TS銀髪ロリでフロアボスらしいけど自由に生きたっていいよな?【完結】 作:畑渚
「よし!いまだ!」
バックステップを踏んだ俺と入れ替わりに、由希ちゃんが飛び込む。
「てやぁ!」
由希ちゃんの攻撃で敵の核が砕ける。
戦闘終了だ。
「悪いねぇ、ラストヒットずっともらっちゃって」
「そういう戦闘コンセプトですから」
俺達の戦闘は単純明快だった。すずかちゃんを先頭に戦闘開始。バフが発動したら俺が割り込みタゲを引く。そして敵の体勢を崩したところで、由希ちゃんが核めがけて攻撃する。
3人全員が戦闘に貢献するいいプランだ。
いや、もちろんここらへんの敵はやろうと思えばワンパンできるんだが、それをやってしまうと協力試験の意味がなくなるからな。
「マナクリスタル回収できました」
「よし、じゃあ先に進もうか」
「うちたち順調だね」
「油断は禁物ですよ。でもこれなら3層到達はできそうですね」
そう、なにもかも順調だった。
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「順調だな」
試験を邪魔しないよう、誰にも気づかれぬように俺はそう呟く。
俺は秋。今は試験の付き添いでランク3候補者とともに行動している。
最初はハズレのパーティーを引いたと思った。女だけだったし、1人はコスプレかと突っ込みたくなる衣装を着ていたからだ。
しかし始まってみればどうだ。
順調に連携して歩みをすすめている。
1人は珍しい異能持ちだった。100人ほどいるランク4の中でも、他人に作用する異能持ちは数えるほどしかいない。
このパーティーの幸運の1つ目はその異能持ちを引けたこと。
1人はシンプルな戦闘能力の高さを見せている。細剣で的確に核を狙う芸当は、剣のコントロールとモンスター知識の両方が要求される。 それを併せ持つ探索者を引けたのがこのパーティーの2つ目の幸運。
そして3つ目の幸運は、あのコスプレっ子を引けたこと。
引いてみてりゃ分かる。パーティーを管理してるのは奴だ。適度に介入して、適度にトドメだけを譲っている。
あの細腕でゴーレムの振り下ろしを受け止めていたり、素早いウォーウルフの攻撃を難なく避けたりと、余裕が見て取れる。
あんな重そうな衣装でそれをやり遂げてるのだからとんだ実力者だ。
だからほんの好奇心だった。
俺は自分の異能、他人の弱点を見る瞳を発動した。
人間の明確な弱点は心臓だ。現に目の前の2人の心臓あたりが赤く光って見える。
モンスターの弱点は核だ。位置はモンスターによる。目の前のモンスターの赤く光った核を1人が切り裂いて光を失っていく。
じゃあコスプレっ子の弱点はどこか。
それは体の中心にあった。
心臓の位置ではなく、中心だ。
その位置は、ダンジョン内の人型モンスターと同じだ。
思わず目を見開いた瞬間、ソレは勢いよく振り返って、目が合ってしまった。
「ん?秋、なにかあったか?」
「……付き添いがとやかく言うことはない」
「そうか。よし、じゃあ先に進もう」
まだ気づかれていない?もう遅い?
