型月でセレビィ()に目を付けられた男の末路 作:どういうことか説明しろユキナリ
「神稚児ってなんだよと……」
あれから情報という情報を読み探し続けているのだが、めぼしい言葉はその程度。
それに関しても昔この様な存在がいた、という伝承的な触れ方しかされていないときた。
「一人目は飢饉を解決し、二人目は民衆の声を聞いたという不思議っ子」
うーん幼女強い、というのは置いといて。
いやぁなんかモヤる内容だ。
「その後はどうしたんだか」
一人目も二人目も、その後の記述がまるでない。
飢饉なんて解決しようもんなら神やら英雄やらに例えられて有名になってもおかしくない筈なのに。
「魔術師に解剖・利用でもされたのか。あるいは……ふーむ」
当然この時代にも居た……と思うがそんな記述も当然ないので推察しかできっこない、役に立たねぇ。
絶好の研究対象なんだろうなとは思う。
「当然朔月家の記述もない、しかしこんな本がここにあるということは、だよな」
何かしら関係ありそう、というかないと困る手掛かりがない。
このままだとなんの手がかりも得られないのに美遊を拘留し続ける怪しいお兄さんになってしまう。
「お兄さん」
「どうした」
「遊ぼう」
「ああ、わかった」
美遊はもはや俺のだけではなく、この家にある本の知識をどんどんと吸収してすくすくと育っている。
天才過ぎてこの子怖いわほんと。
「もう本はいいのか」
「全部読んじゃったから」
「……もう覚えたのか?」
「うん」
あらやだこの子記憶力いいわぁ。
俺、この
末恐ろしい6歳児だわ!
「そうか、頑張ったな」
「……うん」
そう言っても笑いすらしない、冷めてるのかそもそも知らないのか。
後者な気がしなくもないがさてどうしよう。
「何をして遊ぼうか」
「将棋」
「げ、好きだなぁ」
おまけにちょっと負けず嫌いなんだよね、将来有望でいいことよ。
今んとこ勝ち越してはいるんだがそれもいつまで持つのかと。
「さて、駒落ちはナシで構わないか」
「当然」
「よろしい。んじゃあ振り駒で先手は決めよう」
振り駒とは将棋のちょっとした儀式だ。
上位者が歩を5枚持って振り、その結果によって先手後手を決めるというもの。
まあ要するにややこしいじゃんけんだ。
「何が出るかな……っと」
振り落とした駒は……げ、2枚盤の外に落とした。
加減間違えたな。
「しかも歩1枚、と金が2枚って……」
「私の先手」
「ああ、お手柔らかに頼むよ」
基本的に、振った駒は盤の上以外に落ちてしまったものは数えない。
その上での『歩』と『と金』の数で先手か後手が決まる。
歩が多い場合振った側が先手、逆の場合は振ってもらった側が先手だ。
「ん」
「ほぉ」
基本的に数回打ち続ければお互いの戦法は見えてくる。
美遊は居飛車穴熊という攻め方を仕掛けて来ている、小学生未満が打っていい戦法じゃあねぇ!
「負けそう」
「……お兄さん」
「大丈夫、ちゃんと真面目だから……よっ」
「!?」
あ、フリーズした。
まあ年の功ということでまだまだ負けたくないから粘りますよと、結構やばいんだけど。
「む、むむ……」
「ゆっくり考えるといい、その間にお茶でも持ってくる」
このまま家の中で過ごさせる、というのはあまりよろしくないのだが、いかんせん閉じ込められていた理由が見えてこないんだよな。
情報管理が徹底されている。
どこかに情報がある隠し部屋でもあれば手っ取り早いのだが。
そんな美味しい展開待ってないわなぁ。
「どうだ、いい手は見つかったかい」
「……」
少女は静かに盤面と睨めっこを続けている。
……もしかしなくてもこの将棋も成長の速さに繋がってたりしないよな。
しかし外に出してやれない分、やりたいことは叶えてやりたいという気もするんだよな。
「私は大丈夫」
「ん」
「外に出られなくても、大丈夫」
「おお、バレてたか」
「顔に出てたから」
全部大体お見通しと来た。
敵わないねぇ。
「お兄さんが、いつか連れて行ってくれるって言ったから」
「……」
「その日まで、私は待ってるよ」
「そりゃあ……」
律儀な子だよほんと。
どうやったらこんないい子に育つんだか。
「ああ、その為にも頑張るよ」
「それはそれとして、将棋は負けない」
「……おうそれは頑張れよ、うん」