RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。   作:白波 鷹

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第26話 バッドエンドの分岐点

 突然、目の前に『ヒュドラ』が現れ驚く俺の前に現れたミュラ達。すると、驚く俺にミュラとエリシルがすごい剣幕で声を返してきた。

 

「それはこっちの台詞でしょ!? シュウがお腹が痛いって言うから急いでレシアーナと薬を取りに行ったら、途中でレシアーナは居なくなるし、戻ったら戻ったでシュウが居なくなってるし……心配したのよ!?」

「ミュラの言う通りよ! それで街中探し回っても居なくて心配になってたら街の人がシュウとレシアーナが馬車の荷台に入ってたのを見たって聞いて、馬車で連れて来てもらったんだから!」

「えっと……その、なんて言うか……すいません……」

 

 珍しく怒る二人に俺が後ろに下がると、マフィが背中にぶつかって視線を向けると、複雑な表情を返される。

 

「マフィも来てたのか……」

「はぁ……本当なら私も色々言いたいけど……それより、あれは……」

 

 『ヒュドラ』に視線を向け、額から汗を流すマフィの言葉にさすがにミュラとエリシルも改めて息をのむ。すると、そんなマフィの横に師匠が剣を構えながら並ぶと、いつも冷静な師匠にしては珍しく少し焦ったような声でマフィの質問に答えていた。

 

「まさか、お前達まで来てしまうとはな……だが、三人とも気を付けろ。あれは『ヒュドラ』だ」

「あ、あれが『ヒュドラ』……!? そんな……どうして、こんなところに……」

 

 驚いた様子で『ヒュドラ』に目を向けたミュラに師匠は額から汗を流しながら声を返すと、マフィとエリシルも声を返した。

 

「分からん……が、どのみち逃げるしか手はないだろうな。とはいえ、無事に逃げられる保証は無いが……」

「お、お師匠様でもですか……?」

「ああ……私もそれなりにやれる方だと自負しているが……あれは別格だ。あれを相手にするには、この戦力ではどう考えても足りん……お前達がここに来たのは完全に誤算だったが……何にせよ、助かる可能性は正直に言ってかなり低いと言えるだろうな……」

「そ、そんな……フェレールさんでも勝てないなんて……」

 

 そうして、エリシルが師匠の言葉に声を失った時だった。

 

「ギャアアアアオッ!」

「まずい!? 『ヒュドラ』の炎だ! 全員、避けろ!」

 

 雄叫びを上げた『ヒュドラ』が大きく口を開くと、師匠が叫ぶように声を上げる。すると、『ヒュドラ』の口から炎が生み出されたのが見え、次の瞬間、俺に向かって思い切り炎が吐き出してきた。

 

「あっぶね!?」

「シュウ!?」

 

 ミュラ達の悲痛な声が耳を突く中、突然のことに驚きつつも俺はどうにか横に飛んで避けるが……俺がついさっきまで居た地面が溶けており、それを見た俺はあまりの光景に思わず苦笑いしながら声を上げる。

 

「おいおい……ゲームに『ヒュドラ』の炎で地面が溶けるなんて仕様ないんだけど……」

「おい、坊主!? 大丈夫か―ちぃっ!?」

「俺は大丈夫です! それより、バルフォードさん達も気を付けて下さい!」

「気を付けろ、って言ってもよ……!」

「あっつ!?」

「きゃあっ!?」

「くそっ……! これじゃあ、坊主のところに近付けねぇ!」

 

 『ヒュドラ』の首が交互に炎を吐き、バルフォード達は俺に近付けず、声を上げる。

 

 ―それにしても、ここがツィオラさんの死亡フラグが立っているところだとしたら、今はどうなんだ? 本来は多分バルフォード……さん達を先に送ってツィオラさん一人で戦ったってところだろうけど、今は俺達も居るし……。

 

 そうして、俺達が炎に苦戦していた時だった。

 その『ヒュドラ』の前に一人の女性が立ち塞がり、俺は思わずその目を疑ってしまう。

 

「ツィオラさん……?」

 

 そんな彼女の名前を呟くと、ツィオラさんは自分よりも大きな杖を地面にカッと叩き付けると、覚悟を決めたような声を返してきた。

 

「―私が時間を稼ぐわ」

「え……?」

「なっ―!?」

 

 突然のツィオラさんの言葉にレシアーナが声を失って視線を向ける中、ツィオラさんの後ろに居た師匠が驚いた様子で声を返していた。

 

「ツィオラ、正気か!?」

「……ええ、私は正気よ」

「いや、正気ではない! 相手はあの『ヒュドラ』だ! あれを相手に一人で時間を稼ぐなど無謀以外の何ものでもない!」

 

「そうね……最強と呼ばれるモンスターの一匹だものね。フェレール……あなたはレシアーナ達や他の人達を連れて街に戻って。大丈夫、あなた達の後を追わせたりはしないわ」

「馬鹿なことを言うな! この状況であなた一人を残して帰還したところで何になるというのだ!? 『ヒュドラ』を一人で足止めするなど、いくらあなたでも不可能だ!」

「そ、そうですよ……だから、おば―し、師匠も一緒に帰りましょう……ね?」

 

 そう言って、レシアーナはあまりにも信じられないものを見たせいでどうにか笑顔を作っていたが、そんなレシアーナの震える声にツィオラさんは寂しそうな笑みを浮かべながら声を返してきた。

 

「あなたも分かるでしょ……『ヒュドラ』を相手に逃げるなんて無理。誰かが時間を稼がないといけないのよ」

「あ、あはは……し、師匠は相変わらず冗談が下手ですね……こんなの相手にするなんて絶対無理に決まってるじゃないですか……」

「……そうね、本当に冗談だったらどんなに良かったか……レシアーナ、無駄口を叩いている暇はないわ。私が時間を稼ぐ間にフェレール達と一緒に逃げなさい」

「そ、そんなことできるわけないじゃないですか! 師匠も一緒に逃げましょうよ!?」

 

「無理よ……誰かが足止めしないと『ヒュドラ』が追ってくるもの。だから、誰かがここで足止めしないといけないのよ」

「だ、だからって、それが師匠である必要はないじゃないですか! そ、それに、きっとみんなで逃げれば大丈夫ですよ!」

「それは無理ね……『ヒュドラ』は一度敵だと思った相手を追い続ける……そうして、『ヒュドラ』に犠牲になった村や街はたくさんあるのは聞いたことあるでしょ?」

「そ、それは……」

 

「心配しなくても大丈夫。伊達に『宮廷魔導師』を務めてないわ……首の一本くらいせめて道連れにして足止めするくらいはできるわよ」

「っ……!」

「ツィオラ……」

 

「……フェレール、あなたなら分かっているはずよ。どのみち、誰かが犠牲にならないと状況は解決しない……なら、その役目は私が受けるべきよ。普通の人よりも長く生き過ぎた私が、ね……」

「くっ……!」

 

 ツィオラさんの言葉に師匠がギリッと歯を食いしばるのが見えた。そして、そんな師匠とレシアーナにふっと笑みを浮かべたツィオラさんは再び口を開いた『ヒュドラ』に向き合うと、大きな杖を振りかぶりながら声を張り上げた。

 

「早く逃げなさい! さあ、『ヒュドラ』―私が相手になるわ! フレアバースト!」

「ギャアアアアオ!」

 

 その声とともに『ヒュドラ』の炎とツィオラさんの炎がぶつかり、爆発を巻き起こした。

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