ラーメンが食べたくて 異世界転生ハードモードとんこつ味   作:ぱちぱち

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第41話 悔しかったから努力したのよ。今まで以上にね

 神聖歴579年 秋の終わり月 1日

 

 

 今日も今日とて俺は罪を犯す。

 

 最近もっぱら腹回りが怪しくなってきたダリルウ・イールィス氏にジローラーメンの提供するのだ。

 

 

「ダリルウさん。太ってきましたね」

 

「うん? うむ、貫禄が出たと街では評判だよ! はっはっはっ!」

 

 

 顎回りがふとましくなりそろそろ二重顎になりそうなダリルウさんにそう言うと、彼は嬉しそうに体を揺すって笑った。この世界じゃ太る、太れるってのは裕福アピールでもあるからな。あとは筋肉もりもりとか。

 

 ダリルウさんは去年まではこの筋肉よりだったんだが、今はプロレスラーみたいな肉とガタイの合わせ技みたいな体格になってきている。運動量を増やすことができればこの状態を維持できるんだが、ダリルウさんの忙しさを考えると難しいかなぁ。

 

 今日提供するラーメンはトマトスープがベースの所謂ジロー系ラーメンだ。ジローにインスパイアされた星の数ほどあるジロー系の中でも中々の変わり種であるが酸っぱいトマトの酸味がラーメンの脂っこさを中和してくれて、さっぱりとした食べやすい仕上がりにしてくれるものだ。さっぱりしてるから普通のジロー系よりも量が食べれちゃう魔性の一品である。

 

 まぁ、量が食べられる分、野菜をマシマシにしてバランスを取るんだけどな。マシマシ分の信力消費が多くなるが、これは仕方ない。罪悪感を薄めさせるためにも必要な工程だ。

 

 一通り食事を味わった後、ダリルウさんは満足げなにニンニク臭い吐息を吐いた。かつては小マシマシも食べきれなかった彼の胃袋はこの2年近い間に拡張され、現在では大マシマシを食べきれるほどに成長を遂げている。

 

 そんなダリルウさんの前に小皿に取り分けたブレス浄化タブレットをススっと置くと、ダリルウさんは手慣れた様子でそのタブレットを口に放り込む。このタブレットは銀貨5枚で提供しており食べるかどうかは提供された側が決めるのだが、初めて提供してからこちら一度も食べなかった事が無いくらいに気に入ってくれているようだ。

 

 

「タロゥ、私にも消臭飴を頂戴」

 

「かしこまりました、お嬢様」

 

「ん、ご苦労」

 

 

 ロゼッタの言葉に恭しく返すと、ロゼッタは苦笑を浮かべてそう労いの言葉をかけてくる。この娘とも気づけば2年近い付き合いになったんだな。当初はなんだこのガキ、キャーン言わせたるけんのぅと思っていたが。いや、それは今も思ってはいるがそれを抜きにしても色々と気安い間柄になってしまった。

 

 孤児院の仲間と一緒のパーティーに居るネネを除けば、恐らくこの街で一番親しい間柄なのはロゼッタになるだろう。ビジネスパートナーだと互いに言っているが、俺の中ではロゼッタはもう友人と言っても良い間柄だと思っている。

 

 ……例の件。相談するならダリルウさんの方が良いんだが、ロゼッタに頼もうかな。

 

 今のロゼッタはダリルウさんの補佐をしながら仕事を覚えている最中だ。まだまだ半人前にも届かない商人見習いの扱いで、実績はラーメン器の販売と去年末に行った変な祭りの仕切りくらいだ。ここでもう一本、どでかい実績を立てればダリルウさんの後継者としてロゼッタの名前が認知される事になる、かもしれない。

 

 

「ロゼッタ。ちょっと相談があるんだけど」

 

「はむはむ。相談? まさかあの猫女へのプレゼントを私に聞くつもりじゃないでしょうね? あいつ街で会うたびにやたらと帽子を自慢してきてウザいんだけど」

 

「えぇ……なにやってんだあいつ」

 

 

 パーティーメンバーの恥ずかしい行動を全く関係ない所で耳にしてしまった。思わずため息が出るが、今回は関係のない話だからいったん飲み込んでおく。明日会った時に説教してやらんとな。

 

 

「相談したいのはそんな事じゃなくてね」

 

「そんな事ってなによ。女の子のプレゼントは重要でしょ。というか普段お世話になってる私に何もなしってのはどういう了見?」

 

「お、おう……」

 

「ロゼッタ。タロゥくんが困ってるからその辺で」

 

 

 ヒートアップし始めたロゼッタを、ダリルウさんが一言で止めてくれた。予想以上にネネに渡したプレゼントの件が気に障っていたらしい。ロゼッタならやろうと思えば帽子どころか店まで買えそうなんだが……

 

 兎に角ダリルウさんが仕切り直してくれたので、ごほんと一つ咳をしてロゼッタの前にカップラーメンを置く。分かりやすいように取り皿として、今ではイールィス家で食器として扱われているラーメン器を用意しておく。

 

 良く分からない言語が書かれた包装のそれにロゼッタが首をかしげているので、目の前で包装を開けて中身をラーメン器に移していくと、ロゼッタよりも先にダリルウさんが声をかけてきた。

 

 

「タロゥくん。その、白いものは麺に見えるんだが」

 

「はい。乾燥させた麺です」

 

 

 この場において麺とはラーメンの麺以外に存在しない。乾燥させたラーメンの麺。この単語だけでダリルウさんは俺が置いたものがどういうものかと、もしそれが当たっていた場合の価値についてを頭ではじき出したらしい。ガタッと椅子から立ち上がった。

 

