ラーメンが食べたくて 異世界転生ハードモードとんこつ味   作:ぱちぱち

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第15話 ジロー系異世界ラーメン

 神聖歴578年 秋の中月 15日

 

 

 今日も今日とて日課の森歩きと採取を行った後、イールィス家へと向かう。この仕事もそろそろ終わりになりそうだ。

 

 というのも、イールィス家のシェフがついにラーメンの開発に成功したのだ。非常に勉強熱心な人で毎回いろんなラーメンを食べていたが、その結果がようやく先日実を結んだらしい。その成果をぜひ俺に食べて確認してくれと言われたので、今日は朝からドキワクしながらこの時間を待っていたのだ。

 

 

「おお、タロー。待ちわびていたよ!」

 

「おまたせしてもうしわけありません」

 

 

 いつものように玄関前まで来ているダリルウさんに迎えられて屋敷の中へ入り、ずらっと並んだ使用人の皆さんに頭を下げられて迎えられる。この場違いな対応も今回で終わりかと思うと少し寂しくなる……いやならないな。やっぱり気まずいわこれ。

 

 自分は根っからの小市民なんだなぁ、と思いながら食堂へ入ると、すでに食事用のエプロンまで身に着けたロゼッタが待っていた。完ぺきにラーメンにドはまりしているようだ。ふふっ、計画通り(ニヤリ)

 

 

「さぁ、今日こそ大ラーメンを完食しようじゃないか……と、その前に今後についての話がある。ロゼッタ、すまないがちょっと時間をくれるか」

 

「……かしこまりました、お父様」

 

 

 ダリルウさんの言葉に、着席してフォークを掴んでいたロゼッタが渋々とフォークを手放した。

 

 改まった様子でこちらを見てくるダリルウさんに、どうやら本格的にお役御免らしいと気構えを持って相対する。美味しい仕事だったが、ジローを提供するのは悪魔に魂を売るようなものだからな。ダリルウさん、明らかに半年前より腹回りが……その……。

 

 食べ過ぎてはいけない、ちゃんと体を動かしてとは言ってるんだがそもそも忙しい人だからね。中々接種したエネルギーを消費しきれていないんだろうとオブラートに包んだ感想を持ちながら彼の言葉を待つと、ダリルウさんは真剣な表情でこう口にした。

 

 

「週に一度の訪問だが、これを週二に変更してくれないか? 金は倍出す」

 

「だめです」

 

 

 ダリルウさんの腹回りに視線を固定したまま、俺はそう言い放った。いやラーメンの開発に成功したんだろ? とか週一でもその腹なんだから週二はダメだろ、とか色々言うべき事はあるんだが、ダリルウさんは敏腕商人で弁舌も俺なんかいくらでも転がせるほどに優れている。故に一発目にガツンと否定しないと、あれやこれやと理由をつけて言いくるめられてしまうのだ。

 

 俺の明確な拒否にうっと言いたげな表情を浮かべた後、ダリルウさんは助けを求めるように娘に視線を向けてまたもやうっと言いたげな表情を浮かべた。娘の視線が自分の腹に向いてるのを、気づいたんだろう。

 

 ロゼッタには常々、ジローは太りやすいから食べ過ぎちゃいけないと口にしてたからな。太るというのは良いんだ。それだけ栄養がある飯を食べているのは商人として優れてるって証左でもある。特にこの世界ではな。

 

 でも、今回の太り方は良くない。自制できずに太るという事は自分をコントロールできていないという事だからだ。その事をダリルウさんも認識しているから、娘の視線に気まずい思いをしたのだろう。

 

 

「シェフがラーメンをつくったのでは?」

 

「ああ、それなんだがね……ジローを彼に作ってもらったら、一度で金貨が飛んでいったよ」

 

「しゅうにいちどいじょうはだめっていったのにジローをたべたんですね」

 

「試作品! 試しに作った物を食べただけだから!!」

 

「でも、たべたんですよね?」

 

「はい……」

 

 

