「で、連れてきたと」
半眼で一をみる冴羽獠。
彼の目はちょこんとソファーに座っている星野アイ。
襲撃から時間が過ぎて場所はサエバマンション。
「本音を言えば、連れてきたくはなかった。しかし、相手は明らかにプロだった。住所特定の危険性を踏まえ、ここが安全と判断した」
淡々と事実を伝える一だが、その表情は嫌悪に満ちていた。
「ん?」
視線を向けられた星野アイは不思議そうに首を傾げる。
「アイちゃん。俺と一は大事な話があるから先にお風呂とかどーよ?」
「いいの?汗を沢山、かいちゃっていたから、お風呂お借りします~」
「タオルとかは置いてある奴使ってね~」
ひらひらと手を振る獠。
アイが去っていったことを確認して一をみる。
「彼女をここに連れてきた事は最善だろうな。槇村がさっき追加の情報を持ってきた」
「追加?」
「情報は二つ、一つは山丸組の話。俺達の考えていた通り、山丸組は壊滅していて苺プロダクションへちょっかいをかける余裕なんてない。二つ目はお前達を襲撃した連中の事だ。一の予想通り手練れ、モンキーズだ」
「モンキーズって、襲撃のプロはプロだけど」
「あぁ、不意打ちというよりテロ寄りの連中……この件、色々と面倒になりそうだ」
裏社会でモンキーズの知名度はそこそこある。
集団で行動し爆破、暗殺、過激な行動が目立ち、国家にテロリスト認定されつつある。
自分の想像以上に厄介な状況に一はため息を零す。
「そんなに嫌なら今回の仕事は俺がやろうか?」
「俺もプロなんだから引き受けた仕事は必ずやり遂げるよ」
一は裏社会の人間。
一流のスイーパー。
引き受けた仕事は必ず完遂する。
「ちなみに師匠的に十五歳以下からセックス誘われたら」
「もっこり対象外!」
真顔で答える獠。
「ですよねぇ」
「その様子だと彼女に何か言われたか?付き合ってくれとか」
「斜め上の回答だよ。俺とセックスしてって」
「どゆこと?」
流石の獠も二十手前の息子が中学生くらいの子から性行為について言われると思っていなかったのか飲んでいたビールを吹き出しそうになった。
「俺が言いたいよ」
◆
時間は少し遡る。
「私、はじめとセックスしたい」
「……寝言は寝てからいえ」
一は顔を顰める。
「ううん、本気だよ」
「何が本気だ。アイドルだろ、アンタは」
「アイドルだけど、恋愛している人いっぱいいるよ?確かニナ?さんも彼氏がいたような」
「それ、ニノさんじゃない?」
「あ、そうだっけ?」
アイドルのメンバーの名前くらい覚えておけよと心の中で思う。
「他がそうだからって自分もみたいな考えはやめておけ。そんなのは身を滅ぼす。何より俺みたいな男はやめておいた方がいい」
「なんで?」
きょとんと首を傾げるアイに一はため息を零す。
つい先ほど、屈強な男達を無力化したことを忘れたのだろうか。
「なんでも!とにかく、俺はセックスをしない!お前もしない!はい、これで話は終了」
「嫌だ!」
力強い言葉でアイは否定する。
「私、はじめとセックスしたい!それは嘘じゃないよ!」
「……とにかく!」
これ以上は泥沼になる。
一は会話を無理やり打ち切ることにした。
「本当はカミキ君とって考えていたけど、私ははじめとしたい!嘘と思われるかもしれないけれど、私ははじめとすれば、知れるかもしれない」
「……知る?」
アイが最後に漏らした言葉に引っかかりを覚えて尋ねる。
「愛しているって気持ち!」
◆
「おいおい、感情、出ているぞ」
獠に指摘されて一は手元をみる。
握りしめていた缶ジュースがぐしゃりと潰れていた。
「愛しているねぇ、お前にとっては難しいものだな」
「否定しない、てか、できないし」
一にとって愛しているという言葉は理解ができないものだった。
幼いころから戦場にいた一にとって無縁すぎるもの。
そんなものを星野アイから告げられた。
「俺はどうしたらいいんでしょうか?」
「さぁな。そこは一が決めることだ。だが」
飲んでいた手を止めて獠は真っすぐに一をみる。
「依頼人が求めているものがただもっこりしたいのか、どうなのか考えることだな」
「師匠ならどうします?」
「……俺なら」
飲んでいた缶を机に置いて。
「少女はもっこり対象外でーす!」
「…………真面目に聞いた俺がバカだった」
騒ぐ獠を置いて一は部屋の外に出る。
「あ、はじめ~~」
外に出た所で髪を拭いているアイと遭遇する。
