型月でセレビィ()に目を付けられた男の末路 作:どういうことか説明しろユキナリ
「今夜は月が綺麗だなぁ……」
虎も沙条も酔いが回って寝てしまい、やることがない秋の夜。
俺はお猪口片手にぼんやりと夜空を眺めている。
この時代は灯りの類が全くない関係上、夜空に星々が映えること映えること。
いやぁ一生見てられる景色だね。
「のぼせた頭に優しいぜ、全く」
涙が出ちゃいそうだ。
あの後見事処理限界を迎え現実に戻った俺は、いたずらをしようとしていた虎をあしらったり、沙条に絡まれたりと賑やかに、そしてぼんやりとさっきまで過ごしていた。
とは言え流石に脳を休ませる機会は欲しかった。
何十人とが一生をかけて溜め込んだ知識は、そう易々と読み解けるものではないのだ。
「……ツカサさん」
「ん、虎か。起きたんだな」
「はい、ツカサさんの呟きが聞こえたもので」
「そりゃ悪かったな」
ほわほわとあくびをしながら、虎が隣の部屋から出て来ていた。
さっきまでしっかりと飲んでた癖に、酒に強い奴だぜ。
「飲むか、肴は夜空くらいしかないが」
「是非。……あなたと飲むお酒ならばなんでもおいしい筈、ですから」
「は、そりゃ光栄だ」
そうふにゃりと笑う虎。
ここだけ見ると穏やかな美少女って感じだ。
「んっ……ほぅ。月見で一杯、というのも悪くないものですね」
「お口にあった様で何より」
「ええ、本当に……ふふ、ああ、良いものですねぇ」
最近のこいつは何かにつけてほわほわ〜っとしている。
ついでに沙条とのじゃれあいにおける勝率も中々のものに、勝ち越し中だったかな。
本気で本体を持ってこようとしている沙条は少々面白かった、やめろ。
「ふふ」
「俺じゃなくて月見て笑え、今日は特に綺麗だぜ」
季節的に今は秋。
ここまで綺麗な満月となると中秋の名月だと言われても納得してしまいそうな程である。
「……ええ、そうですね」
「だろ?」
「これが綺麗、と言うことなんですね」
「ああ」
虎のお猪口に酒を注ぎながらも、静かに時間が過ぎていく。
……穏やかな時間だねぇ、本当に。
「ありがとうございます、調さん」
「いきなりどうした?」
「この月の景色は、私1人では見られないものでしたから」
「……さてな、月はずっと綺麗だぜ」
「いえ、いいえ。あなたと見るからこそ美しいと思えるんです」
ロマンチックなこと言ってくれるじゃねぇか。
ふぅむ、さてどう返したものか。
「どういたしまして。……ま、今夜はゆっくり楽しもう。まだまだ夜は長いからな」
「……はいっ!」
そうして、また虎はふにゃりと笑うのだった。
……こいつのどこに人間味がないんだか、ちゃーんと可愛らしいものがあるじゃないか。