事が増えてきている。警察に相談もしましたが相手にしてもらえず。ウチは弱小事務所です。メインのアイドルグループB小町に何かあれば倒産の危機です!お願いします!」

 

両手を机の上に置いて必死に頭を下げる壱護社長。

本当に後がないのだろう。

彼の言葉から必死さを感じる。

 

「報酬等のやり取りは槇村、頼んだ。で、肝心の護衛対象のアイドルは?」

「一人は遅刻で、他は揃って」

「ごめんなさぁい、遅くなりました」

「あ、今……はぁ!?」

「おやおや」

 

壱護社長は驚きの声を上げ、槇村も目を見開き、メガネがずれる。

 

「あ、佐藤社長、遅くなってごめんね。それと、うちに用事があるみたいだから」

 

笑顔で告げる少女は一人の男を連れて来ていた。

 

「あははは、すいません」

 

苦笑いを浮かべながら彼女の傍にいるのは堀江一だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜ、堀江一がアイドルと一緒にいたのか。

時間は少し遡る。

 

「アイドルの事務所って、そりゃ男からの依頼でもやる気出すわけだ」

 

用事があり、二人を先行させた一は徒歩で目的地の事務所を目指している。

移動用の車やバイクがあるのだが、一のバイクは少し前の事件で破壊された為に修理に出していた。

 

「ねえねえ、キミ、可愛いね!」

 

聞こえてきた声に一は足を止めた。

幸か不幸か、冴羽獠は仕事中であろうと美女をナンパしてしまう為、ストッパーである一はナンパが聞こえると自然に体が反応してしまう。

声の方を見るととチャライ格好の男が帽子をかぶった女の子へ声をかけている。

女の子の方だが年齢は十代前半くらいだろうか?短パンやシャツから覗く手足が白く健康的にみえた。

 

「流石に放っておくわけにいかないかなぁ?」

 

通行人達は見て見ぬふりをしている。

チャライ男以外に傍でガタイの良い連中がいるからだろう。

余計な事を言えば自分が殴られる。

その事をわかっているから誰も声をかけない。

だが。

 

「おいおい、丹治君よぉ」

「あ?てめぇは……………」

 

呼ばれて不機嫌そうにしていたチャライ男は一の顔を見て滝のような汗を流す。

 

「俺の事はちゃーんと覚えているようで安心したよ。丹治君」

「あ、いや、その、その、勿論じゃないですかぁ、堀江さん」

「そうか、でも、俺と交わした約束は忘れちゃったみたいだねぇ?」

「え、あ、その、あの、ですねぇ。約束はちゃんと」

「おい、兄ちゃん」

 

怯える丹治の後ろで待機していた屈強な男達が一を囲む。

 

「ウチの舎弟に変な因縁をつけるのやめてもらおうか」

「因縁じゃないさ。そこの丹治君は俺と約束をしたんだ。もうこういう変なナンパはやらず、この街からも出ていくってさ」

「あぁ!?舐めた口きいてんじゃねぇぞ!てめぇみたいなひょろもやしなんざすぐ――」

「後ろに女の子がいるんだ。汚い言葉は控えた方がいいと思うね?」

 

口の中に手を伸ばして一は男の舌を引っ張る。

激痛に顔を歪める男を皮切りに周りの連中が拳を振り上げるも。

 

「ほら、とっとと失せろ」

 

瞬く間に一の手によってボコボコにされた。

丹治の奴は隙を突いて逃走したらしい。

 

「ま、また戻ってきたらその時は締めたらいいか、ところで」

一は後ろでぽかんとしている女の子へ視線を向ける。

 

「あ、終わったの?」

「あぁ」

「うーんと、こういう時はお礼を言うべきなのかな?」

「普通ならお礼を受け取るべきだが、アンタ、連中がどういう奴らかわかっていただろう?あいつらは女性に声をかけては裏路地や誰もいない場所へ連れて行って卑猥や事やもっと」

「え?うん!」

 

先を言い切る前に少女は頷いた。

そこでようやく一は少女と目が合う。

瞬間、どうしょうもない嫌悪感が一の体を駆け巡る。

 

「あれ?どうしたの?」

「別に、今回は助けたけれど、次はないからな」

「そうだ!お礼をしたいからちょっとお兄さん、付き合ってもらえない?」

「悪いけれど、俺は予定がある」

 

仕事があるのだ。

これ以上の足止めはプロとして問題である。

何より、槇村に負担が集中するのは申し訳ない。

 

 

「すぐに終わるからさ。私、この先にある苺プロダクションに行くから」

「奇遇だな、俺も……なに?」

 

つい行き先を告げてしまう一。

彼は少女を見る。

 

「アンタも苺プロに用事が?」

「うん、先に自己紹介しておくね?私、星野アイ。苺プロダクションに所属しているアイドルなの!」

 

笑顔で話をしながらその目に星を宿した少女、星野アイ。

これが堀江一との出会いであり、これから続く波乱の日々の始まりであることを二人はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけでして」

「丹治の奴の件は後で俺がなんとかしておこう。斉藤社長。偶然とはいえ、うちの実力はわかって頂けたでしょうか?」

 