「お前、なんて格好だ」
「着替えもってくるの忘れちゃったから」
「俺のシャツなんだが?」
「彼シャツだ~!」
「違うと思うぞ」
アイは一が使っているシャツを着ていた。
すらりとした足が伸びている。
獠なら鼻の舌を伸ばしたかもしれないが一は平然としていた。
「はじめはこの後、どうするの?」
「護衛中だから近くの部屋で待機だ」
相手がモンキーズというのならこの場所を特定している可能性がある。
アイがここにいると知れば襲撃がありえた。
「え、じゃあ、一緒の部屋にいようよ!お話しよう!」
「……」
「うわ、嫌そうな顔だ」
「さっきあんなことを言われたらな」
セックスしたいとその日にいわれて一緒の部屋にいたいかと言われたら答えはノーである。
「うん、本当に嫌そうだし、セックスは絶対にしないと約束するから」
「アイドルは嘘つきなんだろ?」
「そこは信じてもらえたら、なーんて」
「……はぁ、護衛対象だから一緒の部屋にいるのは当然だな。必要以上に近付くなよ!」
「はーい!」
両手を挙げて喜ぶアイの姿に一はため息を零した。
◆
「距離あけすぎじゃない?」
「必要以上に密着するのは好きじゃない」
ベッドに腰掛けているアイから一定の距離をとっている。
むすぅとアイは頬を膨らませていた。
「さえむろさんは好きそうだけど」
「師匠と一緒にしないでもらいたい」
スイーパーとしての腕は尊敬しているが女性と接する時程に危ないものはない。
何度、痴漢、犯罪者と間違えられて制裁を受けているのか。
思い出しただけで片頭痛がしてきて、一は額に手を当てる。
「ねえねえ、お話しよう」
「明日も仕事だろ?寝ないのか?」
護衛対象の予定は一の頭に入っている。
「午後から練習だから大丈夫!」
どうやらアイドルとしてのプロ意識はあるらしい。
「ねぇねぇ、はじめは愛しているっていったことある」
「ない」
「私もない」
そこで沈黙が広がる。
「おい、続きは?」
「ないよ。はじめが知っていれば聞こうと思ったけど」
「……前から気になっていたがなんで愛しているに拘るんだ?」
前から気にはなっていた。
どうして目の前の少女は愛しているという言葉をそこまで望むのか。
一は少しアイという少女が気になった。
「うーんと、ね」
少しの間を置いてアイは過去を話す。
母親が捕まった。
そこから孤児院へ。
孤児院の生活から斉藤に見いだされてアイドルへ。
アイドルは愛していると伝える。
アイは「愛している」を知らない。
自分は嘘を相手へ伝えているのだ。
嘘つきのアイドル。
だから、愛を知りたい。
愛しているを知れば、嘘つきな自分も本当になれるかもしれない。
そんな気持ちから星野アイは「愛を知りたい」と思う。
「ふーん」
「はじめは?はじめは愛しているって言いたいとか、言われたくないの」
「ないな」
迷わずに一は言う。
「俺は、愛してもらえると思っていないからな」
「え?」
アイが尋ねようとした瞬間。一がアイへ飛び掛かる。
「ふぇ?」
ぽかんとしているアイを抱きかかえるようにしながらベッドの下へ転がり込む。
少し遅れて壁を貫通して複数の弾丸がアイ達のいた部屋に降り注ぐ。
窓側から離れていたが強力な弾丸が次々と降ってきた。
「おいおい、防弾ガラスだぞ?何を撃ち込んできているんだ?」
呆れながら一はアイを守る。
「どうするの?」
「肝座っているな、おい」
裏世界に無縁な女の子なら悲鳴を上げているがアイは平然としていた。
泣きわめいてほしいというわけではないけれども、ここまで肝が据わっているとびっくりである。
しばらくして銃撃が収まる。
一は銃を構えながらゆっくりと外を覗き見た。
「おーおー、重武装だな。戦争でもするつもりか?」
ガトリングやマシンガンを構えている姿を確認してため息を零す。
この襲撃は獠も察知している。
既に別の場所で狙撃準備をしていた。
「ねえねえ、はじめ。私はどうしたらいい?声を出すとか」
「そんなことをする必要はないよ」
コルト・パイソン357マグナムを握りなおして構える。
狙う先はあそこだ。
一の放った弾丸はマシンガンを構えていた男の腕に直撃。
「あそこだ!」
仲間が撃たれたというのに駆け寄ることなく発砲のあった部屋に向かうモンキーズ。
「あ、きちゃうよ?」
「その方が都合、良いんだ」
直後、廊下から大きな音や悲鳴が次々と聞こえてくる。
