見習い魔女エマの紀行録   作:クエクト1030

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明るい昼間に楽しく忙しい一日が訪れる。


145日目、午前の魔法

 キーン、コーン、カーン、コーン。

 二限目の授業の鐘が鳴り響いて────ドガーン! と爆発音が鳴り響く。

 

 そう、今日の二限目は魔法実習! 即ち!

 

 

「それでは。生徒対生徒、魔法戦を開始します」

「杖を構えて。」

「…………始めッ!」

 

 

「先手必勝ぉ! 『炎の玉(フォイヤーバル)』!」

 

「『そよ風に流されよ(ヴィールヒ)』……『突風よ吹け(ウラガーン)』」

 

「え、うそもっと燃えないの!? うわーーーん」

 

 

 私の必殺のフォイアーバルが風に流されて消えて、その後の突風に吹き飛ばされて場外負けになる。

 

 

「勝負あり。勝者、アナスタシア。」

 

「うぐぐ……ありがとうございましたっ」

 

「ありがとうございました。」

 

 

 私たちはお互いに礼をして一試合が終わった。

 魔法戦、って言っても魔女って魔法を使っていっぱい戦う人ばかりじゃなくて、研究者とか開発者になる人の方が多いんだって。でも、護身のためと、幅広い知識や経験のためにも、こうやって魔法の模擬戦闘? をするようになった……ってこの前の授業で教わったの。えへへ。

 

 

「くそぉー、強いなぁアナスタシアちゃん」

 

「ねー。そうそう、知ってる? アナスタシアちゃんって、もうランク2の魔法に手を出してるらしいよ?」

 

「ランク2の? 風魔法なのかな、すごいなー」

 

「そりゃ勝てないよね〜」

 

「メアリー、一言余計ーーー!」

 

「ごめんごめん、叩かないで叩かないで」

 

 

 観戦席……って言うほどじゃないけど、屋外の運動場に立てられてるパラソルの下で他の子の試合を見ながら、アメリカから来たメアリーと話してたんだ。あぁ運動場じゃなくて正式名称は魔法戦闘用屋外実験場……だっけかな? まぁめんどくさいから運動場ってみんな言ってるけど。

 

 

「私たちはまだランク1だよね〜」

 

「それが普通じゃなーい?」

 

「確かに〜」

「メアリーは音属性が得意だったよね、どう?」

 

「そうだね。うーん、まぁ音とか衝撃とかは少し…?」

「まだ音属性の力は全然。それなのにだよ?」

「普通にさ、音属性に適性あって、じゃあ音魔法を使うようにしよーって思って、まだ本領発揮できてないのに、みんなもう若干引いてるの。おかしくと思うんだけど!?」

 

「まだランク1なんだから大したこと出来ないはずなのにね」

 

「エーーーマーーー!!! 一言余計!!!」

 

「痛い痛い、ごめんってメアリー!」

 

 

 魔女以外にも全ての人や物には属性というものがあって、魔法を使うには、この適性のある属性の魔法である方が覚えるのも使うのも簡単なんだ。簡単、ってだけで、適性が無くても色々補助とか準備すれば全然使えるみたいだけどね。

 ちなみに音属性は音による暗示で精神操作することが出来る魔法のイメージがかなり強いから、音魔法使いは音魔法を使うってだけで嫌煙されちゃうんだって。

 

「エマはどうなのよ。火属性の術式全然覚えてないんじゃないの〜?」

 

「むぐ……だって勉強……めんどくさいんだもん……」

 

「それじゃあいつまで経っても朝日の魔女ちゃんね〜〜〜おーよちよち」

 

「馬鹿にするなー! いいもんね、じゃあ頑張ってメアリーより先に黎明の魔女になるもんね〜」

 

「はいはい、頑張ってねマッチガールちゃん」

「あ、そろそろ私の番みたい。行ってくるねー」

 

「頑張ってねー、ケツドラムちゃん」

 

 

 メアリーは私に中指を突き立てながら試合に出て行った。結構いい戦いをしたみたいで、最初は魔法をお互いに乱打してたけど、最後にメアリーが先に魔力切れになって、相手から魔力弾を当てられてゲームオーバー。

 乱打して相殺しあってる時の音はすごかったなぁ、ぶつかる度に爆発音に近い音がするんだもん。

 

「はいおかえり」

 

「ぜぇ……ぜぇ……あともうちょっとだったのに」

 

「相手も魔力ほとんど無くなってたのにね〜、これで敗者仲間〜」

 

「ふん。エマと違って私は接戦だったし。」

 

 

 また駄弁っていると、流石に時間もかなり過ぎたからまたチャイムの音が聞こえて、授業が終わりになったんだよね。

 けど、今日の一頁はまだ終わらないんだ。ヤーパンで有名なタレントの言葉を借りるなら……ここからが、マグマなのだ!

 

 

 


 

 

「五限目ですが、今日はそれぞれペアを組んで黒い朝日相当の仕事を行ってもらいます」

「ペアは先生の方で決めたので、名前を呼びますから来てください。まずは────」

 

 

 そう、マグマとは即ち! 魔女になってからの初仕事!

