HERO×HERO   作:ティファールは邪道

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2話:探索と邂逅

「具現化系能力者はな、己が形にしたいものを、それこそ狂うほどに愛し、触れ、知り尽くさねばならん。まずは対象の『本物』を、その手と脳髄に叩き込むことから始めるんじゃ」

 

ー具体的に言うと、とにかく具現化したい物に触れ続けるんじゃ…。それこそ幻覚が見えるどころか触った感触が抜けなくなるくらいの…

 

夢の中で夢仙人が授けた言葉は、あまりにも重かった

 

「マントを具現化する」――そう決めた出久だったが、ただのイメージだけでは、現実に生み出そうとしても霧のように霧散してしまう。繊維の一本一本、染料の匂いや味…風を孕んだ時の重み

そのすべてを五感で知り、再現しなくてはならないのである…

つまり、出久がやらなくてはならないのは…

 

「具現化したい布を見付け、理解すること…」

 

学校の放課後…

出久は気がつけば、隣町の大きな手芸専門店や、ヴィンテージの古着が並ぶ専門店街を巡っていた…

プロヒーローが使うコスチューム、その特殊繊維を取り扱っているお店がこの辺りにあるのだ…

 

っといっても、敷居が高いし、本物のヒーローが扱う坊刃防弾、防火防水製のモノを買うのは少し難しい…

だが、触ること、見ることは只で出来るのだ…

 

「…う~ん…これも違う…こっちも何か違う…」

 

そんなお店のなか…

様々な色や材質が並ぶ棚であぁでもない、こぉでもない…っと吟味する出久…

 

具現化したいマントのベースとなる布…

自分にふさわしいそれを探し始めて早3日…

店員さんからも頭に?を浮かべられるくらいには顔を覚えられてしまっていた…

 

「(これは……ナイロン混紡? 軽いけど、これじゃ風に負けちゃうし、熱…っていうより火に弱そう。こっちのは……ウールが入ってるのかな。重厚だけど、雨を吸ったら動きが鈍くなるしマントには向かなさそう……。こっちはビニール?…いや、テーブルにすいたりするのに使う厚手のタイプか…水も弾くし汚れづらそうだけど、硬いし重いしで僕には向かないかな…)」

 

出久のブツブツとした呟きが、静かな店内に響く…

そして彼は一枚の、赤い布に手を触れた…

 

その瞬間

 

「…失礼、君…少しいいか?」

 

背後から声がかけられた

出久は心臓が跳ね上がるのを感じて、勢いよく振り返る…

 

そこに立っていたのは、ぼさぼさの黒髪に、酷く鋭い三白眼の、ひょろりとした体躯の男だった…

 

その目は、眠そうでありながらも、出久のすべてを見透かすような、圧倒的な「気配」を放っている

 

「うわぁあッ!? す、すみません! 勝手に触って……!」

 

「いや、構わん…ここは売り物なら、触って確かめる店だし、俺は店員じゃないから注意できる立場じゃないしな。……だが、お前、さっきから随分と熱心に見てるな。布の強度や実用性を、まるでこれから『戦場』にでも持って行くような目で」

 

その男――雄英高校の教師であり、プロヒーローの相澤消太…ヒーロー名、イレイザー・ヘッドは、気怠げに出久をじっと見つめていた

 

今日は非番なのだが上司に頼まれていた学校で使うカーテンの交換及びクリーニングの手続きにこの店を訪れていたのだ…

 

出久の「纏」はまだ未熟で、感情の昂ぶりと共に、微かにオーラが漏れ出てしまうときがある…

 

それをプロである相澤には、その「ただの一般人ではない、奇妙な熱量」が、違和感として引っかかってしまい、声をかけたのだそうだ…

 

「あ、あの! 僕……その、ヒーローの、マントが……人々を救う時に、どんな風に機能しているのか、知りたくて……!」

 

出久は必死に言い訳を探すが、嘘をつけない性格が災いし、声が上擦る

 

「マント、ね。確かに見栄えはいいが、本格的に活動する際に当たっては邪魔になることも多い。敵(ヴィラン)に掴まれるリスク、視界を遮ってしまうリスク、構造物に引っかかるリスク……。俺に言わせれば、あれは見栄えも大切にするヒーローにとってのアクセサリーのようなもので、本格的に活動するに当たっては足枷になり得る、非合理の塊だが?」

 

相澤の容赦のない言葉。それは「ヒーローの象徴」を盲信する出久にとって、冷水を浴びせられるような言葉であると同時に別視点からの、着眼点でもあった…

 

「成る程……街中で活動するヒーローにとっては確かに邪魔になりうる…負傷した人達に包帯や毛布、人々の心を安心させるための目印といったいい方にばかり目がいっていて、デメリットを考えていなかった…思い返してみれば確かにオールマイトとかギャングオルカとかマントを身に付けているヒーローが少ないし、いても上位の実力のあるヒーローが大半だ…」

 

出久はそう言いながらブツブツと自分の思考に入ってしまう…

 

それを見た相澤は「…まぁ、関係なしに話し掛けたのは合理的じゃなかったか…」

 

そう思いながら、離れようとした

 

が、

 

ーパチッ

 

「っ!?」

 

出久から漏れ出たオーラに反応して、足を止めてしまう

 

「…いや、僕の場合はマントを武器にして戦ったり救ったりすることを考えればいいから、寧ろ利点になる…だとすると僕がマントにすべき布の性質は…」

 

ブツブツいいながら布を探す出久を見て、相澤は困惑する…

その目が、狂気的なまでの輝きを放つ…

瞬間、出久の体から、本人が無意識のうちに激しいオーラが吹き出し、店内の古い空気をごう、と揺らした…

 

相澤の目が見開かれる

 

「(なんだ……!? 個性か……? だとしたらなんだ、このプレッシャーは……!?)」

 

ー子供が放つレベルじゃない!!

思わず、身構えてしまう…

 

「…これだ…」

 

が、相澤のそんな様子に気付かず、一つの布を手に取り、確認する…

それは、すこし白みがかった緑…

俗にいうミントグリーン色の坊刃、防弾そして耐火性に優れているだけでなく、伸縮性も併せ持つタイプの布だった…

その布を手にした瞬間、オーラが落ち着きそれを感じた相澤も警戒を解いた…

 

ー一応、調べておくか…

 

布を手に取りながら、値段を見て買えないか考える出久を見ながらそう考えた相澤は出久に気付かれぬように後にするのであった…

 

______________

 

その夜…

 

夢の中の道場で、出久は夢仙人の前に座っていた

出久の表情は、昼間の疲れを微塵も感じさせない、確信に満ちたものだった

 

「師匠……掴めました。僕が、具現化すべき、マントの『質』が……!」

 

「ほう? よい出会いがあったようじゃな。お主のオーラが、昼間とは見違えるほど『形』を求めて蠢いておるわい」

 

夢仙人は満足そうに髭を撫で、豪快に笑った

 

「よし! ならばこれより、本格的な『具現化』の修行に入る! 脳内に刻んだその手触りを、己のオーラで一寸の狂いもなく再現してみせよ、出久!!」

 

「はい……!!」

 

夢仙人の言葉に、出久は力強く頷くのであった…

 

「あ、師匠…モデルにする布なんですが、結構値段が張ってハンカチくらいの大きさしか買えなかったんですが良かったですかね?」

 

「お主の場合は布を理解することから始めた方が良いだろうから大丈夫じゃよ」

 

出久が気になっていたことを軽く返事しながら夢仙人はテレビをつけたり準備するのであった…

 

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