ワンナイトから始まる狩猟生活   作:タク@DMP

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第九話:新たなクエスト

 ──イャンクックのクエストの報酬を終えた後、加工屋でラグナは装備を受け取っていた。

 

「ヒュー、こいつが破軍装備か。安心感がスゲーな」

 

 飛竜のブレスを防ぐ役割を持つ黒い光沢の防護コート、そして身体にフィットする鎧。

 頭部はプロテクター状になっており、顔が見えるタイプの兜だ。

 動きやすさを重視しており、大剣を持ちながら縦横無尽に戦場を駆けるラグナにはお誂え向きの装備だ。

 

「レイア装備は動きにくかったからな。助かるぜ。昔着てたヤツに着心地が似てて良い」

 

 破軍シリーズと呼ばれるこの装備は、イャンクックの素材のみならず高品質の鉱石素材や骨素材を使って作られたスタンダードな防具だ。

 バラージュでは様々なハンターが「取り合えずこれ」と選択するシロモノだという。

 武器も同じく破軍シリーズの「破軍の剣」。強化にもレアな素材を要求しない、素直な使い勝手の武器だ。

 試着したラグナは店主に向き直った。

 

「んじゃあ、試し斬りして良いか?」

「勿論ですとも。裏にどうぞ」

 

 バラージュの加工屋の裏には、試し斬り用のカラクリガエルが設置された、広大な修練場がある。

 多くのハンターが購入した武器の試し打ちを此処で行う。

 ラグナは大剣をカラクリに向かって構え──呟いた。

 

「ところでよ、このカラクリって万が一壊れたらどうなる? 弁償しないといけないか」

「ははは、壊れる? 有り得ませんよ。コイツは何人ものハンターの攻撃を今までも受け止めてきましたから。もし壊せたら──良い装飾品でもオマケしますよ」

「そうか」

 

 ラグナは地面を蹴る。

 店主は目を丸くした。

 大剣の重さは200kgを優に上回る。

 それを持ったまま高く跳びあがったのだ。

 

(エリアルスタイル──”空中”強”溜め斬り”!!)

 

 カラクリの脳天が──へしゃげた。

 ラグナは反動で地面に降り立ち、そして流れるように剣を納刀する。

 店主は驚きのあまり、へたり込んでしまうのだった。

 

「……成程、確かに頑丈だなコイツァ。真っ二つに斬るつもりだったんだが……オマケは良いぜ、店主」

「ひ、ひぇ……!?」

「んまあ、これから慣らせば使いこなせるだろ。良い剣をありがとな」

 

 そう言い残し、ラグナは去っていった。

 その後に、がらがらと音を立ててカラクリは崩れ落ちる。

 剣の衝撃はカラクリの頭部のみならず、全身を砕いていたのである。

 

「……凄いハンターが……居たもんだ……今年の飛竜祭は、荒れるぞ……!?」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──我慢勝負が始まってから既に2週間が経とうとしていた。

 すっかり禁欲にも慣れてしまったラグナ。

 一方、体内のアルコール成分の枯渇をノンアルコール飲料で誤魔化すことで精神の安寧を保っているアジサイ。 

 この二人の勝負はもう直につきつつあった。

 

「諦めろアジサイ。オメーにそれ以上アルコールを抜くのは不可能だ」

「諦めません……!! こんな事で負けるわけには、いかないんです……ッ!!」

「もう二日酔いよりも具合が悪そうだニャ」

「あらかたオメーは俺が1週間やそこらで音を上げるモンだと思ってたんだろーが……見立てが甘かったな、俺ァ禁欲は初めてじゃねえ。もっと過酷な狩りの現場で1ヵ月近く御無沙汰だった時もあるんだよ」

「お、おのれ、頭に下半身が付いている癖に……」

「逆だ逆、そろそろオマエ、限界が来てるんじゃねーか? 諦めろって。楽になろう」

 

 

 

「クルックー」

 

 

 

 ラグナが勝ち誇ったように言ったその時だった。

 宿の部屋に──伝書フクズクが止まっている。

 窓を開けると、それは入ってきて机の上に降り立った。

 脚に括りつけられた手紙を取ると──それは例によってディシプリンからの手紙だった。

 

「……招集だ。俺達3人で来いってよ。またクエストだろーなァ、きっと」

「飛竜祭の開催時期を考えると、恐らく祭の前の最後のクエストになるでしょうね」

「良い腕試しなんじゃねーかニャ? ラグナ、新しい装備に買い替えたばっかりだし」

「そうだな。一丁やってみっか! あ、そうだアジサイ。オメー、アルコールが抜けて具合が悪いんだろ? 寝てるか?」

「一緒に行きますッッッ」

 

 そんなわけで勇んで3人組は商工会へと向かう。

 いつものように、ディシプリンがでっぷりとした腹を揺らしながら待っていた。

 

「おん? 来たか。飛竜祭前の最後の仕事だ。お前らにとっても悪い話じゃないとだけ言っておくぜ」

「すっかり良いように使われてる気がするニャ……」

「黙っててください」

「出来る事なら何でもやるぜ。こちとら装備の素材を実質斡旋してもらった恩があるしな」

「……ちょいと困ったモンスターが出てきた。場所は──”廃坑跡”」

「え”」

 

 それを聞いたマタビが──顔を強張らせた。

 

「……廃坑跡?」

「かつて鉱山が栄えていた場所だ。しかし、モンスターが住み着くようになったことで放棄されちまっている。今でも鉱石素材を採りに行くハンターが後を絶たないが──危険な場所だ」

「そんな場所に一体何の用なんですか」

「これはハンターズギルドから紹介された仕事だ。腕利きのハンターに頼みたいと言われていてな」

 

 

 

【狩猟クエスト】

怨みつらみ、晴らすときニャー!!

 

依頼主:廃坑跡を根城にするメラルー族

メインターゲット:マガイマガド一匹の討伐

目的地:廃坑跡

 

住処の近くにマガイマガドが居座ってしまって、困ってるのニャ!! 助けてほしいのニャ!! ぬ、盗んだものはちゃんと返すのニャ……後生だから何とかしてほしいニャ……。

 

 

 

「アルシュベルドに続いて……マガイマガドだと!? 本当なのか!?」

「ギルドも事前調査で既にマガイマガドの存在は確認している。廃坑跡の周辺にはギルドの調査拠点もある以上、どの道、マガイマガドの狩猟は避けられん」

「ッ……まさか、マガイマガドがこの地域にまで生息しているなんて……!!」

 

 アジサイが驚愕した。

 彼女の故郷でもマガイマガドの名は知られている。

 しかし、この中で唯一マガイマガドの事をよく知らないマタビが恐る恐る問う。

 

「あ、あの、マガイマガドってそんなにヤバいモンスターなのかニャ……?」

「大移動するモンスターの群れに乱入して捕食行為をすることで知られている大型の牙竜種だ。飛竜祭に便乗して姿を現したんだろうな」

「何か気掛かりなことでもあるんですか? マタビさん」

「……」

 

 マタビは──意を決したように言った。

 

 

 

「……廃坑跡は……俺様の、故郷なのニャ……依頼人のメラルーは……俺様のかつての仲間だニャ」

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