ラーメンが食べたくて 異世界転生ハードモードとんこつ味 作:ぱちぱち
神聖歴583年 秋の中月 3日
「上体はそのままで。上体の揺れは不安定へ繋がります。一定の速度で、正確に。それが給仕の正しい姿勢です」
「分かりましたギャン!」
「手の動きが悪い」
ラーメンレストランのスタッフがカルデラにやってきた。人数は10名程度でこのメンバーの内支配人と料理長、それに給仕長以外は1年後にはサニムに帰還する予定だ。
そのため現地スタッフを雇う必要があり、オーナーであるイールィス家のロゼッタは同門であるパチン・コ流の門弟を中心に募集を開始。腕っぷしで成り上がる事を念頭に置いていた連中にレストランでの仕事がどう捉えられるか不安だったが、カルデラで増えた門弟30名のうち10名ほどが働きたいと言ってきた。
「いやー、そりゃ師範代みたいに腕っぷしでのし上がる! ってのには憧れますけど、こんな高給取りのチャンスは逃せませんよ」
「研修期間でも一日に銅貨5枚で賄いつき。一人前だとみなされれば日給銀貨1枚に更に増える可能性もあり! 覚えることは多いし給仕長は厳しいですが、これだけ貰えるなら頑張れますよ!」
なんて調子の良いことを言っているのはカルデラ生まれの地人種、オーケンくんと近くの農村から出稼ぎにきた狼人種のデニムくんだ。こいつらこんな事を言っているが研修の初日は手ひどく注意されるたびに教育係の給仕長を睨みつけ、しまいには殴りかかろうとすらした問題児たちである。
まぁ、それに関しては仕方ない所もある。まず給仕長であるご婦人、サワーさんの指導が非常にスパルタなのだ。彼女の教育方法は、たとえば皿の持ち方や動き方などで間違えがあると、その部分を手に持った鞭でびしりと打って何がダメだったのかを口頭で説明。もう一度同じ動作をさせてまた間違えてればこれまた鞭でビシリ、を延々繰り返して体に所作を力づくで叩き込むという教え方である。
前世の倫理観をもつ俺としてはバリバリの体罰式にちょっと引いたが、この世界の場合は体罰なんて当たり前。身体に教え込まないと覚えないし覚えられないという考え方が主流だからそこまで過激なものではないんだが、やっぱりこの教育を受ける方も良い気分じゃない。痛いのは嫌だしな。特に今話しているオーケンくんとデニムくんはどちらも学が無く、力があればいい暮らしが出来る。あと釣りを上手くなりたいという動機でうちの道場の門を叩いている二人だ。当然根底には力がある方が偉い、という思考があるため見た目はか弱い普人種のご婦人である給仕長さんにビシバシ指導されるのは気に食わなかったのだろう。
初日は同門の先達で俺やザンムとも仲が良いロゼッタが見ているのもあり暴発まではいかなかったが、ロゼッタが見ていない場所で何かをやらかすかもしれない。そう不安に感じたロゼッタは初日の研修後、道場に来て俺に追加人員の相談に来た。
追加人員の要綱はラーメンレストランの業務に精通し、サニム流のマナーを身に着けていて、研修生たちがやらかしそうな時に力づくで対応できる人物で、研修時間を取れる者という中々にご都合が良すぎるものだったが、そこはカルデラでも新鋭と名高い我がパチン・コ流カルデラ支部だ。ちゃんとそういった夢のような人材も取り揃えている。
つまり、俺だ。
「上半身をブレさせずに移動する、というのはパチン・コ流の『白鳥』に通じるものがある。たとえばこんな風に」
俺はそう言いながらお盆に水を入れたラーメン皿を乗せ、見学する研修生たちの前でテーブルの合間を縫うように移動する。その間、お盆の高さは常に肩と同じ高さをキープ。すべるように床を移動し、歩行による上下運動をほぼ0に抑えながら目的のテーブルの前に立ち、優雅な一礼をしてお盆からラーメン皿をテーブルに。ラーメン皿の中の水は波一つ立っておらず、研修生たちはどよめき声を上げた。
「このように移動する際は常にパチン・コ流の基礎を思い返すように。また、今回は手運搬だったがこのレストランでは料理を運ぶ際はカートでの移動が主になる。つまり、お客様で満員のレストラン内で大きな荷物を押しながら移動する事になるわけだ。いつ何時お客様が席を立たれるか分からない。当然いきなり呼び止められもする。これに対応するために全周囲に気を張る必要があり、これもまた『白鳥』に通じるものがある。たとえばこんな風に」
