ラーメンが食べたくて 異世界転生ハードモードとんこつ味   作:ぱちぱち

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誤字修正、げんまいちゃーはん様ありがとうございます


第112話 なんでよけれるんだよーひくわー

神聖歴583年 春の中月 11日

 

 

「それ、前見えてる?」

「見えねぇ」

 

 

 顔面をパンパンに膨らませた俺にネネが心配そうな声で尋ねてくる。ザンムの熊パンチを両頬に喰らったせいで視界が全くないから表情は見えない。多分心配そうな表情になってるはずだ。多分。

 

 いやぁ、エルヴィン爺さんとの遭遇譚は受けると思ったんだけどな。立場もあるお前がそんな事すんじゃねぇっていつもの口調で詰められて一発。好奇心が、好奇心が悪いんや!と主張したら言い訳すんなともう一発殴られちゃったよ。

 

 でもさ、確かに軽率な所はあったと思うけど今回の判断で俺、そこまで的外れな事はしてないと思うんだよね。近海の補給ポイントの一つに怪しい船が居たら正体を確認するでしょ。一応俺は帝国とサニム・カルデラの交易海路を守護するって役割があるらしいんだからさ。

 

 

「いや。タロゥが100悪いよ。一人でそんな事するなってザンムもうちも言いたい」

「……そうだな。冒険者のパーティーで一人だけ冒険するのは、確かに良くない。冒険を楽しむなら皆で楽しまないとな!」

「そういうことじゃないけどもうそれでいい。タロゥのおバカな所、うちは好き」

 

 

 そう言ってネネは腫れあがった俺の顔にぬりぬりと何かを塗りたくってくる。あ、知ってる臭いだ。炎症止めの薬草に何かを混ぜた臭い。塗り薬だ。一昨年まではこれの材料を集めるために森を駆けまわっていたのを思い出すなぁ。

 

 

「これ、メソポタミア草の塗り薬だよな。カルデラでも同じ薬草が手に入るのか?」

「ん。メソポタミア草は割とどこにでも生えてる薬草だから。他の材料はちょっとだけ変えてるけど使用感は変わらない」

 

 

 俺の質問にネネが答える。ネネは去年からカルデラの大学に留学して薬学を本格的に学んでいる。そこから少し進んで医学にも手を出しているらしく、サニムに居た頃よりこういった応急処置の手つきも明らかに手慣れたものになっている。

 

 

「前よりもずっと手慣れてる」

「うちだって、置いてかれないように頑張ってる」

 

 

 そう口にして、ネネはくすりと小さく笑う。うちのパーティーメンバーはやっぱり頼もしいなぁ。次にエルヴィン爺さんと会う時は二人も紹介できると良いんだけどね。あ、今回気付いたエルヴィン爺さんの注意点を船乗りに周知しないといかんな。特にネトラ島に爺さんが居るときは不用意に近づいちゃいけないって言っとかないと。ロゼッタに後で伝えてイールィス家で動いてもらおう。

 

 

 

 

 さて、帰ってきてすぐに大怪我()を負ったもののネネの薬で無事に回復したし、午後からは道場に顔を出す。師範代としての指導と、不在の間に溜まっていた仕事をこなさないといけないからね。

 

 

「え。なんでもう治ってるの……こわっ」

「ネネの薬が良く効いたんだよ」

 

 

 道場に行くと今日も今日とてカルデラの町にある他の道場からの殴り込みをザンムが半殺しにしていた。ザンムはまだ指導員ではなく門下生だから、相手の道場は門下生にも負ける弱小道場というレッテルを張られてお帰りすることになるわけだ。えぐいな。技術的な面でザンムは指導員になれてないだけで、戦闘能力って意味なら多分どの指導員よりも上なんだけどね。純粋な身体能力がバカみたいに高いから。

 