「よし、良いだろう」
しばらくして音が収まったことを確認して一はアイの手を引いて外に出る。
「うわ、すごいことになっている」
アイの言葉通り、男達は金タライやハンマー、トゲ付きメイス等のトラップによって悲惨な状態になっていた。
サエバハウスは要人警護等で依頼人を連れてくることがある。
襲撃者対策として様々なトラップを設置していた。
トラップについては裏社会で名高いある男の指導を受けた一が設置したものである。
「さて、外は師匠が鎮圧してくれているからこのまま――」
「え、わわ!?」
外に出ようとしたアイを部屋に戻しながらその場から離れる。
一がいた場所にナイフが突き刺さった。
「きひひひひ、外しちまったか」
静かにコルト・パイソンマグナムを襲撃者へ向ける。
「猿というより蛇だな」
襲撃者は今までの連中と比べて細い男だ。
手足も異様に細く、細目から覗く瞳は溢れんばかりの狂気を孕んでいる。
――コイツは色んな意味でヤバイ奴だ。
「只の小娘拉致の依頼かと思ったが、お前ら何者だ」
「そっちこそ、プロがなぜ無銘のアイドルを狙う?」
片手でナイフを遊ばせながら男が尋ねる。
倒すだけなら難なくできるだろう。
だが、モンキーズがなぜ星野アイを狙うのか知る必要がある。
情報収集に意識を向けた。
「裏社会に身を置いているならわかるだろう?依頼は完遂する」
「アイドルを殺すってのが?拉致かと思ったんだけど?」
「無理なら殺せ、だ。生きていると抵抗するから俺は殺すことにしているのさ」
ペラペラと話す男は嬉しそうにナイフを構える。
「裏社会に身を置いているにしては喋りすぎなんじゃない?」
「お前も殺すんだから問題ないさ」
「それは無理だな。俺達はそう簡単に殺せない」
「きひひひひひ!」
笑いながら迫るナイフを躱しながらがら空きの胴へ拳を入れる。
「てめっ!」
顔を顰めながら次々と刺突を繰り返すがそれらを一は躱す。
「な、何者だ。こうも躱されるなんて」
「経験がないって?それはアンタが未熟だからさ」
「この、ガキィ!」
あと一歩踏み出そうとした男よりも早く前に踏み込む。
「さ、ネンネしな!」
相手を無力化させようとした瞬間、床を転がる手榴弾。
「チッ」
踏み込みをキャンセルしてアイがいる部屋の扉を閉める。
「え、なに、なに!?」
驚くアイに覆いかぶさり床へ伏せる。
少し遅れて扉の向こうで爆発、黒煙が隙間から漏れた。
「大丈夫か…………って、何しているんだ?」
アイの顔を見ると目を閉じて唇を突き出している。
「え、キスをしてくれるんじゃないの?」
「誰がするか!?こんなロマンもへったくれもない場所で」
「ロマンがある場所ならしてくれるの?…………そういうところって、どこになるのかな?」
「そりゃ夜景が素敵なって、何を言わせるんだ!?」
「おーおー、進展しているようで」
聞こえた声にぎくりと反応して一は振り返る。
扉は開かれ、壁にもたれる冴羽獠の姿があった。
「ち、ちが」
「えへへへ」
嬉しそうな顔をしているアイに一は苛立ち堪えるようにため息を漏らす。
◆
「襲撃されたと聞いたが大丈夫……か?一は」
ファミレスの一角。
槇村と合流した獠と一。
テーブルの上に突っ伏している一の姿に槇村は不思議そうに尋ねる。
「気にしないでください……うん、気にしないで欲しい」
「一に春がきたのよう~」
にやにやと笑う獠に対して反論する気もない程に一は疲労していた。
「何かあったのか?」
「ぐふふふふふ、実は」
「俺が話すので大丈夫です。てか、黙れ。黙らないと口に鉛玉押し込んでやる」
顔を上げた一は理由を説明する。
説明するまでもないが疲労の原因は星野アイ。
『堀江一とセックスする』なんていう目的を掲げ、さらに言うとモンキーズ襲撃時に守ってもらえたことからよりその気持ちは強くなっているらしい。
襲撃後、まさかの一の寝込みを襲ってきたのである。
大人しくしているかと思ったらまさかの行動に流石の一も面食らったのはいうまでもない。
攻防戦は朝まで続いた。
護衛対象故に暴力を振るうわけにいかない。
その事をわかっているのかアイは全力で迫ってきた。
未成年で肉食獣とは一日も経たずに疲弊に包まれている。
一睡もしていない筈なのにアイはけろっとした態度で仕事に挑んでいる。
「まだこーんな小さかったはじめちゃんが、お嫁さんをとるのもちかいかしらぁ?」
