ラーメンが食べたくて 異世界転生ハードモードとんこつ味   作:ぱちぱち

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誤字修正、somey様ありがとうございます。


第25話 はい。それではジェンガを頭から

 神聖歴579年 春の中月 10日

 

 

「もう一本! お願いします!」

 

「はい。それではジェンガを頭から」

 

「メロディをよく聞いて! 全員の息が合わなければこの踊りに意味はない!」

 

 

 息を荒く弾ませながら、カラフルな衣装で着飾った各劇場自慢の踊り手たちが叫ぶ。フォークダンスの神髄は一糸乱れぬ集団での動きにある。これが少しでもバラけてしまうと、途端にその踊りは安っぽい、学生の運動会レベルのものになってしまうのだ。

 

 夢想具現で創り出したメガホン(キャンプ場で俺にお局さまが指示を出すため用意したもの)を片手に、俺はキッと表情を引き締めながら彼ら彼女らの動きをつぶさに観察した。少しでも乱れを感じたらすぐにメガホンで指摘し、共に踊って互いのダンスに対する理解を深め合う。

 

 

「そこの足さばき。自分で分かっていますね?」

 

「はい! コーチ!」

 

「失敗は良い。次もっとうまくなればいいんです。だから、失敗を恐れず、次の成功を目指してください」

 

 

 たとえ年上であろうと関係なくしかり飛ばす俺を最初は憎々し気に見ていた踊り手たちも、一日また一日と過ごす時間が長くなっていく程にこちらを認め、そして俺も彼らの努力を認めた。年齢は関係ない。俺と彼らの役割は、フォークダンスという集団で行う芸術作品を完成させることにあるのだ。

 

 それからほどなく。俺と踊り手たちの協力体制は一つの踊りの完全な成功という形で、最高の形で終わりを告げる事となった。彼ら彼女らがこのフォークダンスというものに習熟し、一人前に熟せるようになるまで教え導くことが俺の仕事であったからだ。

 

 

「コーチ……ありがとう、ございました……!」

 

「俺たち、次の夏祭りで、コーチの教えを世に広めて魅せます!」

 

「期待してます。次は客として、貴方達の踊りを魅せてください」

 

 

 サニム一と名高い踊り手のカーマさんと、若手ながら情熱に満ちた取り組み方で周囲を引っ張ったジョンソンさん。二人と固い握手を交わして、俺は彼らの1月の成果をその目で確かめたレイラさんに視線を向ける。

 

 

「レイラさん。俺の仕事はここまでです。彼らはもう、立派なフォークダンサーだ」

 

「あ、うん。お疲れ様……うん」

 

「どうしました? 鳩がビーン投げ付けられたような顔をしていますが」

 

「それは単に餌やってるだけじゃないかな。いや、うん。そうだね。タロゥくん芸人ギルドに来なよ。絶対に天職だって」

 

「いやです」

 

 

 この1月の間、何度目かも分からないレイラさんの誘いにノーを突きつける。フォークダンスを世に広めるという言葉とレイラさんが提示した報酬に教官役なんて引き受けてしまったけど、これを生業にしたいとは欠片も思ってないんだよね。

 

 

 

 

 

「タローって考えてるようで何も考えてないね」

 

「あ、わかるー」

 

「失敬な連中だな君たちは」

 

 

 薬草摘みの最中、ネネがふと漏らした一言に思わずそう返す。多分、世の6歳児の中で一番考えてる人間だと自負してるんだけどな、俺は。少なくともネネの言葉に相槌を打ってるザンムよりかは考えてるつもりだぞ。

 

 ただ、俺の主張はネネには受け入れがたいものだったらしく、ネネは口元をへの字に曲げて首をかしげている。薬草摘みが終わった午後に芸人ギルドの踊り手たちとフォークダンスの練習をしていたのが、彼女には理解できなかったのだろう。

 

