ラーメンが食べたくて 異世界転生ハードモードとんこつ味 作:ぱちぱち
「酷い事をしやがるな」
窓から塔の中に入り込み、檻の中を覗き込む。子狼は酷く痛めつけられているようで全身に傷を負っているが、幸いなことにまだ息はあるようだった。俺が近づいたのに気付いたのか、子狼は傷だらけの身体を起こして唸り声を上げるが、その動作も随分と弱弱しく明らかに衰弱しているのが見て取れる。
「ああ、俺は敵じゃないから。寝てろ、寝てろって!」
檻には錠前がかけられていて開くことは出来ない。周囲を見渡しても鍵らしきものも見当たらない。
「……一先ずは、大狼を迎え入れるか」
自分に出来ないと判断したなら他者に委ねるのも大事なことだ。幸い、塔の入り口は施錠されておらず内側からなら開けることが出来た。ぎぃっと扉を開けると、大狼さんが即座に頭を突っ込んでくる。
「ウォン! ワフッ!」
「ワフッ! キュゥン」
大狼さんは心配そうに鳴き声を上げて、子狼はそんな親の姿に元気が出たのか、弱弱しいながらも体を持ち上げ、吠え声をあげた。だが、やはりダメージが大きいのか。すぐに地面に体を伏せてしまう。
大狼は器用に牙を鉄格子にひっかけると、そのまま引きちぎるように頭を横に振った。べきべきべきぃと大きな音を立てて檻の鉄格子がひしゃげて大きな穴が開くと、大狼は俺の方に顔を向けてグルルと唸り声を上げる。あ、はいはい。中に入れば良いんですね。
檻の中に入ると子狼が立ち上がろうとするが、大狼さんが「ワフッ」と一声かけたらそのまま地面にぺたんと座り込んだ。無理はしない方が良いよ、君明らかに死にかけてるからね。
子狼は小型犬より少し大きいくらいのサイズで、俺の両手でもなんとか持ち上げることが出来た。そのまま鉄格子に引っかからないように注意深く外に運び出すと、大狼さんが待ちきれなかったのかべろんべろんと子狼を大きな舌で舐めまくり始めた。
もちろん俺ごと。
「あの、狼さん。嬉しいのは分かった。分かったからこの子の治療をしないと」
全身唾液塗れの状態でそう口にすると、大狼さんは非常に名残惜しそうにしながら塔の中へ突っ込んでいた頭を引っ込めた。子狼を抱きかかえながら外に出ると、大狼さんは待ってましたとばかりに俺の首根っこを咥えて走り始めた。
「狼さん、とりあえず街に行ってください。この子を治療しないと」
「ウウウゥ!」
「大丈夫です。信頼できる人を連れてきますんで」
俺の言葉に大狼さんが唸り声を上げる。子どもを傷つけられたからかなり警戒しているのだろう。ただ、このままだとこの子の命に係わるかもしれないからここは納得して欲しい所だ。無理やり連れてこられた身だが、流石にこんなひどい目に合っている子供を見てなにも感じないわけじゃあない。親兄弟なら心配して当然だろう。
重ねて街に行って欲しい、信じてくれと伝えると、大狼さんは不承不承といった感じで走る方向を変えた。どっち側に街があるかなんてわからないが、恐らく街に向かっていると思いたい。仮に大狼さんのねぐらに案内されてさぁ治せ、なんて言われても困るからね。俺が用意できるものなんてキャンプの夢で用意していた救急箱に入ってる消毒液と包帯位だ。
小一時間ほど走っただろうか。風のような速さで走っていた大狼さんが、急にスピードを緩め始めた。そして走っている最中は風の音で聞こえなかったが、遠くの方から聞き覚えのある音が聞こえる。人の声と楽器の音色だ。
どうやら伐採祭りの近くまで来たらしい……いや早いな!? 俺たちが魔物退治に向かった時は午前中いっぱいかけてようやく農村に着いたのに。
これが森の主の実力か、と戦々恐々していると、大狼さんは俺の背中をぐっと押して小さく「ワフッ」と吠えた。約束は果たしたと言いたいのだろうか。
それなら、次は俺の番だな。
「すぐに頼れる人を連れてきます。少しだけ待っていてください」
「ワフッ」
俺の言葉に頷く様に一言吠えて、大狼さんはパタパタと尻尾を振った。その視線に見送られながら祭り会場へ向かって足を進める。目的の人物は、すぐに見つかった。こんな夜に皮帽子つけてる奴なんて一人っきゃいないもんな。
