TS銀髪ロリでフロアボスらしいけど自由に生きたっていいよな?【完結】   作:畑渚

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第3話 アステリア学園ってなんか強そうな響き

 浮遊感のような違和感を感じた後、接地した感触がする。

 

 どうやら無事に門を渡れたみたいだ。

 

「うお、ここが30年後の日本……!」

 

 目の前に、30年前の日本とは違う光景が広がっていた。

 

 まず立て看板がない。動力のわからないホログラフィックディスプレイがあちこちで光り輝いており、近未来感を引き立たせる。でも町並みはそう変わっていない。元々あった街にハイテク技術を上から塗りつぶしたかのような雰囲気だ。

 

「どうっすか、久々の外の空気は」

 

「こうしてみるとダンジョンって湿気った空気だったな」

 

 肺いっぱいに、空気を取り込む。何故か以前よりも空気が良くなった気がする。

 

「ああ、そういえばこれ渡しとくっす」

 

「これは、謎の腕時計型デバイス!?」

 

「マナウォッチっすよ。スマホに変わる携帯デバイスっす」

 

「マナ?もしかしてファンタジーのMPとかそういうマナのことか?」

 

「そうっす。詳しく聞きたいなら小春の方が詳しいっすよ」

 

「そのとおり。マナはダンジョン内で生成される鉱石から抽出したエネルギーを電力のように仕様できるようにした新エネルギーの一つで、これを目的に探索者たちはダンジョンに潜るようになった。従来の発電のように水蒸気でタービンを回す形式ではなく、鉱石から直接エネルギーを抽出できる革新的な技術によって10年ちょっとで石油依存だった日本のエネルギー事情を根本から覆し、今や無くてはならないエネルギー源として一般層にまで浸透しきってる。ちなみに鉱石だけでなくモンスターからもドロップが発生することが発見されてから、政府は自衛隊だけでなく民間業者による探索者の入場を許可したんだ。それからというもの、民間の訓練されてない探索者が大勢の死傷者を出すようになってから政府は事態を重く見てダンジョン入場を免許制に変更。免許を取るには養成校で3年の修練が必要になったんだ。でもいまだに無許可でダンジョンに入るアングラーたちはいて社会問題にもなってる。ともかく……」

 

「あ、話し終わった?」

 

「真面目に聞いてたかい?」

 

「ははは、まあ大体の読者はいまのとこ読み飛ばしたと思うけど」

 

「小春ちゃんの話はちょっと長くて難解なんす。でも頭がいいのはほんとっすよ」

 

「あのねぇ君たち……」

 

 そんな会話をしながらバスへと乗り込む。

 ハイテクな町並みがどんどん通り過ぎていく。

 

「ところでどこで降りるんだ?」

 

「まだまだ先っす」

 

 だんだんとホログラム看板が減ってきた。いつもの日本の町並みだ。シャッターの降りた店も増えてきた気がする。

 

「えっと、まだ?」

 

「まだ先っす」

 

 都心にはなかったような自然が見え始める。道路脇の街路樹も手入れが不十分だとありありとわかるほど伸びている。

 

「えっと……」

 

「つ、次っす!次のバス停で降りるっす」

 

「そ、そうか良かった」

 

 もしや無限に乗り続けるのかとおもったぞ。

 バス停を降りてみれば、先程よりも青々とした空気が肺に侵入してくる。まあこれはこれで悪くない。

 

「それじゃあ、ようこそ我らがアステリア学園へ、っす!」

 

「えっ?」

 

 俺はキョロキョロと辺りを見回す。ここは一軒家の立ち並ぶ閑静な住宅街だ。

 

 どこにも学校らしき建物は見当たらない。

 

「ごめん、どこ?」

 

「ここっす。ここ!」

 

「えっ、この……公民館みたいな場所……?」

 

 みたいとかそんなものではない。なんなら入口の上の方に公民館って書かれている。

 

「えっといろいろ事情があって、今はこの公民館跡地が校舎になってるっす」

 

「は、はぁ」

 

 まあ、なんとなく察していた。移動中にこんなことだろうと考えてはいた。

 でもしかし、これが探索者養成校として成り立っているのが不思議だ。

 

「とりあえず会長に挨拶するっす。ついてくるっすよ」

 

「ああ、オーケー」

 

 とりあえず連れられるがままに、俺は公民館もとい校舎へと足を踏み入れたのだった。

 

 

<=>

 

 

「ようこそ、アステリア学園へ。私が生徒会長を務めております、莉子です」

 

「こちらこそよろしく」

 

 慌てて礼を返すとニコリと微笑んでくれる。清楚系美人って感じだ。長い黒髪が艶艶しく輝いている。

 

「それで、俺はどういう扱いになってるんだ?ダンジョン出口での会話からして、この学園側でなにかしたんだろ?」

 

「はい、そのとおりです。貴方は今、うちの生徒として編入したことになっています」

 

「生徒会長といえど一介の生徒が編入手続きを偽造?」

 

「ふふふ、あまり詮索するものではないですよ」

 

 底しれぬ圧を感じる。しかもこの感じでランク4らしいから戦闘もできるときた。世の中不思議なもんだなぁ。

 

「不思議なのはあなたもでしょう。人としての記憶と、ダンジョン生物としての肉体を持つホムンクルスさん」

 

「まあそれもそうなんだがな」

 

 俺がこの身体について知ってることは、まだまだ少ない。

 

「って、え?あれ、俺声に出てた?」

 

「いいえ、出てませんよ」

 

 にこにこする会長。冷や汗が流れる俺。

 

 もしかしなくても、思考が読める?

