ラーメンが食べたくて 異世界転生ハードモードとんこつ味   作:ぱちぱち

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第129話 余計に俺に重圧がかかるじゃん

神聖歴583年 秋の中月 11日

 

 

 上空から自軍を見下ろしながらため息を吐く。今日も来なかったなぁ。めんどくさい。

 

 カルデラを出発してから3日。お日様が出ている間は一定時間ごとに空を飛び周囲を偵察しているんだが、恐らく相手方の偵察だろう人影は何度か見る事が出来た。だが、相手はカルデラ軍の位置を確認したらそのままそそくさと森の中に入っていき姿を消してしまう。

 

 明らかにタイミングを計られている。この時点で考えられる事としては、こっちに怖気づいて逃げようとしているか仕掛けるタイミングを図っているかになる。前者ならまぁ、良い。カルデラの今回の行軍はカルデラの荷を奪うとどうなるかという示威行為であるため、相手が戦わずして逃げるなら目的は達成できたと言い張れるからだ。参加している武勲に飢えた武芸者たちに不満は出るだろうが、そう言った連中にも参戦手当てが出るだろうし一週間ほどのピクニックでそこそこの金が手に入るなら大体の連中は大人しくなるはずだ。大人しくならないような奴? そんなのは囲んで叩かれるに決まってる。

 

 厄介なのは後者の場合。明らかに肝が据わってるというか、こっちだと盗賊の線が一気に無くなってくる。何故なら盗賊なんてのは他者から奪わないといけないくらいに落ちぶれた連中ばっかりだし、そんな連中が軍隊とまともに当たれるような戦力を持つことも維持する事もできるわけがない。

 

 これが戦争が良く起きる地域なら食いっぱぐれた傭兵団なんて可能性も出てくるんだが、ここはネゼ・カルデラのど真ん中。カルデラ近くの街道だ。そんな気合の入った傭兵団は大体コボルト王とのドンパチで忙しいレキストンの方に行ってるかカルデラに雇われている連中くらいだ。

 

 ああ、全滅させられたっていうナシェルズの護衛たちもそこそこ気合が入ってる方だろうな。雇い主の商人たちが結構な人数生き延びてるって事は、不利な状況でも相当粘って戦った筈だ。この襲撃の生き残りはどこの傭兵団に行っても信用されるだろう。実績ってのはそういうもんだからな。

 

 そしてそんな結構気合が入った傭兵団を壊滅させた奴らが敵方に居るのは確定してるわけだから……やっぱりこれ、単純な盗賊の犯行じゃないんじゃないか?

 

 

「そうね。あんたの偵察結果は軍司令部にも報告してあるけど、報告を受けた指揮官の表情が険しかったもの。軍司令部もかなり警戒してるみたい」

「うーん。そうなると、狙ってくるとしたらナシェルズへ向かう街道に入ったタイミングかなぁ。峡谷の間を上っていくんだろ?」

「そうなるみたい。そこでナシェルズの商隊は襲われたそうだから」

「分かってても通らないといけないのは面倒だ。先に峡谷の崖上を取るしかないか」

「少数でしか動けない場所。誘われてるみたいね」

 

 

 誘われてる、か。その通りかもしれない。あちらさんはどうやっても人数的にこちらよりも少なくなる、はず。だったら少数の利点をこれでもかと使ってくるだろう。それはこちら側も予想はついている事だ。それに、その為にカルデラ軍も俺たちのような武芸者や傭兵を多く雇っている。

 

 懸念点は、この事を相手側も意識しているだろうという事。その上でおびき寄せようとしているのは、何かあると考えた方がいい。

 

 パチン・コ流の門弟は山林でも足が速い。装備が軽いのもあるが、『打出』や『白鳥』のように移動の助けになる技が多いのもある。何かあった時の予備兵力としては最適な戦力だ。ロゼッタを通じて、もしもの時の予備兵力として使ってくれと軍司令部に申し出るべきだろうか。あんまり新参者がしゃしゃり出るのも良くないからな。少し加減が難しい。

 

 

 

 

 

「申し出、ありがたく。出来れば上空から我々の目になってもらえると助かる」

「全力を尽くします」

「うむ。後方からの報告は我々も憂慮していた。正面からのぶつかり合いならばまず負けんが、確かに相手の出方が不気味に過ぎる」

 

 

