「……ゎぁぁぁあああああ!!」
バチーン、と甲高い音が鳴り響きました。
この日は飛行魔法の練習中。
私はブレーキが上手く効かせられず、壁に激突しました。
「いっっつぅぅ……!」
「ぶはは!エマ、すんごいスピード出てたね」
「もー!笑うとか酷くない!」
「ごめんごめん」
「……ぷふっ!」
「メーアーリー!!」
ここ頁に書くのが帰省前最後の授業。
腹立たしくも楽しい、大切な一頁!
「いったぁ……」
「なに、まだ痛むの?」
「メアリーだって見てたでしょ。すごいスピードで衝突したんだから。そりゃ痛むよ」
「逆になんでそれくらいで済んでるんだよ……」
「間に合わないなって思ったから魔力で正面ちょー固めたの。いやー良かった」
「ブレーキ効いたらもっと良かったね〜」
「それは言わない約束でしょ!」
私たちは授業を終えて、寮棟に戻ってたんだ。
窓を覗けばしんしんと白い雪が降り積もってた。ここ最近はとっても冷え込んで来たからね。
寒いものだから、朝起きてすぐに魔法で体を温めるのが習慣になってたんだ。それで、メアリーも毎朝毎朝私にもってせがんで来て。ふふふ、魔法かけるの渋って意地悪するのも楽しかったな〜
「もう授業終わりだろー?何する?」
「私は荷造りかなぁ、明後日あたりにお家に帰るんだ〜」
「おー。」
「メアリーは?確かアメリカから来たんだよね」
「ん。まぁそうだな、私も帰っとくか。親は大切だしな」
「そうそう。早くパパとママに会いたいな〜」
「ははは。ん、着いたな。じゃあ私はこれで。次に会うのは明日か、もしくは来週あたりかね」
「だね。寂しいなら明日会いに行ってあげてもいいよ〜?」
「へーんだ。寂しくないもんねー」
メアリーは憎まれ口を叩きながらニヤッと笑って、自室に戻ったの。
私もふんってそっぽ向いたけど、やっぱり笑えてきて。スキップまでしながら自室に戻ったんだ。
「んー、持ち出し可能なものって殆どないよね……」
「服、下着、あとは日記。お金は確か魔力で換金出来たよね」
「魔法道具見せたいけど、ダメなんだよなぁ」
魔法世界から物理世界へ、物理世界から魔法世界へのそれぞれの持ち出し、持ち込みは結構厳しいんだよねぇ。魔法道具は全般禁止、電子機器も全般禁止。お土産、無くない?
「しょうがないかぁ。この日記が唯一のお土産だなー」
そう一人愚痴って、私の一年間の紀行を記したこの本を撫でたんだ。
「出界の許可、お願いしまーす」
「はい。……はい、はい。荷物も確認させていただきますね」
「お願いしまーす」
「……はい、確認しました。物理世界への出界を許可します」
二日後、私は関所に行って物理世界へ帰るための手続きを終えた。
この日のためにきちんと勉強したからね、準備はバッチリ!