「(無言の殺意)」
「じ、冗談だって」
「流石の一も女の子相手は苦労するわけか……さて、仕事の話に戻ろうか。モンキーズの件だが、調べたところ山丸組をカモフラージュして海外のマフィアが依頼をしていることがわかった」
「既に壊滅しているヤクザをカモフラージュにマフィアだぁ?」
「正確に言えばマフィアのトップの一人息子だな。えーっと、ネルコファミリーのトラボルタ・アスグース」
「……成程ね」
槇村の報告で獠が頷く。
隣にいた一も同意していた。
「ん?どうしたんだ?」
「今回の依頼、なんで彼女が狙われるのかわかったってことさ」
「ネルコファミリーのトラボルタ・アスグースって、よくない話で有名な奴です」
一の知るトラボルタ・アスグースという男はマフィアの後継者でありながら歪んだ嗜好をもつ。
それが有名になる可能性、開花しそうな様々なジャンルの若者たちの芽を摘むこと。
表ざたにならず、様々な人間を金の力を用いて拉致して目の前で殺す。
「歪んでいるな」
「そんな奴がどうしてアイちゃんを狙っているのかだが」
「それなら、心当たりがある」
槇村がノートパソコンを操作する。
「海外のサイトに展開されたB小町のライブ映像だ。おそらくこれをみて、トラボルタ・アスグースは彼女に目を付けたのだろう」
「師匠、これって」
「あぁ」
「ん?」
動画を見て、一と獠はある可能性に至る。
「これは観客席じゃない。撮影の位置からして内部の人間」
「あ、その反応からして目星つけてますね?」
「本当なのか?獠!?」
ドリンクを飲み干して獠は立ち上がる。
「こっちの件は俺に任せてくれ。アイちゃんの件は一、お前に任せていいか?」
「えぇ」
嫌そうな顔をする一の額に獠は指をつきさす。
「プロなら選り好みするな。何より良い機会じゃないか?愛を知りたい女の子と愛を知らない男、どういう愛がいいのかってな」
「そんなこと」
「少しくらい、青春を満喫しな。若人よ!じゃっ!」
そういって去っていく獠。
「あんなことをいっているがお前の事を心配しているんだ」
「それくらい、わかっていますよ。付き合い長いですし」
「……じゃあ、これ」
「なんです?」
槇村が差し出したファイルを手に取る。
「星野アイについての経歴だ。まぁ、俺からのお節介だ」
無言でぺらぺらと資料に目を通す。
「ありがとう。槇村さん」
「追加の情報だ。モンキーズのメンバーにアナコンダという男が参加したらしい。ナイフで相手の喉を掻っ切るのが特技らしい」
「嫌な趣味だこと、あのひょろひょろがまじもんの蛇か~」
「腕は確かだ。まぁ、獠や一がミスなんてことはしないと信じているが」
「勿論、なんだかんだいわれても俺達はプロですから」
お金をテーブルの上に置く一。
「仕事は必ずやりとげます。ついでにアイドルへ要らぬお節介をやいたりしますよ。師匠もやっているようですし」
「……ま、頑張れよ」
◆
「何やってんだ?」
一が外にいるアイへ声をかける。
「さえむらさんがみんなと話をしていて~、入りづらいの」
「師匠の奴、早速、行動を起こしたのか」
「うん?」
「別に」
「ねね、はじめ、お話ししようよ」
「あー、うん。いいぞ」
目を丸くするアイを連れて景色が見える建物の屋上へ連れ出す。
「おー、遠くまでみえるね」
「俺の気に入っている場所の一つだ。色々考え事をしたいときにくる」
手すりから身を乗り出すアイ。
「落ちるなよ」
「アイドルだよ?この程度、大丈夫~!」
笑顔で答えるアイへ一は本題を切り出すことにした。
「俺は恋愛とか、誰かを愛するって事はよくわかっていない」
一の言葉にアイは答えない。
キラキラと輝く双眸が向けられる。
「俺は父親を知らない。母親は戦場で流れ弾に当たり死亡。遺体は地雷によって欠片も残らなかった。その後は少年兵として戦地を転々としてきた」
懐からコルト・パイソンマグナムを取り出す。
「こいつが唯一無二の相棒で信じられる存在だった。大事に使えばちゃんと応えてくれる。行動する人間も完全に信頼をおいた奴は少ない」
今は違うけどなと一の脳裏に浮かぶのは獠、槇村、そして。
「そっか」
アイは手すりに背を預けて一をみる。
「どうして、会った時からはじめが険しい表情をしているのか不思議だったんだ。どうして、私と話をしているときに険しいのか。さっきの話を聞いてわかったよ」