説明を終えた一に呆れた様子の槇村。

彼はため息を零しながらぽかんとしている壱護へ声をかける。

 

「あ、あぁ、そこのクソアイドルを助けてくれたことから凄腕かはともかく役立つってことはね。改めて仕事をお願いしたい、うちのアイドルグループ、ひいてはアイを守ってください」

 

頭を下げる壱護社長へ槇村は頷く。

遅れてやってきた一とアイへ事情を説明する為B小町がいる練習スタジオへ移動することになった。

 

「へぇ~、お兄さん。凄い人なんだ」

「これでもプロなので」

 

アイに脅迫等の話は伝えずに護衛のプロを雇ったと伝える。

一は槇村から簡潔に事情を説明した。

気になるところがあったものの、後で話をしようという事で移動中。

しきりに話しかけてくるアイへ一は冷淡に対応する。

流石の女好きの冴羽獠も年齢が十四歳くらいの子はくどく気になれず静かについてきていた。

 

「お兄さんの名前は?」

「槇村秀幸」

「さっきメガネの人が名乗っていたよ」

「チッ」

 

舌打ちをしながら少し間を置いて。

 

「仕事中は名乗らないようにしておりますので」

「コイツ、堀江一、俺の息子なの。あ、俺は冴羽獠。よろしくね~」

誤魔化そうとしたらまさかの味方の裏切り。

ギロリと一が睨むも獠はどこ吹く風である。

 

「ほりえはじめ、はじめ、はじめ、はじめ、じゃあ、はじめだ!」

「呼び捨てかい!?てか、人の個人情報を勝手にバラすのやめてもらえませんかねぇ!?」

 

振り返ると同時に拳のストレート。

しかし、受け止められてしまう。

 

「まだまだ修行が足らんぞぉ」

「ぐぎぎぎぎ」

 

苛立ちを隠さずに獠を睨む一。

 

「あの、ついたのですが?」

「二人とも遊ぶのはほどほどに」

 

壱護と槇村に言われて矛を収める一。

アイの後ろで獠がにひひひと笑っていた。

 

「アイを含めたここのメンバーがB小町です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「詳細はさっき槇村さんから聞きましたけど、本当に山丸組が動いているんですか?」

「やっぱり、気になるか?」

 

一は頷く。

 

「俺の記憶が確かなら山丸組は数カ月前に別の組の抗争に負けて壊滅状態です。弱小とはいえ芸能プロダクションにちょっかいをかける余裕はない筈」

「かといってあの社長が嘘を言っているようにも思えない」

「そうなると……」

「この依頼、面倒なことになるかもな」

 

真面目な表情だった獠だが、一瞬で発情したような顔になる。

 

「ニノちゃーん!練習終わったの?この後、暇?よければ僕ちゃんとお茶しなーい?」

「……あの人は全く」

 

呆れながら立ち上がろうとした所で近づく気配に視線を向ける。

 

「お、足音消したのに気付くんだ」

「その程度は消したうちに入らない」

 

驚くアイに一は返す。

 

「ねえねえ、はじめ」

「何ですか?アイさん」

「呼び捨てでよいよ?年上なんでしょ?」

「年下なら敬称くらいつけて」

「この後暇?」

「仕事です」

「そっか、私の護衛だもんね。少し付き合って欲しいの」

 

断ろうとすればさらりと躱して話をしてくる。

 

「付きあうとかなら師匠が」

「さこみずさんだっけ?あの人ならうちのメンバーと一緒にどっかいっちゃったよ?」

「は?」

 

アイに言われて周りを見るといつの間にか他のメンバー含めて姿が消えていた。

 

「……嘘だろ」

「えへへへ、二人っきりだね!」

 

嬉しそうにしているアイを前に一はふかぁいため息を零した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「師匠の奴、恨むぞ、本当に」

「うーん、気を利かせてくれたんじゃないかな?」

 

あの後、壱護社長へ事情を説明した後、一はアイを連れて中華料理屋へ来ていた。

並んでいる餃子や炒飯等を食べる一に対して、アイの食事をする動きはどこかぎこちない。

 

「食事、苦手か?」

「うーん、昔、お母さんにグラスを投げつけられて口の中に破片が入ってから白米とか、そういうのを食べるのが苦手なんだよね」

「ふーん。じゃあ、米以外を食べろよ」

 

一はそういって餃子や麻婆豆腐等の皿を差し出す。

 

「……」

「なんだ?」

 

食べる手をとめてこちらをじぃーっとみてくるアイに一は尋ねる。

 

「聞かないの?」

「何を?」

「私のお母さんの話」

「……話をしたいのなら聞いてやるけど?」

「やさしくなーい」

「あのなぁ」

 

苛立ちを堪えるようにしながら一はアイと目を合わせる。

 

「本当に望んでいない癖に望んでいますなんてウソをつくのやめろ。他の人ならともかく俺はそういうウソはわかるから嫌いなんだよ」

「へー」

 

