RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。 作:白波 鷹
「―それで、『バジリスク』はどれくらい居るの?」
そんなこんなで、みんなと別れた俺はさりげなく出発前の荷車の中に潜入に成功し、暗い荷車の中でパンを頬張っていると、ツィオラさんが他の討伐隊のメンバーと話す声が聞こえてきた。
『バジリスク』との戦いに相手の方はどこか言葉を選ぶように少し間をおいてからツィオラさんに声を返していた。
「そ、それが……報告では五体居るそうで……」
「五体!? 冗談でしょ!? せいぜいこの人数なら二、三体が精一杯なのに……」
「むしゃむしゃ……ずずー……」
ツィオラさん達の話を聞きながら食べたパンをミルクで流し込む。ふむ、まあまあ美味い。
そんな風にマイペースに俺が聞いている中、ツィオラさん達の話は続いていく。
「『バジリスク』が五体……ふぅ、あの子との約束を守れそうにない、か……」
「つ、ツィオラ様……」
「ん? あぁ、大丈夫よ。心配しないで。危険だと思ったら私を置いてあなた達だけで先に逃げて良いから。その代わり、私の店で店番してるレシアーナに伝えて欲しいの。約束守れなくてごめんね、って……」
「そ、そんな……!? わ、私達も一緒に残ります!」
「気持ちは嬉しいけど、あなた達にも待っている人が居るでしょ?」
「そ、それは……」
「安心して。街には絶対近付けさせないし、この命に代えて必ずここで全滅させるわ。だから、あなた達は自分の身を優先して」
「ツィオラ様……」
「くっちゃくっちゃ……ごくっ……ふぅ……」
そうして、討伐隊の女性が声を振り絞るのが聞こえ、俺がパンの残りを口に放り込み、ミルクで流し込み終えた時だった―
「―それで、君はそんなところで何をしているのかしら?」
突然、荷車の上に被さっていた布を取っ払われ、ツィオラさんが呆れた様子で俺を見ながら声を掛けてきたのだ。
「あ、おはようございます」
そんなツィオラさんにニカッと笑顔を返すと、ツィオラさんは頭痛をおさめるように片手を額にあてながら声を返してくる。
「はぁ……さっきからやたら食べる音とか聞こえて変だなと思ってたけど……まさか、君が居るとは思わなかったわ……」
「いや~、店でパンを買ったのは良いんですけど、なかなかゆっくり食べれそうな場所がなくて。でも、この荷車なら丁度良いかなって」
「それなら隠れる意味がないでしょ……」
「隠れながら食べる方がロマンがあるかなって」
「あのね……これがどこに向かってるか分かってる?」
「『バジリスク』でしたっけ? あ、邪魔するつもりはないですし、向こうに付いたら適当にそこら辺に置いてってもらって大丈夫です」
「そういうわけにはいかないでしょ……はぁ、急いで帰してあげたいところだけど、『バジリスク』のところまで来ちゃってるし……」
「大丈夫ですって。自分の身は自分で守りますし、ツィオラさん達のことも守ってみせますよ」
そう言って、俺がキリッと声を返すと、ツィオラさんは呆れた様子でため息を吐いて声を返してくる。
「……子供が生意気なこと言わないの。そういうのは大人になってから言いなさい。それより、帰ったらレシアーナと一緒にお説教よ」
「お説教くらい全然良いですよ」
「はぁ……そういえば、あなたの師匠が別の馬車に乗ってたわね。危険だと思ったら、その師匠と一緒に撤退すること、良いわね?」
「つまり、危険だと思ったら帰らなくて良いってことですね?」
「馬鹿なこと言ってないの……はぁ、子供って純粋ね。まあ、そんなこと言ってられるのも今のうちよ……『バジリスク』を見たらそんなこと言ってられないだろうしね」
「へ~、楽しみですね~」
「はぁ……」
『バジリスク』との戦いに俺が笑顔で返すと、ツィオラさんは毒気を抜かれたようにため息を吐いて返してくる。まさか、ゲームの中じゃなくて本物の『バジリスク』を見れるなんて、こんなの楽しみにするなって方が無理じゃん?
そうして、俺達がやり取りをしていると、やがて森を抜け、広い場所へと出る。
街を出てそれほど経っていないその場所に―それは居た。
『プリテスタ・ファンタジー』で毒をまき散らすことで有名なモンスター、『バジリスク』だ。