TS銀髪ロリでフロアボスらしいけど自由に生きたっていいよな?【完結】   作:畑渚

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第27話 第5層

 じめじめとした洞窟の中。ここはダンジョン第5層。

 つい先日、通常探索が解放されたばかりの、認可なしで潜れる中では最深部にあたる層である。

 

 ウルフ型モンスターの群れを前に、俺たちは奇襲を仕掛けようとしていた。

 じわりじわりと距離を詰めつつ、モンスターの感知範囲を測る。

 

「行くっすよ」

 

「ああ、ばっちりだ」

 

 掛け声とともに飛び出す。

 モンスターが感知した時にはすでに、最初の一匹が薙ぎ払われたあとだった。

 

「右から追加敵、複数っす!」

 

「右側はやる、前方を押さえてくれ!」

 

「任せるっす!」

 

 なんだかんだで2人で潜ることが多い俺たちは、そこそこ連携が取れていると我ながら思う。

 籠手で殴り飛ばせば、モンスターは壁に勢いよく当たって砕ける。何度か続けていれば、気がついた頃には敵は全滅していた。

 

「ふぅ、やったっすね」

 

「マナクリスタルを回収したら先に進もう」

 

 すでにカバンには十分な量が入っているが、あるに越したことはない。こういうところで日銭を稼いどくのが、後に楽する余裕となるからな。

 

 さて、今日の目的、つまりはメインディッシュまであと数十分ってとこか。

 

「休憩は……いらなさそうっすね」

 

「ああ、まだフルパワーだ」

 

 むしろ調子が良くなってる気すらしている。

 

「じゃあ先に進むっす」

 

「おう」

 

 低層といえどここはダンジョン内。何が起きるかわからない。

 俺たちは警戒を強めながら、前へと進んだ。

 

 

<=>

 

 

「この先か」

 

 俺たちの前に、いかにもな扉が現れる。

 

 事前に知らされていた通りだと、この先にいるのは現在5層のフロアボスだ。

 

「やべーっす、緊張するっす」

 

「ああ、俺もだ」

 

 ここまで緊張しているのには理由がある。

 

 それは、このフロアボスが今までに対峙したことのない種類のモンスターだからだ。

 

「スプレーは持ったっす!」

 

「効くとは思えないけどなぁ」

 

「どちらにせよ最後の一手っすから、コレを使わないで済む方にかけるっす」

 

「まあそうだな。奥の手は最後まで取っとくものだ」

 

 紬ちゃんとアイコンタクトを取り、片方ずつゆっくりと扉を開ける。

 

 中は広間になっている。

 

 戦闘できる十分なスペースが空いており、その外周をぐるりと囲むように、水路が張り巡らされている。水路には壁の装飾から流れてくる緑色の謎の液体が流れ込んでいた。

 

『良いセンスだろ?』

 

 自分の似た形の奴が、そう語りかけてくるような錯覚を覚えた。

 

 カチャン、カシャカシャ

 

 広間の奥から、硬いものが擦れ合う音が聞こえる。それはまるで、甲冑を着た人間が動いたときの音のようだった。

 

 しかし、このフロアボスは人型ではない。

 

 長い足、硬い身体。

 

 しかし、このフロアボスは動物型でもない。

 

 何十対もの足、大きな顎。

 

「うへぇ、やっぱり気持ち悪いっす」

 

「俺も正直、背筋がゾワゾワしてる」

 

 本能が、奴を拒む。

 いつの間にか家の中に入り込み、そしていつの間にか噛んでいく害のある存在。

 

 

 人類はやつらを、百足と呼んだ。

 

 

 カシャカシャカシャ

 

「キモい~っす!早く倒しちゃうっすよ」

 

「おう!」

 

 巨大な百足相手に、俺達の戦いが始まった。

 

 

<=>

 

 

「くそっ」

 

 地面に着地した瞬間、尾による薙ぎ払いが来る。

 後方に跳んでなんとか躱すことができた。

 

「セナちゃん、大丈夫っすか!?」

 

「なんとかな」

 

 無事には無事だが、困ったことに成っていた。

 

「拳が、効いてる気がしねぇ」

 

 何度も叩きつけてみてはいる。

 しかし百足のモンスターは元気にカサカサ動いている。

 

「硬すぎるっすね。私の剣も刃こぼれしてきたっす」

 

「長期戦は不利だな」

 

 機甲を出してみてもいいが、せっかくの修練の場だ。対抗戦のためにも、機甲に頼らない戦い方を身につける必要があった。

 

 カシャカシャ

 

 そのとき、素早く百足モンスターが動いた。

 

「げっまずい」

 

「へ?」

 

 モンスターは巨体とは思えないスピードで動き、紬ちゃんをその細長い胴体で取り囲んだ。

 

「まず、逃げ場がないっす」

 

「待ってろ!いまなんとか!」

 

「無理っす、おわりっすぅ……」

 

 モンスターの頑強な顎による攻撃が、紬ちゃんを襲う。

 

「紬ちゃん!」

 

「ああ、終わったっす」

 

 なすすべなく立ち尽くしている紬ちゃん。

 

 いや、その手には、まだアレが握られていた。

 

「最後の抵抗っす!」

 

 最初に確認したスプレーを、迫ってくる顔めがけて噴射する。

 

 カシャカシャカシャ

 

「……っ!?効いたっす!?」

 

 スプレーを避けるように、モンスターは頭を引いてみせた。

 

 しかしスプレーは空。もう本当に、紬ちゃんに成すすべはない。

 

「どっっせい!」

 

 だが俺がいる。

 

 尾の方を持ち上げて、力の限りでぶん投げる。

 火事場の馬鹿力か、それとも化け物じみた身体能力のおかげか

 俺は百足野郎を投げ飛ばすことに成功した。

 

 カシャカシャカシャ

 

 ひっくり返った百足の化け物に、迷わず飛び乗る。

 

「ったく手こずらせやがって」

 

 俺の手には、紬ちゃんが投げ捨てた短剣が握られていた。

 

「トドメだ」

 

 柔らかい裏面の、さらにやわらかい関節部。そこから刃を入れて、核を潰した。

 

 ブシャーと黄色い体液を吹きながら倒れるモンスター。

 

 俺はちょっと離れたところに降り立った。

 

「うへぇ、思いっきりかかったっす」

 

 可哀想なことに、紬ちゃんはびしょびしょである。

 いや、すこし粘性があるからネバネバかな?

 

「どっちでもいいっす。はやく水場に戻るっす」

 

 このあと無茶苦茶水浴びした。

 

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