Re:【急募】TSっ娘の俺が、自分に擬態し続けなければいけないんだが…俺はもうダメかもしれない。   作:東風白庵

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 あらすじにも書きましたが、ToLOVEる20周年ということで、昔データが消し飛んでお蔵入りになったリメイクver.を再構成し直して出していきます。


white out Angel.

 

 

 どん、という文字にすると平坦な、しかし現実で耳にすると妙に耳に残る非日常の(爆弾のような)音が聞こえる。

 

 鳴り響く心臓。

 ─────音が、大きい。

 

 私はさっきまで、そこら辺のどこにでもあるただの日常風景と一体化していたのに、同化先が突然脈絡もない異端に取り壊されている。

 

 ─────音が、大きい。

 

 硝煙のような、けれども嗅いだことのない物騒な匂いがする。

 その、物騒で危険な、あまりにもこの場にあるには何かがズレている、匂いの元が、此方に向かってくる。

 

 息が上がる。

 現実と、空想の境界線が崩壊していく。

 いつの間にか駆け出していた自分の身体は、余りにも遅い。

 これでは容易く追いつかれる。何に。何かに。

 

 向かってくる危険。

 追いついてくる現実。

 建物の向こう側から、生物特有の、ぬめりとした物騒な『黒い枝』が此方に狙いをつける。

 

 あ。

 これ、現実じゃ、ない?

 

 境界線の向こう側にいる、異形の怪物が日常に侵入している。

 侵入しているのに、誰も気づいていない。

 

 此処は非日常。

 人が目を向けない、太陽の光だけがわずかに暗い空間を照らす、路地裏の世界。

 だから、怪物が現れた。

 

 そして、怪物は、此方にこつこつとした漆陶器の枝危険物をこちらに向けると、びゅん、と何でもないように異形は食虫植物らしく────人間を捕食した。

 

 

 ぱかり、と開かれた口内。

 食事のために、私の頭の前に黒い枝葉の怪物が晒したギロチンは、植物のくせに異常なまでに青黒く、動物の内臓みたいに肉肉しかった。

 

 

 迫る終わり。

 一般人でしかない自分が、なぜこんなことを悠長に考えていられるのかはわからないが、退院したばかりの自分では、どちらにしろ逃げられなかったのだ。

 

 諦めた心は、眼を固く、瞑る。

 現実を背けて、視界は黒く閉じて、首が切断される音が耳に届いた。

 

 あ、死ぬのって、存外に痛くないんだな。

 なんて、今日まで病院で、必死に死から逃げようとしていた私は、今までのどんな激しい苦痛よりも軽い終わりをあっけなく受け入れてしまって────

 

 

 

「──君、大丈夫?」

「へ?」

 

 

 今まで、聞いたことのないような、透明で強く温かい『女の子』の声に、現実に引き戻された。

 

 誰?

 いや、首、なんで繋がってるの?

 いや、というか、なんで目の前に怪物の首が転がってたりするんでしょうか??

 

 そんな頭の混迷に、いつの間にか自分が日常に引き戻されかけていることを受け入れ始めて、

 

 

 あれ、そういえば。

 私を切断しようとしていたギロチンがあそこにあるってことは、

 

 

 ────あそこにある、異形の首を切断したギロチンはどこに………?

 

 

「うん。よかった、大丈夫そうだね。……それじゃあ、ボクはこれで」

「ま、まって! ────あなたは、いった、い………?」

 

 ふわり、と金の糸が、空の光に吸い込まれていく。

 

 原始的で、同時に退廃的な、ビルの狭間から延びる太陽の光は、暗闇の中で光を届ける月に似ている。

 

 きえた。

 一瞬で見失った謎の声の主を探すために、有り得ないと否定しながら、建物の屋上へと視線を這わせていく。

 

 

 先ほどまでの非日常は嘘だったかのように、青い空が、この眼で確かに見えたはずの金糸の少女を、この手では決して届かない存在だと、ただの日常風景だけを視覚情報として捕えさせる。

 

 

 見失った、いや、幻だったのだ。

 いつの間にか、異形の首と死体は何処にもなくて、まるで夢から覚めてしまったかのように、あっけなく私の短い非日常体験は終わりを告げていた。

 

 

「そっか、あれ、幻覚だったんだ」

 

 

 ドキドキする心臓を掌で押さえつけながら、そういえばここは現実だった、なんて当たり前のことを思い出していた。

 

 

 そうして、何気なく風が吹いた、青い青い空の先を見つめてみると、

 

 

 

 

 ────美しい、白い刃物(てんし)がそこには立っていた。

 

 

「────」

 

 

 現実か、幻か。

 白昼間の眩さに眼を焼かれた私は、思わず手で光を遮ってしまって、「あ」と間の抜けた声をこぼした。

 

 慌てて、天使を見つけようと空に眼を向けても、そこには当然誰も居ない。

 

 私は、一瞬前の、ばかみたいに見失った自分に腹を立てて、しばらく周りを探して、見つけられない自分に残念に思った。幻想は自分には振り向いてくれなかったのだ。

 

 

 だけど、しばらくしてこのことを思い出すたびに、私は思う。

 あの時は残念と思ってしまったけれど、同時に自分はものすごくうれしかったのだ。

 

 天使は確かにいた。

 現実と幻の境界線。その揺らいだ光の向こう側に。

 

 

 私では手を伸ばせない、幻想のカタチは────今も私の眼に焼き付いたままだ。

 

 

 

 ────white out Angel.

 

 

 

 

 

 

 




 ※【以下、読み飛ばしてOKなリメイクの経緯です】

①うごメモ版(当時、友人との間でのみ見せ合いをしていたver。旧ver.の主人公の髪が白かったのはこの頃の設定の名残り)
 ↓
②2019年の旧ハーメルン版(うごメモ版の設定を再構成したやつ。実は未投稿のまま終わった話が幾つか残っている。以前、某所で言及したヒロインはここで名前を出す予定だったが、データがほぼ消し飛んだ)

 ※ついでに補足すると、この頃はまだ小説を本格的に書いてなかった関係上、読む専用のアカウントで投稿していたため、これより後の③〜④は投稿用のアカウントで投稿してます。
 ↓
③2022のリメイクver(2度目の全データが吹き飛ぶ。ついでに気力も消し飛ぶ)
 ↓
④2026の今回のリメイクver(20周年だし、誰も覚えてないだろうけど、一応書き直しておくかぁ……という感じ)


 というわけで、7年+αのぐだぐだ経緯となっています。
 仕事もあるので基本的に亀更新ですが、よかったら読んでもらえると嬉しいです。それでは。

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