TS銀髪ロリでフロアボスらしいけど自由に生きたっていいよな?   作:畑渚

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第47話 最後の一撃は切なく

「ちっ後で絶望を見せてから殺そうと思ったのに」

 

「はっ、慢心したなネネ」

 

 俺は立ち上がった拍子に転がり落ちそうになった、紫色の液体の入ったアンプルを手に取る。

 小春ちゃんがよく使っている印がついてることから、コレが小春ちゃんからの贈り物だと理解した。

 

 パキ

 

 アンプルの先をへし折り、中身の液体を飲み干す。

 薬の信頼性?小春ちゃん製ってので十分だろ。

 

「お?これは」

 

 身体の底から力が湧いてくる。溢れ出しそうな衝動が、機甲の隙間から青白い光となって吹き出す。

 

「なぜその力を……」

 

「ダンジョンはどこまでも純真で平等だ。お前だけに与えられた力なんてないってことだよ」

 

 緋い炎と青白い炎。二極の炎を纏った機甲が相対する。

 

「セナさん……」

 

「莉子会長、下がっててくれ。あとは俺に任せてくれないか」

 

「……わかりました。でももし危なければ割って入りますからね」

 

「そんなことさせないさ」

 

 ブースターを点火させ、ネネに急接近する。

 

「くっ」

 

「怖いか?自分と同等の存在が」

 

「私は……!ダンジョンの意思で創られた!」

 

「まだ言うか」

 

 なりふり構わない拳を、俺は軽くはねのける。

 

「なら大人として、そして姉としてわからせないとなっ!」

 

 拳が頬にクリーンヒットする。機甲にダメージはないように見えるが、中身はそうはいかない。

 

「がはっ」

 

 ネネが身体をバウンドさせて地面に墜落する。

 俺は回復する時間を与えず、すぐそばに降り立つ。

 

「バカな!そんな!私、私は!」

 

「黙れ。お前と俺の間に言葉なんて不要だ」

 

「そうだ、私の傘下にならないか」

 

「世迷言を」

 

「ダンジョンだけじゃない。この力があれば私たちは世界をも」

 

「バカなこと言うなぁ」

 

 俺は頭をポリポリと掻きながら、ネネの胸に足を乗せる。

 

「世界は自由で不特定だから、綺麗なんじゃないか」

 

「そんなわけ――」

 

「ああ、反論はいらない」

 

 俺は思い切り足で踏み抜いた。

 

「あっが、ごぼ」

 

「さよならだ、ネネ」

 

 核が破壊されたモンスターと同じく、ネネの身体が粒子になって消えていく。

 

「う……恨むぞ……」

 

「ああ、地獄でまた会おう」

 

 最後まで恨み節の抜けないやつだった。

 

「か……勝ったんですか」

 

「ああ、莉子会長」

 

 緊張の糸が切れたのか、莉子会長が崩れるように座り込む。

 

「大丈夫か」

 

「ええ、私は」

 

 紬ちゃんも動けずにいるし、小春ちゃんも痛みにうずくまっている。

 

「莉子会長。あとは任せていいか?」

 

「セナさん?戦いはもう終わったはずでは」

 

「ああ、戦いはもう終わりだ」

 

 俺はネネが出てきた門の先を見つめる。

 

「でも、ケジメがまだついてないからな」

 

「何を……」

 

 拳を握りしめて、俺は言葉を絞り出す。

 

「ダンジョンを……潰す」

 

「なっ、そんなことが可能なんですか」

 

「ネネを倒したことで管理権限が移ったんだ。だからわかる」

 

「しかし、それは……」

 

 言い淀む莉子会長のこともわかる。ダンジョンは害であると共に、ここ数十年の日本の躍進を支えてきた資源でもある。

 

「わかってくれ莉子会長」

 

 管理者になった今だからわかる。

 

 ダンジョンは生物だ。そしてダンジョンにとって外の世界は、敵だ。

 

 敵性意識がある以上、第2第3のネネが生まれる日はそう遠くない。

 俺は、その非情なシステムを壊す宿命にある。

 

「ダメです……といっても貴方は拒否するのでしょう」

 

「……すまない」

 

「貴方はいつもそうです。こちらの言う事なんて聞かずに、自分の思うがままに」

 

「自由が俺のモットーだからな」

 

「自由……。ふふ、そうですね。あなたはいつも自由でした」

 

 莉子会長の瞳がきらりと光る。

 

「その自由を捨てようと言うのです。どれほどの覚悟か」

 

「はは、莉子会長にはお見通しか」

 

 ダンジョンの核を壊した瞬間。ダンジョンの崩落は始まる。

 中にいる者への配慮など一切ない、破壊のみがそこにある。

 

「本当に……それしか道がないのでしょうか」

 

「ああ」

 

「小春さんであれば、破壊できる兵器を作れるかもしれません。紬さんであれば、有識者たちを募って組織を作ることだってできるかもしれません。私だって……」

 

「もういい、莉子会長」

 

「だって……だって!あなたも死ぬんですよ!」

 

「いいんだ。それで」

 

 ダンジョンで生まれたこの人生、ダンジョンで終えるのが花形というものだ。

 

「じゃあな、もう行くよ。これ以上いると、情に流されそうだ」

 

「……」

 

「じゃあな、莉子会長。そしてアステリア学園。いい場所だった」

 

「今まで……ありがとうございました……」

 

「ふっ、感謝を言わなきゃなのは俺のほうさ」

 

 門を通る間際で、俺は振り返って莉子会長に、そしてアステリア学園の皆に言う。

 

「ありがとう!楽しい人生だったぜ」

 

 そう言い捨てて、返事も聞かぬまま門へと身を投じた。

 

 

<=>

 

 

 ダンジョンはいつもと変わらず、いやな湿っぽさが肌にまとわりつくようだった。

 

 モンスターの姿は見えない。ネネのやつはどうやら、今持てる最大戦力で戦いに出たらしい。

 

「変に温存とかしてなくて良かったぜ」

 

 正直、薬によるブーストが切れかかっているのを感じた。良くてあと一撃繰り出せるかくらいだろう。

 

「急げ……」

 

 ブースターを最大出力に固定し、ダンジョンの奥へ奥へと飛び続ける。

 

 しばらくすると、見慣れた空間がでてきた。ナナセと会った、モニターだらけのあの空間だ。

 

 そして今の俺の本能が、その先の部屋の存在に警鐘を鳴らしていた。

 

「そこなんだな」

 

 地面を踏みしめて、自分の足でその部屋へとたどり着いた。

 

 そこは白い壁に包まれた、奇妙な空間だった。

 蛍光灯などは無いのに、どこかが淡く光を発しており、視覚に困ることはない。

 

 そしてその真ん中に、筒状の装置がぽつんと置かれている。

 

 そこには胎児のような、小さな生命が培養されていた。

 

 まるでホルマリン漬けの標本のようだが、しっかりと鼓動している。

 

 俺に流れ込んできた知識によると、これこそが、ダンジョンの核だった。

 

「はは、最後は赤子殺しか。こりゃ本格的に天国に行けねえな」

 

 一度死んだ身でこういうのも、なんだか奇妙な話なんだが。

 

「じゃあ、やりますか」

 

 地面を踏みしめ、拳に炎を纏わせる。

 

「じゃあな、ダンジョン」

 

 振り抜かれた拳は、まごうことなく、胎児の核を貫いた。

 

 

 

 

 ダンジョンの崩壊が始まる。

 




次回、最終話
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