太陽勇士ソルレオン『俺が小学生ヒーローの変身アイテムに!?』   作:ワタリ3@ぼちぼち浮上

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あけましておめでとうございます!
今年はぼちぼちとオリジナル小説を投稿したいな思います


プロローグ:ソルレオンの輝き

 

 

「だあっ! また負けたぁー!」

 

 夢緒町のゲームセンターに、子供の叫び声が響きわたる。騒いでいるのは――俺の相棒、小学五年の『太陽寺陽太』。オレンジ色の髪が特徴的な、底抜けに明るい子供だ。

 

 俺の名は『レオン』。この名前は陽太が勝手につけた。元の名前は獅子崎翔、三十二歳。コンビニでレジ打ちしながらクレームに耐えるだけのフリーターだった。今では“死んだ姉が遺したライオンのネックレス”という、訳の分からない存在になっている。転生なのか、憑依なのか……本人の俺にもさっぱりだが、とにかく今は陽太の首にぶら下がっている。

 

 ……まあ、過去には色々あったんだ。詳しくは、そのうち話す。

 

 陽太はゲーム台の前で頭をかきむしっていた。対戦相手は彼の親友『星野ケイ』。丸眼鏡をかけ、戦隊ヒーローのTシャツをパツパツに着た、ふくよかな少年だ。ケイの台には、眩しいほど輝くカードがずらりと並んでいる。

 

「ふふふ……我がヒーロー軍団には到底及びませんな」

 

「SSRカード多すぎだろケイ! いい加減、俺にも分けてくれよ!」

 

「いやいや。このゲームは“組み合わせ”が重要なのですぞ。ノーマルカードでも戦えます!」

 

『金かけすぎだろ、こいつ……』

 

 売ったら、俺のコンビニ時代の一か月分の給料を軽く超えそうなラインナップだ。子供の小遣いでよくやる。

 

 陽太たちがやっているのは『ヒーロー・クロス・バーサス(HCV)』というデータカードダス。様々な作品のヒーローとヴィランがクロスオーバーするゲームらしい。ルールは分からんが、陽太がボロ負けしていることだけは理解できる。

 

「つまり俺の編成が下手って言ってるのか?」

 

「そうです」

 

「ぐわー!」

 

 陽太が悔しそうに頭を抱え、ケイはなぜかイケボで講釈を垂れる。

 

「【時には、見捨てる勇気も必要なのですぞ】」

 

「……っくそ、でもサンシャインマンは絶対外せないんだ!」

 

 陽太は唯一持っているSRカードを見せつける。

 

「そのカードが一番足を引っ張っていますな」

 

「うわあああん! 絶対いいカード出してやる!」

 

 陽太が財布に手を伸ばした瞬間、俺はライオンの目をピカッと点滅させる。

 

『おい陽太、いい加減にしておけ』

 

「あと一戦! 今度こそ良いカードが出そうなんだよ!」

 

『駄目だ。金の使いすぎだ、子供』

 

 コンビニで給料全部ガチャに溶かす同僚を嫌というほど見てきた。陽太まで同じ道を歩むとか、冗談じゃない。大人として止めるところは止める。

 

「ちぇっ、レオンのけちんぼ」

 

『けちんぼで結構だ。……お前、そろそろ宿題の時間だろ』

 

「うわああ! 嫌なこと思い出させるなよ!」

 

『後で困るのはお前だぞ』

 

「なんかレオンって、ママみたいだな」

 

『母親は常に正義なんだよ』

 

「言ってる意味が分からない」

 

「ちなみに拙者、もう宿題は終わっていますぞ」

 

 ケイがドヤ顔で眼鏡を押し上げる。

 

「え、いつのまに!? 家帰ってすぐここ来たじゃん!」

 

「【予習という言葉を知っていますかな?】」

 

 小学生離れしたイケボで、絶望的にダサいポーズを決める。ジョ○ョ立ちを失敗したような見た目だ。

 

