ラーメンが食べたくて 異世界転生ハードモードとんこつ味   作:ぱちぱち

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第18話 俺はなんて過ちを……!

 夢を見た。

 

 夢の中の俺は大学生で、深夜のコンビニに買い物に行っていたのだ。行きつけのコンビニは商品棚が3列くらいの店舗で、深夜帯にはいっつも不愛想な女性の店員がやる気無さそうにレジ打ちをしていたのを覚えている。

 

 俺はグルっと店内を一回りして、そういえば寒くなってきたし手袋でも買おうかと思って手袋と温かいコーナーのお茶をとってレジに並ぶ。前にはスカジャンを着た兄ちゃんが居て、そいつが肉まんを頼んでレンジで温めて欲しいと言った。不愛想な女店員はめんどくさそうな声で注文内容を復唱して、会計をした。

 

 肉まんを温めている間、レジの脇にどいた兄ちゃんの代わりに俺がレジ前に来て、さて会計だと思っていたら急に脇にどいた兄ちゃんが話しかけてきた。えっと驚く俺の様子を気にせず、スカジャンの兄ちゃんはレンジを指さしてこう言った。

 

 

「なあ、あそこにレンジがあるだろ」

 

「え、あ。はい」

 

「あそこで温めてる肉まんな。あれさぁ」

 

 

 そういってスカジャンの兄ちゃんは満面の笑みを浮かべ、グッと親指で自分を指差し言い放った。

 

 

「俺のなんだよ」

 

「ブッ」

 

 その瞬間、レジ打ちをしていた不愛想な女店員が見た事もない表情を浮かべて噴き出し、そこで夢は終わった。あの女店員があそこまで表情を動かしたのは、後にも先にもあれしか見た事が無かったなぁ。

 

 寝床の毛布の上に現れた大人用の手袋とお茶のペットボトルを見ながら、そう思い返す。出来れば詳細に覚えてるバイト先のコンビニの夢が見たかった。なんでたった一度見ただけのくだらないエピソードを夢見なきゃいかんのだ。

 

 大人用の手袋はレンツェル神父に日ごろのお礼として渡した。泣くほど喜んでくれた。

 

 

 

 

 神聖歴578年 冬の始め月 3日

 

 

 薬草採取の仕事が冒険者ギルドに並ばなくなった。つまり今年の薬草採取はもう終わりという事だ。日を追うごとに採れる薬草は少なくなっていたから、まぁついに来たなという感じだ。

 

 利益率の高い仕事が一つ無くなってしまったが、冬に備えての蓄えは十分にあるし薪拾いの需要はむしろ冬場こそ上がってくる。先日の襲撃もあるし、鍛錬としての森歩き自体は継続していく方針なんだが、そんな事よりも重大な問題が出てきてしまったのだ。

 

 

「ああ、すまないシスティ。俺は、俺はなんて過ちを……!」

 

「……どうしたのアンタ」

 

 

 自らの失敗を悔い、協会のマリア様像に懺悔の姿勢で向かい合う俺になぜか居るロゼッタが話しかけてきた。今日はラーメンの日じゃないんだが恋しくなったのかな? だが週に一度の約束は約束。残念だがここに来てもらってもラーメンを食べさせるわけにはいかないんだ。仮にそれを破ったら毎日のようにダリルウさんがやってくるのが目に見えているからね。

 

 なんて諭すように語り掛けると、白け切った表情でロゼッタが口を開く。

 

 

「アンタが商売の種があるって呼んだんじゃない。くっだらない事だったらひっぱたくわよ?」

 

「あ、そうだった。すまん、ちょっと衝撃的な事が起きてしまってな」

 

「衝撃的? システィとか言ってたけど妹さんに何かあったの?」

 

「ああ……」

 

 

 ロゼッタの質問に、先ほど起きた出来事を思い返し再び頭がずぅんと重くなるのを感じた。こうなる事は分かっていた筈だったのに、俺は何故軽い気持ちでアレを出してしまったのか。後で悔いると書いて後悔と読むが、今の俺は正にその状態だった。

 

 まさか妹が……システィが……

 

 

「ラーメンよりカレーが食べたいなんて、好き嫌いを言い出すなんて……っ!!!!」

 

「……まったく意味は分かんないけど、くだらないって事だけは分かったわ」

 

「くだらなくなんかない!!!」

 

 

 ロゼッタの冷めきった声音の指摘に、そう叫び返す。この厳しい世界で理想的な栄養バランスの食事を取らせるために俺がどれだけ苦労していると思ってるんだ。完全栄養食と呼んでも差し支えないラーメンでカロリーと脂質、タンパク質を補給し足りないビタミンはセットのサラダと、森で取ってきた果物を食べさせることで補っているのだ。なんならこの街でも有数ってくらいにバランスのいい食事をさせていると自負している。

