TS銀髪ロリでフロアボスらしいけど自由に生きたっていいよな?【完結】   作:畑渚

10 / 48
第10話 赤髪の女の子

 門を通り抜けた俺を待っていたのは、普段とは様子の違うダンジョンだった。

 

 まず全体的に淡く光っている。普段はマナクリスタルが淡く照らすだけの空間だが、そのクリスタルがよりきらびやかに発光しており、少し先まで見通せるほどだ。

 

 そして空間自体に嫌な違和感がある。時空が歪んでいるような、胃をひっくり返されているかのような違和感だ。

 

「3層って言ってたか。じゃあ急ぐか」

 

 そんな嫌な気配漂うダンジョンの中だが、体調は今までで一番良い。どこまでも飛んでいけそうな万能感があるといえばいいだろうか。

 

 ゴウとブースターを唸らせながら、3階層を飛びまわる。

 

「くそっ見つからねぇな」

 

 ふと立ち止まってみた瞬間、今まで来た空間が歪んだ。

 

「なんだ!?」

 

 ぐねりと曲がった空間はまるで練り菓子のように捻り混ざり合い、やがて新たな一本の道へと変化した。

 

「なるほど、これが変遷ってやつか」

 

 なぜダンジョンに機械の手が入らないのか、地図なるものが存在しなかったのか。

 それもこれも、変遷によって内部がぐちゃぐちゃになるからだろう。

 

「もしかして飛んでなかったら俺も今頃……」

 

 後ろの新たな姿になった道を見て、ぞくりと背筋を嫌なものが通り過ぎた。

 

「いや、そんなこと考えてる場合じゃねえ」

 

 そう呟いたときだった。

 

「きゃーっ!」

 

 いつもより聴覚が冴えてるからこそキャッチできた、かすかな叫び声。

 

「こっちか!」

 

 俺はなりふり構わずに、ブースターを最大出力で点火した。

 

 

<=>

 

 

「確かにこっち方向だったんだが」

 

 そっちにいたのは、大きなクマ型のモンスターだった。ちなみに今は俺の腕の中で物言わぬ屍になっている。

 

「なんか良い機能ないかな」

 

 眼前に表示されるモニターを探ってみれば、生体感知器なるセンサーが搭載されているようだった。

 

「……何用の機能なんだこれ」

 

 しかし今は緊急時である。そんなこと言っている場合ではない。

 

「センサー、オン!」

 

 機甲から電波のような何かが発せられ、そして計測結果がモニターが映し出される。

 

「ああなんだ。こんなに近くに隠れてたのか」

 

 そこは道から死角になっている洞穴のような空間だった。

 

 覗き込めば、制服姿の女の子が――

 

 

――歯をガタガタ言わせながら、目を見開いて、首を振りながらこっちを見ていた。

 

「あっえっと、助けに来たよ~」

 

「ひっひぃっ!」

 

 あーだめだ、完全に警戒されてる。まあそれもそうか。話すリビングアーマーなんて普通いないからな。

 

「ま、まって。助けに来た、OK?」

 

「あたし、もう終わりなのね……ガクリ」

 

「いや、ガクリって口でいうやつがあるか」

 

「リビングアーマー風情がツッコミしてくる幻覚をみるなんて」

 

「まて、とにかく落ち着いてくれ。ここから出よう」

 

「無理よ、私はいまからウォーベアをワンパンする強さのリビングアーマーに殺されるんだわ」

 

「……いがいと余裕あるだろお前」

 

「ないわよ。変遷に巻き込まれて生還した探索者はいないわ」

 

「じゃあ1番目になればいいだろ」

 

「というかなんなの?死に際に見る夢?」

 

「俺はちゃんと存在してる!」

 

「じゃあなに、助けに来たヒーローとでもいうわけ?」

 

「ヒーローっぽいだろ?この見た目」

 

 がちゃがちゃと機甲をかき鳴らす。

 

「あまりにも悪人面すぎるヒーローね」

 

「そ、そうか?」

 

「まあこの際ヒーローでもダークヒーローでもいいのよ」

 

 赤髪の子は土埃を払って二つ結びの髪をいじる。

 

「私を助けてくれるの?」

 

「ああ、助けに来た」

 

「ははっ、ふふっ」

 

「何がおかしい」

 

「笑ってないとやってられないわよ。変遷で人生終わったと思ったらリビングアーマーが助けに来るんだもの」

 

「やっぱ余裕あるだろおまえ」

 

「ないわよ。でも、一筋の希望が降り注いだ瞬間、最初に沸き立ったのが笑いだっただけ」

 

 赤髪の子は手を伸ばしてくる。

 

「さあ、私を助けて見せて、私の王子様」

 

「……はぁ。仰せのままに」

 

 俺はその手を取った。

 

 

<=>

 

 

「なあ、苦しくないか?」

 

「いいえ、むしろいい気分ね」

 

 お姫様抱っこの形で腕に抱えた子を気遣いながら、俺はブースターをふかしていた。

 

「まさか足が折れてるとはな」

 

「変遷の兆候に気付く前の戦闘でちょっとね」

 

「一緒に潜ってた子にはなんて言ったんだ」

 

「えっと……いいえ、口には出せないわ。ひどいことを言ったもの」

 

「ひどいこと?なんのために」

 

「彼女が私を置いていくようによ。でなければあの子まで変遷に巻き込まれるもの」

 

「ひどいことを……ね」

 

 何を言ったのかは深く詮索しなくてもいいだろう。

 なぜなら、そのひどいことを言われた女の子は、泣きながら友人の助けを求めていたのだから。

 

「合わせる顔がないわ。ふふっ生きて帰れたらね」

 

「帰れるさ。そのために俺がきた」

 

「簡単に考えすぎよ。変遷はダンジョンの自浄作用。養成校で学ばなかったの?」

 

「あいにく、入学したてでな!」

 

 おっとあぶない。曲がり角で接敵した相手を壁にめり込ませながら、先へと急ぐ。

 

「じゃあ教えてあげる。この変遷の調査のために国はビーコンを設置したわ」

 

「そのビーコンが消えたってことか?」

 

「消えたならいいわ。問題は消えずに、奥深くの空間がある場所から信号が出ていたの」

 

「つまり通路がシャッフルされるのか」

 

「だからきっと……ここはもう第3層ではないわ」

 

 目の前に唐突に、天井から何かが降り注ぐ。避けるためにブレーキをかけると、ソレは天井から壁を伝って這い寄ってくる。

 

 濁った身体。土砂や遺物などが体内を蠢く。眼のような器官がぎょろりとこちらを見据え、いびつな発声器官が声ならぬ声を紡ぐ。

 

「マッドクロウラー、たしか15層以降のモンスターね」

 

 マッドクロウラーは道を塞ぐように身体を伸ばしている。倒していくしかなさそうだ。

 

「ちょいとこれは厄介そうだな」

 

「スライムが暴食した結果という説が濃厚よ」

 

「ってことは物理攻撃に対して……」

 

「ええ、スライム以上の耐性を持っているわ。ちなみに燃やしてもだめよ。有害ガスが出るわ」

 

「ちょっと待て」

 

 物理攻撃はダメ、延焼もダメ。俺の武器の両方が防がれてる。

 

「まずい、手詰まりになったかも」

 

「……嘘でしょ」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。