 ……生徒の内からお仕事するの!? と、思ったけど、これも勉強と経験のためなんだって。あ、ちなみに「黒い朝日」っていうのは、お仕事とかの危険度の事を指す指標らしくて……一番簡単、危険度が少ないんだっけかな?

 

 

「エマとメアリー」

 

「あ、私らペアになったんだ」

 

「よろしくねメアリー!」

 

 

 私のペアはメアリーになったんだ、この時はちょっと安心した。仲良い子と一緒なら楽しくお仕事出来そうだし、気が楽なのは当然だよね?

 

 

「あなたたちは、ボスケフリオに行きそこでアフアカトルフリオを五つ採取して来て貰います」

「地図と採取する果実の見た目はこれです。出発前に果実の本を読むのも良いでしょう。図書館の────」

 

 

 先生は色々説明してくれたけど、半分も入らなかった。まぁその後に言われた通り図書館に行って調べて、メモを取ったんだ。

 

 

「よし、ここまで書き留めればいいよね」

 

「流石にね〜、丸コピとはいかなくても十分だと思う」

 

「じゃあ出発〜!」

 

 

 そして、図書館から出て学園の駐車場に向かった。駐車場と言っても現実の車じゃないし、魔法学園に入学した時に乗せてもらったような高性能の馬車でもない、フツーの馬車のフツーにガタガタ揺れる馬車に乗る事になったんだ。アルベルさんはすごい魔女だったんだなって思い返したね。

 

 

 


 

 

「さ、さ、さむっ……!」

 

「は、早く魔法!」

 

「『暖まれ(ワームハルテン)』……!」

 

「はー……まだちょっと寒いけどだいぶマシ……」

 

「……解除しようか」

 

「ごめんって!」

 

 

 私は二人分の魔法を唱えたの。『暖まれ(ワームハルテン)』は火属性のランク1の術式を数個組み合わせた魔法で、身体を暖めることが出来るんだ! わたし作。でもランク1だから、快適にって程じゃないけど、こういう寒いところならあるだけ嬉しい。パパとママにもかけてあげたいな〜。

 

 

「よっし、じゃあ進もう」

 

「森の奥に入り込まなくても見つかるって書いてあったよね。五個でいいし、早く終わらせたいなぁ」

 

「ぱぱっと採取して、帰ってご飯食べよう!」

 

 

 私たちは冷たい森に入って行った。この森は気温が低いだけじゃなくて、植物も冷たかった。しかも誰かが手入れしてくれてるわけじゃないから、葉っぱも枝も伸び放題で、そーいうの全部が冷たいわけだから、顔とか身体に当たってほんと冷たかった。魔法かけてなかったら低体温症で死んでたかも。

 

 

「ふー、でも細氷みたいで砕き易いのは助かったなぁ。マチェーテ買って来たのにいらなそうじゃん」

 

「まぁないよりはいいし?」

 

 

 メアリーは前に立って、音魔法で作る振動で葉っぱとか枝を切り払う……いや砕き払う? まぁ、障害物を退けていってくれたんだ。お互いに連携してる感じがあって、寒いし怖いけど、楽しかった。

 

 

「お、これかな」

 

「下手くそなスケッチ……けほん。そうみたい、果実も特徴一致してる」

 

「ちょっと? 今なんて言った?」

 

 

 無視して見上げると、20メートルくらいある木に、いくつも実が生ってたの。水色で氷みたいに透き通って見えるけど、皮は鱗みたいにゴツゴツしてて、落下してきたらひとたまりも無さそうな感じの実。目標の、アフアカトルフリオの木!

 

 

「じゃあ……やるか」

 

「お、おっけー……!」

 

「『振動させる魔法(ウェーブ)』」

 

 

 メアリーが魔法を唱えると、アフアカトルフリオの木が揺れ始めて、その内に果実が落下した。それを地面に落ちて砕ける前に、用意しておいた袋を使って、キャッチする。キャッチする時は回転しながらキャッチして、落下の力を分散する。

 

 

「これめちゃくちゃ怖いんだけど!?」

 

「木を揺らせるのは私だけなんだから、頑張ってくださーい」

 

「うえーん!」

 

 

 そうやって五つ分、なんとかキャッチして、何とかお仕事の目標を達成したんだ。

 

 

「よーし、帰ろうか!」

 

「疲れた〜、次は魔法でもっと楽したい……」

 

 

 私たちが雑談しながら帰ろうとすると……

 

 

「ぐわおー」

 

「はえ!?」

 

「熊ぁ!?」

 

 

 真っ白な体毛の熊、ホッキョクグマよりもすごい大きい熊が私たちの前に走ってきたの!

