ラーメンが食べたくて 異世界転生ハードモードとんこつ味 作:ぱちぱち
「ネネ。厄介ごとか?」
「タロー!? どうしてここに」
「ここ、俺の帰り道。そっちこそ普段と道が違うでしょ」
背中に手を伸ばし、
明らかに服に納まるサイズじゃないものが出てくると大抵の相手はビックリするらしく、ネネから籠を奪おうとしている青年……いや。少年か? 背はデカいが近くで見たら大分若いな。12,3くらいの顔立ちに見える……は目を見開いて、次に険しい表情を浮かべながら籠から手をはなし、ネネをかばう様に前に立った。
うん? なんか立ち位置おかしい……おかしくない?
「手品師か。何の用だ」
「それはこっちのセリフというか。アンタの後ろに居るネネは仕事仲間なんだ。それがトラブってるように見えたから声をかけた」
「……ネネ?」
「タローは一緒に薬草摘みに行ってる冒険者! 何度も話したでしょ!」
「ああ……あの。すまん、急に得物を出してきたからつい」
俺から目を逸らさずにネネに確認する少年は、ネネの言葉を聞いてようやく警戒を解いたようだ。と同時に、ネネが少年を「邪魔!」と言って押しのける。邪魔と言われた少年の悲しそうな顔が少し印象的だった。
というか、どうやらこれは俺の取り越し苦労だったか? 明らかに少年とネネは親しい間柄にあるように感じるし、暴力のぼの字も見えない。
「あー。余計なお世話だったかな」
「いや。妹を心配してくれたのはありがたい。よく考えれば、俺の行動が紛らわしかったのが悪かった」
「ん。お兄は心配しすぎ。このくらいの荷物、持って帰れるし!」
はい、取り越し苦労確定。少年はネネのお兄さんだったらしい。しかも話を聞くに荷物を持ってあげようとお兄さんが気を回してすったもんだのやり取りだったらしい。妹想いのお兄さんと大人ぶりたい妹のやり取りだ。羨ましい。妹とやりたいやり取り100選の一つじゃないか。センスがいいな。
「しかし、そうか。君がネネの仕事仲間の。噂は聞いてるよ、芸人ギルドのタロー」
「冒険者ギルドのタロゥです」
「タローはそっちの方が有名。知名度が違う」
ふんすっと胸を張ってそう言い切るネネを一瞥し、お兄さんに視線を戻す。
「可愛らしい妹さんですね」
「おいタロー」
「自慢の妹だ」
「おいお兄!!!?」
発狂するように叫びだしたネネを無視して、俺とお兄さんは熱い握手を交わした。彼もまた妹を愛でる兄の一人。俺と彼は、その一点において同胞なのだ。あ、ネネさん。ちょっと、猫パンチやめて。君、今年で8歳だし俺より体格良いでしょ。意外とパンチ痛いんだって。
ネネのお兄さん、メメさんは森の狩人見習いをしているそうだ。メメさんとネネのお父さんが森番をしており、またお母さんが薬師をしているそうだからメメさんも薬師としての知識は持っているのだとか。じゃあネネの師匠はお母さんなのかと思ったが、そこは違うらしい。
あれ。森番というと街の財産である森の管理を任される役職だから、結構お偉いさんなのでは。そう尋ねると、ネネはまた可愛らしく胸を張って父親の自慢をし始めた。
「森に関わる事ならお父は一番上の責任者。とっても偉い」
「あ、やっぱり」
「まぁ、世襲とかじゃないから偉いのは親父で俺たちは普通の市民だけどね」
数多いるサニム所属の狩人頭から一人が選ばれる森番は、狩人という職種の一番上に位置する存在だ。貴族制の国なら領主貴族の一族が就くこともある名誉ある職業なんだから、ネネが誇りたくなるのも良く分かる。
ネネはこのお父さんが遠征から今日帰ってくるから、メメさんと一緒に外街の出入り口まで歩いていくところだったそうだ。今日帰ってくるという事は冬の間に森に入っていたという事だが、なにか問題でもあったのだろうか。
メメさんに尋ねると、メメさんは少しだけ表情を引き締めて口を開いた。