「ああ……でもこの前、勝手に先の宿題やって先生に怒られてたじゃん」

 

「【大人のお姉さんに叱られるのはご褒美であります】」

 

「キモ」 『キモ』

 

 二人そろってツッコミが出た。小学生でこれって、大丈夫か。

 

 陽太は未練がましくゲーム台にしがみついているので、俺は声を低くして警告する。

 

『陽太?』

 

「……はいはい! 分かったよレオン! じゃあなケイ、また明日!」

 

「お相手感謝ですぞ陽太殿! レオン殿も!」

 

『……ああ』

 

 子供なんて縁のなかった俺が、今ではすっかり振り回されている。死後の人生ってのは分からんもんだ。

 

 ゲームセンターを出て、夢緒町の商店街を歩く。時刻は十六時。店先の呼び込み、買い物客の声が入り混じる。

 

「やっぱ、レオンうるさい相棒だよなー。もうちょい遊びたかった」

 

『困るのはお前だ。母親に怒られたくないだろ』

 

「それはそうだけどさ」

 

 近くのオバサンが「誰と喋ってるの?」と振り返る。俺の声は子供にしか聞こえないらしい。傍目には陽太が独り言を言ってるように見えるだろう。

 

「遊ぶのは子供の……えーと、“せんばいとっきょ”?」

 

『専売特許な。……じゃあ、“学びは子供の責務だ”と返す』

 

「責務って何?」

 

『責任ってことだ。俺たちの活動と同じ――』

 

 そこで、嫌な予感が襲った。

 

 次の瞬間、陽太の鼻歌が止まる。商店街に「キャアア!」「うわああ!」と悲鳴が響き、爆発音とともに黒煙が空へあがった。

 

『また“ネガロイド”か……!』

 

 陽太がニヤリと笑う。

 

「俺の出番か!」

 

『嬉しそうにすんな。人が苦しんでる。真剣になれ』

 

「へへっ、分かってるって!」

 

 陽太は黒煙の方へ走り出した。

 

 商店街の中央広場は大混乱だった。シャッターは潰れ、屋台は倒れ、煙が漂っている。その中心に立っていたのは――

 

「きっししそー!」

 

 懐中時計の頭に、紫の花が咲いた植物の体。トケイソウをモチーフにした怪人、“ネガロイド”。時計の「カチ、カチ」という音が寒気を誘い、甘ったるい匂いが漂う。

 

 逃げ遅れた十三人が蔓に拘束されていた。陽太より幼い女の子もいる。

 

『子供を狙うとは……下種な』

 

「“恐怖のネガルマ”を我が“お嬢”に!」

 

 怪人――テミスの時計が急回転し、人々の負の感情が黒いオーラとして溢れ出す。

 

「うわぁ! 俺の髪が!」

 

「締め切りがぁ……!」

 

「好きな人に振られた……!」

 

 蔓に掴まれた大人が持ち上げられ、テミスが割れた口で食らう。

 

「ゴックン! 良いネガルマ!」

 

 次に狙われたのは、あの幼い女の子。

 

「うぅ……ポチ、死なないで……」

 

「ほう、“子供”のくせに良い恐怖だな。ペットが死ぬのは怖いか?」

 

 テミスがじりじりと近づく。

 

「まずい!」

 

 陽太は路地裏へ駆け込み、周囲を確認するとペンダントから俺を外した。

 

「変身だ! ハイパーレオン!」

 

 掛け声とともに、俺はオレンジのメカニカルなライオンヘッドへと変化し、熱が全身に満ちる。

 

『アストナルガンナー!』

 

 俺は口から赤い銃型アイテムを吐き出した。

 

「ハイパーレオンヘッド、セット!」

 

 銃口に俺を装着。咆哮と電子音が響き――

 

《ROAR! ハイパーレオン! ソル!》

 

『だから俺の声が変身音声になってるのは恥ずかしいんだって!』

 