「なんでうちなんだよぅ……」
「医術の心得がある人で一番信頼できるから」
「うちは見習いなんだけど……ほ、本当に魔獣王ガランが居る……」
ネネは大狼さんを見てそう呟いた。いつもはピンと帽子の横で自己主張している猫耳がぺたりと伏せられているのを見るに本当に嫌なんだろうが、この状況で頼れる相手なんて俺の知り合いじゃネネくらいなんだよ。間違いなく医療、というか光魔法という快復手段を持ってる人は居るけどあの人をここに連れてきたら問答無用で狼さん達を殺しに行きそうだし。
「うう……怖い、怖いけど……子狼は、放置したら不味そうだし……」
「大狼さんだって子供の命がかかってるんだ。現になにもしてこないだろ?」
「そ、そうだけどぉ。ここじゃあ何もなさ過ぎる。水も清潔な布も用意できな」
「水と清潔な布が必要なんだね? はい」
ネネが必要なものを口にした瞬間、彼女の手に夢想具現で取り出した包帯を手渡した。水に関してはコンビニの蛇口をひねる感覚で水もお湯も出すことが出来る。医療に使うためのものじゃないがこの世界で使われている井戸水なんかに比べたら十分清潔な水だ。
俺の手のひらからこんこんと湧き出るお湯を見て、ネネは口を開けてぽかーんとした表情を浮かべた。
「……タロゥ、魔法使いだったの?」
「いいや。ラーメンを出すときと同じ感覚で水が出せるだけだよ」
ネネの言葉にそう応えると、ネネはなにか言いたそうにこっちを見た後帽子の縁をカリカリと爪で弄り始めた。おお、2年近い付き合いだけどこんな表情のネネは初めて見るぞ。
俺が見守っている中でネネはうんうん唸りながら帽子の縁を弄り続け、やがて「うし」と口にして表情を引き締めた。
「タロゥ、その水の魔法はみんな知ってるもの? 例えば、イールィス家のお嬢様とか」
「いいや。孤児院の仲間しか知らないよ。ロゼッタにはラーメンを出すスキルとしか伝えてないから」
「……ふーん、そっか。あの子は知らないんだ」
俺の言葉を聞いて、ネネはにんまりと笑った。先ほどまで大狼さんにビビりまくっていたのに、急に上機嫌になったネネは鼻歌交じりに着ていたローブから薬とナイフを取り出し、手慣れた様子で包帯を適当な大きさに切り、切り取った包帯に薬を垂らしてしみ込ませる。多分即席のシップかな?
そのままテキパキと治療を施すネネに、大狼さんも安心したような表情で尻尾をパタパタとしている。ネネがご機嫌になった理由は良く分からないが、ネネを頼った俺の判断は間違っていなかったようだ。このまま無事に治療が終わったら、後でちゃんとしたお礼をしないとなぁ。魚介系ラーメンで手を打ってくれたら嬉しいんだけども。
タロゥ(6歳・普人種男)
生力26 (26.0)
信力93 (93.5)UP
知力25 (25.0)
腕力31 (31.0)
速さ25 (25.0)
器用26 (26.0)
魅力26 (26.0)
幸運16 (16.0)UP
体力30 (30.0)
技能
市民 レベル3 (100/100)ー
商人 レベル3 (31/100)
狩人 レベル3 (75/100)UP
調理師 レベル3 (100/100)ー
地図士 レベル2 (33/100)
薬師 レベル1 (74/100)UP
我流剣士 レベル2 (79/100)
木こり レベル2 (30/100)
楽士 レベル1 (80/100)
教師 レベル1 (27/100)
パチン・コ流戦闘術 レベル2 (45/100)
語り部 レベル0 (25/100)
スキル
夢想具現 レベル2 (33/100)UP
直感 レベル2 (41/100)UP
格闘術 レベル1 (23/100)
剣術 レベル3 (6/100)
弓術 レベル1 (98/100)
小剣術 レベル1 (98/100)
暗器術 レベル1 (98/100)
斧術 レベル0 (45/100)
フォークダンス レベル5(35/100)
フォークマスター レベル0 (35/100)