「君は確か、レンツェル神父の所の子だったね。去年の春に犬頭どもがサニムを伺っていた事があったろう? その時は君の所のレンツェル神父が先遣隊を皆殺しにして事なきを得たが、今年も山を下りてこないとは限らないからね。寒さが和らいできた頃合いを見計らってサニムの精鋭狩人たちで周辺の山々を偵察しているんだよ」
「ああ……なるほど」
耳元を矢が飛んでいくわ背負いかごに矢が突き刺さるわ、何度も「あ、死んだ」と思わされた嫌な事件だった。そうか、あの時の出来事が今も続いているのか。いや、それはそうなんだよな。兵舎の兵長さんは今でも薪を売りに来た俺たちに森の近況を尋ねてくるし情報を集め続けてるんだ。サニムは未だに警戒を解いていない。むしろもう一度あると考えて準備を怠っていないのだ。
その事実が頼もしくもあり、恐ろしくもある。サニム上層部がそれだけ警戒しているという事は、「もう一度」があると彼らは判断している、という事に他ならない。そして次回は恐らく前回よりも大規模になる可能性が高い。少なくとも、サニム上層部はそう考えている。でなければ冬の次期から森番直々に精鋭を率いて偵察になんて行くわけがない。
そこまで頭の中で考えて、可能性は高いと判断を下して、俺はメメさんに尋ねた。
「この話、レンツェル神父は」
「偵察に行くという事は伝えてある。かの人には、場合によっては即応体制をとってもらわないといけないからね」
外街における最強の戦力は外街の兵舎にいる兵士たちではなく、レンツェル神父個人である。これはサニムの、少なくとも外街では常識と言っていい事だ。森側からの侵略をうけた場合、まず最初に敵勢力に当たるのはレンツェル神父である。彼が運営する孤児院が森の傍近くにあるのは、このためと言っても過言ではない。
実際に彼がこの街で孤児院を営んでから30年ほどが経っているらしいが、その間に起きた森側からの侵略はそのすべてがレンツェル神父によって阻止されているのだ。もちろん、家屋や運悪く森近くにいた人など大小被害は出ているが、街が敵勢力に攻撃を受けた、という規模の話としては阻止と言っても過言ではない被害に納まっている。
「であれば、孤児院で湯と食事を用意いたします。その際、森番から直接レンツェル神父にも森の状況をお伝えいただければ次への備えも円滑に進むかと」
「や。それはもちろん、神父様に報告はするが。親父殿がどう判断されるかは俺の一存ではね」
「その食事っておさかなラーメン!?」
「ふふふ。魚介ラーメンももちろん取り揃えてございますよ、ふふふ」
「お兄! 絶対に行くべき! タロゥのラーメンは中央街で銀貨20枚出さないと食べられない超高級品!」
「ぎん……!? いや、だが。しかし親父殿が」
「お父はうちが説得するから!」
一度魚介ラーメンを食べた事のあるネネが必死の形相でメメさんを説得する姿を、計画通りッ!と笑顔で眺める。胃袋を掴むというのは、つまりこういう事なのだ。やはりラーメン。ラーメンは全てを解決する。このまま森番の胃袋もがっちりしっかり鷲掴みにしてしまえば、今後の孤児院の防衛でも融通を利かせてくれるかもしれない。
ただ、一つだけ心配があるとすれば信力が足りるかどうか、か。
タロゥ(6歳・普人種男)
生力21 (21.0)ー
信力61 (61.6)
知力19 (19.2)UP
腕力21 (21.0)ー
速さ21 (21.0)ー
器用21 (21.0)ー
魅力19 (19.2)
幸運11 (11.0)ー
体力21 (21.0)ー
技能
市民 レベル3 (5/100)
商人 レベル2 (27/100)
狩人 レベル2 (91/100)
調理師 レベル3(8/100)
地図士 レベル1(73/100)
薬師 レベル0(95/100)
我流剣士 レベル0(90/100)UP
木こり レベル1(76/100)
楽士 レベル0(89/100)
教師 レベル0(57/100)
スキル
夢想具現 レベル1 (100/100)ー
直感 レベル1 (45/100)UP
剣術 レベル1 (71/100)
フォークダンス レベル4(58/100)