型月でセレビィ()に目を付けられた男の末路 作:どういうことか説明しろユキナリ
「兄様」
「ああ、ここにいるよ」
俺……というよりこの子の運がとても良かったのだと思う。
あの後、俺達を見つけたおじさんに拾われ養子という形で引き取られたらしい。
死ぬ気で言葉を覚えたぞ、ほんとに死ぬかと思った。
妹(という扱い)のこの少女の隣で身振り手振りから一言一文字を理解していくのは骨が折れた。
「兄様は何をしておられるのですか?」
「はは……相変わらずこの景色を見ているよ」
「ふふ、お好きですね」
さて、この子の名はシータ。
まさかのジ○リヒロインであった、空から降って来たのもある程度の納得が行く。
……というより赤子を落とした犯人は、俺を利用してあのあぜ道にこの子を連れて行かせるというつもりだったのかもしれない。
あの王様なら健やかにこの子を育ててくれるだろうからな。
さしづめ俺はコウノトリだ。
「パズーを見つけるまで、かね」
「?」
「なんでもない、うちの妹がいつまでも健やかであります様にって思ってただけさ」
「もう、兄様ったら」
俺は幸せを届けるコウノトリ、歯車の一つに過ぎない。
とは言え俺なんてあそこに彼女を届ける為だけの足でしかないだろうし、勝手にパズーはやってくるのかもしれない。
さぁて、どうしようか。
「まだ7歳だってのに、うちの妹はしっかり者だからな。いい人見つけろよ」
「……?」
「わからないならまだいいさ」
結婚なんてまだ早い! なんて言える立場でもないしこの子が誰かを見初めるのを気長に待つしかない。
なんか見守るのには苦労しなさそうだしなぁ。
「その間に妖精に見つかるかのチキンレース、どうにかしたいもんだ」
あの妖精気まぐれが過ぎていてな、もう7年経ってるからいつ見つかるかヒヤヒヤしている自分がいる。
そろそろ対抗策なり何なりを己の手で編み出すべきなのかもしれないとは思う、なんか現代魔術師なのにめっちゃ過去体験しているんだし。
「兄様はあまりお変わりがありませんね」
「タチの悪い呪いだよ、お前ともいつまで一緒にいられるかわかったもんじゃない」
「……」
やべ、この話すると悲しそうにされるんだった。
まぁ神隠しにあってるなんて言えたもんでもないし本来は説明できないんだけど、美遊やあのやべぇ金髪は例外的だろうしな。
「ジャナカ王」
「ハータか」
「はい、先日の件についてお話があります」
ハータ、というのは俺に付けられた仮名の様なもの。
意味はよくわかっていない、勉強不足だわ。
「俺は、シータがいい人を見つけたら……」
「むぅ……決意は固いのか」
「はい。……そこまで長くあの子を見守れるのかも曖昧ではありますが」
「悲しいのぅ」
この王いい人が過ぎて話しててむず痒い、うちの実家には絶対生まれないタイプの人間だ。
とはいえ、本当の部外者な俺をそこまで居させてくれるだけでもありがたいのも事実だ。
「儂はお前のことも実の息子の様に感じておる」
「……」
「どうか、考え直してはくれんのか。息子の死に目に会えんというのは、中々に堪えるわい」
「……親に死に目を看取らせたくないんですよ」
「うぅむ」
シータの時の様な発言が一人歩きしていった結果、俺は早死にするという風潮がジャナカ王近辺で飛び回っているのはどうしたものか。
死に目、というのはまぁあながち間違いではないのがタチが悪い。
この世界から消えるのだから。
この7年間親の様に接せられて、そう思えないほど俺の感性は冷たくもないしな。
「もしものときはシータのこと、頼みます」
「ああ」
そう力なく堪えるジャナカ王に一礼をし、部屋を後にする。
「若人に先立たれるのは、いつになっても辛いもんじゃなぁ」
……さぁて、クソ妖精よどうしてやろうかね!