ラーメンが食べたくて 異世界転生ハードモードとんこつ味   作:ぱちぱち

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第29話 孤児院に強盗が押し入ってきた

 神聖歴579年 春の中月 20日

 

 

 孤児院に強盗が押し入ってきた。

 

 レンツェル神父が秒で鎮圧した。

 

 

「それではこの不埒者は連行いたします」

 

「よろしくお願いします」

 

「いやだぁ! 縛り首はいやだぁ!!」

 

 

 外街の兵舎から来た兵隊さんが、喚き散らす貧しい身なりの男を縄で縛って引き立てようとすると、男は口の端から泡を飛ばしながら地面に転がって叫び声をあげる。その姿に兵隊さんは舌打ちをして、サッカーボールを蹴とばすように思い切り男の腹を蹴とばした。

 

 ドゴォ、と鈍い音を立てて男が一瞬持ち上がり、そして地面にドサリと落ちる。げぇげぇと胃液を吐き出しながら蹲る男を兵隊さんたちは力づくで立たせると、何度も蹴とばしながら連行していく。対応が荒いように見えるかもしれないが、あれで大分優しいのだ。普通は強盗働きなんてした奴はその場で叩っ切られても文句は言えない。

 

 見ない顔だったから、おそらくは農村部からサニムに出てきた奴だろう。レンツェル神父がいるこの孤児院に強盗しかけるなんてこの街の裏を仕切るマフィアでもやる奴はいないぞ。いや、マフィアは外街出身者が多いから、そもそも外街の守護者であるレンツェル神父に食ってかかるバカは居ないんだけどね。

 

 ただ、それを知らない街の外から来た奴は一定数いる。サニムは周辺でも最も栄えた都市だからこそ、サニム出身者以外の人間も多く存在するのだ。

 

 

「あいつ、胡椒を探してたよタロゥ。まっすぐ台所に来たもの」

 

「エリザ。ケガはない?」

 

「私になにかする前に神父様がノしてくれたもの。とってもカッコ良かったんだから」

 

「うん。怪我がなさそうでなにより」

 

 

 炊事担当のエリザがくねくねと体をくねらせながらレンツェル神父のカッコよさを延々語り始める。相変わらずレンツェル神父に首ったけだな。ライラといいレンツェル神父のファンはどいつも強火がすぎる。エリザはもう孤児院を出てもおかしくない年齢だが、なにかしら理由をつけてそのまま居座りそうだな。

 

 しかし、そうか。胡椒の件、たった3日でそこら辺の根無し草が孤児院に襲撃をかけるほどに広まっているのか…………いや、情報が広まるの早すぎるだろう。まさか森番の部下とかがそこらへんで「あそこの孤児院はよー! もてなしに胡椒を出してくれるんだぜぇい!」とか言ってるわけじゃないだろうな。

 

 流石にレンツェル神父という抑止力が居る孤児院に強盗が入るとは想定してなかった。今回はたまたまエリザだけが強盗と相対していたが、これでもし妹が怪我をしていたら……想像もしたくない出来事だが、実際に起こりかけた以上は対応しなければいけない。

 

 まずはネネを通じて森番に凸だな。あとは、イールィス家とも話し合いだ。孤児院周辺の巡回を増やすとか、出来ることはあるかもしれないしね。

 

 

「所で狙いが胡椒ならタロゥが原因で強盗が入ってきたって事よね」

 

「しかし待ってほしい。ラーメンにラーメンコショーを用意するのはもう海に水があるくらいに自明の理であるからして今回の件は」

 

「なにか私に言う事」

 

「ごめんなさい」

 

 

 言い訳を一切許さないエリザの声音に全面降伏し、頭を下げる。謝罪代わりにたっぷりと胡椒をきかせたとんこつラーメンを提供する事になったが、命の危機をこの程度で飲み込んでくれるなら安いものである。え、毎食用意っすか。それは流石に……週1とかでどないでっかね(揉み手)

 

 

 

 

「すまん、私が軽率に話したことでこのような事が……」

 

「炊事担当のエリザは涙ながらに。ええ。レンツェル神父の助けがなければ自分の命は無くなっていただろうと語っておりました」

 

「……申し訳ない。狩人たちにも、孤児院の周囲を見回るように伝えておく。今後このような事がないよう私に出来るだけの事はしよう」

 

 

 森番殿の所にまずかち込んだ所、強盗の件はすでに連絡が来ており胡椒の件はサニム市議会への報告の場でのみ言った言葉だと。まさかこんな事が起きるとは思わなかったとの弁明の言葉を頂いた。思わなかったで済むなら司法なんていらないわけで、じゃあどうしてくれるのかと話を詰めたらなんと狩人さんが毎日孤児院に見回りに来てくれることになった。

 

