ラーメンが食べたくて 異世界転生ハードモードとんこつ味   作:ぱちぱち

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第51話 ちょっとキチゲが解放されただけなんで

 子狼への処置は小一時間ほどだった。見習いだからと謙遜していたが、最初の躊躇はなんだったのかと言いたくなるほどの手際の良さでネネは子狼への処置を終わらせる。

 

 

「お見事」

 

「違う、矢じりが抜かれてた形跡がある。最低限、犬頭も治療してたみたいだから楽だっただけ」

 

「そうか……恐らく大狼への人質だったんだろうな」

 

「ん。魔法で隠されてたんならこの子を人質にしてガランを操ろうとしてたのかも。見つかって皆殺しになったみたいだけど……くすぐったい」

 

 

 包帯で全身を包まれた子狼は、感謝を伝えるようにネネの顔に頭をすりつけ、ぺろりと舐めた。それに少しくすぐったそうにしながら、ネネは真剣な表情で俺に視線を向けてくる。

 

 

「少し、唾液が少ない気がする。いつからか分からないけど、水も食料も与えられてないかもしれない」

 

「なにか食べ物を用意した方が良いか?」

 

「先に水が良い。出来れば砂糖水」

 

「あー。吸収しやすい飲み物がいいってことか」

 

 

 そういえば熱中症になった犬にスポドリ飲ませたって話は聞いた事あったな。この世界の狼が前世の犬と同じ扱いでいいかは分からんが確か飲ませ過ぎなきゃ効果はあるって話だったし、試してみる価値はあるか。

 

 夢想具現でスポドリを創り出し、キャップを開けて口元に持っていく。ちょろちょろと舌先にスポドリを垂らしてやるとこちらの意図を理解したのか、子狼は長い舌で器用にスポドリを舐め始めた。ただ、流石に少し舐めにくそうではある。なにか器になるものでもあれば良いんだが……あ、大きめの紙皿を出せば良いのか。

 

 紙皿を創り出してそこにスポドリを流し込むと、子狼はぴちゃぴちゃとスポドリを舐め始めた。良かった、これで正解だったか。あとは食べ物……うぅん、犬用のドッグフードで良いかな?

 

 紙皿をもう一つ取り出して、犬まっしぐら! というCMでおなじみだったドッグフードを創り出してそこに乗せると、子狼は最初怪訝そうにドッグフードの匂いを嗅いだ後、最初は恐る恐るといった様子で、一口食べた後はガツガツ貪る様に食べ始めた。うんうん、お気に召したようでなによりだ。

 

 この様子なら子狼ももう大丈夫、だと思いたいが傷は深そうだったからなぁ。まぁ、物を食べる元気があるんだから野生の動物ならなんとかなるだろ。大狼さんも満足そうにグルルッしてるし、一先ずミッションコンプリートって事でいいかな?

 

 

「よく食べてる」

 

「うん。気に入ってくれたみたいだね」

 

「……なに食べてるか知らないけど、ちょっと美味しそうかも」

 

 

 ガツガツとドッグフードを食べる子狼を見て、ネネがぽつりとそう呟いた。そして俺の方へ向き直ると、自分のお腹を摩りながら口を開く。

 

 

「ところで祭りからいきなり連れ出されたせいでうち、なにも食べてないんだけど」

 

「流石にこれは人用じゃないから味気ないと思うぞ? 味もついてないし」

 

「そう……そうかぁ」

 

 

 犬用の餌は確かに人も食べられるけど、犬とかは香辛料がダメだから全然味がしないらしい。人は人用に調理されたものを食べるのが一番なわけだ。

 

 残念そうなネネが少し可哀そうになったのでラーメンを……と思ったが、流石に机も何もない場所で熱々のラーメンを出しても食べにくくてしょうがない。カップラーメンを出すというのもあるが、あれは出した後にお湯を注いで数分間待たないといけないからな。仕方ない、祭り気分が味わえるようにコンビニのホットフードでも創り出すか。

 