 

「ふふふ、半分正解です」

 

「ま、まじかよ」

 

「100%正確には読めませんが、やんわりと何を考えてるのか察することができます」

 

「そんな超能力モノみたいな世界が?」

 

「ええ。貴方が死んだ第一次事変後から、ダンジョン付近で生まれた赤子が、マナの影響によって変異、つまりは能力に目覚めていることが発覚したのです」

 

「能力ってどんなのがあるんだ?」

 

「単純な身体能力向上系から火や水といった要素操作系、珍しいですが精神に作用するのもあります」

 

「そんななかで莉子会長はランク4に入る実力者ってことだよな」

 

「能力の珍しさで高く評価されているだけですよ」

 

 莉子会長はトントンと書類をまとめて、椅子から立ち上がった。

 

「業務も終わったことですし、寮の方に移動しましょうか」

 

 どこに連れて行かれるのだろうと莉子会長の後ろに続く。

 

ガラリ

 

 音を立てて公民館の扉を開け、そして全員が出てから戸締まりをする。

 

 そして道の方に出たかと思うとすぐ目の前のボロい一軒家へと入っていく。

 

「はい、ここが寮です」

 

「いや、なんとなく察してたけどさ!え?一軒家?」

 

「はい、校舎が近くて最高ですよ。共同とはいえ外に出ずに風呂とトイレにもいけますし」

 

「おもってた数十倍、要求水準が低い!」

 

「いいじゃないっすか、先輩後輩水入らずでルームシェア!意外と楽しいんすよ?」

 

「紬の言う通り。私たちはこの生活を楽しんでる」

 

「紬ちゃん、小春ちゃん……」

 

 おじさん、こんなの涙でちゃうよ。今度うまい飯一緒に食いに行こうな?

 

「で、男子寮はどこに?」

 

「男子?いないから問題ないですよね」

 

「……いやオレオレオレオレェ!俺男子!いや男子って言える精神年齢は超えてるけど!」

 

「私にはかわいい女の子にしか見えませんが」

 

「私にもそう見えるっす」

 

「私も」

 

 くう!味方はいないのかここには!

 

「普通によくないだろ!年頃の娘さんたちと一緒に暮らすなんて!」

 

「べつに私は構わないっすよ?」

 

「私も、問題ない」

 

「ほら、二人ともそう言ってますし」

 

「いやいや、俺だって気にするっての!」

 

「じゃあ別で男子寮を作るしかないですかねぇ」

 

 そう言った莉子会長は、わざとらしく大きな動作で指を口に当てた。

 

「しかし困りましたね。すでに新しい身分証は女の子でつくっちゃいました。これを変えるのは難しいんですよねぇ」

 

 妖しい目線で貫かれる。俺は察した。これは身分証を脅すための道具に使われているのだと。

 

「ぐ、ぐぅ……謀ったな!」

 

「謀った気はありませんでしたが、まあそういうことでもいいです。どうしますか?用意できた身分をまた捨てて路端に戻りますか?」

 

 雨風をしのげる場所は必要だ。それに、ダンジョンの無機質な台の上で寝るのは、もう懲り懲りだった。

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「ふふふ、こちらこそ、お願いしますね」

 

 こうして、俺は3人との共同生活をスタートさせたのだった。

 

 

<=>

 

 

「莉子会長、仕事持ち帰ってたっすか?」

 

「ええ、これだけですが。終わり次第合流するので、先に始めててもらえますか?」

 

「わかったっす。早くこないとお肉なくなっちゃうっすからね!」

 

「ええ、すぐいきます」

 

 紬が部屋から出ていったあと、莉子は部屋の隅のデスクに書類を置く。

 

『学校存続条件未達による廃校手続きについて―内閣府ダンジョン管理開発局―』

 

「はぁ」

 

 その唇から悩ましい吐息が漏れる。

 

ピコン

 

 マナウォッチが通知を告げる。莉子はその送り主に辟易としながら、メッセージを開く。

 

『明日10時、いつもの場所に来るように』

 

 莉子は唇を噛みながら『はい』と返信する。

 

「莉子かいちょー!早く来るっす~!」

 

「はーい、今行きます」

 

 紬の声にそう答えて、莉子は一度顔に手をあてる。

 

「よし、大丈夫」

 

 手をどけたそこには、いつものニコニコな莉子会長がいるのみだった。

 

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