型月でセレビィ()に目を付けられた男の末路   作:どういうことか説明しろユキナリ

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第2話

「ふーむ……思念を遮る結界と来たか。これまた解釈に困る代物を張っておられることで」

 

「そうなの、お兄さん」

 

「そうなのさ。ま、しばらくはこの屋敷の中で情報探しした方がいいかねぇ」

 

 

 

 あれから時間かけて結界を解析したが、あまり真っ当なものじゃなかった。

 人の思念を遮る結界、そんなもので覆うということはその中に思念に影響を受けてしまう存在がいるということで……。

 

 そんな存在なんて十中八九、この朔月(さかつき)美遊(みゆ)という少女のことだろう。

 

 

 

「タチの悪い妖精にも邪魔されない静かな場所ではあるんだが」

 

「セレビ?」

 

「そうそうそいつ、そいつがいなきゃこうはなってない」

 

 

 

 俺が思わずセ○ビィと言葉を漏らしてしまったせいでこの少女までそう呼ぶようになってしまったのは本当に失敗だったと思う、ごめんな本物の○レビィ。

 しかし本当に言葉も知識も発達したなこの子、天才的だ。

 

 

 

「俺の知識から勝手に自己学習してんのか……?」

 

「?」

 

「何でもない、そこらでゆっくりしてな」

 

「うん」

 

 

 

 俺が見たものとはつまり、出会した他人の喋り方や仕草までしっかりと記録されていることになるのだが……まぁ、そこまで変な奴はいない。

 母数が少ないからよくわかる。

 

 

 

「魔眼持ちなんてバレたら何されるかわかったもんじゃないし、ど田舎暮らしだったからなぁ」

 

 

 

 ど田舎暮らしに感謝である、田舎最高!

 

 まぁど田舎だったからあんな妖精型呪物と巡り合っちまった訳だが……やっぱ田舎最悪か?

 この二つなら余裕でプラマイマイナスに振り切れるぞ。

 

 

 

「あの子に関する書類、書物は今んとこ見つからない」

 

 

 

 余程念入りに秘匿されるべき存在というわけか、この朔月という家にとって。

 天正から続くってどんだけ古いんだよ最初震えたぞ恐ろしい。

 

 

 

「しっかし、歴史の長さ以外に特筆すべき点が記載されてもいない」

 

 

 

 こんな結界張るんだし魔術師、旧家なら神職系だってありうるわけで。

 どちらにせよもう少し書くことがある筈だ。

 

 

 

「一体全体どういう……」

 

「ねえ」

 

 

 

 とかなんとか、足りない頭で精査していた訳だ、俺の目は見たことのあるもので見たものを解析するだけ、推論作りには全く役に立たんのだ。

 実際あの子に関しては未だにエラーを吐き続けている、どんだけ聖杯論推しなんだよ本当に俺の眼か?

 

 

 

「……ん、ねえ」

 

「おう、どうした」

 

 

 

 いつの間にか少女に揺さぶられていた。

 

 

 

「この向こうには、あなたの見たこの『空』が広がってるの?」

 

「そうだな、俺達の視界じゃ捉えきれないほどにある」

 

「沢山の『自然』も?」

 

「もちろん、大地に根強く生い茂っているとも」

 

「えっと……この『海』と『大きくて沢山ある建物達』は」

 

「前者は大地よりも広く広がっていて、後者は人間がある限り永遠にあるものさ」

 

「……そうなんだ……」

 

 

 

 どうやら、外の世界への興味が出て来た様子、年相応で良いじゃない。

 

 ……無粋なことを言うならたった数日前まで、人間味をどこに置いて来たという感じだった少女だというのにって感じだが。

 俺の情報が悪影響及ぼしてそうでこえぇ。

 今のところはいい変化だと受け取っておこう。

 

 

 

「見たいなら連れて行くさ」

 

「!」

 

「どうせ俺も各地を見て回らなきゃって思ってたし、お前が見たいってんならどこにでも連れてってやるよ」

 

「……」

 

 

 

 そう言い残して更なる書物を探しに部屋の奥へと行く。

 まあ一人で出歩かれたら危ないってのもあるから先んじて言ったんだが、杞憂かね。

 

 あの妖精の言う綺麗な景色が何かわからんし、次いつ飛ばされるのかわかったもんじゃないが。

 それまでに間に合えばいいな。

 

 

 

「……見事に神様だの巫女様だのの本ばっかりで、あと子育て本的な奴かこれ」

 

 

 

 古そうで出版、作者などの書いていない本がちらほらと。

 そう言う本はどれもこれも食事や衣服類など生活に関わるものばかりだ、そして少女の着る服とも一致する。

 

 

 

「随分と細かくメモされていて……古い字もあれば新しい字もある、一代二代なんてもんじゃなさそうか」

 

 

 

 長く永く紡がれていた、少女の様な子のための本。

 ……この家じゃ聖杯判定される特異体質的な子が頻繁に生まれていたのか?

 

 あの子は一体……?

 

 

 

「時間がかかりそうだが、ゆっくり行くしかないか」

 

 

 

 本はこれでもかと並んでいるが幸い食料もかなりある、少女はともかく俺は量をセーブすればいいし。

 小さい子供にひもじい思いさせんなって爺ちゃん婆ちゃんも言ってた通りしっかり食べさせてるから安心してくれ。

 

 最初はあんまり食べてくれなくて試行錯誤したんだけどな。

 

 

 

「ん……『神を人へと堕とす儀式』」

 

 

 

 本の間に挟まれていた、古い紙きれ。

 そこに書かれた気になり過ぎるワード。

 

 

 

「神」

 

 

 

 なんだ、降霊の儀式で神霊でも降ろそうってのかい。

 そりゃ流石に無茶が過ぎると思うんだがねぇ。

 

 

 

「まあこんな悪目立ちする言葉、覚えといて損はない」

 

 

 

 いやぁ先が長いこと長いこと。

 どこまでもあの子に何かある、程度のことにしか触れられないのがもどかしい。

 

 

 

「お兄さん」

 

「今度はどうした?」

 

「……ありがとう」

 

「どういたしまして。今夜何か食べたいものでもあるか」

 

 

 

 ああそうだ、最近できた新しい悩み事として。

 

 

 

「肉じゃが」

 

「ああ、わかった」

 

 

 

 ……えらく気に入ったのか、少女が3日4日に一度は肉じゃがをご所望になるところだ。

 このままいくと肉じゃがの材料だけさっぱり無くなるぞ、まだあるけど。

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