 そんな父親の様子にただならぬ気配を感じたのか。ロゼッタはより一層真剣な表情で開けられたカップラーメンを見て、何かに思い至ったかのように俺に視線を向ける。

 

 

「これは……ラーメンなのね?」

 

「ああ」

 

「調理法は?」

 

「開けた後、麺以外の袋を取り出して、お湯を注ぐ。その後に、こっちの袋に入っている乾燥したスープを入れて数分待てば食べられる」

 

「乾燥したスープだと!? お湯を入れるだけでスープが飲めるのか!?」

 

「え……あっ!」

 

 

 俺の言葉にロゼッタではなくダリルウさんが激しく反応を示した。流石はダリルウさん、理解と反応が早い。ダリルウさんの言葉に遅ればせながらロゼッタも気づくことが出来たようで、開けたカップラーメンの具や袋に先ほどとは違った眼差しを向けている。

 

 この世界において、保存食というものはそれほど発達していない。冬の間も長期間保存が効く作物を保管して細々とそれを食べたりしている。イールィス家レベルなら氷魔術が使える水魔法使いに依頼して氷室でも持ってると思うが、食料の保存方法は本当にそれくらいしかないのだ。

 

 そしてイールィス家のように魔術師に依頼できる財力がある家は、この町全体を見てもそうそう居ないだろう。上流と呼べる人々でも冬の間は限られた食材しか使えないのだ。

 

 そこに、このカップラーメンをぶち込めばどうなるか。これから冬がやってくるこの時期に一日限定20食の販売。少なくとも冬の間は腐らずお湯をかければ美味しいラーメンが食べられる。イールィス家がオープンしようとしているラーメンショップが完成するのは来年の春頃だと言うし、その宣伝にもなるだろう。

 

 

「一つ銀貨10で売れないかと思ってるんだ。日に20は作れる。食べ終わった後の包装を洗って返してくれたらもう少し数は頑張れる」

 

「安すぎる。乾燥させてたって事はこれ保存食でしょ? ならグンラル家を通さずに食料品を流通させることは出来ないから、その分乗せる価格も考えて店頭価格は銀貨20ね。あそこは食品衛生も請け負ってるから。経費を抜いた利益の半分はそっちで良いわ」

 

「……逆に値段が上がるとは思わなかった。嬉しいけど、良いのかな?」

 

「20食だけなら富裕層相手の商売になるから、これくらいの値段じゃないと相手にもされないわよ」

 

「なるほど。それなら文句はないよ、商談成立だ」

 

 

 俺がステータスを表示させた右手を差し出すと、ロゼッタもステータスを表示した右手を差し出した。この世界で伝わる契約法、互いのステータス交換だ。

 

 

ロゼッタ・イールィス

 

 

生力12 (12.3)

 

信力17 (17.2)

 

知力30 (30.0)

 

腕力11 (11.5)

 

速さ15 (15.8)

 

器用18 (18.3)

 

魅力32 (32.3)

 

幸運27 (27.0)

 

体力15 (15.3)

 

 

「ふぁっ」

 

 

 ロゼッタのステータスを見て、思わず変な声が口から洩れた。ほぼ一年前。ラーメン器の取引をした時のロゼッタのステータスはこんな感じだったからだ。

 

 

生力9  (9.1)

 

信力12 (12.4)

 

知力19 (19.2)

 

腕力4 (4.0)

 

速さ8 (8.2)

 

器用10 (10.9)

 

魅力20 (20.8)

 

幸運1 (1.0)

 

体力10 (10.9)

 

 

 いや、俺もめちゃめちゃステータスが伸びたと思ってたんだけど、ロゼッタの成長速度もちょっと半端じゃないだろ。去年の春と秋とのステータスの伸びなんか目じゃない位に伸びてるじゃないか。しかも幸運なんか1から27に伸びてるし。どんな伸び方だよ、教えてくれよ。

 

 俺の驚愕が伝わったのか。ロゼッタは楽しそうな表情で笑顔を見せて、俺に向かって口を開く。

 

 

「アンタにステータスを抜かれて、本当に悔しかった。だから、悔しかったから努力したのよ。今まで以上にね」

 

「……一年前のやり返し?」

 

「まだ途中だけどね。全部のステータスで抜いてやるから、覚悟してなさい」

 

 

 俺が呆れたようにそう呟くと、ロゼッタは満面の笑みを浮かべて笑った。

 

 あとダリルウさん。めちゃめちゃムカつく笑顔でニヤニヤしないでもらえます? 俺はまだ負けてないですから。

 




タロゥ(6歳・普人種男) 

生力25 (25.0)UP
信力83 (83.8)UP
知力24 (24.0)UP
腕力27 (27.0)UP
速さ25 (25.0)UP
器用24  (24.0)UP
魅力24 (23.0)UP
幸運15  (15.0)UP
体力26 (26.0)UP

技能
市民 レベル3 (71/100)UP
商人 レベル3 (6/100)UP
狩人 レベル3 (51/100)UP
調理師 レベル3 (93/100)UP
地図士 レベル2 (18/100)UP
薬師  レベル1 (53/100)UP
我流剣士 レベル2 (22/100)UP
木こり レベル1 (97/100)UP
楽士 レベル1 (68/100)UP
教師 レベル1 (5/100)UP
パチン・コ流戦闘術 レベル1 (91/100)UP


スキル
夢想具現 レベル2 (8/100)UP
直感 レベル2  (12/100)UP
格闘術 レベル0  (65/100)UP
剣術 レベル2  (61/100)UP
弓術 レベル1  (22/100)UP
小剣術 レベル1 (22/100)UP
暗器術 レベル1 (22/100)UP
フォークダンス レベル5(21/100)UP
フォークマスター  レベル0 (21/100)UP
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