 俺の言葉にダリルウさんは正直に自白した。ラーメンの作成が出来るようになったと聞いた彼は、シェフにジローの作成を命じたらしい。シェフにも食堂に来てもらって確認すると、報告した瞬間そう命じられたそうだ。それを聞いたロゼッタが父親に向けた表情はしばらく忘れられそうにない。美人系の顔立ちの子が怒るとすっごい怖いよね。

 

 そしてシェフの手で作られたジロー系異世界製ラーメンは非常に素晴らしい出来で、俺が今までに出してきたジローラーメンとも遜色がない出来栄えだったという。その話を聞くとまだ改良の余地が大分残ってそうではあるな。ジローは本店より系とついた店の方が大衆向けなのだ(個人の感想)

 

 だが、このラーメン製作によるコストは尋常じゃないほどに膨れ上がったらしい。商業都市サニムは金を払えば大体の物が手に入るが、ここが生産地というものは限られている。豚骨と小麦粉、塩。塩は海沿いだから安く手に入れられたが、うま味調味料などが手に入らないから海藻を煮詰めたりして出汁を自作しないといけない。なんならシェフは醤油も魚醤とはいえ手作りしてるみたいだからな。手間も材料費もかかりすぎる料理なのだ、現代のラーメンというものは。

 

 そしてそれらを駆使して作られたラーメンは確かにダリルウさんの舌を満足させたが、同時に彼の商売人としての感性が「これは現状だとコストがかかりすぎる」と判断したのだ。段階をいくつかすっ飛ばしてジロー系ラーメンなんて作っちゃったからな。そのすっ飛ばした過程一つ一つに金貨が挟まれてると思えばダリルウさんが二の足を踏むのもわかるだろう。

 

 

「だが、それだけ手間暇をかけて作られた料理であるのが分かった。それだけでも今回の試作には価値があると私は思っているよ」

 

「そうですね」

 

 

 それがジローでなければ彼の試みを俺も称賛できたんだが。とはいえ、異世界ラーメン初の製作が成功したという事実自体は非常に喜ばしい事である。コストの問題は一品作るためだけに諸々の準備をしたのが悪かったのだ。製作過程で材料や調味料などを最適化していけば自ずとコストも抑えていくことは出来るだろうし。ただ、自宅の家ラーメンはまだまだ無理だろうな。

 

 ダリルウさんはこのラーメンを使って新しい商売を始めるみたいで、街の一等地に富裕層向けのラーメン屋を開きたいらしい。俺にそこで働かないかと打診してきたが、丁重にお断りをしておく。俺はラーメン屋で働きたいんじゃない。ラーメンが食べたいだけなんだ。それにその道を選ぶと毎日信力を限界まで絞られてラーメンを作らされるように思えたからね。

 

 ただ、断った瞬間にロゼッタが浮かべた残念そうだけど少し嬉しそうな表情を浮かべたのはなんだったんだろう。こいつの場合、俺が使用人……とはちょっと違うがイールィス家の雇われになったら、嬉々として顎で使ってきそうなイメージなんだが。

 

 俺の人生の目標の一つにはロゼッタをキャーン言わせたるというものがあるから、イールィス家の風下に立つ気はそもそもないんだけどね。知力で追いついたらなにかの拍子にステータスを交換してマウントを取ってやろう。絶対にだ(漆黒の意思)

 

 




タロゥ(5歳・普人種男) 

生力16 (16.9)
信力43 (43.0)
知力12  (12.6)
腕力13  (13.8)
速さ17 (17.6)
器用15  (15.1)
魅力11  (11.0)
幸運8  (8.7)
体力20 (0.0)

技能
市民 レベル2 (3/100)
商人 レベル1 (28/100)
狩人 レベル1 (80/100)
調理師 レベル2(13/100) 
地図士 レベル1(13/100)
薬師  レベル0(36/100)

スキル
夢想具現 レベル1 (100/100)
直感 レベル0  (95/100)
剣術 レベル0  (53/100)
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