 ロゼッタから話が通り、俺は後方だけじゃなく全体の航空偵察を請け負う事になった。とはいえ俺と手旗信号でやり取りが出来るパチン・コ流の門弟は限られているため、前方と中央軍司令部に指導員を一人ずつ配置し、残りの指導員は後方荷駄隊の指揮官とロゼッタの護衛も兼ねて傍につける。後方に多く振り分けているのは行軍中に襲われるとしたらそこだとの判断だ。人数が多いほど食料は多く必要になる。それを奪うか焼く事が出来れば一発逆転が起きかねないからだ。

 

 喰えない軍隊は負ける。古今東西、優勢な軍隊が破れるのは大体補給に難がある時だ。

 

 カルデラ軍の指揮官であるカルデラ戦士団のイジジ団長と話し合い、日中は1時間に1度、夜間も時間を決めずに数回上空に飛び、周囲を見渡してほしいと頼まれたため了承。周囲は山林で木々が邪魔をして見通しは悪いが、数十名以上の人間が動けば意外と分かる。鳥の羽ばたきや木々のざわめきなど、見るべきところは割とある。

 

 夜間の場合は、まぁ、気休めだ。ただ、夜間は夜間で月明かりを刃物が反射したりすることもあるため、完全に無駄って訳でもないんだよね。それに今回の戦に関しては相手方は正規の戦いを挑んでこないだろうから、夜間は夜襲を警戒するために昼よりも見張りが多く立てられていたりする。俺が上空に飛ぶ最大の理由は、相手方の出方が気になるという点だから夜の見回りは本当についでだな。イジジ団長は単なる夜襲ならむしろ気が楽になると豪語していた。恐らく、それは事実なんだろう。

 

 警戒態勢を変更して、更に2日。大軍のために時間がかかったが、カルデラ軍はナシェルズの商隊が襲われた峡谷の入り口まで到達した。ここでイジジ団長は軍勢の内、腕利きの傭兵や戦士団を中核とした一団を峡谷の崖上確保のために分け、残りの軍勢で峡谷を通常通り通行。相手方の出方次第だが、峡谷の上で精鋭たちによって相手を撃破した後、逃げた盗賊を反対側から回り込んだ残りの軍勢で包囲して一網打尽とする作戦を採った。

 

 軍勢を半分に分けるというのは各個撃破の危険もあるが、半分に分けても数的優位は確保できているとの判断だ。それこそ村丸ごと山賊だったりしない限り賊が100人を超えることはまずないからな。団長の戦術的判断は間違っていない、はず。

 

 それに各個撃破される可能性が高いのは、互いに連絡が取り合えない時だ。今回はちょっとした距離なら文字通り飛んで連絡を入れられる連絡員が居るわけだから、互いに連絡を密に取り合いながら行軍すれば各個撃破の危険性は大きく減る。

 

 つまり、俺は激くそ忙しくなるわけだが。俺に負担が集中するわけだが、まぁ、仕方ない。仕方ないよな。

 

 

「じゃーおれがんばっててきたおしてくるねー」

「師範代! バッチリ上空は見張っておきますんで! ガンガン飛び回ってください!」

「おう……がんばって……」

 

 

 ブンブンと蜂のように分けられた二つの軍を行き来する事が確定した俺を、精鋭軍に混ざる事になったザンムと連絡員としてそっちの司令部に同行するヴラドさんに励まされて、俺は上空へと舞い上がる。まぁ、鉄火場に立たないでも勲功を稼ぎまくってると考えれば、良いのかな。イジジ団長には「便利すぎる! 次の戦もパチン・コ流には是非来てほしい!」って絶賛されたし、パチン・コ流がカルデラに浸透すると考えれば良い結果だよな。うん。

 

 後はサクッとこの戦いを終わらせてカルデラに帰るだけの簡単なお仕事のはず。相手側がこの期に及んで動きが少ないのは気にかかるが、まぁなにか企んでても事前に察知できれば人数差で叩きのめせるだろう。あ、余計に俺に重圧がかかるじゃん。はぁ……

 




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タロゥ(10歳・普人種男) 

生力68 (68.0)
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釣り師 レベル4(62/100)


英雄スキル
夢想具現仏恥義理(ぶっちぎり)


カルデラ近隣地図その2
https://kakuyomu.jp/users/patipati123/news/2912051597546751843
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