「エマさんは……あちらの門から出ますと、自宅近辺に出られますよ」
「ありがとうございます!」
「良い旅を。」
私が持ち込んで来たものの一つ。キャリーケースを引いて門を通る。するとぱっと景色が白くなって、数十秒経つと……
「あっ、ここって」
黒い森に帰ってきたんだ。
「……え、ここから歩くの!?」
「ふふっ。流石におちびちゃんにそんな事はさせないわよ」
私がここからの帰路に絶望してると、懐かしい声が聞こえたんだ。
「ジョフィアさん!」
「久しぶり、エマさん。黎明の位階には登れたんだってね」
「はい!無事に昇級しましたっ」
「それは結構。頑張ったのね」
「ひひ、久しぶり……」
「あ、アイリスさん。でしたよね、お久しぶりです!」
「名前、覚えられてた……」
「さ、乗って。お家に送り届けるわ」
「運転はアイリスだけど。」
「……任せて、安全、運転。」
「お願いしますっ」
アイリスさんは相変わらず顔色が悪そうだったけど、それでも声は明るい気がしたんだ。アイリスさんも再開出来たことを喜んでくれたって事だったらいいな。
「とう、ちゃく」
「また一週間後、お昼過ぎにお迎えにあがるわ」
「お二人とも、ありがとうございました!」
「ふふ。両親との時間、楽しんでね」
二人はこれ以上時間を取らないようにって配慮してくれたんだろうね、すぐに車を動かして、走り去ったの。
「ふー……」
だから私も、服を整えて。
インターホンを鳴らしたんだ。
「ただいま、パパ、ママ!」
すると中からどたどた、って足音が聞こえた。
まだ私外にいるのにすごい慌てて玄関に向かってるのが分かるのおかしいね。
手紙は出してたんだけどそんなに待ち遠したくしてくれてたんだなぁ。
「おかえりエマ」
「あぁおかえりなさい。背伸びたわね……さぁ早く入って。寒いでしょう」
「──うん!」
扉が開いて、私はパパとママに迎えられた。
「どうだ、そっちでの生活は。ちゃんと食べてるか?」
「食べてるよ!学食が美味しいんだ、しかも色んな種類があってね、一年経ってもまだ網羅出来てないんだよ」
「あらそんなに。学食ってレベルじゃないわね、レストラン、ホテルでもそんなに種類無いんじゃない?」
「すごいもんだな」
「でもね、学食以外にも、学園内に街があったんだよ。あのね──」
私は両親とテーブルを囲んで、一日一日、何があったのか。どんな発見があったのかを話していったんだ。今振り返っても、よくそんなに喋れるなってほど、ずーーっと話し続けてた。
ママは途中でココアを作ってくれて時折休憩も入れたりもしたね。
そうやって一日中喋り倒してたらいつの間にかすっかり暗くなって、ディナーを食べたんだ。
久しぶりのママのご飯は、やっぱり世界一美味しかった。
寝る時に私の部屋に戻ると、綺麗に維持されてた。
一年も空けてたのに、ママが私のためにきちんと掃除してくれたんだなって思って。ちょっと嬉し涙が流れたのは内緒だよ。
翌朝は懐かしい音がした。パパが雪かきをする音。
凍える思いをしながらベッドから這い出して、ママに挨拶をしてから私もまた雪かきに参加したよ。一年前も、そうやってたね。
朝ごはんも勿論食べた。簡単に済ませるものだけど、ココアとスープが身体を温めてくれて……やっぱり私の家はここなんだなって実感させてくれる。
そうして過ごしていると、すぐに一週間は過ぎていったの。
昔は一日一日がすごく長く感じたのに、この一週間は、本当に一瞬の出来事のように思えた。
名残惜しいけどチャイムが鳴って、ジョフィアさんとアイリスさんがお迎えに来てくれた。
「お二人とも、娘をよろしくお願いします」
だなんて。涙まで流してお父さん二人に握手してた。
二人ともちょっと困ってたし、恥ずかしかったんだからね?
今回も、皆んなで黒い森まで車に乗せてもらった。
アイリスさんは今回も快諾してくれて、今回の車中は結構騒がしかったな。
「じゃあパパ、ママ。行ってくるね!」
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃい。身体には気をつけてね」
「うん!」
そうして、私は再び魔法世界へと帰ったの。
これが私、見習い魔女エマの紀行。
ねぇ詩の神様。どうかな、私の物語は。
私はふつーで、平和な道のりだったと思うけど。あなたが他の魔女の紀行を見ているように、私の紀行にも目を通してくれているならとても嬉しいな。
まだまだ私の旅は続くから。また新しい事があったら一頁を綴るね。
どうか、詩の神ペルラ様にこの紀行が届きますように。
黎明の位階 エマ・モルゲヴォーネン
『うん。しっかり届いたよ。エマちゃん!』
これにて見習い魔女エマの紀行録、完結になります。
自分で作った世界をどう表現するかの習作でしたので、拙い点が多くお恥ずかしい限りです。これを糧に、もっと良い作品を書いていきたいですね。
クエクト先生の次回作にご期待ください〜