 そのためザンムとまともに組手なんて出来る奴は本部でも数名しか居らず、基本的にザンムの鍛錬は型稽古中心になる。パチン・コ流の方の中で熊人種向けの物を繰り返して最適な動き方を体に教え込むんだ。それだけで熊人種は怪物から技を持った怪物になる。

 

 まぁ、師範代ともなればそんな技を持った怪物とも組手を行えないといけないんだけどね。という訳で顔を包帯でぐるぐる巻きにした状態でのザンムとの組手だ。包帯で視界0の中、ビュンビュン飛んでくる熊人種の一撃必殺をいなして躱して指導するだけの簡単なお仕事だね。

 

 

「なんでよけれるんだよーひくわー」

「ザンムの型稽古がちゃんと身についてるからだよ。あ、今歩法ミスったろ。それは悪しゅうござる」

「えぇ…………」

 

 

 とはいえ組手と言っても基本的に互いに同流派同士でお互いの手の内は知り尽くしていると言っても良い。ザンムの攻勢もこう動いたらこう来るだろうな、と予想が出来て実際にその通りにザンムが動いているから出来る事でもある。

 

 あと、エルヴィン爺さんとの遭遇で数段上の信力使いと遭遇した経験も生きてるかもしれない。エルヴィン爺さんは対峙するだけでも全身を信力で守らないとダメージが入るような化け物だったけど、その経験のお陰で信力に対する経験値が爆上がりしたんだよ。

 

 信力は人ならば必ず存在する。俺は暴風雨のようなエルヴィン爺さんの信力から身を守っていたけど、その時の経験で信力に対する知覚能力が明らかに上がったんだ。相手が何かをするときに動く信力の動作が、目を閉じていてもうっすらと分かるくらいに。

 

 多分、これが達人とかが感じる空気の動きとかそういうのなんだろう。パチン・コ師範とかはこれ出来てるんだろうな。

 

 その結果がこの包帯で顔中をぐるぐる巻きにしても出来る簡単な組手稽古なんだけど、そういう事情を知らない周囲の人からは感嘆の声を超えてドン引きの声が聞こえてくる。どういうことだ。自流派の師範代の超絶ウルテクを見てなんでそういう声が上がる?

 

 

「すごいのは分かるけど! どんだけ練習しても自分がそうなる未来が見えんからなぁ!」

「いや、多分鳥人種はこれ、他の人種よりも覚えやすいと思いますよ?」

「え、マジ?」

「マジです」

 

 

 俺とザンムの組手を見ての感想を指導員のヴラドさんが代表して言ってくれた。ああ、そう言う事ならまぁ分かる。野球は好きだけどじゃあ練習頑張ればメジャーリーガーみたいになれるかっていうとね。ほとんどの人は無理だと考えるしそれが当然だろう。この技術も間違いなく高等技術だしね。

 

 ただ、鳥人種の場合は多分普人種とかよりも習得難度はかなり下がるはずだと思っている。なぜなら、鳥人種の起源である鳥類には風を読んで空を飛ぶ力があるからだ。もちろん鳥人種の感覚がどうかは分からないが、風を読む力が元々あった事を考えれば同じように信力を感じて相手の動きの起に合わせて体を合わせる事が出来るようになる、かもしれない。

 

 俺の言葉にヴラドさんは一考の余地があると考えたのか、嘴をとがらせて考え込み始めた。ヴラドさんのような鳥人種は他の人種よりも体重が軽いため、どうしても膂力的に不利な場面が多くなる。だがこの感覚が身に着けば、その身の軽さが更なる武器になるはずだ。

 

 

「おー。タロゥ、しはんだいみたいー」

「みたいじゃなくて師範代だよ」

 

 

 ザンムのからかい言葉にそう返すとザンムは楽しそうにケラケラと笑った。まぁ、ここに居る指導員は全員流派の先輩ではあるから、経験は俺よりも上って人ばかりだ。ヴラドさんもそういう人だから、こうやってヴラドさんの上達に寄与出来たかもしれないってのは結構嬉しい。

