TS銀髪ロリでフロアボスらしいけど自由に生きたっていいよな?【完結】   作:畑渚

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第37話 再会

「姉さん!」

 

 駆け寄ろうとする莉子会長を、お姉さんは手で制した。

 

「……来ないで」

 

「ど、どうして」

 

「莉子もわかっているでしょう」

 

 その手すらも、ところどころ鱗が露出していた。

 

「私はもう人間じゃないの」

 

「そうだとしても!」

 

「ごめんね……」

 

「……」

 

 莉子会長はうつむいてしまった。

 

 それもそうだ。

 せっかく会えたというのに、もう自分は自分でないと拒否されたのだから。

 

 その苦しみがどんなものかは、今の俺にはわからない。

 

 でも、それでも俺は、莉子会長を彼女に合わせたかった。

 

「ねえ莉子」

 

「なに、姉さん」

 

「お父さんは元気?」

 

「うん。いつもどおり鍋振ってるよ」

 

「お母さんは?」

 

「変わらずだよ。何もかも変わってない。姉さんが居なくなったときから」

 

「本当に何もかしら」

 

「え?」

 

「あなたが会長としてしてきたこと、全部ではないけど、耳に入ってる」

 

「なっ」

 

「私のために居場所を残そうとしてくれたこと。庶務の合間にダンジョン探索をし続けたこと。そしてやむを得ずに大人の力に頼ったことも」

 

「……」

 

「まったくバカね。こんなバカな姉なんて、さっさと見切りをつければ良かったのに」

 

「できるわけないでしょう」

 

「どうして?」

 

「だって姉さんは、大切な家族なんだから」

 

「まったく。そのために自分を犠牲にするなんて」

 

 お姉さんは少し迷ったように手を動かした後、その手で莉子会長の頭を撫でた。

 

「やっぱり変わってないよ」

 

 莉子会長がそう言う。

 

「私が落ち込んでいるときはいつもこうして頭を撫でてくれる。優しい姉さんのままだよ」

 

 

<=>

 

 

「感動的な再会ってやつかい」

 

「ああ。ありがとな。莉子会長も入れてくれて」

 

「まあセナちゃんの頼みってなら聞いてやらんでもないってだけだよ」

 

「なあ、なんで莉子会長のお姉さんも俺と同じように、外で生活できるようにならなかったんだ?」

 

「そもそもだね、君は僕を何だと思ってるんだい?」

 

「何ってそりゃ……何なんだ?ダンジョンの管理者とか?」

 

 よくよく考えると、俺はこいつのことを何も知らない。

 

 なぜ友好的なのか。その割にダンジョンは人と敵対するモンスターを生み出し続けるのか。なぜ俺と瓜二つな顔をしているのか。

 

「まあまず、僕が何者かなんだが……」

 

 両腕を広げながらヤツは説明を続ける。

 

「僕は初めの心のあるモンスターさ」

 

「こころ?」

 

「ただの言葉選びの問題さ。ああ、理性って言い方もできるか」

 

「つまりは何だ。お前は人間と似たモンスターの第一弾ってわけか?」

 

「そう!さすがの理解力だね」

 

「第一弾か……」

 

「じゃあ君は第何弾だと思う?」

 

「わかんねえ。でも完成版じゃなく、試作品ってのはなんとなくわかる」

 

「だいせいかーい」

 

 ヤツはパチパチと拍手してみせた。

 ところどころ鼻につく野郎だまったく。

 

「君は初めての混ざりモノさ。だからか知らないけど、目覚めるのに何年もかかったけどね」

 

「だから30年も経ってたのか」

 

「僕も失敗作だと放置してたから、目覚める兆候が出たときはびっくりしたんだよね」

 

「失敗作ねぇ」

 

 そう言われるのは、あまりいい気持ちがしねえな。

 

「目覚めてみたら、人としての記憶を濃く受け継いだ君が生まれてたってわけ」

 

「おい、ちょっとまってくれ。お前が生み出したってなら、俺の人格を入れたのはお前じゃないのか?」

 

「ちがうんだなこれが」

 

 ヤツは虚空からポテチを取り出して、袋を大きく開けた。

 

「僕も君側、つまりは作られた側なんだ。どうやって作られるだとか、何を条件に君みたいな個体が生まれるだとかは、研究中なんだよ」

 

「お前でも制御できないってことか」

 

「そして、2体目の成功例が彼女ってわけ」

 

 そういってお姉さんのほうに目をやる。

 

「でも彼女は生み出された当初はひどく不安定でね。複数の人格が競い合っているようだった」

 

「そう考えると恐ろしいな」

 

「で、勝ち上がったのが今の彼女ってわけだ。奇跡に感謝したほうが良い。君の関係者だったんだから」

 

「奇跡……ねぇ」

 

 思えば、ふとした偶然が重なりあって今のこの状況が生まれているのだった。

 奇妙なめぐり合わせもあったもんだ。

 

「なあ、お姉さんを外で生活できるようにはできないのか?」

 

「まあ無理だね。彼女を再構成すると、人格もリセットになる。となると……」

 

「最悪の場合、お姉さんが表に出てこない、実質死ぬことになるってわけか」

 

「今の状態がベスト。そう考えたほうがいい」

 

「そうだな……」

 

 世の中、どうにもならないこともある。

 

「それならせめて、短い活動時間を伸ばすことはできねぇのかな」

 

「どういうことだい?」

 

「ほら、マナクリスタルがあるだろ」

 

「ああ、それがどうかしたのか?」

 

「昔戦ったときに試したんだが、こう砕きながらまとわせることでパワーアップできたんだ」

 

「なに……?」

 

「俺達はどうやらマナを力にできる能力があるらしい」

 

「ということは、外部バッテリーのようにすれば」

 

「ああ、外での活動時間が増やせるかもしれねえ」

 

 そうすれば、外での用事のついでに莉子会長に会いにこれる時間を作ってやれるんじゃないか?

 

「しかしそのツールを誰が作ってくれるってんだ」

 

「任せておけ、うちに腕の良いエンジニアがいる」

 

 ここは小春大先生の手腕に、頼ることにしよう。

 

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