英雄にしかなれない男、転スラに行く   作:ちゃがまくら

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覚醒編
堕ちた転生者


天魔大戦から150年ほど経った...

ルミナス様から呼び出され、とある犯罪者を捕らえる。もしくは抹殺する仕事を聞かされた。

 

その犯罪者は名をセイイチ・ニッタ(新田誠一)と名乗り、気に入らない人間を殺しているそうだ。

 

その方法は格闘術と毒殺。

どのようにしているかは分からないが、毒を相手の体内に打ち込み、弱っていく相手を格闘術で殺すという戦法を取るらしい。

また、毒耐性のある者も殺されているため、それの調査もしろとのことだった。

 

(毒じゃなくて呪いとかなのか?)

と思いながら、その仕事を引き受けた。

呪いなら、闇払いの加護が

毒なら解毒の加護があるから、大丈夫だろう。

 

そう思っていた。

だが、相手と自分の勝利条件が違うというある意味当然のことをこの時の俺は軽く考えていた。

 

__________________

 

イングラシア王国の路地で...

 

「こんなもんなのか?温室育ちの俺のほうが強いな〜。なあ?」

「は、はいぃ...」

「おいおい、そんな怯えるなよ。俺はただ金が欲しいだけなんだよ」

「はい、はい!お金です!これあげるからもうやめてくれぇ...」

「もっと早く渡せよなぁ?」

「すみません、すみません...」

 

そこに広がるのはおびただしい量の浮浪者の死体と血の海。

そこには、浮浪者にしてはそれなりにいい服を着た男と、Yシャツにネクタイを身に着け、学校指定のブレザーを羽織った少年がいた。

 

「チッ...こんなもんか、ほぼ空じゃねぇか。苦労の割にしけた量の銅貨だけかよ。これじゃ、屋台で焼き鳥買っただけでなくなるじゃねぇか...」

 

悪態をつきながら、路地から出て大通りに向かう少年。

その場に残された浮浪者は助かったと思うも...

「...え?」

 

腕や脚、腹、顔まで、体のいたるところが赤く腫れ上がる。

そして、最後には全身から血が噴き出し始め、血の海となった。

 

「まあ、殺さないなんて言ってないがな?あっはっはっはっは!」

 

その場には少年の、セイイチ・ニッタ(新田誠一)の嗤い声が響いていた。

__________________

 

新田誠一はただの高校生であった。

ただ、召喚された場所が悪かった。

 

誠一はただ毒を生成するスキルを持っていた。それはただただ、化学が少し得意だったからというだけの理由で化学者になりたいと思ったからだった。

 

ユニークスキル『化学者』

その根源的な思いは、世をより良くすること。

そのためには自分も良くならなければならない。

 

そして、召喚した国は召喚者を使い潰す国だった。

誠一を他の召喚者と同様に扱おうとした。

誠一は抗った。

 

ただの16の子供が国の騎士相手に抗ったのだ。

抗えてしまった。

人は知れば知るほど、ソレを普通だと思う。

思い込んでしまう。

 

誠一の頭の中に刻まれた気がした。

 

自分を邪魔する者がいなくなればいい。

すなわち、

 

(殺せば勝ちなんだ…)

 

と。

誠一は殺した。自分を守るために殺した。

自分の叶えられなかった夢のために殺した。

 

これ以上、同じことがないように。

初めは自分と同じ境遇の者を助ける優しさがあった。

だが、文化も言語も待遇も、何もかも違うものもいる。

 

ナニカが壊れた。

 

自分に反発する子供。

自身を否定するオトナ。

自分を支えはするが、何もしない者。

 

自分は…何をすればいい?

 

その時頭に浮かんだのは

 

(殺せば、勝ちなんだ)

 

全てを殺した。

騎士を同郷を同じ境遇の者も…

 

そして、力を得た。

 

化学者(ヨクスルモノ)』はいつの間にか得ていた『殺戮者(コロシツクスモノ)』を喰らい、『死毒之王(サマエル)』に進化していた。

 

そして、自分自身も人ではないナニカに進化していた。

 

「俺を良くするために、犠牲になれ!アハハ、アハハハハ、アハハハハハハハハ!」

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