燃料に引火した複数の車両が大きな炎と煙を上げ、辺り一面に
「父さん……母さん……!」
潰れた車の中からやっとの思いで救出した両親に声をかけるも返事は返ってこない。手足は曲がっちゃいけない方向に曲がり火傷や打撲で見たことのない色になっている。頭も打ったようで血が流れ続けている。父さんに至っては足の骨が突き出してそこからの流血が止まらない。
「くそっ、とまれ、とまれ、とまれっ……!」
何分、何十分経っただろうか。2人の頭部の圧迫止血をし続けても血が止まる気配はない。旅行カバンにあった布類は全て使ってしまった。救急車はまだこない。何かを探すように走り回る独特な格好をした集団が近くを通り過ぎるが気にしてる余裕がない。
父さんは引き剥がしてきた座席で足を高い位置に置いて根元をタオルで縛っていても出血が止まらない。咄嗟に助手席の母さんを庇ったのか母さんよりも怪我がひどい。俺では、助けられない。
「なんで!なんでこんなことになるんだ!」
思わず下を向いて吐き出すように叫んだ。夏休み最後の週末、父さんが連休をとったから九州旅行しようと言ってくれた。前世でも行ったことない九州、その中でもヒロアカ聖地として有名な福岡タワーに行ってみたいと夕飯の時に言ってたのを覚えていてくれたらしく、すごく嬉しかった。母さんと一緒に周辺のグルメ情報や他の観光スポットを調べているのさえ楽しかった。当日も車内ではどこで何をするかや旅館がどんなところかなど色んな話で盛り上がっていた。次のパーキングエリアで何を食べようかと話していた次の瞬間、体を衝撃と轟音が襲ってきて気付いたら車が半分ほどに潰れていた。幸せが一瞬で地獄に変わった。
「
掠れる小さな母さんの声が聞こえてはっとする。見ると弱々しく母さんが目を開けてこちらを見ていた。
「母さん!母さん!しっかりして!すぐ救急車が来てくれる!ヒーローも救急車も駆けつけてくれるはずだから!ごめん!ごめんね!旅行行きたいなんて言ってこんなことになって!もう少しだから頑張って!」
「健幸のせいじゃ ない よ こせい あげられ なくて ごめ んね 」
そう言って、最後の力を振り絞るかのようにこちらに伸ばしてから手を思わず両手でつかむ。
「そんっ……そんなこと言うなよ!丈夫に産んでくれたから無事だったんだ!個性なんてなくてもいいんだよ!俺幸せだったよ!個性なくても2人の子供に生まれて幸せだったよ!だから!だから!」
俺が幼い頃にそのことで悩んでいたのは知っていた。「無個性でも大丈夫!しっかりトレーニング積んで個性持ちみたいな身体になれば無個性でもヒーローになれるよ!」と言って鍛錬を始めて、本当に身体が強くなり始めてからはそんな雰囲気も消えてむしろ積極的に応援してくれるようやなった。だから今そんな言葉が出てくるなんて思わなかった。まるでそんな、最後に伝えるような。
「ありがとう しあわせに すこやかに いきて ね ゆき た け だい すき だ よ」
そう言って最後に確かめるように俺の手をすこしだけしっかりと握り締め、次の瞬間に力無くストンと落ちた。
「母さん!ダメだ!ダメだよ!起きてよ母さん!」
「嫌だ!嫌だよ!父さんも母さんも俺を置いていかないでよ!」
2人の顔にふれる。生きている人の温かさも脈ももうそこにはなかった。
「あ、あぁ…… あ゙あ゙あ゙ーーー!!!!!!」
何が無個性でもヒーローになれるだ。手の届く距離にいた両親すら救えず自分ばかり生き残って。何が、ヒーローだ。なんでもなかったはずの夏休み終盤。俺はこの世で1番大切な人たちを2人失った。
名前こんなにしっかりと考えたの初めてで愛着湧いたのか、途中から辛くて泣きながら書いてました。