TS銀髪ロリでフロアボスらしいけど自由に生きたっていいよな?【完結】 作:畑渚
「あ、莉子会長~」
「おまたせしました」
「ううん、小春ちゃんも私も今きたとこっす!」
「ナイスタイミングだよ」
「それじゃあ行きましょうか」
集合地点についた3人は、目的地へと歩み始める。
軽く雑談して近況報告をしつつ、街を歩く。
「もう3年っすね」
「ええ、早いものです」
ダンジョンが崩落したあの日から3年。今日はその記念日であった。
「小春ちゃん、いや今は小春教授っすね。大学の方はどうっすか?」
「生意気な学生が多くて困ってるよ。授業なんてさっさと済ませて研究に専念したいというのに……」
「異例の大出世っすもんね。その年齢で教授なんて」
「体よくついてた教授が失脚したものだからね」
「おお、こわ。小さな政治の世界っすね」
小春は大学教授に籍を置いた。毎日授業に研究にと、充実した日々を過ごしているようだった。
「そういう紬こそどうなんだい」
「うちは警部になったっすよ!」
「無事キャリアに乗れてるようだね」
「ふっふーん、目指せ、警視総監っす」
紬は警察に入り、現場を駆け回っているらしい。
犯人追跡の身のこなしが猫のようだともっぱら評判である。
「莉子会長は……」
「ふふふ、私も順調ですよ」
「そりゃよかったっす」
2人はそれ以上深くは聞かなかった。
というのも、莉子は今現在、自衛隊に属していることになっている。
しかし、2人はそれ以上の情報を教えられなかった。
そしてこの世の中、少し調べれば、『自由に私服で出かけられる』という自衛官が珍しいこともわかる。
そして莉子の異能……。
2人は漠然と、『莉子会長の仕事内容は聞いちゃいけないもの』だと思うようになった。
「あっ、着いたっすよ」
着いたのは、ダンジョンの門の跡地、記念碑が立っている場所だった。
莉子は手にしていた花束を、献花台にそっと置く。
「……」
莉子が手を合わせる。それに続いて紬と小春も、静かに手を合わせる。
ここは、ダンジョンで亡くなった全ての者を弔う、会館にもなっていた。
「あの日、ダンジョンが機能停止してからいろいろなことがありました」
その実、特異点であったダンジョンを失った日本は、世界で唯一というアドバンテージを失い、エネルギー産業も前時代に巻き戻さざるを得なくなった。
「いいこともわるいこともありましたが、結局は前に進んでるんです」
莉子は今でも、あの日の彼の背中を鮮明に思い出せる。
学園を救うと言った無責任なヒーローは、勝手に世界ごと救って消えてしまった。
「安心してください。学園こそ、解体となりましたが、私たちは今も生き続けてます」
探索者養成校はその全てが解体となり、探索者たちも散り散りになった。そんな中未だに会い続けているアステリア学園は、その仲の良さがうかがえる。
「莉子会長、そろそろ行くっす」
「……はい。そうしましょうか」
献花台から離れ、記念会館を後にする。
「っと、仕事の連絡です。少々お待ちを」
莉子が少し離れて電話に出る。
「莉子会長も大変っすね」
「まあもとより、仕事を自分で増やすタイプだ」
「確かにそうかもっすけど。学園のときのように手伝えないのがもどかしいっす」
「まあ気持ちはわかるけどね」
そうこう軽口を叩き合っているときだった。
電話を終えた莉子が戻ってくる。
「莉子会長、どうだったっすか?……莉子会長?」
「……すみません、この後の予定はキャンセルでお願いします」
「急な仕事っすか。まあしょうがないっすね」
「莉子、もし辛かったら相談してくれよ。どういう形であれ、力になる」
「紬さん、小春さん、ありがとうございます」
莉子は申し訳なさそうに2人に謝罪を告げ、そして少しして来た黒塗りの車に乗ってどこかへ行ってしまった。
「まったく、慌ただしいことだ」
「莉子会長らしいといえばそうっすけどね」
その瞬間、紬の電話が鳴る。
「あ、先輩っすおつかれさまっす~、えっ!?わかったっす、すぐいくっす!」
「噂をすれば紬にも、だね」
「小春ちゃんごめんっす!すぐ現場向かうっす~!」
そういってタクシーを捕まえて紬は現場へと向かっていってしまった。
「まあ、慌ただしいのもうちらしいか」
1人残された小春は、コンビニで買ったアイスを片手に、研究室へと戻っていくのであった。
こうして新たな日常で、皆必死に生きていくのであった。
「……っと、行ったようだな、あぶねぇ」
一つの影がそう呟きながら、献花台へ近づき、花束を添えた。
そして誰にも気付かれないまま、影は雑踏へと消えていく。
彼もまた、新たな日常へと、一歩を踏み出していくのであった。
最後までお読みいただきありがとうございました。
エンディング悩みに悩みましたがこんな形になりました。タタカナイデ
ではまだ次回作でお会いしましょう!