TS銀髪ロリでフロアボスらしいけど自由に生きたっていいよな?【完結】   作:畑渚

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第34話 決勝前夜

 その後もアステリア学園の猛攻は止まるところを知らなかった。

 

 下馬評はひっくり返り、いまや準決勝まで登りつめている。

 

 そしてその準決勝ですら……

 

「勝ちっす!」

 

「勝者、アステリア学園!」

 

 俺に出番が回ってくることすらなく、突破してしまっていた。

 

「やったっす!」

 

「紬、ナイスだ」

 

「まさかここまでとは……」

 

 莉子会長が驚くのも無理はない。

 

 というより、俺自身驚いている。

 

 確かにポテンシャルを秘めたメンバーたちだった。小春ちゃんは多種多様なデバイスを駆使して、毎度毎度新しい戦法で相手を追い詰めるし、紬ちゃんは持ち前の俊敏さで相手を圧倒してみせた。

 

 しかし、こうも上手く言っていると、逆に不安すら覚えてしまう。

 

 なにより、この学外対抗戦に参加しているランク5のもう1人、そして最後の1人である牙門が、決勝戦で待ち構えている。

 

「油断はできねえな」

 

「もちろんっす」

 

「牙門は大将。まずは先鋒中堅からだよ。あの学園は手堅い探索者層に恵まれているからね」

 

「ああ、そうだな。一歩一歩、踏みしめていこう」

 

 準決勝が終わったというのに、すぐに場は作戦会議の雰囲気に呑まれてしまった。

 

 それをみながら莉子会長がため息を吐いたことにすら、気づくことはなかった。

 

 

<=>

 

 

 決勝戦は1日の休止日を挟んで行われる。

 

 この日は特に予定を決めておらず、出店でも見て回るかと私服でぶらっと出かけたところだった。

 

「……なんだこの匂い」

 

 奇妙な匂いがした。

 出店からではない。料理が焦げた匂いとは似ても似つかない匂いだ。

 

 しかしどこか懐かしい匂いでもある。

 

「……なんだ?」

 

 俺は匂いの元を探る。

 そこまで時間が立たぬ内に、それが移動する匂いの元であることがわかった。

 

「こっちだ……」

 

 まるで吸い寄せられるように、俺は校舎裏の方へと吸い込まれていった。

 

 

「えっと、あれとあれは買った。これも手に入れた」

 

 

 そこには、フードを深く被った女が、出店の商品を両手に抱えてあれやこれやと確かめているところだった。

 

「おい、そこで何をしてる?」

 

「げ、見つかった!?」

 

「何者だ?」

 

 俺は奇妙な匂いの元にそう尋ねる。

 

「ああ、よかった。同類か」

 

「同類?どういう意味だ!」

 

「……っと言わなきゃ良かった」

 

「答えろ!さもないと……」

 

 俺は腕にだけ機甲を展開し、相手を睨みつける。

 

 完全にこの匂いを思い出していた。

 

 これは、ダンジョンの深層でする匂いだ。

 

「待って待って。君には敵わないよ。降参する」

 

「じゃあフードを取れ」

 

「……ほんとに?」

 

「嘘は言わん」

 

「仕方ないか……」

 

 謎の存在は、両手の荷物を一旦下ろして、そしてフードを取ってみせた。

 

「なっ……!?」

 

「はぁ。よりにもよって君に見つかるとはね」

 

 その人物は、人間の形をしていた。しかし明らかに人間と違っていた。

 

 肌のところどころが、鱗で覆われている。

 それはまるで、人と何かを混ぜたかのようだった。

 

「君に敵うように私は作られてない。だから抵抗する気もないよ」

 

「いや、そうじゃねえ」

 

 俺は、目の前の人物が人と何かの混ざりものだとかそういう話はどうだってよかった。

 

「なんで、莉子会長に似てやがる……?」

 

「莉子か……。だから君には見つかりたくなかったんだ」

 

 目の前の存在は、やれやれと首を振ってみせた。

 

「莉子と似てる理由。君も薄々勘づいているんだろ?」

 

「まさか……変遷で行方不明になったって話だったお姉さんか!?」

 

「半分はそうで、もう半分はそうじゃないね」

 

「生きてたなら連絡くらいやれよ!莉子会長がどんだけあんたを!」

 

「まあ待って」

 

 つい声を荒げてしまった俺を、そいつは指先で制した。

 

「逆に聞いてしまうけど、こんなになったのに『生きてる』なんて言える?」

 

「そ、それは」

 

「君だってこっち側の人間でしょ。君は前世での家族や知り合いに、生きてましたなんて報告できたの?」

 

「……っ」

 

 答えは否だ。俺はその問題にはずっと目をそらしてきた。

 

 お前なんか知らないと否定されるのが怖いからだ。

 

「私たちは生きてる以前に、まず死んでる。そこから目は逸らせないよ」

 

「そんな……」

 

「じゃあ、そろそろ帰らないとヤバいから」

 

「ヤバい?何かあるのか」

 

「……そういえば君は違うんだっけ」

 

「違う?」

 

「うん。君と違って、普通のモンスターはマナクリスタルの環境下じゃないと生きていられないの。私も例外じゃない」

 

「……もしかしてダンジョン内でやたら調子よく感じたのは」

 

「本来いる環境下だからだろうね」

 

「待ってくれ、俺は何が違うんだ」

 

「私も詳しくは知らないよ。でも、長時間、日をまたいで外で活動しても大丈夫みたい」

 

「俺が異質なのか」

 

「ご主人様は何を考えて君を作ったんだろうね」

 

「ご主人様?」

 

「君も会ったって聞いたけど」

 

「ああ、あいつのことか」

 

 いつぞやの深層での出来事を思い出す。

 

「っといけない。私はもう限界だから、じゃあね!」

 

 莉子会長に似たお姉さんは、そう言って走り去ってしまった。

 

 

 俺は、明かされた情報を前にしばらく立ち尽くしてしまっていた。

 

 

「ああ、ここに居ましたか。セナさん」

 

「……っ!莉子会長?」

 

「探しましたよ。明日の決勝戦について話し合いたいと紬さんが……どうかしましたか?」

 

「いや、なんでもない」

 

 俺は、思わずそう隠してしまった。

 

「……?まあ、それで紬さんが呼んでいたので探してたんです。ここに何か?」

 

「いや、ほんとになんでもないんだ。作戦会議だろ、急がなきゃな」

 

 お姉さんのことについて気軽に話せるほど、能天気では居られなかった。

 

 少なくとも自分のことについて結論が出るまで、この話は莉子会長に話せない。そう考えていた。

 

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