見習い魔女エマの紀行録   作:クエクト1030

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降る雪の日。世界と別れを告げ、世界と顔を合わせる。


42日目、入界 1/2

 その日の朝は、雪がとても高く積もってた。

外からはドサ、っていう雪が落ちる音がたびたび聞こえる。

寒いから布団に籠っていたかったけど、身体をさすりながら何とか出たの。

リビングに降りると、ママは朝ごはんの支度をしていた。ココアのいい匂いがしたな。

それで、作ったココアを飲んでから、パパを手伝ってきてって言った。

パパはもう起きていて、屋根に登って雪を落としてた。

丁度屋根の分は落とし終わったのか降りてきて、次は落とした雪と、積もった雪を掃き始めてた。

パパも私も、雪が降ったとなると着膨れするのは毎年のことで、身体どうにかなるんだけど、それでも露出しちゃう顔は赤くなる。

鼻と耳が真っ赤になってて、パパとっても寒そうだった。実際寒いんだけどさ。

私はココアを飲み干してから、ブーツを履いて雪かきを手伝いに外へ出た。

玄関を扉を開く音でパパは私に気がつく。

おはよう、今日は寒いね。なんて、お互いに言葉を交わしつつ、

私は物置まで歩いて、立てかけてある雪かきを手に取って一緒に雪かきをする。

雪かきをしている最中も、しんしんと雪は降り、積もり続ける。

だからパパは、これじゃキリがないなぁ、なんて茶化しながら雪を掃いてる。

降り続けているから確かに全部は無理だけど、通るための道は必要だからね。

私も続いて、道路までの道と車が倒れるだけの幅を掃き続けた。

身体も温まって少し汗をかいた所で、リビングの窓が開き、ママの声が聞こえた。

ごはん出来たよ。戻ってきて。

雪かきも丁度ひと段落ついたから、私とパパは玄関前でしっかりと

雪を落としてから家に戻った。

玄関で変えたブーツには、朝の一仕事の名残雪が残っていた。

 


 

朝ごはんを食べ終えると、前日までに準備しておいたキャリーケースを玄関まで引っ張ってくる。

パパとママは心配そうな顔と祝福の顔、泣きそうな顔でぐちゃぐちゃな表情をしてた。

多分、私もそうだったと思う。だって鼻の頭と目の間が熱かったから。

けど、このまま普通の人のように育つわけにはいかない。

だからサインをして…今日を迎えたんだ。

 

玄関の扉を開けると、二人の女性...魔女が、立っていた。

前回きた魔女とは違って、見た目的には「人」って感じの雰囲気がちゃんとしてる...

というか、高校生とか大学生くらいの人が綺麗なコスプレしてるみたいに思える。

こっちの方がすごい親近感が湧く!

それでも二人はとても丁寧な口調と、作法で以て私を案内してくれるみたい。

 

「お迎えにあがりました。エマ・モルゲヴォーネン様」

「そちらは父親のヨハン様、母親のカトリナ様でよろしいでしょうか」

「私どもは本日、ご息女のエマ様を魔法世界へと移界する案内人でございます。」

「私はジョフィア。こちらはアイリスと申します。」

「どうぞよろしくお願いいたします」

 

魔女の二人はとっても丁寧に挨拶してくれた。

パパとママも今日の不安が少しだけ和らいだ感じがしたな。

 

「先の書類に記載された通り、座標の記憶は消去させていただきますが」

「ウィッチウォークへ移動するまで、お見送りすることが可能です」

「如何しますか?」

「勿論、同行させて欲しい」

「かしこまりました」

 

私たちは外に停められていたフォルクスワーゲンに促され乗車した。

え、フォルクスワーゲン?魔法じゃなくて車なのか?

そう思うよね。私も思った。

 

「ふふ。途中までの移動は車を使用した方が何かと都合がいいんですよ」

 

困惑する私たちの反応を待っていたように、揶揄うような声をジョフィアさんが出す。

 

「ジョフィ、あんまり揶揄っちゃダメだよ」

「ふふ。そうね、ごめんなさい」

 

アイリスさんはジョフィアさんの事をジョフィ、って略してるみたい。

きっと二人は仲がとってもいいんだろうな。

 


 

半日ほどジョフィアさんの運転に揺られる。

外の景色や眺めると、黒い森へと向かっているのが見えた。

南西にかなり走ってたみたい。日が落ち始めてる。

 

黒い森の一角に到着すると、ジョフィアさんは車を停めて降りるように促す。

そのまま黒い森の中に歩いて行って、すごく大きな樹まで案内してくれた。

 

「あれ?こんな樹あったっけ?」

 

黒い森は、ドイツトウヒっていう樹木の森で、勿論高く伸びる...けど、

案内された樹木の大きさは周りのドイツトウヒよりもずっと大きかったんだ。

幹の太さの全く違うし。

それに、この樹の幹にはとっても大きな虚が空いてた。

 

「これは魔法の樹なんです」

「この樹が魔法世界へと通じるゲートの一つ」

「虚の中に飛び込めば渡れますよ」

 

そっと遠くから虚を覗き込むと、内側の樹皮が見えることもなくて、

真っ黒な暗闇が広がってた。

 

「大丈夫、なんですよね?」

「大丈夫。信じてください。」

「証拠として、私が先に行きましょう」

「アイリス、後は頼んだわよ」

「ん、分かった」

 

そう言うと、ジョフィアさんは虚に足を踏み入れて...消えていった。

私たちが驚いていると、アイリスさんが私たちに

 

「ここまでの案内の記憶は消える、けど」

「送り出した記憶は消えない」

「から」

「ちゃんと挨拶した方がいい、と思う」

 

そう言って、私たちから離れた。

パパもママも戸惑ってるから、私が切り出してあげたの。

 

「パパ!ママ!私行ってくるね!」

「り〜〜〜っぱな魔女になって帰ってくるよ!」

 

笑顔でそう言った。

パパとママは私の言葉でハッとして、抱きしめてくれた。

 

「あぁ。頑張れ、応援してるからな...!」

「帰ってくるの、待ってるからね」

 

私も抱きしめる。

別にこんじょーの別れじゃないけど、パパとママとは別になって、

一人暮らしするのは不安で寂しかったから。ちょっと泣いちゃった。

 

「行ってくる!」

 

私は手を振って虚の中に入る。

パパとママは私が消えるまで、手を振り続けてくれていた。

 


 

気がつくと森とは全く異なる場所に着いていた。

 

「わぁ〜〜〜〜〜!!!」

 

そこはー、中世の街並みって言えばいいのかな?

お城はないけど、煉瓦作りの建物がいっぱいで。

何よりも、空を飛んでる人がいっぱい!

私はその街の外れの方に立っていて、すぐ近くにはジョフィアさんがいた。

ジョフィアさんは箒に腰をかけて浮かんでて、私に気がつくと地面に降りたの。

 

「ようこそエマさん。魔法世界、魔女紀行、ウィッチウォークへ」

「改めて、歓迎するわ」

 

古い街並みに空飛ぶ魔女たち、満ち満ちる魔力、抑えきれない好奇心。

私の紀行は、ここから始まるんだ。




「見習い魔女エマの紀行録」は、大体二週間に一本出せたらいいなーくらいで進めたいと考えています。次話もお楽しみに〜!
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