 

 だが、そんな時にふと。そう、ふと魔が差したのだ。お子様ラーメンセットをコンプさせてあげるかというちょっとした気持ちが、この事態を引き起こしてしまった。

 

 お子様ラーメンセットについてくるお子様カレーに、妹がどハマリしたのだ。

 

 

『おいひい! ラーメンより!』

 

 

 ラーメンより……ラーメンより……ラーメンより……

 

 妹の声で叫ばれたこの言葉は、俺の心をズタズタに引き裂いた。カレーはラーメンと日本の国民食を争う天敵と呼んでも良い料理だ。どのご家庭でも作れて食べられる事から、子供人気はラーメン以上と言っても良いかもしれない。そんな劇物をセットとはいえラーメンと一緒に食べさせてしまった。それがこの状況を引き起こしてしまったのだ。

 

 妹は、今日の夕飯は、カレーが良いと言い出した。ラーメンよりもカレーが食べたいと言い出したのだ。俺の数か月に及ぶ食育計画は、ここで大きな挫折を味わう事になったのだ。

 

 俺のこの葛藤を聞いたロゼッタは最初ぽかーんと口を開けて呆けた後、なにか言いたそうにしながら協会の天井を眺めたり目を逸らしたりし、そして大きく息を吐いた後に俺に向かってこう言った。

 

 

「心底どうでもいいわ」

 

「なんて事を言うんだキサマァ! カレーなんてな! あんなん香辛料と小麦粉で出来ただけの茶色いスープなんだよ! ラーメンと違って!」

 

「ラーメンだって麺は小麦使ってるでしょ。一緒じゃない。というか香辛料なんて使った料理も出せるの? 普通に食べたら幾らするのよ、その料理。興味湧いてきたわ」

 

「銀貨20枚で食べさせてやるよ。いや、待て。ロゼッタ、今なんて言った?」

 

「? 香辛料を使った料理もって辺り?」

 

「違う、その前。一緒だって言ったな」

 

 

 何故かカレーに興味を持ちだしたロゼッタの言葉に、ふと引っかかりを覚えて問い返す。俺の問いかけに首を傾げたロゼッタの言葉に首を横に振り、そしてロゼッタの言葉を思い返す。

 

 一緒じゃない。この女は確かにそう言った。ラーメンとカレーが一緒。本来なら唾棄すべき暴論であるが、しかし俺はその暴論を力づくでまとめ上げた奇跡の逸品を知っている。

 

 カレーとラーメン。本来ならば全く交じり合う事のない最強同士が手を取り合い、スクラムを組んだ料理を俺は知っているのだ。

 

 

「カレーラーメン……俺としたことが、こんな簡単な事に気付かなかったなんて。ありがとうロゼッタ、大事なことを忘れてしまう所だったよ」

 

「あ、うん。えっと、役に立ったならよかった…………のよね???」

 

「お礼に今日の夕食はここで食べていくと良い。至高のカレーラーメンを食べさせてやろう」

 

「あー。うー。香辛料を使ったラーメン……気になるし、まぁ、良いんだけど。釈然としないのはなんでかしら」

 

 

 百面相のように表情を変えながらも、ロゼッタは俺の提案を飲んで孤児院で夕食を取っていった。ロゼッタはカレーラーメンの見た目で少し引き気味になっていたが、妹が口を付け始めたら釣られるように食べ始め、あっという間に夢中になっていた。なんせラーメン×カレーという禁断のコラボだからな。不味いわけないんだよ。それに匂いも食欲を誘うものだから、一度弾みがつけば止められなくなるのは当たり前の話。

 

 普段は芋を一つしか口にしないレンツェル神父が思わずといった様子で一口食べたいと言ったので食べさせたら、まるで天に召されたかのような表情を浮かべていたのが印象的だった。まぁ、分かるよ。カレーラーメン、美味しいからね。

 

 普段お世話になってるし、レンツェル神父には信力が余ってる時にまたカレーラーメンを食べて貰おう。




タロゥ(5歳・普人種男) 

生力17 (17.6)
信力48 (48.5)
知力14 (14.1)
腕力15 (15.8)
速さ19 (19.2)
器用16  (16.7)
魅力12  (12.6)
幸運9  (9.5)
体力20 (0.0)

技能
市民 レベル2 (31/100)
商人 レベル1 (51/100)
狩人 レベル2 (37/100)
調理師 レベル2(52/100) 
地図士 レベル1(20/100)
薬師  レベル0(58/100)
我流剣士 レベル0(22/100)

スキル
夢想具現 レベル1 (100/100)
直感 レベル1  (11/100)
剣術 レベル1  (10/100)
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