 さてさて。食べやすいホットフードとなると色々種類があるんだが、夢想具現で作ると包装なしで出てくるからそれはそれで食べにくいんだよな。そうなると無難に焼き鳥になるんだが、焼き鳥はこの世界でもメジャーな食べ物でなんなら薬草摘みの時、罠にかかったアホ鳥で毎日昼めしに焼き鳥食べてたんだよな。

 

 流石にこのタイミングで焼き鳥渡しても嫌な顔されそうだし、そうなるとつくね串かなぁ。あれなら食べやすいしそこそこ食べ応えもある。

 

 

「ほら、これ食べて。急な頼みでごめん」

 

「……まぁ、良い。タロゥに頼られてるのはちょっとだけ嬉しかった」

 

 

 つくね串を見て、俺を見て、ネネははにかむように笑って俺が差し出した串に手を伸ばす。

 

 その串を、俺たちの頭上からひょいっと顔をのぞかせた大狼さんがぱくりと食べていった。

 

 

「……」

 

「……」

 

『ボリボリ。なにこれ美っ味!? しょ、少年! これお替りをくれないか!!』

 

 

 余りの事に互いに向き合い、目をぱちくりと瞬かせる俺たちを下目に大狼さんは串ごと食べたつくねの味に驚愕し、俺にお替りを要求してきた。

 

 

「……キ」

 

「タロゥ?」

 

「キェェェェアァァァァシャベッタァァァァ!?」

 

「タロゥ!? どうしたのタロゥ!?」

 

『おや、いきなり叫びだしてどうした。腹でも痛いのかえ?』

 

 

 いきなり野生の獣だと思っていた相手がつくねのお替りを要求してきた事実に一瞬発狂しかけた。が、よく考えたら魔法なんて存在するファンタジー世界だ、ここ。しかも相手は魔物ってファンタジー生物なんだからそれくらいはある、のか。あるんだろうな。

 

 野生の動物だって喋るくらいはするよな。うん、まぁ、そうかも。自分の中でそう結論付けて、沸騰しかけた頭に冷や水をぶっかける。自分を納得させると意外と落ち着くんだよね。感情って。

 

 

「……あ、いえ大丈夫です。ちょっとキチゲが解放されただけなんで」

 

「あ、直った。キチゲってなに?」

 

「イライラした時とか驚いた時に叫びたくなる事あるでしょ。あれ」

 

「あー……うん。うちは気にしてないからさ。ガランもお腹減ってたんだよきっと。だから気にしないでいいよタロゥ。今度、おさかなラーメンを食べさせてね?」

 

「あ、え。ああ、うん……わかった」

 

『最近の人間は面白いなぁ。ところで少年、お替りはまだかえ?』

 

 

 なにかを勘違いしてるネネにまぁ好都合かと適当に相槌を打っていると、大狼さんはそれと分かるくらいムカツくにやにや笑いを浮かべながらお替りを要求してきた。超絶厚かましいな、この狼。怖いから出すけど。

 




タロゥ(6歳・普人種男) 

生力26 (26.0)
信力93 (93.8)UP
知力25 (25.0)
腕力31 (31.0)
速さ25 (25.0)
器用26  (26.0)
魅力26 (26.0)
幸運16  (16.0)
体力30 (30.0)

技能
市民 レベル3 (100/100)ー
商人 レベル3 (31/100)
狩人 レベル3 (75/100)
調理師 レベル3 (100/100)ー
地図士 レベル2 (33/100)
薬師  レベル1 (92/100)UP
我流剣士 レベル2 (79/100)
木こり レベル2 (30/100)
楽士 レベル1 (80/100)
教師 レベル1 (27/100)
パチン・コ流戦闘術 レベル2 (45/100)
語り部 レベル0 (25/100)
テイマー レベル0 (1/100)NEW


スキル
夢想具現 レベル2 (36/100)UP
直感 レベル2  (47/100)UP
格闘術 レベル1  (23/100)
剣術 レベル3  (6/100)
弓術 レベル1  (98/100)
小剣術 レベル1 (98/100)
暗器術 レベル1 (98/100)
斧術  レベル0 (45/100)
フォークダンス レベル5(35/100)
フォークマスター  レベル0 (35/100)
念話 レベル0 (1/100)NEW
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