そう口にした後、俺はナプキンを目に当て簡易的な目隠しにする。俺が視界を潰したのを確認した後、給仕長であるサワーさんが「あら」と一言声を発し、手に持っていたお盆をポロリと落とした。その瞬間、俺はテーブルの間を縫うようにサワーさんの元まで移動し、床に落ちる前にお盆を受け止める。もちろん片手は目隠しにしているから、もう片方の手だけで、だ。
「お客様、こちら落とし物でございますが」
「ええ、ありがとう」
一礼してお盆を返却した俺にサワーさんがにこやかに笑って礼を返す。先ほどよりも大きくなったどよめき声の中、俺は目隠しにしていたナプキンを畳んでポケットに入れ、背筋を正して研修生たちに向き直る。
「『白鳥』は信力による結界の役割も兼ねる技だ。極めれば今のように見えていない物を見て反応する事も出来るようになる。もちろん諸君らにここまでやれと言っているわけではないが、これを目指して研鑽すれば自ずと混雑した店内での衝突などは避けられるようになるはずだ」
「おおー! すげぇ、流石は師範代!」
「『白鳥』かぁ! 俺も早く覚えたいぜぇ!」
「おめーはその前に木人稽古に合流しろよ!」
「皆さん、まだ研修時間ですよ。おしゃべりは休憩時間までとっておきなさい」
「「「はい! 給仕長!」」」
俺の言葉にワッと沸き上がった研修生たちをサワーさんが指導する。いい雰囲気だ。注意されたというのに前向きな、明るい空気が漂っている。このモチベーションを維持したまま研修に臨めるなら、近いうちに一人前判定を受ける研修生も出てくるかもしれないな。店舗の人員に関してはほぼ解決と考えて良いかもしれない。オーケンくんたちのような問題児も大人しくなったようだし後は小まめに様子を見に来るくらいで良いだろう。
さて、となるとだ。一番時間がかかりそうな人員という問題に目途がついたんだから、次の問題に取り掛からなければいけない頃合いだろう。
新規店舗を開く際、まず必要なものは店舗を営業する場所と店舗を運営する人員の二つになる。店舗の場所に関してはイールィス家の財力ならそれほど問題はないだろうし、現にロゼッタからは相談も受けてないから省くとして、人員はうちの道場の門下生で解決した。つまりまず初めに用意しなければいけないものは準備が出来た訳だ。
では、次に必要なものはなにか。商売であるならば、それは商売の種である商品だ。商品は決まっている。サニムで流行しているラーメンだ。ではそのラーメンを売るとして、必要なものは何になるか。料理であるからにはそれを作るための食品が必要になる。
そう、食品。
ロゼッタが相談してきた困りごとその2は、ラーメンを作るための食料品が手に入りにくいというものになる。
お気に入り・評価よろしくお願いします!
タロゥ(10歳・普人種男)
生力68 (68.0)
信力136 (136.1)UP
知力54 (54.0)UP
腕力72 (72.0)
速さ70 (70.0)
器用60 (60.0)
魅力64 (64.0)
幸運37 (37.0)
体力72 (72.0)
技能
市民 レベル4 (93/100)UP
商人 レベル3 (100/100)ー
狩人 レベル4 (66/100)
調理師 レベル3 (100/100)ー
地図士 レベル3 (100/100)ー
薬師 レベル3 (51/100)
剣士 レベル6 (21/100)
木こり レベル2 (70/10)
楽士 レベル3 (58/100)
教師 レベル3 (98/100)UP
パチン・コ流戦闘術 レベル6 (100/100)ー
テイマー レベル2 (99/100)UP
絵師 レベル3 (90/100)
語り部(紙芝居) レベル5 (100/100)ー
水兵 レベル2 (45/100)
執事 レベル3(100/100)ー
乗馬 レベル0(45/100)UP
スキル
夢想具現 レベル3 (100/100)ー
直感 レベル5 (22/100)UP
パチン・コ流格闘術 レベル6(100/100)ー
パチン・コ流武器術 レベル6(100/100)ー
飛行術 レベル3 (69/100)
フォークダンス レベル5(100/100)ー
フォークマスター レベル1 (100/100)ー
念話 レベル2 (72/100)
女たらし レベル6 (96/100)UP
野獣の眼光 レベル0(21/100)
ネゼ・カルデラ式マナー レベル3 (46/100)
釣り師 レベル4(51/100)UP
英雄スキル
夢想具現
カルデラ近隣地図
https://kakuyomu.jp/users/patipati123/news/822139845715828802