 これがごね得という奴か。前世で延々クレームを言う奴は何が楽しくてあんな事をしてるのかと思っていたが、実際にやる側になると気持ちが良く分かるね。相手の弱点を見つけて延々言葉で詰るだけで得するんだから。

 

 ただ、やりすぎるといけないってのも良く分かった。今も部屋を覗き見るネネが親の仇のような視線でこっちを見てるからね。ごね得はごねてもこっちが損をしない範囲で留めないと周囲の評価とか諸々が犠牲になる諸刃の剣なのだ。これ以上ジジさんに頭を下げさせるとネネが激おこしそうだからこの辺で辞めておこう。

 

 孤児院に来てくれる巡回の狩人さんには、軽食を出すようにしようか。そうすれば軽い休憩がてら見回るという形になるから、狩人さんの方にも損だって気持ちが湧きにくくなるはずだ。

 

 さて、次はイールィス家だな。あそこはこの街でも屈指の武闘派集団、海軍を抱える家だ。巡回なんてけち臭い事を言わずに護衛をそのまま出してくれる可能性もあるだろう。対価は件の胡椒を出す。といっても週に1度ラーメンコショーを一瓶って所で話がつけば良いんだけど。

 

 

「なんて軽く考えていた時期が俺にもありました、っと」

 

「ぶげっ!」

 

 

 我が愛木刀仏恥義理(ぶっちぎり)を、飛びかかってきた男の脳天に叩き落とす。剣術スキルが乗った一撃はお見舞いされたボロボロの衣服を着た男はもんどりうって倒れ、ぴくぴくと体を震わせる。

 

 これで3名。大の大人を齢6つの子供が3名も叩きのめした。これが武術系スキルの力、ということか。1年間振り続けて居た木刀は、無駄ではなかった。その事を嫌な形で実感しながら、仏恥義理(ぶっちぎり)の切っ先を自身を囲む者たちに向ける。

 

 その数は5名。明らかに喧嘩慣れしていない素人だが、それでも5名という数は脅威である。

 

 だが、それは俺が一人であるならの話。

 

 

「うぎゃっ!」

 

 

 悲鳴を上げて5名の内1人が緑色のローブを着た少年に投げ飛ばされ、地面に伏した。

 

 

「大丈夫かい、タローくん」

 

「はい。メメさんは」

 

「問題ないよ。素人にやられるほど軟な鍛え方はしてないから」

 

 

 そう言ってメメさん。ネネの兄でジジさんの息子である狩人見習いは、ぱんぱんと手についた血を自分の服で拭った。狩人として、というよりも明らかに喧嘩慣れした仕草だ。

 

 

「残り4人か。俺一人でも良いけど」

 

「いや。折角の実戦の機会なんで。二人で分け合いません?」

 

「いいだろう。危なそうならすぐ助けるからね」

 

 

 にこやかに会話を続ける俺とメメさんに、残った襲撃者たちは気圧されたように後ずさる。別に余裕があってこういう会話をしてるんじゃない。相手に余裕があるように見せることで、相手側が勝手に委縮してくるのを期待しているだけだ。メメさんの方は本当に余裕がありそうだが、俺の方は割といっぱいいっぱいだよ。

 

 とはいえ、最悪の場合メメさんが全員ごっ倒すのを期待できるし、遠くの方で兵隊さんが走ってきているのが見えた。それに相対する連中はどうも武術系のスキルは持ってないみたいで、ナイフを向けられても全然怖くない。この状況なら経験値狙いで冒険するのも悪くない気がするんだよね。

 

 というかなかなか剣術上がらないから、実戦経験欲しかったんだよね。前に外街のチンピラを伸した時は結構経験値が入ったし、練習だけじゃ上がりにくいスキルなのかもしれない。

 

 今日は3名もぶちのめしたし、これで剣術や我流剣士の経験値がどうなっているかを検証することが出来そうだ。もし実戦で効率的に経験値を得られるなら……その時は、ちょっと考えないといけないかな。

 




タロゥ(6歳・普人種男) 

生力21 (21.0)ー
信力63 (65.3)UP
知力20 (21.0)UP
腕力21 (21.0)ー
速さ21 (21.0)ー
器用21  (21.0)ー
魅力19 (20.4)UP
幸運11  (11.0)ー
体力21  (21.0)ー

技能
市民 レベル3 (15/100)UP
商人 レベル2 (41/100)UP
狩人 レベル2 (99/100)UP
調理師 レベル3(18/100)UP
地図士 レベル1(77/100)UP
薬師  レベル1(7/100)UP
我流剣士 レベル1(22/100)UP
木こり レベル1(83/100)UP
楽士 レベル0(95/100)UP
教師 レベル0(63/100)UP

スキル
夢想具現 レベル1 (100/100)ー
直感 レベル1  (71/100)UP
剣術 レベル1  (92/100)UP
フォークダンス レベル4(65/100)
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