TS銀髪ロリでフロアボスらしいけど自由に生きたっていいよな?【完結】 作:畑渚
「昇格試験?」
変遷の事件から数週間が経った頃、俺は莉子会長に個別で呼び出されていた。
「ええ。そろそろ良いのではないかと思いまして」
莉子会長から書類が手渡される。そこには、日程や試験内容などが書かれている。
「えっと……ランク3?」
「いきなりランク5にはなれませんよ。認定はランク3からです」
「ランク3から上げていけってことか。よし、それで、肝心の試験内容は?」
書類をめくると、なにやら細かいレギュレーションが書かれている。
「うーん、つまりはダンジョン探索しろってことか?」
「そうですね。3人1パーティでカメラを回しながら探索。その録画記録を判断基準にして合否を決めるといった形式です」
「そうか、パーティか」
そうなると困ったことがある。
「俺と組む子たちが受かれない可能性があるな」
「ふふっ、自分が合格しないという心配はしないんですね」
「まあ見た感じ安全確認の終わった3層までのようだし、それくらいのモンスターなら俺がワンパンできる自信があるんだが」
「ええ、そうなると、組んだ子たちの判断資料不足になるでしょうね」
「うーん、だからといって俺が裏方に徹していては、俺のほうが不合格になりそうだしな」
非常に困ったことになった。
「でもランク5になるには、この道を進まなきゃなんないってことだよな」
ランクの認定方法でもっとも標準的なのが、ランク3の認定から実績を積んでいくことだ。
実際、ランク5の5人のうち3人はその方法で登りつめた人だと聞く。
「そういやランク3ってことは紬ちゃんもこの試験に合格してるのか」
「ええ。まあ彼女は人当たりも良いですし、人並みに戦闘力もありますから、難なくこなしてましたよ」
「ランク3昇格って難しいわけではないのか?」
「ええっと、そう言われると難しいですね」
莉子会長は立ち上がって、ホワイトボードに絵を書き出す。
「そもそもランクの基準の話をしますね」
「そういや聞いたことなかったな」
「はい。まずランク1。これは一般市民を示します。戦闘能力を持たない市民ですね。続いてランク2。これは戦闘訓練の経験を持つ者です。ダンジョン探索許可が降りる最低ラインですね。自衛隊や警察の経験者や、私たちのような養成校生徒はここに自動的に割り当てられます」
「俺も入学手続きしたからダンジョン探索に許可がおりてるってわけだな」
「そうです。そしてここからですが、ランク3になると、義務と権利が発生します」
「義務と権利?」
「はい。まずは探索者協会の要請に可能な限り応じる義務があります。特に変遷などが起きた後は調査要請が出されるため、できる限り応えないといけません」
「できる限り?」
「はい。強制ではありません。でないと、徴兵になってしまいますかね」
「なるほどな」
「そして権利です。いわゆる探索者特権と言われる権利です。施設や福祉、サービスにおける優遇や優先権。まあいろいろとあります。もちろん権利なので使わないという選択もあります」
「あくまで強制しないというスタンスなんだな」
「自由権がありますからね。今も昔もそこまで変わりませんよ」
「そうだな。それで、ランク4は?」
「ランク4は、ダンジョンを生き抜く上で有利となる技能があることが唯一の選別方法です」
「ずいぶんアバウトだな」
「ええ、そう思います。ただ、今後増える可能性が高いですね」
「どういうことだ?」
「私の目の話、しましたよね。そういった子供は増加傾向にあります」
「そうか、ダンジョン事変後の子供……」
「メカニズムはいまだ研究中らしいです。もしかすると、若い人全員がなにかしら能力を持つ時代がくるかもしれませんね」
「アニメみたいな話だ」
「でも現実です。現状のランク4もそういった人が大半です。稀にただ大量にモンスターを狩った実績で登りつめた層もいますが」
「で、最後がランク5か」
「ランク5には明確な昇格規定がありません」
「それはどういうことだ?」
「現状、ランク5になるには他のランク5からの評価が必要です。そこに明確な基準はなく、極端な話、気に入るかそうでないかという評価をされるわけですので……わからないというわけです」
「ふーん。ん、ちょっとまて。じゃあ最初のランク5はどう決まったんだ?」
「最初のランク5……。彼女は、ランク4とは比べもにならない戦闘力を持ってして、自身と他を区別するランクがほしいと協会に掛け合って設立したとされています」
「とんでもないな。能力持ちなのか?」
「ええ、彼女の異能は単純です。敵との力や数に差があるほど自身も強くなる。そういった自己強化系の能力者です」
「……強くね?」
「もちろん。強いですよ」
「関わりたくねえな」
「ランク5を目指すなら彼女に気に入られるのが近道ですよ」
「人となりはどうなんだ?」
「いいですよ。もともと財閥令嬢だとかで育ちもいいですし、私も一度お話したことありますが、物腰柔らかで良い人でしたよ」
「なるほど。今度から気をつけよう」
「まあ、よほど運が良くない限りは会うことはないと思いますけどね」
「気をつけるに越したことはないだろ?もし変に出会って変な印象抱かれたら嫌だし」
俺は書類を再び握りしめて、莉子会長に礼を言う。
「いろいろありがとう。そうだな、紬ちゃんにも聞いてみて作戦考えるとするかね」
「それが良いと思います」
「うん、あんがとな」
そういって部屋を後にした。
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彼が部屋を後にしたのを確認してから、莉子は自分のデスクに座り直す。
「あれ、メールが来てますね」
つい先ほどついたばかりのメールを確認する。差出人は生徒会連合会長。どうやら今度のランク3昇格試験についてのことらしい。
「なるほど、変遷後にしてはあまりに早い開催だと思いましたが、普段の3人パーティに追加で、付き添いでランク4が入るんですね。安全性重視でいいことですね」
いままで大きな事故は置きてないものの、ダンジョンの中は死と隣り合わせだ。ランク4が1人付きそうというのは悪くない選択に見えた。
「私も久々にダンジョンに潜ることになりそうですね」
あわよくば彼と同じパーティでとは思うが、そうは上手くいかないだろう。
「しかし、忙しい人ですね」
差出人の名前を見て、そうつぶやく。
養成校生徒会連合の会長にして、探索者の頂点。ランク5の創立者にして、ランク5連盟の会長。
「皇さん、過労とか大丈夫なんでしょうか」
莉子会長は、その差出人アイコン――金髪を短く切りそろえた美人の写真――を眺めながら、そんな心配をした。