ぶるりと身体が震えた。目の前の何者かが何をしでかすのか、そのことに気を取られてしまった。
だから、付添い人として重大なミスをした。
<=>
「フロアボスに到達したみたいです」
「すずか、気をつけて」
「ええ、もちろんです」
事前ブリーフィングで言われた通り、フロアボスは討伐する必要がない。
しかし、挑戦してみようとパーティーで話し合っていた。
事前情報によると、現在3層のフロアボスはスケルトンコアというモンスターで、通常のスケルトンより強化されてはいるものの弱点はむき出しで、狙うのは難しくないとされている。
決して油断していたわけではない。
だが、想定外の挙動に二人は反応できなかった。
「待てお前ら!ここは3層なんかじゃない!もっと深い層に迷い込んでいる!」
秋の声が聞こえた瞬間、先頭に立ってたすずかが宙を舞った。
それが相手の突進攻撃によるものだと気づいた頃には、戦闘は避けられない距離にそれがいた。
鉱石ゴーレム
ゴーレムが進化した存在のそれは、核を硬い鉱石で覆い隠しており、その位置特定の難しさや硬さから、事前に対策ができていないと倒せない厄介な敵として認識されている。
「ちっ、下がれ!撤退しろ」
「そんな!すずかが!」
「自分の命を優先しろ!」
秋の怒号、迷う由希。そして俺は……
「俺が食い止める。由希はすずかを背負って逃げてくれ」
「な!うちそんなことできないよ!」
「やれ!やるんだよ!」
すずかは突き飛ばされてから立ち上がれていない。呻いてはいるから生きてることだけが救いだ。しかし容態が悪いのは間違いない。いち早く治療が必要だろう。
「……わかった。でもセナを1人残していくわけには」
「俺も残る」
「ばか言え」
俺は秋にそう吐き捨てた。
「すずか背負ってる由希を誰が守るんだよ」
「だがしかし……」
「ここは俺を信用してくれ。なに、俺はすばしっこいからこんなやつすぐに撒いてやるさ」
「……仕方がない。信用する」
そういう秋は、なんというか残酷な目をしていた。まるで大切な何かを得るために何かを捨てる、そんな目だ。
「お互い無事で外で会おう」
秋はそう言って、すずかを背負った由希を先導して出口に向かっていった。
「ヨシ」
俺は手首をうごかし首を回す。
「さあ、じゃあやろうか、鉱石ゴーレムとやら」
撒く?何を言ってるんだ。
簡単な話だよ。
追いかけてこないように痛めつけてやればいいんだろ。
鉱石ゴーレムは話さない。
静寂が場を満たす。
「装着」
幾何学模様が宙に描かれ、俺の身体を覆い隠す。
鉄と炎を纏い、その感触を噛みしめる。
「さあ、戦闘開始だ」
機甲を身にまとった俺は、フルパワーでゴーレムに殴りかかったのだった。
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「もうすぐ門か」
ウルフの首から暗器を引き抜いた俺は、そうつぶやく。
「う、うち助かった?」
「ああ、後少しだ」
すずかはどこか痛むのかまだ呻いている。
アレだけの初撃をくらって生きてるだけマシだと思う。
門を通り抜けた俺達を迎えたのは、救急隊員たちだった。
「由希、このまま病院まで付き添い頼めるか?」
「うん、任せて。そっちはセナをお願い」
「ああ」
準備を整え次第再突入して、コスプレっ子を助けに行く算段だった。
「待ちなよ。確か秋くんだっけ」
「……皇さん?」
探索者なら誰しもが知るあの人に、止められた。
「セナちゃんだっけ、あれ、君にはどう見えたかな?」
「それは……昇格試験にコスプレでくるふざけたやつで――」
「ああ違う違う。君の目にはどう見えたかという話だよ」
同じようで違う。二度目の質問でようやく意図が掴めた。
「人……ではないナニか」
「ふふ、やっぱりそう見えるんだね」
ひそひそと、誰にも聞かれないようにそう答えた。
「皇さんはアレを知ってて?」
「……しっ。誰が聞き耳立ててるかわからないじゃないか」
いたずらそうに微笑む彼女に、俺は戸惑った。
「君が彼女について見聞きしたこと、口外無用で頼むよ」
「……皇さんがそういうのであれば」
俺はこの人に恩がある。彼女がそういうのであれば、従うほかない。
「でもそうだ、助けにいかないと」
「その必要はないさ」
彼女は腕時計で時間を確認して、そしてひらひらと手を降ってその場を去っていった。
「もうすぐ帰ってくるよ。それじゃあね」
そう言い残して。
そして彼女の背中が見えなくなった頃。
「秋!すずかはどうだった!?」
いつの間にか戻ってきていたコスプレっ子が、突如話しかけてきて心臓が飛び跳ねたのだった。