首都アルサーンの中心部、石造りの重厚な建物の中に設けられた会議室は、外の陽光に満たされながらも、張り詰めた緊張感が漂っていた。壁には国家旗と軍の紋章が掲げられ、長テーブルを囲むのは国家憲兵総司令官、陸軍教育部長、民間教育顧問、そしてマンシュタイン家の代表数名だった。
議題は一人の少女――アリア・マンシュタイン、孤児院で暮らす十四歳の少女の未来である。
総司令官は開口一番、書類の束を前に置き、静かに声を出した。「今回の能力測定結果ですが、アリア・マンシュタインは極めて高い潜在能力を示しました。同年齢のどの子どもとも比較にならない数値です。観察力、判断力、学習速度――全てが卓越しています。」
部屋の空気がわずかに変わる。マンシュタイン家の代表の一人が唇を引き結んだ。「家族としても、彼女の将来を慎重に考える必要があります。ですが、能力を伸ばすためとはいえ、孤児院で築かれた日常や精神的な安定を奪うのは避けたい」
教育部長が軽く頷き、資料をめくる。「もちろんです。そこで提案ですが、アリアには特例として飛び級で大学入学の道を用意したいと考えています。年齢差による心理的負担は最小限に抑えつつ、能力を最大限に伸ばすためです」
民間教育顧問が眉を寄せる。「年齢差が大きいと、同級生との関係で孤立する可能性があります。それを見越したサポート体制も必要です。孤児院の環境や日常の生活リズムを、なるべく維持する形で進めるべきです」
総司令官は指を組み、窓の外を一瞬見やった後、静かに語る。「彼女には将来、国家や軍の重要任務に関わる可能性があります。しかし現時点でそれを強制するつもりはありません。まずは学問と成長を最優先に。能力は秘密裏に管理され、必要な場合のみ軍や政府が介入する形です」
マンシュタイン家の代表が口を開く。「家族としても賛同します。彼女が平凡な日常を維持しつつ、自身の才能を伸ばせる環境を保証することが重要です。過度な干渉は避けたい」
教育部長は資料を指差し、具体的な学習計画を説明する。「大学では核物理学を中心に、高度な数学、情報処理、観察と判断の訓練も行います。研究は個別課題とグループ課題の両立で進め、心理的負荷を最小化します。さらに、孤児院との連携で日常生活も管理します」
総司令官は頷き、会議をまとめる。「決定事項としては、アリアの大学飛び級入学を承認すること、能力の管理を秘密裏に行うこと、日常生活の保護を維持すること。この三点を確実に守る」
会議の最後、マンシュタイン家の代表が微かに笑みを浮かべた。「これで安心です。アリアが自分らしく成長できる環境が整う。家族としても、この上なく喜ばしい」
会議室の空気は少し和らいだ。軍と貴族が慎重に歩み寄り、少女の未来を共に支える体制が静かに整った瞬間だった。
しかし、ここで決まったことのほとんどは、まだアリア本人には知らされていない。孤児院で過ごす日常、微かな違和感、そして静かに芽生えつつある潜在能力――すべてが、これからの未来を紡ぐ序章に過ぎなかった。
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