 陽太は銃を空に掲げる。

 

「バーストライズ!」

 

 放たれたオレンジのライオンビジョンが陽太を包み、俺は陽太の体へ憑依した。

 

 陽太は広場へ飛び出し――

 

「どりゃあ!」

 

「ぐぇっ!?」

 

 光り輝く飛び蹴りをテミスに叩き込み、女の子を救い出す。

 

『早く逃げろ!』

 

 輝きが収まると、そこには獅子の仮面、炎の鬣、太陽を象ったオレンジのアーマーを纏う“ヒーロー”が立っていた。

 

 群衆がざわつく。「ヒーローだ!」「噂の……!」

 

 俺はガンナーで蔓を撃ち抜き、人々を解放した。

 

「いたたた……お前は……!」

 

『覚悟しろ――』

 

「待てレオン!」

 

 陽太の意思が俺を制した。

 

「名乗りだろ! 決めたじゃん!」

 

『あの戦隊ヒーロー風のやつか……嫌だって言っただろ……!』

 

 しかし、姉の声が脳裏に響く。「ヒーローは名乗るんだよ、翔!」

 

 俺は観念した。

 

『――“太陽の咆哮が闇を焼き尽くす! 獅陽勇士ソルレオン!”』

 

 ポーズを決めた瞬間、群衆の視線が刺さる。やめてくれ。死んでるのに羞恥で死にそうだ。

 

「へへーん、決まったな!」

 

『……行くぞ、陽太』

 

「おう!」

 

 テミスが吠える。

 

「ソルレオン! 今度こそリベンジしてやる!」

 

「前に会ったっけ?」

 

『恐怖を糧にするネガロイドだ!』

 

「テトリスか!」

 

『三文字くらい覚えろ!』

 

 テミスが「テミスだ!」と激怒しながら訂正。陽太の脳天気さに相変わらず呆れる。

 

 テミスが黒い霧を放ち、20体の雑魚戦闘員ネガッチを召喚。「ネガネガー!」と襲い掛かる。

 

「雑魚がいくら集まろうと関係ねえ!」

 

 陽太が「ソルパーンチ!」「ソルキック!」と無双。俺は死角からの攻撃を射撃で援護。

 ”二人の意思が1つ”になっているこのソルレオンに死角はない。連携は悪くない。しかし陽太はどこか不満げだ。

「レオンも一緒に技名を叫べよ! 心を1つにしないと威力が落ちるって言ったの、レオンだろ?」

『ダサいだろ!』

 俺の理想はアメコミのスマートなヒーロー。陽太の派手好きと真逆。

 

「ダサくない! ……わ!?」

 

 ネガッチが後ろから飛び掛かるが、俺の意思で肘打ちカウンター。

 

『喋ってる暇ねえぞ!』

「だから!一緒にやるぞ!」

『あーもう分かった!』

 

 ガンナーを腰にマウントし、両腕にエネルギーを貯める。

 

『「ソルスラッシュ!」』

 

 エネルギー刃がネガッチを一掃。残りはテミスだけ。

 

『これでいいか?』

「やればできるじゃねえか! 残りはお前だけだ、大人しく4列消しでもしとけ!」

「Iの字ブロックで一発クリア……って誰がテトリスだ! 俺はテミスだ!」

 

 テミスが蔓を伸ばす。「ソルチョップ!」で切り裂き、間合いを詰める。だが、地面から蔓が現れ、両足を拘束。

「しまった!?」

「お前も恐怖しろ!」

 

 蔓がソルレオンの首を絞め、メキメキと音が響く。

 

『陽太!』

 

 テミスの時計が回転し、禍々しいオーラが流れる。時間の恐怖を増加させる能力だ! 