 

 

「に、逃げろ逃げろ!」

 

「いやーーー!」

 

 

 幸い、現実の熊と違って走る速度は早くなかったんだけど、それでも執念深くずっと追いかけて来たんだ。

 

 

「ぐおおー」

 

「危ない!」

 

「ひいいいい!?」

 

 

 逃げる私のすぐ後ろを、巨大な爪が掠めたの! あと少し足を緩めてたらミンチより酷いことになってたと思う!

 

 

「走れ! 私らの魔法なんか絶対効かないぞこれ!」

 

「横っ腹痛くなってきたああ」

 

「死にたくないなら我慢しな!」

 

 

 それでも、ボスケフリオに入って来たところから脱出して、馬車に急いで乗り込んで走らせてもらって……十分くらい経ってから、やっと落ち着いたんだ。

 今振り返ると、森出たら熊は追ってこなかったし、馬車もスピードが出て来たからもっと早く安心してもなかったのかもしれないけど、まぁそんなことは無理!

 

 

「はー……最後にどっと疲れた……」

 

「あんなの森にいるなんて聞いてない……」

「はぁ……で、も……!」

「果実は取れたねーーー!」

 

「だね! いやー。よかったよかった!」

 

「ちゃんとしたお仕事だから、報酬もあるんだってね!」

 

「多分、魔力だと思うけどね。一番メジャーだと結晶タイプかな?」

 

「結晶? そういえばお金ってどんな感じなの?」

 

「エマちゃんはお子ちゃまですものね〜」

 

「解除」

 

「うわ急に寒いっ!」

「まぁまぁ。学園じゃ必須じゃないから授業ではまだ説明してなかったしね。私は予習してたから知っているので、教えてあげましょう」

 

 

 メアリーは聞いてもいないのに解説しだした。寒いところにいたのと走ったので疲れて眠かったんだけどね……。

 

 

「魔法世界では、物理世界みたいに貨幣を作ってそれでやり取りをしないんだ。形としては物々交換だけど、一応貨幣というか共通する価値として魔力の総量とか、物品の属性とか、そこら辺みたい」

「さっき言った結晶タイプは魔力を固めた人工的なやつで、インスタントな貨幣っぽいものなんだって〜」

 

「へー」

 

「反応薄っ!」

 

「よく分かんなかったし……あと眠い……」

 

「あらまー、おやす」

 

 

 そこら辺でもう寝ちゃったみたい。行きと同じでかなり揺れたと思うんだけど、ぐっすり眠ってたみたい。身体は結構痛かったけど。

 目が覚めたらアストヒクに到着していて、あの後同じように寝ちゃったんだろうメアリーを揺さぶって起こして、一緒に先生に報告したんだ。

 

 

「取れました!」

 

「道中めちゃくちゃでかい熊に襲われたんですけど、これ本当に黒の朝日なんですか?」

 

「よく出来ました。えぇ勿論、黒の朝日ですよ。まぁ、森の主の熊は灰の中天程度の現象難度ではありますが」

 

「黒の朝日じゃないじゃん!?」

 

「今回の依頼は果実の採取なことと、森の主はお腹が空いてなければ出歩かないので、これは黒の朝日です」

「果実だけではなく、森についても調べていたら満点でしたね」

 

「ず、ずっるーーー!!!」

 

「大人はずるいものなのですよ」

「とはいえ、仕事はきちんと完了しましたからね。こちらが依頼人からの報酬です。大切に使ってくださいね」

 

 

 先生は緑色に透き通った綺麗なクリスタルが入った小さな袋をくれたんだ。5cmもあるかな? でも、とっても綺麗で宝石みたいだった。

 

 

「物の価値を理解するのもまた勉強ですからね」

 

「ありがとうございます」

 

「ありがとうございまーす」

 

 

 私たちはその後、挨拶だけして退出したんだ。

 

 

「エマは何に使う?」

 

「思いつかないし、大切に取っておこうかなー」

 

「えー! 欲しいものとかないの? 私は服買うよ〜」

 

「この服可愛いじゃん?」

 

「可愛いけどみんなと同じじゃん、私だけの個性が欲しいのー」

 

「そういうもの? あ、でも一緒にウィンドウショッピングはしたいかも」

 

「じゃあ決まりね。一緒にショッピングへレッツゴー!」

 

「ゴー!」

 

 

 その後、日が落ちるまで色んなものを見て回って一日が終わったんだ。

 危険だったり寒かったりで大変だったけど、でも最後には楽しい、良い一日でした! まーる!




・『炎の玉(フォイアーバル)
 ドイツ語、直訳。
 炎の発生、炎を纏める、炎を撃ち出すといった、火属性の中でも火、炎の発生と操作の術式で組まれたシンプルな魔法。威力はそこそこ、当たればめっちゃ熱い。普通に焼ける!

・『暖まれ(ワームハルテン)
 ドイツ語で保温。食材の保温の使い方が多いとか。
 火属性のうち、温度の上昇の術式で組まれたシンプルな魔法。最低体温を大体30℃くらいに維持する効果のほか、気温や冷風など、寒さの影響を少し防いでくれる効果もある。寒いドイツで育ったエマが一番最初に作った魔法。
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