 ネネとしては俺の行動に一貫性がないと思っているんだろうな。実際にこの一月のコーチ業はそれまでに行っていた事と全く関係性の無い仕事だったから、そういう風に見られても仕方ないだろう。ただ、それはネネから見た俺の話しで、俺の視点からするとちょっと事情が違ってくる。

 

 そもそもの話だ。イールィス家の後ろ盾があるとはいえ、この街の支配者の一人である大規模ギルドの長からの依頼を。しかも大分こっちの都合に合わせた形で振られた仕事を断るなんて出来るわけがないんだ。

 

 引き抜きの方は断れる案件だった。あれは冒険者ギルドと芸人ギルドという対等な立場の組織同士と、更にイールィス家とカルホトラ家という対等の商家同士の話にできたからだ。だが、フォークダンスのコーチの件は同じようで全く違うものになる。レイラ・カルホトラギルド長から、冒険者ギルド所属の冒険者タロゥへの依頼になるからだ。これは流石に断れない。断ったら相手の面子を潰しかねない事柄になってしまう。

 

 このため、俺はレイラさんと握手を交わす以外に選択肢がなかったのだ。各劇場自慢の踊り手を集めるとか、衣装は全て揃えて統一感を出すとか、演奏する楽団の音楽にも口を出させろとか、初公演は夏祭りの一番盛り上がる場面でとか。多少フォークダンスの普及のために条件を盛り込んだりもしたけど、そんな事は些事である。俺は拒否権が無かった無茶ぶりに頑張って対処しただけの可哀そうな一労働者なのだ。

 

 

「……可哀そうって、頭が?」

 

「どういう意味だこら」

 

 

 真面目腐った顔で面白くない冗談を言うネネとじゃれ合いながら、今日も薬草摘みは昼前に終了。ルーティン通りに稼ぐことができた。森の中の地図もこの1月で更新出来たし、これから秋までは堅実に稼ぐことが出来るだろう。

 

 冒険者ギルドに薬草を持っていき、受付のライラに薬草を買い取ってもらい、ザンムと取り分を分け合う。本日の稼ぎは銀貨2枚に銅貨30枚。分け合っても悪くない稼ぎだ。ザンムはこのまま、背負いかごに一緒に入れていた薪を兵舎へ売りに行くというから、俺は一足先に孤児院へと帰る事にした。妹のお昼を出してあげないといけないからね。

 

 今日のラーメンはキノコ出汁のラーメンだ。ベースは塩ラーメンなんだが、そこにキノコのうま味と風味をたっぷりとしみ込ませたスープは絶品の一言だ。麺を食べた後、セットで出したライスを入れると〆のおじやにも早変わりするコスパ最高のラーメンである。ああ、想像しただけで腹が減ってきた。早く孤児院に帰らないと。

 

 足早に孤児院への帰り道を歩いていると、途中でつい先ほど冒険者ギルドで分かれたネネの姿を見かけた。いつもの帰り道と違うなと思っていると、ネネより年長の緑色のローブを着た青年が、ネネが持っていた薬草籠を力づくで奪おうとしているのが見えた。

 

 どうやら、厄介ごとのようだ。

 




タロゥ(6歳・普人種男) 

生力21 (21.0)ー
信力61 (61.6)UP
知力19 (19.1)UP
腕力21 (21.0)ー
速さ21 (21.0)ー
器用21  (21.0)ー
魅力19 (19.2)UP
幸運11  (11.0)ー
体力21  (21.0)ー

技能
市民 レベル3 (5/100)UP
商人 レベル2 (27/100)UP
狩人 レベル2 (91/100)UP
調理師 レベル3(8/100)UP 
地図士 レベル1(73/100)UP
薬師  レベル0(95/100)UP
我流剣士 レベル0(89/100)UP
木こり レベル1(76/100)UP
楽士 レベル0(89/100)UP
教師 レベル0(57/100)NEW

スキル
夢想具現 レベル1 (100/100)ー
直感 レベル1  (42/100)UP
剣術 レベル1  (71/100)UP
フォークダンス レベル4(58/100)UP
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