 俺の脳裏に陽太の恐怖が映る

 

 ――門限に遅れて母親に怒られる陽太だ。

 

 陽太……お前それだけか?テミスも「ネガルマがほとんど出ない!?」と驚く。

 

「んな……恐怖、ぶっ飛ばす!」

 

 陽太が首の蔓をつかみ、掌から炎を放射。蔓が燃え、テミスの本体まで延焼。拘束が解け、陽太が呼吸を整える。

 

『その能天気さ、うらやましいぜ……』

 

 夢に挫折した俺には、こんな純粋さはなかった。

「褒めてる?」

『はぁ……いい加減決めるぞ!』

 陽太を無視し、俺はガンナーのスライドパーツを引く。

 

 ファイナルROAR! ハイパーレオン!

 

 銃口のライオンヘッドがエネルギーを収束。

 

「どうしてこんな目に、に、に……って不味い!?」

 

 テミスはこちらに気が付くがもう遅い!

 

「『プロミネンスブレイズ!』」

 

 トリガーを引き、オレンジ色の光線がテミスを貫く。

 

「ぐえぇ! 俺の花言葉は“信仰”“聖なる愛”“信念”……愛してます、我が“お嬢”ぉぉ!」

 

 テミスが爆散し、分散した黒いエネルギーが人の形を作り、先ほど捕食された男が現れる。気絶しているようだ。

 

「一件落着! へっへん! どうだった、俺の戦いぶり!」

『俺の援護が大半だ。お前の動きは相変わらず危なっかしい』

「だいぶ戦いに慣れた方だと思うけどなー」

 怪人を倒してひと段落、だがのんびりしている暇などない。群衆が戻り、若者はスマホで撮影開始。「ソルレオン!」「ヒーロー!」と人々の歓声。

 

『目立つのは性に合わねえ……』

 

 目立つのは俺の理想のヒーロー像と反する。そんな俺の意思を余所に陽太はカメラに向かってポーズ。

 

 …こいつ!

 

『鼻の下伸ばすな! 帰るぞ!』

「ファンサしてもいいじゃん?」

 

 さっき助けた女の子が自由帳とペンを持って駆け寄る。

「ソルレオン! サイン頂戴!」

 陽太が「サイン!? 考えてねえ……」と慌てる。その隙に『帰るぞ!』と 俺の意思でソルレオンがジャンプし、その場を離脱する。

 

 人気の無いマンションの屋上に降り立ち。俺はソルレオンの変身を強制解除。意図していない行動に驚き、陽太は尻もちをついた。

「いっつつ……何すんだよ、レオン!」

『ヒーローショーじゃねえんだぞ!』

 ヒーローは人知れず悪を倒し、静かに去る。それが俺の理想。陽太の派手好きは姉の理想そのまんま。

 

「やっぱレオンはけちんぼだ! ヒーローはみんなを笑顔にする仕事だろ? レオンみたいに地味じゃダメなんだよ!」

『笑顔は大事だがやりすぎだ。俺たちはヒーローごっこをしているんじゃねえ!』

 

 この口論、何度目だ? 陽太の気持ちは分かる。けど、現実のヒーローには”責任”がある。陽太はガキで、それがまだ分からない。口論を続けても無駄だ。俺は話を逸らす。

 

『もたもたしてる暇ねえだろ? 雷雨警報だ時間見ろ』

「え!? げ! 5時過ぎてる!? ママの雷!」

 

 陽太がスマホを見て真っ青。

 

『ほらな、ママの雷だろ?』

「いや、ここどこだよ! レオン!」

 俺は陽太を無視。チャームに戻り、陽太のペンダントとして首にぶら下がる。ヒーローなんて、特撮の中だけでいいと思ってた。コンビニでクレームに耐え、夢を諦めた俺が、今や”小学生ヒーロー”の相棒だなんて。姉のペンダントがなければ、こんな死後はなかった。

 

『どこまで続くんだ、俺の物語……』

 

 陽太が走り出す姿を見ながら、静かに呟いた。

 




見た目は某流星なメガマンをイメージしてくれれば
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