一歩、アイが踏み出す。
「はじめはわかるんだね?相手が嘘をついているかどうか。はじめは人を信じていなかった。だから、私を見て、顔を顰めていたんだ。私を」
――嘘つきだと見抜いているから。
「そうだな」
一は認める。
「一目見た時から、あぁ、こいつは嘘つきだとわかった。ただ、直感だ。その後にアイドルとして愛していると囁いている姿に嫌悪感があった。それは似ていると感じたからだろう。信じていないのに、思ってもいない事をベラベラと話すかつての俺と、ね」
だから嫌悪していた、警戒していた。
もしかしたら裏で何かしているのかもしれないと。
「まぁ、俺の予想斜め上の事態になっているけど」
「じゃあ、どうして今は人助けのようなことをしているの?」
「救われたから」
その質問に対して一は迷わずに答えられる。
助けてもらった、救ってもらえた。
だから、自分も―。
「いいなぁ、はじめはそういう人と出会えたんだね。羨ましいなぁ」
「斉藤社長はそういう人に当たらないのか?」
「そうかもしれないけれど、私は愛が知りたい。そのきっかけの人。流石にみやこさんがいるからそんなことできないし」
惚けた態度をとりながらも周りを見ている。
「だから、愛を教えてくれる人を探しているの。そうして、私と似たようで違う貴方に興味を持った。もしかしたら貴方なら私に愛を教えてくれるかもって」
「それで体を重ねるというのは飛躍しているんじゃないか?」
「だって、子どもができたら愛しているかどうかわかるかもしれないし」
「……飛躍しすぎだって」
予想の斜め上の回答をしてくる彼女に一はなんともいえない表情を浮かべてしまった。
「悪いが俺は愛していることを教えられない。そんな俺と体を重ねても愛しているなんて説明できない」
「そっかー」
「だが」
一は一歩、ようやく前に踏み出す。
「星野アイ、俺に依頼をしてくれ」
「依頼?」
「あぁ、俺はプロのスイーパーだ。依頼さえしてくれれば、プロは必ず達成する」
「愛しているを知らないのに?」
「依頼してくれれば、どれだけ時間をかけても俺はお前に愛を教えてやる。いや、教えて見せるさ」
「こんな――」
「よぉ、シティーハンター」
聞こえた声に一はアイを庇う様に動く。
「大事な話中だ。失せろよ」
「そうはいかない。こっちも仕事でねぇ」
チロチロとナイフを舌で舐めながら男は話す。
「おっとぉ、変な動きするなよぉ、スナイパーが狙っているからな?」
赤外線ライトが一の心臓部へ向けられていた。
「用意周到だことで」
「相手がCITYHUNTERで更にSILVEREYEと聞いたら念入りにすることは必要だろう?」
「それで?俺を始末してアイを殺すって?」
「そうすれば楽なんだが面倒な依頼を受けてなぁ。おい、てめぇは動くな。小娘こっちにこい」
「え、私?」
「そうだ。依頼主が直接、お会いしたいそうだ。だが、お前が邪魔なんだよ。シティーハンター」
一が何かを言う前にアイがアナコンダの方へ歩みだす。
「行くのか?」
「えっと……………XYZだっけ?」
尋ねる一にアイが告げるのは依頼の合図。
「堀江一さん。もし、貴方が本当に、本当に、私の依頼を受けてくれるなら……待っているね?」
告げるとアイは振り返らずにアナコンダの下へ向かう。
アナコンダは警戒を続けながらアイを連れて去っていく。
少し遅れて銃弾が一を貫いた。
次回で後編でアイの出会い編終了です。
その後は銀狐の話を書くか、グッバイ、槇村の話にするか、少し考えるとしよう。
よろしくお願いします。
もし、高校生になったアクアが名探偵コナンのメンバーと関わるなら、どれがいい?
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迷宮の十字路
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ベイカー街の亡霊
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十四番目の標的
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世紀末の魔術師
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紺青の拳