 

 この調子で師範代業務、頑張るぞ! と気合を入れなおした所に、道場の入り口にあたる階段から来客を告げる声が聞こえてくる。今日は来客予定はなかったはずだけどと表通りまで出ると、見知った顔のお嬢様がお供も連れずに立っているのが見えた。

 

 

「あれ、ロゼッタじゃん。練習に来たのか?」

「そうしたいんだけど、タロゥにちょっと手伝ってほしい事ができたの」

 

 

 ロゼッタはそう言って、俺に釣竿を手渡した。あの、俺、今から師範代としてのお仕事がだね。俺の指導を待ってる門下生たちが一杯いるんだよ? なんか俺が居ない間に結構門下生増えてるんだから。そんな中で指導員に指導任せて師範代が釣りなんてしてたら怒られるでしょ。

 

 俺の理路整然とした言葉を全て聞いたロゼッタは小さく頷くと、俺の背後に立つザンムに目を向けてこう口にする。

 

 

「今夜の夕飯。今日道場に来てる全員分のごちそうを用意するからタロゥ借りて良い?」

「よろこんでかすよー!!」

「ザンムくん???」

 

 

 信頼する相棒に背後からバックアタックを仕掛けられた。訴訟も辞さない。そんな口頭での小さな抵抗も虚しく、俺はドナドナを口ずさみながらロゼッタに手を引かれて港へと連れていかれる事になる。あの野郎、後で覚えておけよ。

 

 ところで結局、俺は何を手伝えばいいんだ。なになに、カルデラのお嬢様連中とサニムのお嬢様組とで釣り対決? どちらの港町が上かのプライドが掛かった真剣勝負だって?

 

 ……おい、おいおいお前さぁ。

 

 そんな大事な勝負ならあの場ではっきり口にしろよなぁもう!

 

 ちょっと戻ってうちの道場の釣り玄人全員連れて応援に駆け付けさせるぞ! この勝負絶対勝ってカルデラのひょろひょろ都会っ子どもにサニム魂見せつけてやるぜ!

 




更新の励みになるのでお気に入り・評価よろしくお願いします!

タロゥ(10歳・普人種男) 

生力65 (65.0)
信力126 (126.5)
知力50 (50.0)
腕力71 (71.0)
速さ67 (67.0)
器用56  (56.0)UP
魅力61 (61.0)
幸運36  (36.0)
体力70 (70.0)


技能
市民 レベル4 (66/100)
商人 レベル3 (100/100)ー
狩人 レベル4 (66/100)
調理師 レベル3 (100/100)ー
地図士 レベル3 (100/100)ー
薬師  レベル3 (48/100)
剣士 レベル6 (15/100)
木こり レベル2 (70/10
楽士 レベル3 (48/100)
教師 レベル3 (73/100)UP
パチン・コ流戦闘術 レベル6 (91/100)UP
テイマー レベル2 (78/100)
絵師 レベル3 (90/100)UP
語り部(紙芝居) レベル5 (100/100)ー
水兵 レベル2 (45/100)
執事 レベル3(100/100)ー
乗馬 レベル0(20/100)


スキル
夢想具現 レベル3 (100/100)ー
直感 レベル5  (1/100)UP
パチン・コ流格闘術 レベル6(91/100)UP
パチン・コ流武器術 レベル6(91/100)UP
飛行術 レベル3 (25/100)
フォークダンス レベル5(100/100)ー
フォークマスター  レベル1 (100/100)
念話 レベル2 (71/100)UP
女たらし レベル6 (55/100)
野獣の眼光 レベル0(15/100)
サニム流マナー レベル3 (37/100)


英雄スキル
夢想具現仏恥義理(ぶっちぎり)


カルデラ近隣地図
https://kakuyomu.jp/users/patipati123/news/822139845715828802
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