一に対してアイは表情が変化した。

先ほどまでの“愛想笑い”ではない何かを孕んだ笑顔。

その笑顔を見ても一は表情を変えない。

 

「すごい、すごい、驚かないの、はじめてだ」

「あっそ」

 

驚くアイを他所に一はもそもそと炒飯を頬ぼる。

 

「むぅ、つれないなぁ。もう少し聞いてくれても良いでしょ。それかはじめのことを教えてくれても」

 

咎めるアイの言葉に一は食べる手を止める。

 

「なら、俺は五歳の頃から戦場にいて、人を殺したのは十歳の時」

「え?」

「俺の母親は六歳の時に流れ弾にあたり即死、その際に地雷を踏んでしまった事から葬式をしようにも肉片一つ残らなかった」

「……それ、本当の話?」

「ウソついているようにみえる?」

 

首を横に振るアイ。

一はため息を零す。

 

「身の上話で同情をひきたいなら他所にしてくれ。悪いがアンタ以上にドロドロの過去を持っている上の奴はいるんだ」

 

戦場にでれば、嫌なものは沢山みてしまう。

幼いながらも戦場を駆け抜けた一にとって冷たい言い方になってしまうがその程度の感覚だ。

 

「……ねえねえ、はじめは人を愛したことある」

 

急に話が変わった事に呆れた一だが、アイの目をみて少しの間を置く。

 

「あれを愛したといえば、愛だったんだろう。だけど、なんでそんな話を?」

「私は愛を知りたい。誰も私を愛してくれなかったから愛してるって、どういうものなのか、ねぇ、はじめは私に愛しているが何かを教えてくれる?」

「それが依頼なら」

 

敢えて踏み込まない一。

もし、踏み込めばこの少女と深いかかわりを持ってしまうかもしれない。

護衛対象とは一定の距離を。

仕事の基本だ。

 

「じゃあ、依頼しようかな?」

 

アイは一を指さす。

 

「私に本当の愛を教えて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、おいしかった。ねね、この後はどうするの?」

「アパートまで送り届けるに決まってるでしょうが。未成年が夜遅くまで外に出ていたら補導されるわ」

「その時は佐藤社長に来てもらうから」

「絶対に文句言いながらも来そうだな。あの人」

 

クソアイドルといいながらもなんだかんだアイに甘い。

一は一日だけだが、斉藤社長の性格を把握していた。

 

「……こっち」

 

ちらりとある方向を見て一はアイの腕を掴むと足早に歩き出す。

 

「あれ、アパートの方向と」

「尾行されている」

 

アイだけに聞こえるようにぼそりと呟く一。

 

「びこう?」

「誰かが追いかけてきている」

「もしかして、私の追っかけかな?ほら、アイドルだし」

「そういう生易しいもんじゃないな。あれ」

 

道端に設置されているミラー越しに相手を見る。

全身黒服で屈強な肉体を持った男が三人。

 

「明らかにプロだよ」

 

アイの手を引いて近くの路地裏へ入り込む。

近くのごみ箱の隅へアイを屈ませてから左右の壁を蹴りあがる。

男の一人が角を曲がってきたタイミングで顔にキック。

 

「ぐっ!?」

 

衝撃で脳を揺らされた男の一人が気絶。

襲撃に気付いた一人が拳を繰り出すも、ひょいひょいと猫みたいに身軽な動きをして一は男の背後に回り込み手刀を入れる。

 

「コノガキ!」

 

最後の一人が懐から拳銃を抜こうとする。

 

「ほい」

 

ポケットからパチンコ玉を指で発射。

狙いは男の手。

パチンコ玉が当たり拳銃が落下する。

地面に落ちる寸前に着地した一が手に取り、構えた。

 

「まだ、やるかい?」

「うっ、貴様、一体」

「この子のボディーガードさ。今ならこの程度で済むから回れ右して帰ることをお勧めする。これ以上、やるなら」

 

トリガーに指をかける。

 

「体に二、三個、穴があくかもよ?」

「……くそっ!」

 

分が悪いと察した男は気絶した仲間を引きずるようにしてその場を離れる。

 

「全く」

 

一は奪った拳銃をくるくると回転させながらあっという間に解体してしまう。

 

「はじめ、もう、大丈夫?」

 

ゴミ箱の陰からおそるおそるアイが顔を出す。

 

「この程度の相手、プロなら楽勝だよ」

 

ポイっと拳銃を放り投げて一は言う。

アイはそんな一をみて、指をさす。

 

「?」

「決めた」

「何を?」

 

瞳の星が強い輝きを増したような気がした。

 

「私、はじめとセックスしたい」

 

 




これが一とアイの出会いになります。

ちなみに、冴羽獠さんはこの間、B小町のメンバーに呆れられたり色々ありながら距離を詰めております。

既に出会いの話は書きあがっているので手直ししたら近日中に投稿予定です。

もし、高校生になったアクアが名探偵コナンのメンバーと関わるなら、どれがいい?

  • 迷宮の十字路
  • ベイカー街の亡霊
  • 十四番目の標的
  • 世紀末の魔術師
  • 紺青の拳
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