TS銀髪ロリでフロアボスらしいけど自由に生きたっていいよな?【完結】   作:畑渚

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第39話 おかえり

 アステリア学園訓練所こと近所の空き地にて……

 

 俺と小春ちゃんは仁王立ちで、待ち人をいまかいまかと待っていた。

 

「ほんとに来るのか」

 

「聞きに行ったのは君自身だろう?少しは落ち着きたまえよ」

 

「そりゃそうなんだが」

 

 待ち人は誰か?

 

 答えは決まってる。

 

 次の瞬間、目の前の空間がぐにゃりと歪んだ。

 

「やあ、待たせたかい?」

 

 ヤツがダンジョンの奥底と空き地を繋いで、こちら側にやってきた。

 

 ヤツの後ろには、莉子会長のお姉さんも付き従うようについてきている。

 どうやら問題なく繋がったようだ。

 

「ポテチとかコーラとかどうしてるんだと思ったら」

 

「僕も犯罪者じゃないからね。おつかいに行かせてるってわけさ」

 

「ちょっと待て、その金はどこから湧いてでた?」

 

「君のような勘の良い人間は嫌いだよ……」

 

 ヤツは観念したかのように手を広げた。

 

「いがいと財布を落とす探索者は多いってことさ」

 

「世知辛いな」

 

「本当にそうだよ。変遷直後なんかはそういう抜けた探索者がいなくて収入が落ちるんだ」

 

「……まあ強奪してないならとやかくは言わねえよ」

 

「助かるよ」

 

 そうこう雑談していると、小春ちゃんが時計を気にしだした。

 たしかに、そろそろ本題に入ろう。

 

「紹介するか。こちらが我がアステリア学園の開発王、小春ちゃんだ」

 

「うむ、崇め奉れ」

 

「これまたずいぶん大きく出たね」

 

「でもその技術力が今回は助かったんだ。これくらいなんてことはないさ」

 

 小春ちゃんにはお世話になりっぱなしだ。靴をなめろというなら舐める所存である。ぺろぺろ。

 

「それでこっちが……そういや名前知らねえや」

 

「そういやそうだね。じゃあ改めて名乗らせてもらおう」

 

 ヤツはない胸に手を乗せて、高らかにこういった。

 

「僕の名前は……いや、ほんとは名前とかないんだよね。どうしよう」

 

「なんか縁のあるものとかそういうのから取るのはどうだ?」

 

「じゃあそうしよう。セナを逆にしてナセ……語感が悪いな。よし、ナナセにしよう」

 

 ナナセはそういうと、銀髪をたなびかせた。俺とは違う碧色の目が、月明かりを反射してキラリと光った。

 

「んでお姉さんのほうが?」

 

「昔の名前で名乗っておきましょう。亜季です」

 

「亜季ちゃんか。いい名前だ」

 

「その顔でちゃん付けされると……こう、違和感がすごいですね」

 

「こんなんでも中身はおっさんなんでな。年下には須らくちゃん付けするぞ」

 

「まあ構わないです」

 

「よし、それじゃあ自己紹介も終わったところで本題に入ろう」

 

 そういって小春ちゃんに目配せすると、あいわかったと頷いてカバンから瓶を取り出した。

 

「これが理論上、君たちの活動時間を伸ばすための……そうだね、薬……というよりポーションと言った方がぽいかな」

 

「マナポーションってことか。ファンタジーだな」

 

「ダンジョンって存在自体がファンタジーみたいなものだろう」

 

「それもそうだ」

 

 小春ちゃんはそれぞれナナセと亜季ちゃんに瓶を渡した。

 

「一応俺で害はないことは確認済みだ。飲んでくれ」

 

「……まあ飲んでみるしかないか」

 

 ナナセは亜季ちゃんと目を合わせて、そして意を決して瓶の蓋を開けた。

 

 ごくりと喉をならしながら、2人は瓶の中身を飲み干した。

 

「……ほお」

 

「……これは、なんですかね」

 

「問題はなさそうだな」

 

 2人の様子は変わらず、むしろ心地よさそうである。

 それもそうだ。モンスターの力の源であるマナを直接摂取したのだから。

 

「ちなみに身体光ったり、変に力が湧いてきてうずうずしたりはしないよな?」

 

「しないけど……もしかして君」

 

「……あそこに大穴が空いてるだろ?つまりはそういうことだ」

 

「そんな劇物を僕たちに飲ませたのかい!?」

 

「問題なかったんだからいいだろ!」

 

 ちなみに身体が光り始めた時点でまずいと外に飛び出して、我慢できずに出てきてしまった機甲を自動装着してパンチした次第である。

 おそらくだが、俺はもとより外で活動する力があるから、このポーションを飲むと力が溢れてしまうのだろう。しかし軽くパンチしたつもりでこの大穴だから、本気で戦ったらどうなっていたのだろうか。

 

「とにかく、せっかく活動できる時間が増えたんだ。寄ってけよ」

 

 俺はそう言いながら、アステリア学園の寮を指さした。

 

 

<=>

 

 

「おかえりなさい……ね、姉さん」

 

「ただいま、なんてね」

 

 今度は遠慮なくハグし合う莉子会長と亜季ちゃん。家族愛って良いよな。心がほっこりする。

 

「どういうこと?門からここまでは相当な距離が」

 

 莉子会長は活動時間のことについて知っている。

 だがしかし、このサプライズのために、小春ちゃんとの実験はこっそりやっていた。

 

 そう、この表情を見るために

 

「お邪魔するよ。狭いとこだねぇ」

 

「おい、感動の再会を遮るな」

 

「最近ダンジョン内でやったばかりだろう?」

 

「人の心とかないのかよ」

 

「モンスターだからね」

 

 それもそうか。いやそうじゃいけないんだけどさ。

 

「皆~そろそろご飯ができるっすよ~……って来客っす!?」

 

「ごめん紬ちゃん。2人増えたわ」

 

「早めに言ってくださいっすよ~。まあ仕方ないっす。今日も鍋っすから、具材ふやせばいけるっす」

 

「ありがとう紬ちゃん」

 

 エプロン姿の紬ちゃんがトテトテと台所へ戻っていった。

 

「じゃあ、改めて」

 

 俺は新入りの2人に向き直り、高らかに告げた。

 

「ようこそアステリア学園へ。そしておかえり、亜季ちゃん」

 

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