型月でセレビィ()に目を付けられた男の末路 作:どういうことか説明しろユキナリ
「兄様、兄様」
「どうしたんだ」
14歳になったシータがひょこひょこと駆け寄ってくる。
んー可愛いことだ、健やかに育ってくれていて俺は嬉しい。
「一緒に花園を見に行きましょう、今の時期は沢山の花が咲いております」
「わかった」
シータに連れられ城の外にある花園まで向かう。
周りに同年代があまり居ないことが災いして友達という概念があまりないのが少々心配なのだが……。
まあ環境が環境故に仕方のないことと思うしかない。
「また本をお読みになっておられたのですか?」
「ああ、調べ物をしていてね」
無論あのセ○ビィについて簡単にわかるとも思っていない、ヤツを調べるのなら実家や田舎のことを調べた方が早いだろうし。
だったら俺が今やるべきなのは知識を溜め込むことに他ならない。
「今度一緒に読んでみるか、色々と面白いことが書いてあったりするからさ」
「はい!」
今すぐと言ったこともないだろうが、俺がいられる時間もそう長くはない。
何せジャナカ王が張り切っていたからな、とびきりの試練でも考えているのだろうさ。
親バカ王だしあの人。
「ここです」
「……今年も綺麗に咲いているなぁここは」
いつも色とりどりの花が咲く幻想的な場所だった、それは今年も変わらないらしい。
シータはこの場所がお気に入りなのか毎年の様に俺を連れてここに訪れている。
「兄様、兄様」
「先に行き過ぎるなよ」
「わかっております」
……はぁ、大きくなったなぁあんな小さかった子が。
赤ん坊の頃から知ってる子がここまで健やかに育った、なんて考えるととても感慨深いものがあるぞ。
この分だと結婚式なんてことになったら空虚感半端なさそうで怖い楽しみ、いやぁどうしよう。この
「最初の頃はあやすのも苦労したってのに、いい子に育っちゃって」
俺の腕の中でのあの猪チェイスの衝撃を気に入ってしまったのか否か。
最初の頃は王様が用意した乳母らしき人達に懐かないのなんので俺があの子を抱え頭も抱えていた。
言葉もわからないのにな、いやぁ死ぬ気で覚えたよね。
「ふぅー……」
「こちらですよ、兄様!」
「ああ」
こちとら子育ての経験どころか社会の経験すらない中坊だったんだけどね。
ハードモード限界値でしたわ、よくやったよ俺。
あの子が俺を兄なんて初めて呼んでくれた日にゃあもうニヤケが止まらんでしたよ。
親バカの気持ちってこんな感じなんだね。
「よく生きられたもんだ俺も」
こんな状態で○レビィに見つかったら、今後この子がどうなるのかとヒヤヒヤした日々を送っていたのは昨日の様に思い出せてしまう。
……だからこそ。
「久しいなぁ、羽虫」
「あはははっ! この世界楽しーよニンゲン!」
「兄様っ」
だからこそ、この妖精をどうにかしたいなと思える様になった。
後少しでいい、時間稼ぎができればなって。
「吹き飛べ っ!」
「?」
溜め込んだ術式を一気に放つ。
さぁこれで少しの間眠ってくれれば大金星なのだが……!
「あはははっ! お絵描き上手だねニンゲン!」
「なぁっ……」
ヤツは、意に介さぬまま俺の手を全て消し去りやがったんだ。
……格が違うなぁほんっと!
「んーじゃあこんなことやろう! おままごと!」
「は?」
「えっ……きゃあっ!?」
「シータっ!」
ヤツがシータに妙なことをした。
見たことねぇが何しやがった。
「ニンゲンも!」
「ん 身体がっ……」
身体が動かなくなった。
そういう概念か何かを使ってんのかこの羽虫は。
「おっままごと〜おっままごと〜♪」
「兄様……」
「大丈夫、お前は死なないさ」
「んふふ、手を繋ぐの〜」
……羽虫は『おままごと』の名の通り、俺とシータを人形でも扱うかの様にぎこちない動きで色々させていった。
「だーいすき? なのー!」
「ん」
「あぅ……」
抱き合わせたり、手を繋がせたりなど。
まぁやることなすことがちびっ子のそれ、人間を人形扱いしている分もっとイカれてるか。
「んー……あっそうなの! そこの赤いのこれ持って!」
「えっ」
「……」
どこからか取り出した短剣をシータに持たせる、そんな物騒なもの持たせて何するつもりだこの野郎。
「えーっと……あなたをころしてわたしもしぬのー!」
「あ?」
「っ!? いや
心臓に、鈍い痛み。
あの妖精、どこで昼ドラのワンシーンなんて覚えて来たのか。
シータに俺の心臓を刺させやがった……!
「ごっ……」
「あ……いや、いやぁっ!!」
「……んー、つまんなーい」
身体が自分の意思で動く様になった。
すぐに治療魔術をっ。
「治ら、ね……ごほっ!?」
「血が、血がっ! ……兄様っ!」
魔術が何かしらの力で阻害されていて怪我の治療に繋がらない。
……毒か、呪いか。
「次行こっ、ニンゲン!」
「が……クソ」
ああくそ、この人外何も配慮がねぇ!
「シー、タ」
「兄様、兄様……っ!」
俺の血を抑えようとしたことで濡れた手が、震えている。
肉の感触が残っているのか。
「大丈夫だ、おれは、しなない」
「でもっ!」
「大丈夫、たいせつな、い"もっ……妹にっ、人を殺させたり……なんて、しない」
こんなところで死んでられねぇよなぁっ!?
ええいクソ羽虫なんぞにこんな殺され方して死ねるかい!
「光が……」
「……つよく、すこやかに。しあわせになれよ」
……こうしてまた俺は、過去1後味もクソもないような、妖精クオリティの結末を味わったんだ。
シータの方が心配だわこんなの。