ラーメンが食べたくて 異世界転生ハードモードとんこつ味   作:ぱちぱち

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第20話 人類に出来る範囲で頑張ろう。

 神聖歴578年 冬の始め月 15日

 

 

 商業都市サニムの冬は寒い。べらぼうに寒い。

 

 海と山岳に囲まれた地形であるサニムは、山側は雪に覆われ、海側は冷たい海風に晒されと踏んだり蹴ったりな場所である。が、そんな事とは関係なく俺たち孤児院の仲間たちを悩ませているのは古びた孤児院の隙間から吹き付けてくる隙間風だった。

 

 

「兄ちゃ……さむい」

 

「寒いなぁ」

 

 

 朝方。あったかいわかめラーメンで暖を取ったばかりだというのに、妹はぶるぶると震えて俺に抱き着いてくる。普段は子供特有の高めな体温を感じるのに、妹の手足は冷たく冷え切っている。

 

 これは……いけない。この世界において体温の低下による体調不良は、そのまま死に繋がる可能性が高い。ああ、しまったな。毛が生え変わって全身真っ白な体毛で包まれたザンムが「冬眠しそう」とか言っていたからわかめラーメンのスープを飲ませてやったのだが、アレは失敗だった。

 

 なにか暖を取る方法は。もしくは孤児院の隙間風を何とかする方法はないだろうか。最初に思い浮かぶのは自分にとっての命綱兼アキレス腱のスキル・夢想具現。コンビニの夢で手袋を出して以降、よく通っていたコンビニの物品を呼び出すことも出来るようになった。コンビニにあるもので暖を取るとなると……まずはアレだな。

 

 手のひらを合わせて頭の中でイメージを浮かべ、少しずつ手のひらを上に向けるように開いていく。イメージが完了した時、俺の手のひらの上には夢想具現で創り出した物品が置かれている。俺が創り出した物品は、冬の定番。買いすぎて春頃に困る率98%(当人比)と言われる暖房用具――懐炉だ。

 

 

「良いかシスティ。こうやってシャカシャカと振るんだぞ」

 

「うん! しゃかしゃか!」

 

 

 俺の指示通りに妹は楽しそうに赤い袋に入った鉄粉をシャカシャカと振り始める。懐炉の仕組みは単純で、即効性も高いから子供に持たせる暖房用具としては最適なものだ。唯一怖いのは低温火傷だが、直接肌に当たらないように工夫すれば大きな問題にはならないだろう。

 

 さて、お次は。シャカシャカと楽しそうに懐炉で遊ぶ妹を眺めながら、俺はコンビニで販売していた暖かい素材のマフラーを創り出した。お値段は信力で10。朝のラーメンと今呼び出した懐炉を含めると、そろそろ信力が切れる可能性が出てくる。一先ずはこれで打ち止めだろう。

 

 本来ならこのマフラーも妹に使わせてあげたいのだが、あいにくとこれから外に出なければいけないため俺自身も寒さに備えなければいけないのだ。懐炉があれば室内なら大丈夫。そう信じてザンム他数名の年長組と一緒に孤児院の外へと出る。

 

 吹き付ける風は当然屋内よりも外の方が冷たく、強い。ザンムのように冬毛に変わった獣人系の人種なら兎も角、普人種にはちと厳しい寒さだ。

 

 

「いやー、俺らもさむいよー」

 

「それランディックを見て同じこと言える?」

 

 

 たわけた事を抜かすザンムにそう言って、普人種最年長のランディックに視線を送る。普段から白い肌を今じゃ白通り越して青に変化させたランディックは、道路整備に使うタンピングランマーのように激しく上下に震えていた。思わずそうはならんやろ、と言いたくなる光景だ。

 

 余りにも可哀そうだったので余っている懐炉を一つプレゼントすると、ランディックはタンピングランマーをしながらお礼を言おうとして「あ、あ、あ、あ、あ」と繰り返していた。

 

 こんな寒い中、何故俺たちは外に居るのか。それには海よりも深く山より高い理由がある。一言で言うと暖を取るための薪が尽きそうだからいっそ伐採しようとレンツェル神父が言い出したのが発端だ。

 

 

「いいですか皆さん。手本を見せますので、このようにやってみてください」

 

 

 そういってレンツェル神父は薪割に使っていた斧を構え、野球のフルスイングのように本人曰く手ごろと言い張る巨木を斧でスパーンとぶった切った。余りに綺麗に切れたからだろう、ポーンと切られた瞬間に巨木は真上に飛び、そのまま垂直に自身の切り株の上に落ちる。

 

 こんなん人間に出来る技じゃないんですがそれは。この場に居るレンツェル神父以外の全員が、おそらくそう思っただろう。

 

 

「おし、皆。人類に出来る範囲で頑張ろう。レンツェル神父がぶった切った木をそれぞれで運びやすいサイズにするぞ」

 

「ザンムとタローくらいじゃないか? これ割るのは俺らには無理だ」

 

「木材として使うんじゃないなら小さくする方法はある。俺とザンムでこの木を何等分かにするから、切り出した丸太に楔を打ち込んで皆でハンマーでぶっ叩いてくれ。何発か同じことすれば流石に割れるだろ」

 

「えー。俺、おのもったことないよー?」

 

「あの、皆さん。私のお手本……」

 

 

 ザンムより一層たわけた事を抜かすレンツェル神父を無視して、各々がそれぞれ割り当てられた仕事に精を出していく。体を動かし始めたら寒さも感じなくなったし、やはり動くというのが一番の暖房かもしれないな。

 

 いくつか良い感じに割れた木の破片を材木代わりに使う事で孤児院の隙間風対策にも多少役立てることが出来たし、薪代わりの材木も結構な数が手に入った。まぁ、生木だから暫く乾かさないといけないんだが、貯めていた薪が全て無くなるまでには使用に耐えるくらいには乾いてくれるだろう。薪を拾うのではなく作るというのも今後は選択肢に加えても良いかもしれないな。

 

 

 

 なんて思っていたのが間違いだったと気づいたのは、次の日の事だった。

 

 

「手本は示しましたね? タロー、これから毎日、一本の木を切り倒しなさい。もちろん一人で」

 

「ふぁー」

 

 

 薪拾い以来初のレンツェル神父からの鍛錬指示も思わず変な声が出た。5歳児に割り振る作業量じゃねぇぞこれ。




タロゥ(5歳・普人種男) 

生力18 (18.1)
信力49 (49.6)
知力15 (15.3)
腕力16 (16.7)
速さ19 (19.8)
器用17  (17.2)
魅力13  (13.1)
幸運9  (9.8)
体力20 (0.0)

技能
市民 レベル2 (42/100)
商人 レベル1 (75/100)
狩人 レベル2 (43/100)
調理師 レベル2(60/100) 
地図士 レベル1(25/100)
薬師  レベル0(60/100)
我流剣士 レベル0(32/100)

スキル
夢想具現 レベル1 (100/100)
直感 レベル1  (15/100)
剣術 レベル1  (13/100)
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